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8th sense
8th sense 2
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「今夜もよろしく」
真夜中の如月摩耶の和室。
あたしは彼女の側に立ち、そうつぶやいた。
寝息も立てず、浴衣姿で如月は布団に横たわってる。
儚く美しい如月の寝顔は、障子越しに差し込むほのかな月の光に照らされて、青白く、まるで死んでるようにも見える。
如月って、浴衣で寝るんだ。
今どき古風~。
枕元に跪いたあたしは、彼女の胸元にそっと両手を置いた。
あったくてやわらかい肌の感触。
やっぱり生きてるって、いい。
軽い嫉妬を感じながら、あたしは両手をぐいと押す。
青黒い手が、からだにめり込んでく。
そのまま静かに、あたしは如月のなかに沈んでいった。
感じる、、、
活発な細胞分裂と、新陳代謝。
からだの隅々が、外界と触れ合う感触。
ふつふつと沸き上がってくる、あらゆる欲望。
萌えあがるような、肉体の快楽。
侵入に気づかれる前に、あたしは如月のからだを完全に支配し、彼女の意識をからだから切り離した。
「、、、ふう。やっぱりからだがあるって、いいわね」
軽い恍惚にひたりながら、あたし@如月摩耶はふらふらと立ち上がった。
憑依してすぐは、からだのコントロールがうまくいかないけど、彼女には何度も憑いてるし、すぐに馴染んでくる。
浴衣姿のまま、あたしは部屋の障子戸をゆっくりと開いた。
家族、、、
といっても、この広い和風の家には、如月と年老いたおばあさんしかいない。
それでもあたしは悟られないように忍び足で、浴衣姿のまま家の外に出た。
そのまま靴もはかず、ミクがラブレターを投げ捨てた大谷川の橋にまっすぐ向かう。
そう、、、
みんなが騒いでる『大谷川の幽霊』の正体は、如月摩耶に憑依したあたしだったのだ。
橋のたもとで修羅場った、あの夜から、、、
あたしは如月に憑依して、ミクがぐしゃぐしゃにして川へ投げ捨てたラブレターを、探しまわっていたのだ。
腰まで水に浸かり、ラブレターが流されたと思われる場所を、あちこちまさぐった。
ない、、、
どこを探しても、ラブレターは見つからない。
全身びしょ濡れになりながら、あたしは川の底をまさぐり続けた。
もうすぐ7月とはいえ、さすがに夜の川の水は冷たい。
でも大丈夫。
憑依してるあたしは、触覚や痛覚なんかを遮断することができるのだ。
寒さも痛みもみんなスルーできるなんて、すごい便利。
これなら怪我をしても痛くないし、水の冷たさに震えることもない。
おなかもすかないし、まったく疲れることなく動き回ることができる。
それってゾンビみたいだけど、とにかくあたしはガムシャラに川底を漁り続けた。
なんとしてもラブレターを探し出して、航平くんに渡さなきゃ。
あたしの想いを伝えなきゃ。
両手の指や腕は、川底の石や泥でガサガサになり、尖った岩やガラスで、アザや切り傷ができた。
素足のままで川に入ってるせいで、両足とも爪のなかまで真っ黒になって、血が滲んでる。
でも、『あたしのこと手伝う』って、如月は言ってくれてたんだし、このくらいしたって、大丈夫よね。
そうやって夜な夜な、あたしは如月に憑依して、浴衣姿で川に入り、ラブレターを探し回った。
しかし、その目的はとうとう、遂げられることはなかった。
からだが、、、
如月摩耶のからだが、、、
言うことをきかなくなってしまったのだ。
つづく
真夜中の如月摩耶の和室。
あたしは彼女の側に立ち、そうつぶやいた。
寝息も立てず、浴衣姿で如月は布団に横たわってる。
儚く美しい如月の寝顔は、障子越しに差し込むほのかな月の光に照らされて、青白く、まるで死んでるようにも見える。
如月って、浴衣で寝るんだ。
今どき古風~。
枕元に跪いたあたしは、彼女の胸元にそっと両手を置いた。
あったくてやわらかい肌の感触。
やっぱり生きてるって、いい。
軽い嫉妬を感じながら、あたしは両手をぐいと押す。
青黒い手が、からだにめり込んでく。
そのまま静かに、あたしは如月のなかに沈んでいった。
感じる、、、
活発な細胞分裂と、新陳代謝。
からだの隅々が、外界と触れ合う感触。
ふつふつと沸き上がってくる、あらゆる欲望。
萌えあがるような、肉体の快楽。
侵入に気づかれる前に、あたしは如月のからだを完全に支配し、彼女の意識をからだから切り離した。
「、、、ふう。やっぱりからだがあるって、いいわね」
軽い恍惚にひたりながら、あたし@如月摩耶はふらふらと立ち上がった。
憑依してすぐは、からだのコントロールがうまくいかないけど、彼女には何度も憑いてるし、すぐに馴染んでくる。
浴衣姿のまま、あたしは部屋の障子戸をゆっくりと開いた。
家族、、、
といっても、この広い和風の家には、如月と年老いたおばあさんしかいない。
それでもあたしは悟られないように忍び足で、浴衣姿のまま家の外に出た。
そのまま靴もはかず、ミクがラブレターを投げ捨てた大谷川の橋にまっすぐ向かう。
そう、、、
みんなが騒いでる『大谷川の幽霊』の正体は、如月摩耶に憑依したあたしだったのだ。
橋のたもとで修羅場った、あの夜から、、、
あたしは如月に憑依して、ミクがぐしゃぐしゃにして川へ投げ捨てたラブレターを、探しまわっていたのだ。
腰まで水に浸かり、ラブレターが流されたと思われる場所を、あちこちまさぐった。
ない、、、
どこを探しても、ラブレターは見つからない。
全身びしょ濡れになりながら、あたしは川の底をまさぐり続けた。
もうすぐ7月とはいえ、さすがに夜の川の水は冷たい。
でも大丈夫。
憑依してるあたしは、触覚や痛覚なんかを遮断することができるのだ。
寒さも痛みもみんなスルーできるなんて、すごい便利。
これなら怪我をしても痛くないし、水の冷たさに震えることもない。
おなかもすかないし、まったく疲れることなく動き回ることができる。
それってゾンビみたいだけど、とにかくあたしはガムシャラに川底を漁り続けた。
なんとしてもラブレターを探し出して、航平くんに渡さなきゃ。
あたしの想いを伝えなきゃ。
両手の指や腕は、川底の石や泥でガサガサになり、尖った岩やガラスで、アザや切り傷ができた。
素足のままで川に入ってるせいで、両足とも爪のなかまで真っ黒になって、血が滲んでる。
でも、『あたしのこと手伝う』って、如月は言ってくれてたんだし、このくらいしたって、大丈夫よね。
そうやって夜な夜な、あたしは如月に憑依して、浴衣姿で川に入り、ラブレターを探し回った。
しかし、その目的はとうとう、遂げられることはなかった。
からだが、、、
如月摩耶のからだが、、、
言うことをきかなくなってしまったのだ。
つづく
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