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7th sense
7th sense 2
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<如月さん。悪い、、、
ほんっと、ごめん>
さすがに、こないだのはやり過ぎだったかも。
あたしは謝った。
読みかけの分厚い本に栞を挟んで、如月は寂しそうな微笑みをあたしに向けた。
「いいえ。わたし、虐められるのには慣れていますから。気にしないで下さい」
<そんな、、、 慣れてるって>
「でも…」
<でも?>
「噂になっている、『大谷川の幽霊』とは、なんでしょう?
わたしも気になって、その場所を見てみましたが、特に変な気は感じられませんでした。酒井さんはなにか、心当たりがありますか?」
<べ、別に、、、 あたしは、、、 あ、ははは、、、>
「…」
誤摩化すように、お愛想笑いを浮かべたあたしを、如月は寂しそうな、だけどあったかい瞳で見つめるだけだった。
航平くんがどんどん、遠くなってくみたい。
例の修羅場のあと、航平くんとミクはますます接近していった。
噂になってる橋を避けるように、学校裏の小さな公園で待ち合わせして、時々いっしょに下校してる。
航平くんは必ず、ミクを家まで送ってく。
途中、丘の上の公園を通って、あたしとミクが恋バナしたベンチに座り、ふたり肩を寄せ合って、街並の向こうに沈んでいく夕陽を眺めたりしてる。
「航平くん知ってる?
あずさの幽霊の噂」
「ああ。聞いたことはあるけど」
「信じる?」
「そうだな、、、 ちょっと、気になることはあるけど…」
「気になること?」
「…いや。たいしたことじゃないから」
航平くんとミクが、例の噂のことを話してる。
あたしは聞き耳を立てた。
航平くんの目を見ながら、ミクはきっぱりと言った。
「わたしは信じない」
「安藤さんは、霊の存在を信じてないんだ?」
「ええ。信じてないわ。
人は死んだら無になっておしまい。霊界とか転生なんてものも、あるわけないじゃない。
だいたいあずさって、だれかを恨んだりするような子じゃなかったもの」
「そうか…」
「そりゃ、航平くんに告白できなかったのを、あずさは悔やんでるかもしれない。
だからといって、お化けになって教室を彷徨ってるなんて、考えられない。
わたしたち、特に三角関係ってわけでも、なかったし」
「そう、、、だよな。やっぱり、、、」
いやいやいや。
今は立派な三角関係だって。
もし、あたしが事故に遭わず、ちゃんと告れてれば、今頃そのベンチで航平くんの隣に座ってるのは、あたしだったはず。
なのに、、、
あたしは死んじゃってて、おいしいとこはみんな、ミクが全部取っちゃった。
こんなんじゃ、死んでも死に切れないわよ!
一旦はミクの言葉に納得した航平くんだったけど、すぐに腑に落ちないような顔になった。
「だけど、日頃は無口でおとなしくて、品のいい如月さんが、まるで人が変わったように、いきなりあんな口調で話すなんて、ありえないだろ?」
「それは…」
「それに、あのとき如月さんが言ってた言葉。
今考えると、妙に説得力あるんだ。
とても、ただのストーカーだとは思えないよ」
「あの、『宿泊研修のときのスク水画像』ってやつ?
確かに、みんなの間で盛り上がってた、わたしたちのセクシーショットはあるんだけど…
ほんとに航平くん。その画像持ってるの? どうやって手に入れたの?」
「い、いや。そういう訳じゃなくって、、、」
航平くんは慌てて否定する。
つづく
ほんっと、ごめん>
さすがに、こないだのはやり過ぎだったかも。
あたしは謝った。
読みかけの分厚い本に栞を挟んで、如月は寂しそうな微笑みをあたしに向けた。
「いいえ。わたし、虐められるのには慣れていますから。気にしないで下さい」
<そんな、、、 慣れてるって>
「でも…」
<でも?>
「噂になっている、『大谷川の幽霊』とは、なんでしょう?
わたしも気になって、その場所を見てみましたが、特に変な気は感じられませんでした。酒井さんはなにか、心当たりがありますか?」
<べ、別に、、、 あたしは、、、 あ、ははは、、、>
「…」
誤摩化すように、お愛想笑いを浮かべたあたしを、如月は寂しそうな、だけどあったかい瞳で見つめるだけだった。
航平くんがどんどん、遠くなってくみたい。
例の修羅場のあと、航平くんとミクはますます接近していった。
噂になってる橋を避けるように、学校裏の小さな公園で待ち合わせして、時々いっしょに下校してる。
航平くんは必ず、ミクを家まで送ってく。
途中、丘の上の公園を通って、あたしとミクが恋バナしたベンチに座り、ふたり肩を寄せ合って、街並の向こうに沈んでいく夕陽を眺めたりしてる。
「航平くん知ってる?
あずさの幽霊の噂」
「ああ。聞いたことはあるけど」
「信じる?」
「そうだな、、、 ちょっと、気になることはあるけど…」
「気になること?」
「…いや。たいしたことじゃないから」
航平くんとミクが、例の噂のことを話してる。
あたしは聞き耳を立てた。
航平くんの目を見ながら、ミクはきっぱりと言った。
「わたしは信じない」
「安藤さんは、霊の存在を信じてないんだ?」
「ええ。信じてないわ。
人は死んだら無になっておしまい。霊界とか転生なんてものも、あるわけないじゃない。
だいたいあずさって、だれかを恨んだりするような子じゃなかったもの」
「そうか…」
「そりゃ、航平くんに告白できなかったのを、あずさは悔やんでるかもしれない。
だからといって、お化けになって教室を彷徨ってるなんて、考えられない。
わたしたち、特に三角関係ってわけでも、なかったし」
「そう、、、だよな。やっぱり、、、」
いやいやいや。
今は立派な三角関係だって。
もし、あたしが事故に遭わず、ちゃんと告れてれば、今頃そのベンチで航平くんの隣に座ってるのは、あたしだったはず。
なのに、、、
あたしは死んじゃってて、おいしいとこはみんな、ミクが全部取っちゃった。
こんなんじゃ、死んでも死に切れないわよ!
一旦はミクの言葉に納得した航平くんだったけど、すぐに腑に落ちないような顔になった。
「だけど、日頃は無口でおとなしくて、品のいい如月さんが、まるで人が変わったように、いきなりあんな口調で話すなんて、ありえないだろ?」
「それは…」
「それに、あのとき如月さんが言ってた言葉。
今考えると、妙に説得力あるんだ。
とても、ただのストーカーだとは思えないよ」
「あの、『宿泊研修のときのスク水画像』ってやつ?
確かに、みんなの間で盛り上がってた、わたしたちのセクシーショットはあるんだけど…
ほんとに航平くん。その画像持ってるの? どうやって手に入れたの?」
「い、いや。そういう訳じゃなくって、、、」
航平くんは慌てて否定する。
つづく
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