あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「ロリータファッションは似合いません」

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 イベントが終わって、私服に着替えてロビーに出てみると、キャリーバッグを脇に置いた桃李さんが、もう正面のベンチに座っていて、わたしを待っていた。

ロリータファッションというのだろうか?
レースやフリルをたくさん使った、甘いピンクのミニワンピース姿だ。
ふわりと広がったスカートの下には、ボリュームたっぷりのパニエが入っていて、頭には赤ちゃんが被るような帽子。
ツインテールにしている長い髪は、真っ白なレースのリボンでくくってあって、まるでアニメに出てくるキャラクターのようで、私服のはずなのにコスプレにしか見えない。

「お待たせしました。桃李さん、全裸じゃないんですね」

わたしがそう言うと、桃李さんはおかしそうにキャラキャラッと笑う。

「美月姫がそんなギャクを飛ばすなんて、なんだかサプライズです~」
「ギャグってわけでは… それにしても、とっても可愛い洋服ですね」
「これですか~? 桃李のお気に入りなんです♪」
「ロリータ服っていうのでしょう?」
「そうですよw 美月姫も着てみたらいいですよ。きっとすっごくお似合いだと思いますぅ (☆Д☆)」
「わたし、顔がきついから、こういう可愛い服は合わなくて…」
「そんなことないですよ~。髪も綺麗なストレートロングだし、目も大きくて睫毛が長いから、お人形さんみたいな感じで、ゴスロリとかすっごくハマると思うんです☆」
「あ、ありがとうございます」

ん~…
素直に喜んでいいのかわからない。
ロリータ服は確かに可愛いくて、人が着ているのを見る分はいいけど、自分が着るにはあまりに子供っぽ過ぎて、躊躇ためらわされる。

「お。ふたりとも今帰り?」

ロビーでしばらく雑談していたわたしたちの後ろで、男の人の声がした。
驚いて振り向くと、ヨシキさんがそこに立って、わたしたちに軽く手を挙げて微笑んでいる。
その周りには、桃李さんと同じようなロリータファッションや、パンクな格好をした綺麗な女性が7~8人ほどいた。カラーウィッグやコスプレメイクをとって、まるで別人だけど、みんなさっきまで会場にいたコスプレイヤーさんたちだ。

「おっ。桃李ちゃん、今日はアンジェリックプリティじゃん☆」

瞳をキラリと輝かせて、ヨシキさんが桃李さんに言った。

え?
服を見ただけで、ブランドがわかるの?
ヨシキさんって、こんなロリータ服が趣味なのかなぁ?
なんだか意外。

「あ。ヨシキさん、さすがですぅ♪ アンプリの新作ですよ~☆」
「すっごい可愛いよ!」
「え~。それは、お洋服がですかぁ? ( ̄~ ̄;)」
「もちろん、ロリ服を着た桃李ちゃんがだよ」
「やったぁ。ヨシキさんに褒められちゃいました (((o≧▽≦)o」
「俺たち今からアフターするんだけど、ふたりも合流しない?」
「え?」

わたしは戸惑った。
みんなわたしより年上そうで、綺麗な女性ばかり。
ヨシキさんのホームページで見た顔も何人かいるので、きっと彼が親しくしているコスプレイヤーさんや、取り巻きの女の子たちなんだろう。
『あなたたちも来るの?』とでも言いたげな冷ややかな視線で、わたしたちを見ている人もいる。
こんな人たちに混じるのは、なんだか気が引ける。
ここはお断りした方が…

「ほんとですか? やったぁ!」

断りかけたわたしにお構いなしに、桃李さんは歓声を上げて、こちらを期待に満ちた瞳で見た。

…しかたない。
わたしもうなずくしかない。

つづく
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