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「恋はサバイバルゲームなのでしょうか」
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東急百貨店から渋谷109を見てまわったあと、FOREVER21というファッションビル(2019年に撤退:作者註)にまで足を伸ばしてみる。
カジュアルからトラッド、ギャル系と、とりあえずいろいろなテイストの服を見ながら、優花さんはヨシキさんのことを改めて訊いてきた。
コスプレのことも含めて、訊かれるままにわたしは、ヨシキさんの話をする。
カッコよくて才能があって、人当たりがいいこと。
チャラそうに見えて、案外しっかりしたことを考えていること。
先週は数人のコスプレイヤーとドライブして、個撮に誘われたこと。
そして、たくさんのライバルがいそうだということなどを。
そうやって、いいことでも悪いことでも、自分の恋をだれかに打ち明けるのは、案外楽しい。
それこそ、『女の子同士の秘密』というか、妙な連帯感が生まれてくる気がする。
「ん~。それにしても凛子ちゃん、いきなりレベルの高い恋愛はじめちゃったわね~」
「ええ。わたしもそう思います。才能があってカッコよくて…」
「そういう意味じゃなくて」
「え?」
休憩に寄った街角のスタバで、テーブルの向こうでバニラクリームフラペチーノを飲んでいた優花さんは、わたしを見つめてちょっと困ったように、首をかしげて言った。
「苦労するよ。そういう相手」
「え? ええ… それはわかっていますけど」
「もし、カレカノになれたとしても、ライバルも多いんでしょ?
ヨシキさんを奪おうと虎視眈々と狙ってる女がそこらじゅうにいて、牙を剥いてるって、けっこうキツいわよね~」
「はあ」
「ヨシキさんって、『個撮』ってのをやってるんでしょ?」
「ええ」
「女の子とふたりっきりで会って、撮影して、そのあと食事したりもするんでしょ? それってデートと変わらないじゃない。
ホテルとかで撮影することもあるって言うのなら、もうなにが起きても不思議じゃないよね。男と女なんだもの」
「そんな、不安になるようなこと、言わないで下さい」
「でしょ? やっぱ不安よね? 自分の彼氏がほかの女とホテル行くって」
「そ、それは」
「でも、そういうタイプの男は、自分のやりたいことを押し通すわよ。
凛子ちゃんがイヤがっても、『ただ撮影しにいくだけなのに、いちいち焼きもち妬くな』って、逆にウザがるかも。
挙げ句の果てには、二人三人同時進行ってことになって… 凛子ちゃんは、それでいい?」
「いいわけないです!」
「だよね~。だけど凛子ちゃん、そんな嫉妬や焼きもちを見せずに、ヨシキさんを『個撮』に笑って送り出せる?」
「…それは」
「『ホテルで撮ってきた』って言われて、『よかったわね』って笑って言える?」
「…無理。かも」
「だから、恋愛レベル高いっていうの」
「え?」
「なんだかんだ言って、いい男には女が群がってくるものよ。競争率が高くなるの。
だから、多少の浮気くらい、『いい男とつきあう税』くらいに思って、大目に見てあげられる余裕がないと、いい男にはいくらでも次の彼女候補がいるし、本人もそれをよく知ってるから、あっさり乗り換えられちゃうのよ。
『ダメなわたしだけを好きになってくれるイケメン男子』なんて幻想は、小学生向けの少女マンガだけの世界よ」
「…そう、思います」
「いい男は『棚ぼた』式じゃゲットできないのよね~」
「待っているだけではダメ、ということですか?」
「恋はサバイバルよ。
結局、自分がいい女にならないと、生き残れないのよ。本当にいい男とは、釣り合いがとれないものなのよ」
「サバイバル、ですか」
つづく
カジュアルからトラッド、ギャル系と、とりあえずいろいろなテイストの服を見ながら、優花さんはヨシキさんのことを改めて訊いてきた。
コスプレのことも含めて、訊かれるままにわたしは、ヨシキさんの話をする。
カッコよくて才能があって、人当たりがいいこと。
チャラそうに見えて、案外しっかりしたことを考えていること。
先週は数人のコスプレイヤーとドライブして、個撮に誘われたこと。
そして、たくさんのライバルがいそうだということなどを。
そうやって、いいことでも悪いことでも、自分の恋をだれかに打ち明けるのは、案外楽しい。
それこそ、『女の子同士の秘密』というか、妙な連帯感が生まれてくる気がする。
「ん~。それにしても凛子ちゃん、いきなりレベルの高い恋愛はじめちゃったわね~」
「ええ。わたしもそう思います。才能があってカッコよくて…」
「そういう意味じゃなくて」
「え?」
休憩に寄った街角のスタバで、テーブルの向こうでバニラクリームフラペチーノを飲んでいた優花さんは、わたしを見つめてちょっと困ったように、首をかしげて言った。
「苦労するよ。そういう相手」
「え? ええ… それはわかっていますけど」
「もし、カレカノになれたとしても、ライバルも多いんでしょ?
ヨシキさんを奪おうと虎視眈々と狙ってる女がそこらじゅうにいて、牙を剥いてるって、けっこうキツいわよね~」
「はあ」
「ヨシキさんって、『個撮』ってのをやってるんでしょ?」
「ええ」
「女の子とふたりっきりで会って、撮影して、そのあと食事したりもするんでしょ? それってデートと変わらないじゃない。
ホテルとかで撮影することもあるって言うのなら、もうなにが起きても不思議じゃないよね。男と女なんだもの」
「そんな、不安になるようなこと、言わないで下さい」
「でしょ? やっぱ不安よね? 自分の彼氏がほかの女とホテル行くって」
「そ、それは」
「でも、そういうタイプの男は、自分のやりたいことを押し通すわよ。
凛子ちゃんがイヤがっても、『ただ撮影しにいくだけなのに、いちいち焼きもち妬くな』って、逆にウザがるかも。
挙げ句の果てには、二人三人同時進行ってことになって… 凛子ちゃんは、それでいい?」
「いいわけないです!」
「だよね~。だけど凛子ちゃん、そんな嫉妬や焼きもちを見せずに、ヨシキさんを『個撮』に笑って送り出せる?」
「…それは」
「『ホテルで撮ってきた』って言われて、『よかったわね』って笑って言える?」
「…無理。かも」
「だから、恋愛レベル高いっていうの」
「え?」
「なんだかんだ言って、いい男には女が群がってくるものよ。競争率が高くなるの。
だから、多少の浮気くらい、『いい男とつきあう税』くらいに思って、大目に見てあげられる余裕がないと、いい男にはいくらでも次の彼女候補がいるし、本人もそれをよく知ってるから、あっさり乗り換えられちゃうのよ。
『ダメなわたしだけを好きになってくれるイケメン男子』なんて幻想は、小学生向けの少女マンガだけの世界よ」
「…そう、思います」
「いい男は『棚ぼた』式じゃゲットできないのよね~」
「待っているだけではダメ、ということですか?」
「恋はサバイバルよ。
結局、自分がいい女にならないと、生き残れないのよ。本当にいい男とは、釣り合いがとれないものなのよ」
「サバイバル、ですか」
つづく
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