ブラックアウトガール

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
29 / 70
6th sense

6th sense 3

しおりを挟む
 如月摩耶にラブレターを手に入れさせて数日。
ようやく航平くんに渡すチャンスがやってきた。
部活が終わった航平くんは、今日は和馬くんとも合流せず、ひとりで帰り支度をはじめたのだ。

これを待ってたんだ!
こうしてひとりになる時を!!

このあと航平くんは正門から出て、途中のコンビニに寄ってお好み棒と唐揚げ棒塩味を買い、私鉄の駅から電車で帰宅するはずだ。
航平くんにラブレター渡すには、正門の前で待ち伏せしてればいい!

教室で待機している如月の元に、あたしは一瞬でワープし、そのことを告げ、再び航平くんの元に戻って、彼のあとをつけた。
こういうときは霊って便利。自由に瞬間移動できるなんて。
この能力ちからは生きてるときに欲しかったなw

ところが航平くんはこの日に限って、体育館を出ると、駅とは反対方向の裏門の方に向かった。
えっ?
まずい!
とりあえず如月に、予定変更を伝えなきゃ!
それでも正門にいる如月が、航平くんに追いつくのは大変かもしれない。
今日は失敗だったかぁ。
しかし航平くんは、裏門を出てすぐの小さな橋のところまで来ると、足を止めた。
欄干にもたれかかって小川の流れを見たり、小石を拾って川に投げたりして、時間を潰してる。
これならトロい如月でも、航平くんに追いつけるかもしれない!

「あ、あの… 浅井さん」

しばらくすると、裏門から如月が姿を現した。
こちらへ急ぎ足で駆け寄り、躊躇ためらいながらも航平くんに呼びかけた。
ずっと走ってきたらしく、『はぁはぁ』と肩で息をして、頬がほんのりピンクに上気してる。
長い栗色の猫っ毛が、汗で首筋に張りついてるところが、なんだかエロっぽい。
こうして見ると、如月摩耶ってほんとに儚げな美少女で、女のあたしでさえドキッとしちゃう。

超絶美少女の如月にいきなり声をかけられ、驚いた航平くんは、慌てて手に持ってた小石を投げ捨てて、直立不動の姿勢をとった。

「え? な、なに? 如月さん」
「あの… お渡ししたいものがあって」
「渡したいもの?」
「はい…」
「な、なにを?」
「実は… 酒井さんから、頼まれていて…」
「酒井さんからっ?!」
「…は、はい」

目を丸くして驚いた航平くんは、穴の開くほど如月の顔を見つめ、次の言葉を待った。
なのに如月はモジモジしたまま、手紙を渡すことができない。

<ったく、なにやってんのっ?!
如月さん!
勇気出しなさいよっ!>

思わずハッパをかける。
その声にビクッとなった如月は、おずおずと後ろ手に抱えてた茶封筒を、航平くんの前に差し出し、まるで自分のラブレターを渡すかのように、はにかみながら言った。

「あの… このなかのものを、読んで下さい」
「これは、、、?」

訝しそうに航平くんは茶封筒を受け取り、しげしげと見つめてた。
如月はなにも言わない。

「如月さん。これ、、、 今見た方がいい?」
「え? い、いいえ。
帰ってからおひとりのときにでも、ごゆっくり…」
「そう、なんだ。じゃあ…」

航平くんは封筒をバッグにしまおうとした、、、
そのときだった。

「航平くん?!」

あたしたちの背後から、女の子の声がした。
振り向くと、そこには安藤未來が立ってて、疑惑の眼差しで航平くんと如月摩耶を交互に見てる。
もしかして、、、
航平くん、ここでミクと、待ち合わせしてたの?!

「如月さん、航平くんになんの用?
なんなの? その封筒!
いったいなにを渡したの?」

裏門から小走りにやってきたミクは、ふたりの間に割って入ると、威嚇するように如月を睨んで矢継ぎ早に訊いた。勢いに呑まれた如月は、肩を震わせながら泣き出しそうな顔をしてる。

「あぁ。安藤さん。
これ、『酒井さんからの頼まれもの』だって」
「あずさからの?!
なんで如月さんがあずさから頼まれごとするのよ。友達でもないのに。
ちょっとそれ、見せてよ!」
「あっ。それは…」

如月が遮るよりも早く、ミクは航平くんの持ってた茶封筒を奪い取ると、無造作に手を突っ込んだ。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

峽(はざま)

黒蝶
ライト文芸
私には、誰にも言えない秘密がある。 どうなるのかなんて分からない。 そんな私の日常の物語。 ※病気に偏見をお持ちの方は読まないでください。 ※症状はあくまで一例です。 ※『*』の印がある話は若干の吸血表現があります。 ※読んだあと体調が悪くなられても責任は負いかねます。 自己責任でお読みください。

処理中です...