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7th sense
7th sense 4
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「いいよ。
ぼくだって、安藤さんだと思って、キスしたし。
酒井さんのことは確かに好きだったけど、今さら想ってみても、もう仕方ないしな」
はぁ?
どういうことよ!
『安藤さんだと思ってキスしたし』って。
航平くんが好きなのは、あたしのはずでしょ?!
『今さら想ってもしかたない』って、なんなのよ!
あたしはいつでも航平くんの隣にいて、航平くんのこと想ってるのよ?
どうしてそれがわからないの??
ポッと出のミクなんかに気持ちが移るなんて、ありえない!
航平くんを誘ってるのだって、どうせミクのいつもの恋愛ゲームに決まってる。
『親友の好きな人を横取りする』ってシチュエーションに酔ってるだけよ!
航平くん!
そんな女を好きにならないで!
怒りも虚しく、ベンチに座ったふたりは、じっと見つめ合ったままだった。
大声を上げたりふたりの間に割って入っても、全然ダメ。
「航平、くん、、、」
「安藤さん」
「ミクで、いい」
「…」
親しげに名前を呼びながら、お互いの顔がゆっくり、少しずつ接近していく。
ミクは目を閉じ、わずかに顔を上げ、唇を緩めた。
それが合図だったかのように、航平くんはミクに顔を寄せる。
そして、、、
瞳を閉じて、キスをした。
くやしい!
ミクも、航平くんも、、、
許せないっ!!
瞬間。
あたしの目の前には、真っ赤な渦が巻き上がってきた。
その渦は灼熱の炎に変わっていき、あたしを包み込む。
もう死んでるっていうのに、あたしのからだは炎に焼かれ、焦げていった。
苦しい。
苦しい!
だれか助けて!!
気が狂いそう!!!
その日から、あたしに見えるのは、真っ赤な景色だけになった。
どこを見ても、ドス黒い炎が渦巻いてる。
今まで見えてた街並だとか、学校の風景とかも、まるでサングラス越しに見てるみたいに、真っ赤に塗りつぶされてる。
ま、いいか。
外界《そと》のことなんて、今のあたしにはなんの関係もないし、あたしは航平くんのことさえ想ってれば、それでいいし。
相変わらずハブられ虐められてる如月摩耶が、それでも心配そうにあたしを見てることさえ、もうどうでもよかった。
あたしは毎日、航平くんが学校から帰ってベッドに入るまで、その隣に張り憑き、彼だけを見つめた。
だけど、、、
そんなことをしても、ふたりの距離は広がっていく一方だった。
航平くんとミクは、学校のないときも会うようになった。
休みの日、ふたりは私鉄の駅で待ち合わせて、遊園地や水族館に出かける。
ふたり仲良さそうに、絶叫マシンに乗ったり、イルカショーを見たりしてる。
まるで、、、
恋人同士みたい。
、、、羨ましい。
、、、恨めしい。
帰り道、航平くんは必ずミクを家まで送る。
そして、丘の上の公園に寄り道して、あのベンチに座りながらキスするのだ。
航平くんの瞳に写ってるのは、もう、あたしじゃない。
生きた女の色気をムンムンと醸し出してる、安藤未來だった。
もはや霊魂だけになったあたしが、ミクに敵うはずもない。
親友だったのに。
許せない!
そしてある日、とうとう航平くんの部屋に、ミクが上がり込んできた。
「具合はどう?
航平くんが学校休むなんて、珍しいね」
学校帰りの制服姿のミクは、手にスーパーのビニール袋を下げ、航平くん家のチャイムを鳴らした。
ミクめ、、、
スカートをいつもより、ひとつ余分に折ってる。
パンツが見えそうなくらい短い。
このビッチめ!
「ああ。なんか調子悪くて、、、」
そう言いながら、ジャージ姿の航平くんは玄関のドアを開けて、ミクを迎え入れた。
つづく
ぼくだって、安藤さんだと思って、キスしたし。
酒井さんのことは確かに好きだったけど、今さら想ってみても、もう仕方ないしな」
はぁ?
どういうことよ!
『安藤さんだと思ってキスしたし』って。
航平くんが好きなのは、あたしのはずでしょ?!
『今さら想ってもしかたない』って、なんなのよ!
あたしはいつでも航平くんの隣にいて、航平くんのこと想ってるのよ?
どうしてそれがわからないの??
ポッと出のミクなんかに気持ちが移るなんて、ありえない!
航平くんを誘ってるのだって、どうせミクのいつもの恋愛ゲームに決まってる。
『親友の好きな人を横取りする』ってシチュエーションに酔ってるだけよ!
航平くん!
そんな女を好きにならないで!
怒りも虚しく、ベンチに座ったふたりは、じっと見つめ合ったままだった。
大声を上げたりふたりの間に割って入っても、全然ダメ。
「航平、くん、、、」
「安藤さん」
「ミクで、いい」
「…」
親しげに名前を呼びながら、お互いの顔がゆっくり、少しずつ接近していく。
ミクは目を閉じ、わずかに顔を上げ、唇を緩めた。
それが合図だったかのように、航平くんはミクに顔を寄せる。
そして、、、
瞳を閉じて、キスをした。
くやしい!
ミクも、航平くんも、、、
許せないっ!!
瞬間。
あたしの目の前には、真っ赤な渦が巻き上がってきた。
その渦は灼熱の炎に変わっていき、あたしを包み込む。
もう死んでるっていうのに、あたしのからだは炎に焼かれ、焦げていった。
苦しい。
苦しい!
だれか助けて!!
気が狂いそう!!!
その日から、あたしに見えるのは、真っ赤な景色だけになった。
どこを見ても、ドス黒い炎が渦巻いてる。
今まで見えてた街並だとか、学校の風景とかも、まるでサングラス越しに見てるみたいに、真っ赤に塗りつぶされてる。
ま、いいか。
外界《そと》のことなんて、今のあたしにはなんの関係もないし、あたしは航平くんのことさえ想ってれば、それでいいし。
相変わらずハブられ虐められてる如月摩耶が、それでも心配そうにあたしを見てることさえ、もうどうでもよかった。
あたしは毎日、航平くんが学校から帰ってベッドに入るまで、その隣に張り憑き、彼だけを見つめた。
だけど、、、
そんなことをしても、ふたりの距離は広がっていく一方だった。
航平くんとミクは、学校のないときも会うようになった。
休みの日、ふたりは私鉄の駅で待ち合わせて、遊園地や水族館に出かける。
ふたり仲良さそうに、絶叫マシンに乗ったり、イルカショーを見たりしてる。
まるで、、、
恋人同士みたい。
、、、羨ましい。
、、、恨めしい。
帰り道、航平くんは必ずミクを家まで送る。
そして、丘の上の公園に寄り道して、あのベンチに座りながらキスするのだ。
航平くんの瞳に写ってるのは、もう、あたしじゃない。
生きた女の色気をムンムンと醸し出してる、安藤未來だった。
もはや霊魂だけになったあたしが、ミクに敵うはずもない。
親友だったのに。
許せない!
そしてある日、とうとう航平くんの部屋に、ミクが上がり込んできた。
「具合はどう?
航平くんが学校休むなんて、珍しいね」
学校帰りの制服姿のミクは、手にスーパーのビニール袋を下げ、航平くん家のチャイムを鳴らした。
ミクめ、、、
スカートをいつもより、ひとつ余分に折ってる。
パンツが見えそうなくらい短い。
このビッチめ!
「ああ。なんか調子悪くて、、、」
そう言いながら、ジャージ姿の航平くんは玄関のドアを開けて、ミクを迎え入れた。
つづく
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