53 / 70
9th sense
9th sense 8
しおりを挟む
どこに隠れてたんだろ?
一匹の下級霊があたしの足下から飛び出してきて、階段を下りようとしてる小島未希を、うしろから突き飛ばしたのだ!
「きゃっ!!」
小島未希はバランスを崩し、階段の上でよろける。
「危ないっ!」
うしろにいた航平くんは、とっさにかばおうとして手を出したが、一瞬遅かった。
小島未希はそのまま、階段のいちばん上から転げ落ちていった。
「きゃっ!」「うわっ!!」
航平くんの叫び声で、階段の途中にいたミクは、反射的に手すりにしがみつく。
ミクはすれすれでかわしたが、いちばん下にいた和馬くんは、小嶋未希ともつれあって玄関まで転がっていった。
「痛って~~~~;; 大丈夫か? 未希ちゃん?!」
「いっ。痛い! あ、足が、、、」
苦痛に顔を歪めながら、小嶋未希は右足首を押さえた。
和馬くんも肩を打ったらしく、痛そうにさすりながらも、心配そうに彼女が押さえてる足を覗き込んだ。
「やべっ! 血が出てるぞ! 航平っ!!」
階段を駆け下りた航平くんは慌ててリビングへ向かうと、救急箱を持ってくる。
ミクは恐怖でからだが固まったのか、階段の手すりにしがみついたままだった。
そんな光景を、あたしは傍らで見てた。
どうして、、、
どうしてこんなことになったのよ?
<ケケ。おまえもそれを望んでただろ?>
気味の悪い声が、どこからともなく聞こえてくる。
あたりを見ると、座り込んだ小嶋未希のうしろから、下級霊らしい黒い影が姿を現して、あたしの方に近寄ってきた。
<あんたなの? こんないたずらしたの!>
<おまえの代わりにやったんだぜ>
<あたしの代わり?>
<ミクを憎み、萌香を憎み、クラスのみんなを呪ってる。
そんなおまえの代わりに、オレ様がやっただけのことさ>
<…もしかして。萌香を鉄棒から突き落としたのも、あんた?>
<あの女は親友だったおまえを裏切って、ミクに手を貸してただろ。
相応の罰を与えてやらなきゃな。
おまえだって、いい気味だと思ってたじゃねぇか>
<そんな、、、 萌香はあたしの親友、、>
<よしな!
愛だの友情だの、くだらねぇ!
おまえを好きだったはずの男だって、別の女が言い寄ってくりゃ、簡単に心変わりするんだぜ。
見ろよ、あの男を!>
そう言って、黒い影は階段の方を指差した。
階段の手すりのところで動けなくなってるミクの隣に、航平くんが寄り添ってる。
庇うように肩に手をかけて、ミクをいたわってる。
、、、航平くんは、ミクを見つめてる。
決してあたしには向けられることのなかった、とってもやさしい瞳。
我に返ったミクが、航平くんにしがみつく。
そんな彼女を、航平くんはしっかりと抱きしめた。
<、、、>
<ケケ。航平はもう、あの女のからだに夢中だぜ。
愛だの恋だのなんて綺麗な言葉は、おのれの性欲を美化するための誤魔化しよ!
航平だって夜な夜なベッドで、卑猥な女の姿態を想像しながら、手を淫してる。
あの男の頭んなかは、いやらしい肉欲でいっぱいだ。
おまえの事なんかもう、これっぽっちも想っちゃいねえぜ。
ってか、死んじまったおまえの事なんか、忘れてぇんだとよ。
あたりまえじゃねぇか。
おまえと航平はもう、交合ることもできねえもんな。
航平には、用なしの存在なのよ!
人間はいつもそうだ。
おのれの欲のために、簡単に人を裏切る!
忘れちまう!
