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level 2
「挫折と屈辱を味わってしまいました」
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「だけどすごいですぅ~、美月姫! はじめてのイベント参加であれだけのカメコさんに囲まれるなんて、さすがですぅ~。これはもう、伝説のはじまりですねっ(*^▽^*)」
「い、いえ、あれは… ヨシキさんが撮ってくれたから」
「ヨシキさんが、ですか?」
「ええ。最初にヨシキさんが撮ってくださったので、そのあとで他の方も撮るようになって」
「ほにゃ~、、、((◎д◎ ))ゝ」
「桃李さんはヨシキさんを知っていますか?」
「知ってるもなにも。ヨシキさんはコスプレ界の神! 超絶素敵なお写真を撮られる神カメコなのですよ~ (((o≧▽≦)o
すでに美月姫の元へ降臨していたとは、、、 さすがです!」
「そんなにすごい人なんですか? ヨシキさんって」
「そ~なんです。ものすごいんです!!!
ヨシキさんの繰り出す超絶技巧撮影テクニックは、美麗にして変幻自在のイリュージョニスト!
それに加えて、コスプレを心から愛していらっしゃるものだから、ヨシキさんに撮られたレイヤーさんは、もう他のカメコさんじゃ満足できないからだになってしまうんですぅ・(ノД`)・゚・。」
…なんだか、卑猥な言い回し。
それは置いといて、桃李さんはヨシキさんのことをよく知っていて、尊敬しているらしい。
彼のことを話す桃李さんの瞳は、キラキラ輝いている。
とその時、こちらへ近づいてくる人影が、視界に入った。
前回のイベントで撮影してくれた、『ノマド』さんだ。
「あ~、美月ちゃん、今日も『リア恋plus』の憐花ちゃんなんだね。お、今日は桃李ちゃんといっしょか。同じゲームのコスだし、合わせで撮影させてくれる?」
この前と同じ不自然な若作りファッションで、ノマドさんは額から流れ落ちる汗を拭いながら、こちらにやってきて言った。
「わぁい。美月姫と合わせだぁヾ(*´∀`*)ノ」
桃李さんは無邪気に喜ぶ。
ノマドさんのことは別に好きでもないけど、特に拒否するレベルでもないし、まあいいか。
桃李さんとわたしは、大きなカメラを抱えたノマドさんの前に並んで立った。
「じゃあ、いくよ」
そう言って、ノマドさんがカメラのファインダーをのぞいたとたん、桃李さんの雰囲気が変わった。
まるで別人かのように、わたしのとなりで片足を上げて腰をくねらせ、両腕を可愛く曲げて、一瞬にして『小鳩りりか』の決めポーズを作ったのだ。
表情もビシッと決まってて、キャラになりきっている。
なっ、なんなの?
この変わり身のすごさは!
これが、さっきまであんなに内気で地味だった、桃李さん?!
わたしはまだポーズも上手く作れず、立ち方でさえぎこちないのに、彼女はシャッターを切る度に、違うポーズをどんどん繰り出していく。全然ついていけない。
「桃李さん、ポーズがすごいです。実に多彩で」
「えへっ。美月姫に褒めていただいて光栄ですぅヾ(*´∀`*)ノ 桃李、801の仮面を持つ女を目指してるんですぅ~(๑॔˃̶ॢ◟◞ ˂̶ॢ๑॓)*೨⋆」
すっかりキャラクターになりきっている桃李さんに、わたしは感心して言った。
結局、次々とポーズを変えていく桃李さんに、まったくついていくことができず、わたしはただ、彼女のとなりで棒立ちになっているだけしかできなかった。
惨敗…
久しぶりに味わう、挫折と屈辱感。
これが、コスプレビギナーとベテランの差、なのか。
つづく
「い、いえ、あれは… ヨシキさんが撮ってくれたから」
「ヨシキさんが、ですか?」
「ええ。最初にヨシキさんが撮ってくださったので、そのあとで他の方も撮るようになって」
「ほにゃ~、、、((◎д◎ ))ゝ」
「桃李さんはヨシキさんを知っていますか?」
「知ってるもなにも。ヨシキさんはコスプレ界の神! 超絶素敵なお写真を撮られる神カメコなのですよ~ (((o≧▽≦)o
すでに美月姫の元へ降臨していたとは、、、 さすがです!」
「そんなにすごい人なんですか? ヨシキさんって」
「そ~なんです。ものすごいんです!!!
ヨシキさんの繰り出す超絶技巧撮影テクニックは、美麗にして変幻自在のイリュージョニスト!
それに加えて、コスプレを心から愛していらっしゃるものだから、ヨシキさんに撮られたレイヤーさんは、もう他のカメコさんじゃ満足できないからだになってしまうんですぅ・(ノД`)・゚・。」
…なんだか、卑猥な言い回し。
それは置いといて、桃李さんはヨシキさんのことをよく知っていて、尊敬しているらしい。
彼のことを話す桃李さんの瞳は、キラキラ輝いている。
とその時、こちらへ近づいてくる人影が、視界に入った。
前回のイベントで撮影してくれた、『ノマド』さんだ。
「あ~、美月ちゃん、今日も『リア恋plus』の憐花ちゃんなんだね。お、今日は桃李ちゃんといっしょか。同じゲームのコスだし、合わせで撮影させてくれる?」
この前と同じ不自然な若作りファッションで、ノマドさんは額から流れ落ちる汗を拭いながら、こちらにやってきて言った。
「わぁい。美月姫と合わせだぁヾ(*´∀`*)ノ」
桃李さんは無邪気に喜ぶ。
ノマドさんのことは別に好きでもないけど、特に拒否するレベルでもないし、まあいいか。
桃李さんとわたしは、大きなカメラを抱えたノマドさんの前に並んで立った。
「じゃあ、いくよ」
そう言って、ノマドさんがカメラのファインダーをのぞいたとたん、桃李さんの雰囲気が変わった。
まるで別人かのように、わたしのとなりで片足を上げて腰をくねらせ、両腕を可愛く曲げて、一瞬にして『小鳩りりか』の決めポーズを作ったのだ。
表情もビシッと決まってて、キャラになりきっている。
なっ、なんなの?
この変わり身のすごさは!
これが、さっきまであんなに内気で地味だった、桃李さん?!
わたしはまだポーズも上手く作れず、立ち方でさえぎこちないのに、彼女はシャッターを切る度に、違うポーズをどんどん繰り出していく。全然ついていけない。
「桃李さん、ポーズがすごいです。実に多彩で」
「えへっ。美月姫に褒めていただいて光栄ですぅヾ(*´∀`*)ノ 桃李、801の仮面を持つ女を目指してるんですぅ~(๑॔˃̶ॢ◟◞ ˂̶ॢ๑॓)*೨⋆」
すっかりキャラクターになりきっている桃李さんに、わたしは感心して言った。
結局、次々とポーズを変えていく桃李さんに、まったくついていくことができず、わたしはただ、彼女のとなりで棒立ちになっているだけしかできなかった。
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これが、コスプレビギナーとベテランの差、なのか。
つづく
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