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level 7
「恋人でもないのにカノジョ目線はなんですか?」
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「み、美咲さん?! こんにちは」
ふくよかで弾力のある感触に、つい、赤面してしまう。
彼女は今日も露出の多い衣装で、つきたての鏡餅が重なったような、豊かな胸の谷間を見せつけている。この人は男女の見境なく、巨乳をくっつけてくるのだろうか?
満面の笑みを浮かべながら、美咲さんはさらに親しげにからだを密着させて言った。
「昨日はあれからどうしたのぉ? ヨシキとどこか行った? 撮影とかしたの?」
「え? ええ。まあ」
「へぇ~? どこでどんなの撮ったの? コスプレ?」
「いえ。昨日は私服だけで、お台場あたりまで行って、夕景バックで撮影して頂きました」
「え~? いいな~☆ あたしも見たかったな~。美月ちゃんってすっごく美人でスタイルいいから、ヨシキもきっとテンション上がったよね~」
「そんなことはないですけど」
「変なこと、されなかった?」
「え?」
「ヨシキって手が早いから、気に入った女の子にはすぐちょっかい出して、困ってるのよね~」
「…」
なにが困るの?
美咲さんは、ヨシキさんの恋人ではないでしょ。
なんなの? このカノジョ目線は。
昨日見たところでは、美咲さんが一方的にヨシキさんのことを好きそうな感じだった。
ヨシキさんを手に入れるために、まずわたしを潰そうというわけ?
「美月ちゃんも気をつけた方がいいわよ。遊ばれて捨てられて、傷つくのは女の方なんだから」
「大丈夫です。別に変なことなんて、ありませんでしたから」
「そう? だったらいいけどぉ。困ったことあったらいつでも相談してね。あたしは美月ちゃんの味方よ」
「ありがとうございます。でも、相談することなんて、なにもありません」
「え~? 人が親切で言ってるのに… 感じ悪ぅい」
そう言って美咲麗奈は、密着させていたからだを離し、拗ねるようにそっぽを向いた。
感じ悪いのはどっちよ。
いきなりわたしとヨシキさんのことを詮索してきて、親切ごかしに言いたいこと言って。
ひと言文句を言おうと、わたしは美咲麗奈の方を振り向く… と、その視線の先に、ヨシキさんの姿を見つけた。
百合花さんと魔夢さんに挟まれて、ヨシキさんは談笑していたが、わたしに気がつくと、こちらに向かって微笑みながら、挨拶するように軽く手を挙げた。
今なら他のカメコさんもいないし、ヨシキさんとゆっくり写真を撮ったり、話ができたりするかもしれない。
そう期待して、わたしも軽く会釈する。
ヨシキさんの視線の先を追うように、百合花さんと魔夢さんもこちらを見た。
ふたりと目が合う。
仕方ない。
わたしは挨拶するように、頭を下げた。
だけど百合花さんと魔夢さんは、こちらを冷たく一瞥したあと、わたしなんか眼中にないかのように無視し、なにごともなかったかのようにヨシキさんの腕をとって、行き先を変える。
ヨシキさんも素直に従い、ふたりといっしょに向こうへ行ってしまった。
どうして?
そんなによそよそしいの?!
わたし、なにかヨシキさんの気に触ることでもしたの?
いや。
したかもしれないけど…
わたしも三人から顔をそらし、うつむいて唇を噛む。
「あ~あ。ヨシキのやつ、お局レイヤーに捕まってる。あれは逃げられないわぁ」
そのとき、背中から呆れたような、美咲さんの声が聞こえてきた。
「お局レイヤー?」
「美月ちゃんはコスはじめたばっかりだから知らないだろうけど、ヨシキと並んで歩いてたふたりは『魔夢』と『百合花』という、超有名のベテランレイヤーなのよ」
つづく
ふくよかで弾力のある感触に、つい、赤面してしまう。
彼女は今日も露出の多い衣装で、つきたての鏡餅が重なったような、豊かな胸の谷間を見せつけている。この人は男女の見境なく、巨乳をくっつけてくるのだろうか?
満面の笑みを浮かべながら、美咲さんはさらに親しげにからだを密着させて言った。
「昨日はあれからどうしたのぉ? ヨシキとどこか行った? 撮影とかしたの?」
「え? ええ。まあ」
「へぇ~? どこでどんなの撮ったの? コスプレ?」
「いえ。昨日は私服だけで、お台場あたりまで行って、夕景バックで撮影して頂きました」
「え~? いいな~☆ あたしも見たかったな~。美月ちゃんってすっごく美人でスタイルいいから、ヨシキもきっとテンション上がったよね~」
「そんなことはないですけど」
「変なこと、されなかった?」
「え?」
「ヨシキって手が早いから、気に入った女の子にはすぐちょっかい出して、困ってるのよね~」
「…」
なにが困るの?
美咲さんは、ヨシキさんの恋人ではないでしょ。
なんなの? このカノジョ目線は。
昨日見たところでは、美咲さんが一方的にヨシキさんのことを好きそうな感じだった。
ヨシキさんを手に入れるために、まずわたしを潰そうというわけ?
「美月ちゃんも気をつけた方がいいわよ。遊ばれて捨てられて、傷つくのは女の方なんだから」
「大丈夫です。別に変なことなんて、ありませんでしたから」
「そう? だったらいいけどぉ。困ったことあったらいつでも相談してね。あたしは美月ちゃんの味方よ」
「ありがとうございます。でも、相談することなんて、なにもありません」
「え~? 人が親切で言ってるのに… 感じ悪ぅい」
そう言って美咲麗奈は、密着させていたからだを離し、拗ねるようにそっぽを向いた。
感じ悪いのはどっちよ。
いきなりわたしとヨシキさんのことを詮索してきて、親切ごかしに言いたいこと言って。
ひと言文句を言おうと、わたしは美咲麗奈の方を振り向く… と、その視線の先に、ヨシキさんの姿を見つけた。
百合花さんと魔夢さんに挟まれて、ヨシキさんは談笑していたが、わたしに気がつくと、こちらに向かって微笑みながら、挨拶するように軽く手を挙げた。
今なら他のカメコさんもいないし、ヨシキさんとゆっくり写真を撮ったり、話ができたりするかもしれない。
そう期待して、わたしも軽く会釈する。
ヨシキさんの視線の先を追うように、百合花さんと魔夢さんもこちらを見た。
ふたりと目が合う。
仕方ない。
わたしは挨拶するように、頭を下げた。
だけど百合花さんと魔夢さんは、こちらを冷たく一瞥したあと、わたしなんか眼中にないかのように無視し、なにごともなかったかのようにヨシキさんの腕をとって、行き先を変える。
ヨシキさんも素直に従い、ふたりといっしょに向こうへ行ってしまった。
どうして?
そんなによそよそしいの?!
わたし、なにかヨシキさんの気に触ることでもしたの?
いや。
したかもしれないけど…
わたしも三人から顔をそらし、うつむいて唇を噛む。
「あ~あ。ヨシキのやつ、お局レイヤーに捕まってる。あれは逃げられないわぁ」
そのとき、背中から呆れたような、美咲さんの声が聞こえてきた。
「お局レイヤー?」
「美月ちゃんはコスはじめたばっかりだから知らないだろうけど、ヨシキと並んで歩いてたふたりは『魔夢』と『百合花』という、超有名のベテランレイヤーなのよ」
つづく
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