そんな薄情なやつらに、おまえは復讐してやりたくて、たまんねぇんだろうが!!>
『復讐』
下級霊の言葉が頭で渦巻く。
その瞬間、航平くんとミクの抱き合う姿が、血の色に染まった。
目の前に広がる景色が、真っ赤にしか見えない。
心の奥底にある憎しみのマグマが、グツグツと煮えたぎり、溢れ出してくる。
そんなあたしの気持ちを見透かすように、下級霊は意外な言葉を口にした。
つづく
一匹の下級霊があたしの足下から飛び出してきて、階段を下りようとしてる小島未希を、うしろから突き飛ばしたのだ!
「きゃっ!!」
小島未希はバランスを崩し、階段の上でよろける。
「危ないっ!」
うしろにいた航平くんは、とっさにかばおうとして手を出したが、一瞬遅かった。
小島未希はそのまま、階段のいちばん上から転げ落ちていった。
「きゃっ!」「うわっ!!」
航平くんの叫び声で、階段の途中にいたミクは、反射的に手すりにしがみつく。
ミクはすれすれでかわしたが、いちばん下にいた和馬くんは、小嶋未希ともつれあって玄関まで転がっていった。
「痛って~~~~;; 大丈夫か? 未希ちゃん?!」
「いっ。痛い! あ、足が、、、」
苦痛に顔を歪めながら、小嶋未希は右足首を押さえた。
和馬くんも肩を打ったらしく、痛そうにさすりながらも、心配そうに彼女が押さえてる足を覗き込んだ。
「やべっ! 血が出てるぞ! 航平っ!!」
階段を駆け下りた航平くんは慌ててリビングへ向かうと、救急箱を持ってくる。
ミクは恐怖でからだが固まったのか、階段の手すりにしがみついたままだった。
そんな光景を、あたしは傍らで見てた。
どうして、、、
どうしてこんなことになったのよ?
<ケケ。おまえもそれを望んでただろ?>
気味の悪い声が、どこからともなく聞こえてくる。
あたりを見ると、座り込んだ小嶋未希のうしろから、下級霊らしい黒い影が姿を現して、あたしの方に近寄ってきた。
<あんたなの? こんないたずらしたの!>
<おまえの代わりにやったんだぜ>
<あたしの代わり?>
<ミクを憎み、萌香を憎み、クラスのみんなを呪ってる。
そんなおまえの代わりに、オレ様がやっただけのことさ>
<…もしかして。萌香を鉄棒から突き落としたのも、あんた?>
<あの女は親友だったおまえを裏切って、ミクに手を貸してただろ。
相応の罰を与えてやらなきゃな。
おまえだって、いい気味だと思ってたじゃねぇか>
<そんな、、、 萌香はあたしの親友、、>
<よしな!
愛だの友情だの、くだらねぇ!
おまえを好きだったはずの男だって、別の女が言い寄ってくりゃ、簡単に心変わりするんだぜ。
見ろよ、あの男を!>
そう言って、黒い影は階段の方を指差した。
階段の手すりのところで動けなくなってるミクの隣に、航平くんが寄り添ってる。
庇うように肩に手をかけて、ミクをいたわってる。
、、、航平くんは、ミクを見つめてる。
決してあたしには向けられることのなかった、とってもやさしい瞳。
我に返ったミクが、航平くんにしがみつく。
そんな彼女を、航平くんはしっかりと抱きしめた。
<、、、>
<ケケ。航平はもう、あの女のからだに夢中だぜ。
愛だの恋だのなんて綺麗な言葉は、おのれの性欲を美化するための誤魔化しよ!
航平だって夜な夜なベッドで、卑猥な女の姿態を想像しながら、手を淫してる。
あの男の頭んなかは、いやらしい肉欲でいっぱいだ。
おまえの事なんかもう、これっぽっちも想っちゃいねえぜ。
ってか、死んじまったおまえの事なんか、忘れてぇんだとよ。
あたりまえじゃねぇか。
おまえと航平はもう、交合ることもできねえもんな。
航平には、用なしの存在なのよ!
人間はいつもそうだ。
おのれの欲のために、簡単に人を裏切る!
忘れちまう!
