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6th sense
6th sense 2
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大きなため息をついて、如月は肩を落とした。
「このままだと酒井さんは… 闇に堕ちてしまいます」
<え? なにそれ?>
「人を呪い、怒り、恨むことを続ければ、あなた自身が怨霊となって、この世とあの世の狭間を彷徨い続けることになる」
<それでもいいっ!>
彼女の言葉に思わず憤りながら、あたしは続けた。
<じゃあ如月さんは、ミクに航平くんを取られるのを、黙って見てろっていうの?
そんなの、地獄に堕ちるより辛いに決まってる!
あんたには、恋する乙女の気持ちが全然わかってないっ!>
「…」
<あたしはただ、自分に正直なだけ!
あたしは航平くんに、この想いを知ってほしいだけなのっ>
「それはもう、伝わったのではないですか?」
<ミクの口からね。
そんなんじゃ、イヤっ!
あたしは自分自身の言葉で、航平くんに愛を伝えたいの!
だけどこのままじゃ、航平くんにあたしの声は届かない。
でもあたし、ラブレター書いたの!
それを航平くんに渡してくれれば、気持ちを伝えること、できるっ!>
「あのラブレターは…」
<今は持ってないけど、あたしの部屋にちゃんとあるから!
如月さんはそれを取ってきて。
そして航平くんに、『あたしから』だって言って、渡してっ!>
「それは…」
<やってくれるよね?!
如月さんはあたしの力になってくれるんだよね?!>
「あのお手紙は事故で汚れてしまって。だから渡したくないと、酒井さんが…」
<いいのっ! あの手紙はやっぱり、航平くんに渡さなきゃいけないのっ!!>
「だいいちお手紙はもう、お母さまが燃やすと…」
<なにそれ?
いい加減なこと言わないでっ!>
「酒井さん?!」
<あたしに協力したくないからって、デタラメ言わないでよ!
あんたもミクの味方なのねっ!
ミクも萌香も、航平くんも如月も、みんなして、あたしのこと騙して裏切って、、、
許せない、、、
みんな大っ嫌い!!>
カッと頭に血が昇った。
如月の部屋が歪んで消えていき、目の前が真っ暗になって、ドロドロとした汚らしい感情が沸き上がってくる。
その感情はグロい塊になり、腐臭を放ちながら孵化をはじめた。
あとからあとから、得体の知れない怪物が、塊から這い出してくる。
なんなのこれ?!
怖い!
怪物どもは舌なめずりをして、よだれを垂らしながら、あたし目がけて突き進んできた。
いやっ!
喰われるっ!!
「酒井さんっ!」
珍しく如月が大声を上げた。
その声であたしは地の底から引き戻され、怪物は姿を消した。
「わかりました!
わたしが責任持って、あなたの気持ちをお伝えします。
ラブレターも必ずお渡しします。
だから… だから」
そこまで言うと、如月は口元を押さえて嗚咽を漏らし、涙をこぼした。
探し物は簡単に見つかった。
ラブレターはまだ燃やされず、茶封筒に入れられたまま、あたしの机の引き出しのいちばん奥に、封印するようにしまわれてた。
どうしてすぐに場所がわかったかというと、その手紙からあたし自身の執念が発せられてたから。
そのおかげで、まるでGPSを見てるように、簡単に手紙の場所がわかったのだ。
人の情念のすごさに、改めてびっくり。
家の鍵の隠し場所はわかってるし、だれもいない時間帯もわかる。
無断でうちに入ることに如月はびびってたけど、強引にはっぱかけて、なんとかラブレターの入った封筒を取ってこらせることはできた。
<じゃあそれ、なるべく早く渡してちょうだい。あたし、ずっと航平くんにくっ憑いてて、チャンスが来たら教えるから>
「…」
<ちゃんと渡してくれるんでしょ?>
「もちろんです」
<『助ける』って言ったんだから、最後までちゃんと手伝ってよね>
「はい…」
両手で封筒を抱えて、如月は浮かぬ顔で答える。
きっと彼女には、わかってたのかもしれない。
このラブレターがあとで、大変な災いを呼ぶことになると。
つづく
「このままだと酒井さんは… 闇に堕ちてしまいます」
<え? なにそれ?>
「人を呪い、怒り、恨むことを続ければ、あなた自身が怨霊となって、この世とあの世の狭間を彷徨い続けることになる」
<それでもいいっ!>
彼女の言葉に思わず憤りながら、あたしは続けた。
<じゃあ如月さんは、ミクに航平くんを取られるのを、黙って見てろっていうの?
そんなの、地獄に堕ちるより辛いに決まってる!
あんたには、恋する乙女の気持ちが全然わかってないっ!>
「…」
<あたしはただ、自分に正直なだけ!
あたしは航平くんに、この想いを知ってほしいだけなのっ>
「それはもう、伝わったのではないですか?」
<ミクの口からね。
そんなんじゃ、イヤっ!
あたしは自分自身の言葉で、航平くんに愛を伝えたいの!
だけどこのままじゃ、航平くんにあたしの声は届かない。
でもあたし、ラブレター書いたの!
それを航平くんに渡してくれれば、気持ちを伝えること、できるっ!>
「あのラブレターは…」
<今は持ってないけど、あたしの部屋にちゃんとあるから!
如月さんはそれを取ってきて。
そして航平くんに、『あたしから』だって言って、渡してっ!>
「それは…」
<やってくれるよね?!
如月さんはあたしの力になってくれるんだよね?!>
「あのお手紙は事故で汚れてしまって。だから渡したくないと、酒井さんが…」
<いいのっ! あの手紙はやっぱり、航平くんに渡さなきゃいけないのっ!!>
「だいいちお手紙はもう、お母さまが燃やすと…」
<なにそれ?
いい加減なこと言わないでっ!>
「酒井さん?!」
<あたしに協力したくないからって、デタラメ言わないでよ!
あんたもミクの味方なのねっ!
ミクも萌香も、航平くんも如月も、みんなして、あたしのこと騙して裏切って、、、
許せない、、、
みんな大っ嫌い!!>
カッと頭に血が昇った。
如月の部屋が歪んで消えていき、目の前が真っ暗になって、ドロドロとした汚らしい感情が沸き上がってくる。
その感情はグロい塊になり、腐臭を放ちながら孵化をはじめた。
あとからあとから、得体の知れない怪物が、塊から這い出してくる。
なんなのこれ?!
怖い!
怪物どもは舌なめずりをして、よだれを垂らしながら、あたし目がけて突き進んできた。
いやっ!
喰われるっ!!
「酒井さんっ!」
珍しく如月が大声を上げた。
その声であたしは地の底から引き戻され、怪物は姿を消した。
「わかりました!
わたしが責任持って、あなたの気持ちをお伝えします。
ラブレターも必ずお渡しします。
だから… だから」
そこまで言うと、如月は口元を押さえて嗚咽を漏らし、涙をこぼした。
探し物は簡単に見つかった。
ラブレターはまだ燃やされず、茶封筒に入れられたまま、あたしの机の引き出しのいちばん奥に、封印するようにしまわれてた。
どうしてすぐに場所がわかったかというと、その手紙からあたし自身の執念が発せられてたから。
そのおかげで、まるでGPSを見てるように、簡単に手紙の場所がわかったのだ。
人の情念のすごさに、改めてびっくり。
家の鍵の隠し場所はわかってるし、だれもいない時間帯もわかる。
無断でうちに入ることに如月はびびってたけど、強引にはっぱかけて、なんとかラブレターの入った封筒を取ってこらせることはできた。
<じゃあそれ、なるべく早く渡してちょうだい。あたし、ずっと航平くんにくっ憑いてて、チャンスが来たら教えるから>
「…」
<ちゃんと渡してくれるんでしょ?>
「もちろんです」
<『助ける』って言ったんだから、最後までちゃんと手伝ってよね>
「はい…」
両手で封筒を抱えて、如月は浮かぬ顔で答える。
きっと彼女には、わかってたのかもしれない。
このラブレターがあとで、大変な災いを呼ぶことになると。
つづく
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