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level 9
「こんなだらしない朝を迎えたのははじめてです」
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level 9
レースのカーテン越しに、窓から差し込む日射しが、まぶしい。
太陽がもう、あんなに高い所にある。
「う… ん」
日射しを遮るように、わたしは腕を顔の前に当て、薄目を開けた。
見知らぬ天井。
なんだか腰が重くて、気分が冴えない。
下腹部がジンジンと、鈍く痛む。
今、何時くらいだろう?
こんなだらしない朝を迎えたのは、生まれてはじめてかもしれない。
「目が覚めた? もうすぐ10時だよ」
「えっ?」
その声に驚いて、思わず飛び起きる。
そうだった。
夕べはわたし、ヨシキさんの部屋に泊まったんだっけ。
冷やかすような口笛が、キッチンの方から聞こえてくる。
「Tシャツだけの凛子ちゃんって、すごく色っぽいな」
「えっ?」
ベッドから起き上がったわたしは、自分のからだを見た。
そういえば、昨夜は寝間着替わりに、ヨシキさんの大きなTシャツを借りたんだった。
寝ている間にシャツがまくれて、ショーツが丸見えになっている。
あまりの赤裸々さに、わたしは真っ赤になりながら、隠すようにTシャツの裾を引っ張った。
「ははは。ちょうど朝ごはん… ってか、ブランチできたとこだよ。食べよう」
そう言って微笑むと、ヨシキさんはテーブルにお皿を並べた。
厚切りのカリカリベーコンと、半熟の目玉焼きを乗せたプレートに、フレンチ風のドレッシングのかかったレタスと、プチトマトがふたつ。
金色のメリオールに注がれた琥珀色の紅茶が、日の光に透けて美しい。
ちょっと無骨なマグカップは、ヨシキさんの使っているものだろうか。チーズたっぷりのピザトーストは、こんがりと焼けていい匂いを漂わせている。
あんなに淫らだった夜が夢か幻のように、明るくて爽やかな食卓風景だった。
急いで顔を洗い、わたしはテーブルにつく。
いっしょに迎えるはじめての朝に、じんわりと幸せが込み上げてくる。
「すみません。わたし、気づかずに眠ったままで」
「いいよ。可愛い寝顔が堪能できたから」
「ずっと見ていたんですか?」
「可愛かったよ」
「恥ずかしいです。髪もぐしゃぐしゃだし」
「乱れ髪って、いいよな。凛子ちゃんはスッピンでも、肌が綺麗だし」
「あ… ありがとうございます」
「パンでよかった? 凛子ちゃん家って、朝は和食ってイメージだから」
「確かに和食が多いですけど。大丈夫です」
少し照れながら、チーズのいい香りが漂ってくるピザトーストを、わたしは頬張った。
ん… 美味しい!
出来合いのものではなく、お手製のピザトーストだろうか。
紅茶もちゃんとしたリーフティで、カップからはふくいくとした香りが立ち上がっている。
本当は、朝の支度なんて女の子がするものだろうけど、ここはヨシキさんに甘えてしまおう。
「すごく美味しいです! ヨシキさんはいつも、こんなにきちんと朝ごはんを作っているんですか?」
「余裕のあるときだけね。今日は凛子ちゃんのために、いつもより力入れてるよ」
「嬉しいです。ありがとうございます」
「よかった。そう言ってもらえて」
マグカップを持ちながら、ヨシキさんはこちらをじっと見つめ、あたたかい紅茶のような笑みをたたえている。
思わず赤面して、わたしはうつむいた。
「あ、あまり見ないで下さい。恥ずかしいです」
「ごめん。可愛いから、つい」
「…」
「綺麗な黒髪だね。逆光に透けた髪に天使の輪ができてるのが、すごくいいな」
「重くないですか? それに頑固な直毛で、ウエーブかけてもすぐにとれるんです」
「はは。オレは好きだよ。そういう綺麗なストレートスーパーロング」
そう言いながら、ヨシキさんは手の甲でわたしの髪を撫でる。
なんだかくすぐったくて、気持ちいい。
つづく
レースのカーテン越しに、窓から差し込む日射しが、まぶしい。
太陽がもう、あんなに高い所にある。
「う… ん」
日射しを遮るように、わたしは腕を顔の前に当て、薄目を開けた。
見知らぬ天井。
なんだか腰が重くて、気分が冴えない。
下腹部がジンジンと、鈍く痛む。
今、何時くらいだろう?
