68 / 70
11th sense
11th sense 9
しおりを挟む
現世と訣別するように、あたしは振り返り、足下にひろがる風景を眺めてみた。
急にいなくなったあたしを探して、航平くんやミクがキョロキョロとあたりを見回してる姿が、豆粒みたいにちっちゃく見える。
なんか、おかしい。
あたしのいた世界って、こんなにちっぽけな所だったんだ。
とってもごちゃごちゃで。
ちんまりとしてて。
そのなかに、たくさんの命がひしめき合ってる。
ほんと、数えきれないくらい、無数の命。
それは、この地球だけじゃない。
感じるーーーーーーーーーーー
宇宙全体に、命が溢れてる。
無限に。
永遠に。
いや、、、
宇宙自体が、ひとつの生命だったんだ。
<それで、、、
これからあたしたち、どこに行くの?>
上も下もわからない、雲のように淡い色彩の空間を如月と漂いながら、あたしは訊いた。
<転生します>
<転生? それって、生まれ変わりってやつ?>
<はい。あなたの魂は、これから新しい命に宿るのです>
<へぇ~~っ?! 生まれ変わりって、ホントにあったんだ!
これ、みんなが知ったらビックリするだろ~な。
んであたし、どこのどの命に生まれ変わるの?>
<それは、あなたが生前行ってきた業によって、決められます>
<え~~~っ?! 自分で好きなように転生できないの~~?
まさか、人間じゃない動物や虫とかに生まれ変わったりしないでしょうね!? そんなのやだ>
ブウたれるあたしに、如月はやさしく微笑みかける。
<大丈夫です。よほどの極悪人でない限り、人間界から転落することはありません。
酒井さんなら次の命も、きっといいものになりますよ>
<そっか。じゃあ、今度こそ、素敵な恋人作っちゃうんだ。
そして、クルマに轢かれるようなドジは、もうしない!>
<ふふ。そうですね>
楽しそうに、如月は笑った。やっぱり彼女、死んでからも超絶美少女だ。
<如月さん。あなたとも来世では友達でいたいね。
面倒かけてごめんね。
あたしがいろいろ執着したばっかりに、あなたの命まで犠牲にして。
あたしがバカすぎた。ほんとに今までありがとう>
<あやまらなくてもいいですよ。わたしにはすべて、わかっていましたから。
死ぬことなど、少しも苦ではありませんでした>
<死ぬって、苦しいことじゃないの?>
<昼と夜を繰り返すように、人の生き死には表裏一体。
そして宇宙もまた、この輪廻の理を繰り返しているのです>
<へえ~。そうなんだ。
でもどうして、そうやって何度も生まれ変わったりするんだろ?>
<魂を切磋琢磨するためです>
<切磋琢磨ぁ~?
よくわかんないんだけど、、、
それって具体的に、なにをどうすればいいの?>
<完全なる生命を全うするよう、生きるのです>
<完全なる生命?>
<欲に溺れず、怒りや憎しみに身を焦がさず、生きとし生けるものを愛し育み、宇宙の崩壊に逆らって生きることが、生命に与えられた、究極の目標なのです>
<うっわ~~! なんかすっごい難しそう!!>
<そうですね。そこは神の領域ですから>
<神ぃ?!
無理っ。あたしには!>
<そうかもしれません。人の感情は、自分の思い通りには、なかなかコントロールできませんから。
酒井さんも体験したように、人は簡単に闇の世界に堕ちてしまいます。欲望を振り切って生きることは、まず不可能なのです。
だから人間は不完全なまま、何度も輪廻転生を繰り返し、それでも神を目指すのです>
<そうか~。如月さんって、なんか悟ってるんだね。やっぱりあなた、すごいよ!>
<そんなことありません。
正直言ってわたしも、生きることは辛いです。
いじめにあったときも、『慣れている』なんて強がりを言いましたが、やっぱり寂しかったです>
<そっか。なんか安心した。如月さんも弱い人間だって思えて>
<死んでしまったあとだったとはいえ、酒井さんとこうしてお友達になれて、嬉しいです>
<あはは。死んでから友達になるなんて。なんかおかしいよね>
<ふふ。次の転生までは、わたしたちのいた世界の時間で、何年かはかかります。
それまではふたりで、この天界で浮き世の垢を落として、ゆっくりしましょう>
<死ぬってことは、魂の休息なんだ。まるでバカンスみたいな>
<そうですね。現世に戻ったら、また肉体のある苦難の日々がはじまります。
それでしたら死んでいる間くらい、のんびりさせてもらわないとですね>
<そっか。あはは。なんか変>
<ふふふ… 変ですね>
はじめて見る。
如月摩耶の楽しそうな笑顔。
生まれ変わっても、この笑顔を見てみたいな。
つづく
急にいなくなったあたしを探して、航平くんやミクがキョロキョロとあたりを見回してる姿が、豆粒みたいにちっちゃく見える。
なんか、おかしい。
あたしのいた世界って、こんなにちっぽけな所だったんだ。
とってもごちゃごちゃで。
ちんまりとしてて。
そのなかに、たくさんの命がひしめき合ってる。
ほんと、数えきれないくらい、無数の命。
それは、この地球だけじゃない。
感じるーーーーーーーーーーー
宇宙全体に、命が溢れてる。
無限に。
永遠に。
いや、、、
宇宙自体が、ひとつの生命だったんだ。
<それで、、、
これからあたしたち、どこに行くの?>
上も下もわからない、雲のように淡い色彩の空間を如月と漂いながら、あたしは訊いた。
<転生します>
<転生? それって、生まれ変わりってやつ?>
<はい。あなたの魂は、これから新しい命に宿るのです>
<へぇ~~っ?! 生まれ変わりって、ホントにあったんだ!
