あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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level 7

「『板に張り付く』とはどういう意味でしょうか?」

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「そうなんですか」
「目ぇつけられると怖いわよ。
ふたりとも、大きな派閥作っててカメコのコネ多いし、雑誌とかにもよく載ってて発言力あるから、新人のレイヤーなんて簡単に潰せるのよ」
「へぇ」
「へぇ~じゃないわよ。美月ちゃんは昨日、ヨシキと個撮したでしょ。もうマークされてるわよ」
「わたしがですか?」
「そうよ。美月ちゃんったら、コスプレデビューしたてのくせに悪目立ちしてるもん。魔夢も百合花もきっと目障りに思ってるわよ」
「そんな。わたしなにもしていませんけど」
「まあ、美少女JKってだけで、チヤホヤされるしね。
あのふたり、板に張り付いてるから情報速いし。美月ちゃんもおとなしくしてた方がいいわよ。ヨシキなんかと個撮とかしてないで」
「板に張り付くとはどういう…」

そう訊きかけたとき、向こうから桃李さんと優花さんがやってきた。

「『リア恋plus』のもうひとりのキャラ、ゲトできました~ (ж>▽<)y ☆」

大きな声をあげ、ホクホク顔を満面に浮かべた桃李さんは、丈の短い振り袖のような衣装に着替えていて、薙刀状の武具を抱えている。そのうしろにはメイド服姿の恋子さんがいた。
相変わらず気の強そうな微笑みを浮かべながら、恋子さんが言う。

「美月さん聞いたわよ。合わせするんだって? わたし『島戸京子』やるから混ぜてよ」
「あ。はい…」

恋子さんが参加してくれるのは嬉しいけど、さっきのヨシキさんの態度や美咲さんの話が気になって、今はゆっくり喜べる気になれない。

「恋子さんなら元気いっぱい体育会系美少女の『島戸京子』はピッタリですぅ~! これで『リア恋plus』キャラ、フルコンプでっす o(^▽^)o」
「それで、『高瀬みく』もゲットできたの?」

優花さんが訊いたが、桃李さんは肩を落として首を振った。

「玉砕しまつた、、、orz
素敵みくさんはオタクさんと握手会とかやってて、とっても忙しそうで、声かける隙もありませんでした。
やっとコスプレゾーンに来たと思ったら、そこでもカメコさんにモテモテで囲み撮影になるし、しかもヨシキさんの相方のミノルさんとカメコさんがもめて、声かけるチャンスをなくしてしまいました。
ヘタレな桃李ですみません。でも絶対ゲトしてみせますので、安心して下さい ヾ(*´∀`*)ノ
そして女の子5人揃った『リア恋plus』合わせ撮影、ぜひぜひ実現させましょうvv」
「え~。『リア恋plus』合わせ撮影会するんだ~?!」

『合わせ撮影』という言葉に反応したのか、今までわたしたちに無関心だった美咲麗奈が、横から口を挟んできた。
美咲さん、まだいたのか。

「あたし『茜レイラ』のセクシー衣装持ってるし、参加してもいいわよ?」

鼻にかかった甘い声で、美咲さんはわたしたちの方にすり寄ってくる。困惑した顔で桃李さんが答えた。

「美咲さんすみません。『茜レイラ』はもう、ソリンさんに決まってるんです。キャラがかぶってしまいますぅ。 ((((*´・ω・。)」
「じゃあ、『高瀬みく』は? まだ決まってないんでしょ?」
「今交渉中です~。ヨシキさんのサークルの売り子さんをしてた、素敵レイヤーさんにお願いしてみようと思って」
「ああ、あの子。あれはダメよ」
「え? 美咲さんはあの素敵さん、ご存知なんですか?」
「まあね。でもあの子、『着ただけレイヤー』だから」
「着ただけ?」
「ってか、そもそもレイヤーじゃないし。ミノルがパンピーの女子J中学生Cに、無理矢理コスプレさせてるだけだし」
「ふえ~。そうなんですか *:.。.:*゜(n´д`n)゜*:.。.:*」
「コスプレもやったことないし、『リア恋plus』のこともなんにも知らないし。そんなんでメインキャラの『高瀬みく』なんて無理無理。
それにねえ、あの子、、、」

いったん言葉を区切り、声を低くして美咲さんは続けた。

「家出少女なのよ」

つづく
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