こんなだらしない朝を迎えたのは、生まれてはじめてかもしれない。
「目が覚めた? もうすぐ10時だよ」
「えっ?」
その声に驚いて、思わず飛び起きる。
そうだった。
夕べはわたし、ヨシキさんの部屋に泊まったんだっけ。
冷やかすような口笛が、キッチンの方から聞こえてくる。
「Tシャツだけの凛子ちゃんって、すごく色っぽいな」
「えっ?」
ベッドから起き上がったわたしは、自分のからだを見た。
そういえば、昨夜は寝間着替わりに、ヨシキさんの大きなTシャツを借りたんだった。
寝ている間にシャツがまくれて、ショーツが丸見えになっている。
あまりの赤裸々さに、わたしは真っ赤になりながら、隠すようにTシャツの裾を引っ張った。
「ははは。ちょうど朝ごはん… ってか、ブランチできたとこだよ。食べよう」
そう言って微笑むと、ヨシキさんはテーブルにお皿を並べた。
厚切りのカリカリベーコンと、半熟の目玉焼きを乗せたプレートに、フレンチ風のドレッシングのかかったレタスと、プチトマトがふたつ。
金色のメリオールに注がれた琥珀色の紅茶が、日の光に透けて美しい。
ちょっと無骨なマグカップは、ヨシキさんの使っているものだろうか。チーズたっぷりのピザトーストは、こんがりと焼けていい匂いを漂わせている。
あんなに淫らだった夜が夢か幻のように、明るくて爽やかな食卓風景だった。
急いで顔を洗い、わたしはテーブルにつく。
いっしょに迎えるはじめての朝に、じんわりと幸せが込み上げてくる。
「すみません。わたし、気づかずに眠ったままで」
「いいよ。可愛い寝顔が堪能できたから」
「ずっと見ていたんですか?」
「可愛かったよ」
「恥ずかしいです。髪もぐしゃぐしゃだし」
「乱れ髪って、いいよな。凛子ちゃんはスッピンでも、肌が綺麗だし」
「あ… ありがとうございます」
「パンでよかった? 凛子ちゃん家って、朝は和食ってイメージだから」
「確かに和食が多いですけど。大丈夫です」
少し照れながら、チーズのいい香りが漂ってくるピザトーストを、わたしは頬張った。
ん… 美味しい!
出来合いのものではなく、お手製のピザトーストだろうか。
紅茶もちゃんとしたリーフティで、カップからはふくいくとした香りが立ち上がっている。
本当は、朝の支度なんて女の子がするものだろうけど、ここはヨシキさんに甘えてしまおう。
「すごく美味しいです! ヨシキさんはいつも、こんなにきちんと朝ごはんを作っているんですか?」
「余裕のあるときだけね。今日は凛子ちゃんのために、いつもより力入れてるよ」
「嬉しいです。ありがとうございます」
「よかった。そう言ってもらえて」
マグカップを持ちながら、ヨシキさんはこちらをじっと見つめ、あたたかい紅茶のような笑みをたたえている。
思わず赤面して、わたしはうつむいた。
「あ、あまり見ないで下さい。恥ずかしいです」
「ごめん。可愛いから、つい」
「…」
「綺麗な黒髪だね。逆光に透けた髪に天使の輪ができてるのが、すごくいいな」
「重くないですか? それに頑固な直毛で、ウエーブかけてもすぐにとれるんです」
「はは。オレは好きだよ。そういう綺麗なストレートスーパーロング」
そう言いながら、ヨシキさんは手の甲でわたしの髪を撫でる。
なんだかくすぐったくて、気持ちいい。
つづく
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