これ、みんなが知ったらビックリするだろ~な。
んであたし、どこのどの命に生まれ変わるの?>
<それは、あなたが生前行ってきた業によって、決められます>
<え~~~っ?! 自分で好きなように転生できないの~~?
まさか、人間じゃない動物や虫とかに生まれ変わったりしないでしょうね!? そんなのやだ>
ブウたれるあたしに、如月はやさしく微笑みかける。
<大丈夫です。よほどの極悪人でない限り、人間界から転落することはありません。
酒井さんなら次の命も、きっといいものになりますよ>
<そっか。じゃあ、今度こそ、素敵な恋人作っちゃうんだ。
そして、クルマに轢かれるようなドジは、もうしない!>
<ふふ。そうですね>
楽しそうに、如月は笑った。やっぱり彼女、死んでからも超絶美少女だ。
<如月さん。あなたとも来世では友達でいたいね。
面倒かけてごめんね。
あたしがいろいろ執着したばっかりに、あなたの命まで犠牲にして。
あたしがバカすぎた。ほんとに今までありがとう>
<あやまらなくてもいいですよ。わたしにはすべて、わかっていましたから。
死ぬことなど、少しも苦ではありませんでした>
<死ぬって、苦しいことじゃないの?>
<昼と夜を繰り返すように、人の生き死には表裏一体。
そして宇宙もまた、この輪廻の理を繰り返しているのです>
<へえ~。そうなんだ。
でもどうして、そうやって何度も生まれ変わったりするんだろ?>
<魂を切磋琢磨するためです>
<切磋琢磨ぁ~?
よくわかんないんだけど、、、
それって具体的に、なにをどうすればいいの?>
<完全なる生命を全うするよう、生きるのです>
<完全なる生命?>
<欲に溺れず、怒りや憎しみに身を焦がさず、生きとし生けるものを愛し育み、宇宙の崩壊に逆らって生きることが、生命に与えられた、究極の目標なのです>
<うっわ~~! なんかすっごい難しそう!!>
<そうですね。そこは神の領域ですから>
<神ぃ?!
無理っ。あたしには!>
<そうかもしれません。人の感情は、自分の思い通りには、なかなかコントロールできませんから。
酒井さんも体験したように、人は簡単に闇の世界に堕ちてしまいます。欲望を振り切って生きることは、まず不可能なのです。
だから人間は不完全なまま、何度も輪廻転生を繰り返し、それでも神を目指すのです>
<そうか~。如月さんって、なんか悟ってるんだね。やっぱりあなた、すごいよ!>
<そんなことありません。
正直言ってわたしも、生きることは辛いです。
いじめにあったときも、『慣れている』なんて強がりを言いましたが、やっぱり寂しかったです>
<そっか。なんか安心した。如月さんも弱い人間だって思えて>
<死んでしまったあとだったとはいえ、酒井さんとこうしてお友達になれて、嬉しいです>
<あはは。死んでから友達になるなんて。なんかおかしいよね>
<ふふ。次の転生までは、わたしたちのいた世界の時間で、何年かはかかります。
それまではふたりで、この天界で浮き世の垢を落として、ゆっくりしましょう>
<死ぬってことは、魂の休息なんだ。まるでバカンスみたいな>
<そうですね。現世に戻ったら、また肉体のある苦難の日々がはじまります。
それでしたら死んでいる間くらい、のんびりさせてもらわないとですね>
<そっか。あはは。なんか変>
<ふふふ… 変ですね>
はじめて見る。
如月摩耶の楽しそうな笑顔。
生まれ変わっても、この笑顔を見てみたいな。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と継母の極めて平凡な日常
当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。
残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。
「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」
そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。
そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。
※他のサイトにも重複投稿しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる