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10th sense
10th sense 4
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<酒井あずさ。おまえはこのふたりがなに考えてるか、わかるか?>
<え? それは、あたしが成仏することを願って、、、>
<バカタレがっ!>
そう罵り声をあげると、下級霊はあたしの頭のあたりを小突くようなゼスチャーをして、耳元で叫んだ。
<だからおまえはお人好しだってんだよ!!
いいか?! こいつらが考えてることはなぁ、おのれの身の安全だけよ>
<身の安全?>
<おまえの祟りが怖いから、早く成仏してもらって、おのれらは楽になろうって魂胆さ。そのあとで自分らは乳繰りあうつもりでいるのよ!>
<そんな、、、>
<そんなもこんなもねぇぜ。
よく考えてみろ!
本当だったら、おまえが航平といい仲になるはずだったんじゃねぇか。
それをミクなんかに横取りされて、おまえは口惜しくはねぇのか?!>
<そ、そりゃ、口惜しいけど、、、>
<だろ?
ちょいと道ばたに花を添えられて、手を合わされたくらいで、その口惜しさが紛れるか?!>
<紛れる、、わけないかも、、、>
<だろ?
こいつらみんな、自分のことしか考えてねぇのさ。
死んじまったおまえの替わりに、自分らがいい思いをしてるって罪悪感を紛らそうとして、手を合わせてるだけよ。
しょせん、自分の幸せしか考えてねぇ。
ったく、醜いったらありゃしねえ!
ヘドが出るぜ!!>
吐き捨てるように言うと、下級霊は姿を消した。
やっぱり、、、
そうよね。
下級霊の言うとおりだ。
すっかり忘れてた。
ミクって結構、黒い女だった。
人のことを気遣うフリして、ワガママ通すことだって、度々あった。
あたしが死ぬのを待って、航平くんに言い寄ったり、あたしの成仏を願うフリしてみたり、、、
やっぱり酷い女だ。
一瞬でも『あったかい光』なんて感じた自分が、バカだった。
ミクに対する怨みは、そう簡単に消えるもんじゃない。
、、、復讐してやりたい。
ミクのこと、絶対許さない!
合掌が終わって、ふたりはノロノロと立ち上がる。
「、、、送ってくよ」
ポツリと航平くんが言う。
「…ん」
しばらく間を置いて、ミクはうなづいた。
「…」
「…」
お互いなにもしゃべらない。
無言のまま並んで、航平くんとミクは来た道を引き返していった。
どちらが言い出すともなく、ふたりは遠回りの山の公園の方に、足を向ける。
つづら折りの道を登り、山頂の公園に着くと、航平くんは歩を止め、日の落ちかけた街並を眺める。
ミクも自然と航平くんの隣に並び、同じ方向に目を向けた。
なんだか、いい雰囲気。
ふたりともほとんど会話がないというのに、心が通いあってるような感じ。
胸騒ぎがする。
「、、、ミクちゃんって、優しいんだな」
長い沈黙のあと、航平くんは街並からミクに視線を落として言った。
肩をすくめ、ミクは遠慮がちに答える。
「そんなこと、、、 ない」
「いや。
オレは怖くて、あそこに行けなかったのに、ミクちゃんはマメにお参りしてたんだろ。
ほんとすごいよ。
ミクちゃんは親友思いなんだな。オレ、恥ずかしいよ」
「なにが?」
「酒井さんのこと、好きだと言っておきながら、彼女の祟りが怖くて逃げてた。
オレには酒井さんを好きになる資格なんて、ないのかもしれない」
「わたしだって、怖い、、、」
「ミクちゃん」
「あずさが取り憑いたみたいになってた如月さんは死んで、わたしの目の前で萌香は大怪我したし、小嶋さんも階段から転げ落ちて…
ふたりとも、『だれかに突き飛ばされたみたいだった』って言ってた。
そして今度は、わたしが、、、」
「そんなこと、させない!」
「え?」
「ミクちゃんのことは、オレが守るから。絶対!」
「…」
「好きな人がいなくなるのは、もうイヤだ!」
「…」
「ミクちゃん、、、」
「…航平、くん」
航平くんはミクを見つめる。
驚いた顔で、ミクも航平くんの瞳を覗き込んでる。
ミクの小さな肩を両手で掴んだ航平くんは、ゆっくりと顔を近づけていった。
瞳を閉じて、ミクは応える。
そして、航平くんとミクの唇が重なった。
つづく
<え? それは、あたしが成仏することを願って、、、>
<バカタレがっ!>
そう罵り声をあげると、下級霊はあたしの頭のあたりを小突くようなゼスチャーをして、耳元で叫んだ。
<だからおまえはお人好しだってんだよ!!
いいか?! こいつらが考えてることはなぁ、おのれの身の安全だけよ>
<身の安全?>
<おまえの祟りが怖いから、早く成仏してもらって、おのれらは楽になろうって魂胆さ。そのあとで自分らは乳繰りあうつもりでいるのよ!>
<そんな、、、>
<そんなもこんなもねぇぜ。
よく考えてみろ!
本当だったら、おまえが航平といい仲になるはずだったんじゃねぇか。
それをミクなんかに横取りされて、おまえは口惜しくはねぇのか?!>
<そ、そりゃ、口惜しいけど、、、>
<だろ?
ちょいと道ばたに花を添えられて、手を合わされたくらいで、その口惜しさが紛れるか?!>
<紛れる、、わけないかも、、、>
<だろ?
こいつらみんな、自分のことしか考えてねぇのさ。
死んじまったおまえの替わりに、自分らがいい思いをしてるって罪悪感を紛らそうとして、手を合わせてるだけよ。
しょせん、自分の幸せしか考えてねぇ。
ったく、醜いったらありゃしねえ!
ヘドが出るぜ!!>
吐き捨てるように言うと、下級霊は姿を消した。
やっぱり、、、
そうよね。
下級霊の言うとおりだ。
すっかり忘れてた。
ミクって結構、黒い女だった。
人のことを気遣うフリして、ワガママ通すことだって、度々あった。
あたしが死ぬのを待って、航平くんに言い寄ったり、あたしの成仏を願うフリしてみたり、、、
やっぱり酷い女だ。
一瞬でも『あったかい光』なんて感じた自分が、バカだった。
ミクに対する怨みは、そう簡単に消えるもんじゃない。
、、、復讐してやりたい。
ミクのこと、絶対許さない!
合掌が終わって、ふたりはノロノロと立ち上がる。
「、、、送ってくよ」
ポツリと航平くんが言う。
「…ん」
しばらく間を置いて、ミクはうなづいた。
「…」
「…」
お互いなにもしゃべらない。
無言のまま並んで、航平くんとミクは来た道を引き返していった。
どちらが言い出すともなく、ふたりは遠回りの山の公園の方に、足を向ける。
つづら折りの道を登り、山頂の公園に着くと、航平くんは歩を止め、日の落ちかけた街並を眺める。
ミクも自然と航平くんの隣に並び、同じ方向に目を向けた。
なんだか、いい雰囲気。
ふたりともほとんど会話がないというのに、心が通いあってるような感じ。
胸騒ぎがする。
「、、、ミクちゃんって、優しいんだな」
長い沈黙のあと、航平くんは街並からミクに視線を落として言った。
肩をすくめ、ミクは遠慮がちに答える。
「そんなこと、、、 ない」
「いや。
オレは怖くて、あそこに行けなかったのに、ミクちゃんはマメにお参りしてたんだろ。
ほんとすごいよ。
ミクちゃんは親友思いなんだな。オレ、恥ずかしいよ」
「なにが?」
「酒井さんのこと、好きだと言っておきながら、彼女の祟りが怖くて逃げてた。
オレには酒井さんを好きになる資格なんて、ないのかもしれない」
「わたしだって、怖い、、、」
「ミクちゃん」
「あずさが取り憑いたみたいになってた如月さんは死んで、わたしの目の前で萌香は大怪我したし、小嶋さんも階段から転げ落ちて…
ふたりとも、『だれかに突き飛ばされたみたいだった』って言ってた。
そして今度は、わたしが、、、」
「そんなこと、させない!」
「え?」
「ミクちゃんのことは、オレが守るから。絶対!」
「…」
「好きな人がいなくなるのは、もうイヤだ!」
「…」
「ミクちゃん、、、」
「…航平、くん」
航平くんはミクを見つめる。
驚いた顔で、ミクも航平くんの瞳を覗き込んでる。
ミクの小さな肩を両手で掴んだ航平くんは、ゆっくりと顔を近づけていった。
瞳を閉じて、ミクは応える。
そして、航平くんとミクの唇が重なった。
つづく
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