そんな薄情なやつらに、おまえは復讐してやりたくて、たまんねぇんだろうが!!>
『復讐』
下級霊の言葉が頭で渦巻く。
その瞬間、航平くんとミクの抱き合う姿が、血の色に染まった。
目の前に広がる景色が、真っ赤にしか見えない。
心の奥底にある憎しみのマグマが、グツグツと煮えたぎり、溢れ出してくる。
そんなあたしの気持ちを見透かすように、下級霊は意外な言葉を口にした。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
恋もバイトも24時間営業?
鏡野ゆう
ライト文芸
とある事情で、今までとは違うコンビニでバイトを始めることになった、あや。
そのお店があるのは、ちょっと変わった人達がいる場所でした。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中です※
※第3回ほっこり・じんわり大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※
※第6回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※
こちら京都府警騎馬隊本部~私達が乗るのはお馬さんです
鏡野ゆう
ライト文芸
ここにいるおまわりさん達が乗るのは、パトカーでも白バイでもなくお馬さんです。
京都府警騎馬隊に配属になった新米警察官と新米お馬さんのお話。
※このお話はフィクションです。実在の京都府警察騎馬隊とは何ら関係はございません※
※カクヨム、小説家になろうでも公開中※
【完結】離婚の危機!?ある日、妻が実家に帰ってしまった!!
つくも茄子
ライト文芸
イギリス人のロイドには国際結婚をした日本人の妻がいる。仕事の家庭生活も順調だった。なのに、妻が実家(日本)に戻ってしまい離婚の危機に陥ってしまう。美貌、頭脳明晰、家柄良しの完璧エリートのロイドは実は生活能力ゼロ男。友人のエリックから試作段階の家政婦ロボットを使わないかと提案され、頷いたのが運のツキ。ロイドと家政婦ロボットとの攻防戦が始まった。
セリフ箱
えと
ライト文芸
セリフ読みがしたい!
台本探してマースって人の選択肢を増やしたくて書いたやつです。
使用する場合
@ETO_77O
と、Twitterでメンションしていただければ1番いいのですが
・引用先としてセリフ箱のリンクを載せる
・DMやリプライなどにて声をかける
など…使用したということを教えていただけれると幸いです。フリーなのでなくても構いません。
単純自分の台本が読まれるのが嬉しいので…聴きたいって気持ちも強く、どのように読んでくださるのか、自分だったらこう読むけどこの人はこうなの!?勉強になるなぁ…みたいな、そんな、ひとつの好奇心を満たしたいっていうのが大きな理由となっていおります。
そのため、あまり気にせす「視聴者1人増えるんか!」ってくらいの感覚でお声かけください
ご使用の連絡いつでもお待ちしております!
なお、「このセリフ送ったはいいものの…この人のキャラに合わなかったな…」って言うことで没案になってしまったセリフの供養もここでします。
「これみたことあるぞ!?」となった場合はそういうことだと察して頂けると幸いです
女ふたり、となり暮らし。
辺野夏子
ライト文芸
若干冷めている以外はごくごく普通のOL、諏訪部京子(すわべきょうこ)の隣室には、おとなしい女子高生の笠音百合(かさねゆり)が一人で暮らしている。特に隣人づきあいもなく過ごしていた二人だったが、その関係は彼女が「豚の角煮」をお裾分けにやってきた事で急速に変化していく。ワケあり女子高生と悟り系OLが二人でざっくりした家庭料理を食べたり、近所を探検したり、人生について考える話。
『ヘブン』
篠崎俊樹
ライト文芸
私と、今の事実婚の妻との馴れ初めや、その他、自分の身辺のことを書き綴る、連載小説です。毎日、更新して、書籍化を目指します。ジャンルは、ライトノベルにいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
猫屋敷先輩の怪奇奇譚
MOKO
ライト文芸
僕の先輩は少し変わった人だ。
本人は至って普通だと言ってるけど
多分、絶対普通じゃない。
彼と一緒にいると
おかしな事ばかりが起きてしまう。
振り回されてばっかりなのに
何故か
離れられない腐れ縁になってしまった。
…トホホ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる