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11th sense
11th sense 7
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この瞬間を、どんなに待ったことか。
だけどもしかしたら、次の瞬間にでも、このからだは消えてなくなるかもしれない。
そう思うともう、いてもたってもいられなくなって、あたしは一気にまくしたてた。
「航平くんっ、会えてよかった!
話ができてよかった!
あたし。航平くんのことが好き!
だれよりもだれよりも、航平くんのことが好きだったの!
もう2年間も、ずっと航平くんのこと想ってきたの。
中学の頃から同じ教室で勉強してて、同じ高校に通うようになって1年以上経つっていうのに、ほとんど口きいたこともないし、席が隣になったことさえなかった。
だけど2年になってクラス替えがあって、同じ教室のなかに航平くんの姿を見つけたときは、もう感動で息もつまりそうだった。
これはもう『運命だ』って思った。
だからどうしてもあたしの気持ち、伝えたかった!
そう思ってあたし、夜なべしてラブレター書いたの!
便箋5枚も!
キモいよね。
重すぎるよね。
だけど航平くんのことを想うあたしの気持ちは、止められない!
あたし、振られたっていい。
でもこの気持ちだけは、航平くんには知っててほしい。
あたしが2年間もずっと航平くんのことを想ってきたことだけは、覚えててほしい。
覚えてくれてるだけで、あたしは幸せなんだから!!
それが、あたしが生きてた証。
航平くんが生きててくれて、ほんとによかった。
やっぱり生きてるって、いいんだもん。
あたしは、
あたしは、、、」
涙で胸が詰まり、それ以上は言えない。
航平くんに馬乗りになったまま、あたしはしゃくり上げるだけだった。
「嬉しいよ。酒井さん、、、」
とっても優しい航平くんの声が聞こえると同時に、あたしの両頬に、あったかいものが触れてきた。
航平くんが、あたしの頬を、両手で包んでくれたんだ。
なんか、すごく意外。
「あっ、あたしのこと、怖くないの? 幽霊だよ。あたし」
「怖くないよ。酒井さんはこうしてオレのこと、助けてくれたじゃないか。ありがと、酒井さん」
「ん、、、」
戸惑いながらも微笑む航平くんが、涙で滲んで見える。
ちょっと考えるように黙った航平くんだったが、すぐに意を決したように言った。
「あの、、、 『あずささん』って、呼んでいい?」
「あず、、 いいよ。もちろん」
「あずささん、ありがとう」
「航平くん、、、」
「あずささん、、、」
あたしの名前を呼びながら、航平くんはゆっくりとその腕を折り曲げ、あたしの顔を自分の方へ近づける。
あたしも素直にそれに従う。
航平くんは瞳を閉じた。
あたしも閉じる。
そして航平くんの唇があたしに触れた。
あったかい。
はじめてのキス。
航平くんの呼吸が、伝わってくる。
涙が出そう。
「酒井さん。ありがとう。
オレ、、、
オレもずっと、酒井さんのこと、好きだった」
「だった、、、」
言葉尻を繰り返す。
かすかに、航平くんの表情に困惑の色が浮かんだ。
「そう。そうよね。
あたしはもう死んじゃってるから。
この世にはもう、いない存在だから、、、
う、、、
ううっ、うっ」
また、涙がポロポロ出てきた。
あたしが帰るからだなんて、とっくの昔になくなってる。
あたし、死んじゃってるんだ。
航平くんとは、いっしょにいられないんだ。
航平くんとはもう、さよならしなきゃ。
そのときだった。
もう二度と晴れることはないと思えるくらいに、どんよりと何重にも雲がかかって、陰鬱で真っ黒だった不気味な空に、ほんの少しだけ裂け目ができ、一筋の光が差し込み、あたしをほのかに包み込んできたのだ。
「あ、、、?」
意識が遠のきはじめる。
からだの感覚が薄れてくる。
頭のなかに、聞き覚えのある、優しい声が響いてくる。
この声は、、、
つづく
だけどもしかしたら、次の瞬間にでも、このからだは消えてなくなるかもしれない。
そう思うともう、いてもたってもいられなくなって、あたしは一気にまくしたてた。
「航平くんっ、会えてよかった!
話ができてよかった!
あたし。航平くんのことが好き!
だれよりもだれよりも、航平くんのことが好きだったの!
もう2年間も、ずっと航平くんのこと想ってきたの。
中学の頃から同じ教室で勉強してて、同じ高校に通うようになって1年以上経つっていうのに、ほとんど口きいたこともないし、席が隣になったことさえなかった。
だけど2年になってクラス替えがあって、同じ教室のなかに航平くんの姿を見つけたときは、もう感動で息もつまりそうだった。
これはもう『運命だ』って思った。
だからどうしてもあたしの気持ち、伝えたかった!
そう思ってあたし、夜なべしてラブレター書いたの!
便箋5枚も!
キモいよね。
重すぎるよね。
だけど航平くんのことを想うあたしの気持ちは、止められない!
あたし、振られたっていい。
でもこの気持ちだけは、航平くんには知っててほしい。
あたしが2年間もずっと航平くんのことを想ってきたことだけは、覚えててほしい。
覚えてくれてるだけで、あたしは幸せなんだから!!
それが、あたしが生きてた証。
航平くんが生きててくれて、ほんとによかった。
やっぱり生きてるって、いいんだもん。
あたしは、
あたしは、、、」
涙で胸が詰まり、それ以上は言えない。
航平くんに馬乗りになったまま、あたしはしゃくり上げるだけだった。
「嬉しいよ。酒井さん、、、」
とっても優しい航平くんの声が聞こえると同時に、あたしの両頬に、あったかいものが触れてきた。
航平くんが、あたしの頬を、両手で包んでくれたんだ。
なんか、すごく意外。
「あっ、あたしのこと、怖くないの? 幽霊だよ。あたし」
「怖くないよ。酒井さんはこうしてオレのこと、助けてくれたじゃないか。ありがと、酒井さん」
「ん、、、」
戸惑いながらも微笑む航平くんが、涙で滲んで見える。
ちょっと考えるように黙った航平くんだったが、すぐに意を決したように言った。
「あの、、、 『あずささん』って、呼んでいい?」
「あず、、 いいよ。もちろん」
「あずささん、ありがとう」
「航平くん、、、」
「あずささん、、、」
あたしの名前を呼びながら、航平くんはゆっくりとその腕を折り曲げ、あたしの顔を自分の方へ近づける。
あたしも素直にそれに従う。
航平くんは瞳を閉じた。
あたしも閉じる。
そして航平くんの唇があたしに触れた。
あったかい。
はじめてのキス。
航平くんの呼吸が、伝わってくる。
涙が出そう。
「酒井さん。ありがとう。
オレ、、、
オレもずっと、酒井さんのこと、好きだった」
「だった、、、」
言葉尻を繰り返す。
かすかに、航平くんの表情に困惑の色が浮かんだ。
「そう。そうよね。
あたしはもう死んじゃってるから。
この世にはもう、いない存在だから、、、
う、、、
ううっ、うっ」
また、涙がポロポロ出てきた。
あたしが帰るからだなんて、とっくの昔になくなってる。
あたし、死んじゃってるんだ。
航平くんとは、いっしょにいられないんだ。
航平くんとはもう、さよならしなきゃ。
そのときだった。
もう二度と晴れることはないと思えるくらいに、どんよりと何重にも雲がかかって、陰鬱で真っ黒だった不気味な空に、ほんの少しだけ裂け目ができ、一筋の光が差し込み、あたしをほのかに包み込んできたのだ。
「あ、、、?」
意識が遠のきはじめる。
からだの感覚が薄れてくる。
頭のなかに、聞き覚えのある、優しい声が響いてくる。
この声は、、、
つづく
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