ブラックアウトガール

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
21 / 70
4th sense

4th sense 6

しおりを挟む
 そうやって、航平くんの側にずっときまとって、しばらく経った頃だった。
いつもなら、下校時間ギリギリまでバトミントンの練習を一生懸命やってる航平くんが、その日は部活もそこそこに切り上げて、ひとりで帰ってしまった。
帰り道も急ぎ足で、お決まりのコンビニに寄ることもなく、まっすぐ家を目指してる。
玄関に入ると、靴を脱ぐのももどかしいように、二階の自分の部屋に駆け込んだ航平くんは、制服のブレザーを脱ぎながら、パソコンの電源を入れた。

モニターを見ながら、熱心になにかをカチカチ、クリックしてる。

『なに見てるんだろう?』

そう思いながら、あたしは隣から画面を覗き込んだ。

えっ?
これって、、、

画面いっぱいに映し出されてるのは、あたしの写真だった。
これ、、、
見覚えがある。

確か、去年の夏の宿泊研修で、海に行ったときの写真。
自由時間のときになぎさで砂遊びをしてるとこを、カメラマンさんが撮ってくれたものだ。
萌香が砂浜に寝転んでて、あたしとミクが砂をかけて埋めてるやつ。
四つん這いになってキャイキャイ言ってるところをいきなり撮られたから、ちゃんとポーズ作るヒマもなくて、あたしもミクも妙にセクシーな格好で写ってしまったという、みんなの間で盛り上がった衝撃お色気写真だ。
なんでそれを、航平くんが持ってるの?

ディスプレイに表示されてた画像を、航平くんはパソコンのツールを使って、あたしだけをトリミングし、A4の紙いっぱいにプリントアウトした。
水に濡れたスクール水着と砂にまみれた太腿が、テカテカ光ってて、すごくなまめかしい。
四つん這いでこっち向いてるせいで、胸の谷間がくっきり写ってて、くびれた腰と高くあげたおしりのラインが、男子がよく見てる雑誌のグラビアみたいに、エロっぽい。

こんなセクシーポーズを大きくプリントされるなんて、、、
恥ずかしいよぉ~。

想いに耽るように、航平くんはしばらくプリントを見つめていたが、目を閉じるとゆっくりと顔を近づけ、紙の上のあたしにキスをした。

え~~~~~っ!!!

せつない、、、
切なすぎるよ!

あたしだって、航平くんとキスしたいよ。
あたしも実は、このときの航平くんの写真、持ってるんだ。
販売用に張り出されてた写真のなかで、いちばんカッコよく写ってた、上半身はだかの航平くんの写真。
もちろん自分じゃ買えるわけないから、ミクから男子に頼んで買ってもらって、アルバムに入れてある。
航平くんも誰かに根回しして、この写真ゲットしたんだろな。

胸が熱い。
涙が出そう。
今なら航平くんに、この想いが届きそう。

<航平くん!>

あたしは力いっぱい叫んでみた。
それに気づかず、航平くんは写真に見入ったまま。

<航平くんっ!!!!>

思いっきり大きな声で、あたしは航平くんの名前を呼んだ。

「…え?」

小さくつぶやき、航平くんは写真から目を離し、周囲を見渡した。

えっ??

驚いたのはこっちの方だ!
もしかして、あたしの声が航平くんに届いたの?
そうだとしたら、、、

<航平くん航平くん!!
あたしはここ!
酒井あずさはここにいるわ!!
航平くんのすぐ隣にいるのよっ!!!>

あたしは必死に訴えた。
航平くんはまだ、訝しげに周囲を見回してる。
わたしのことを想ってくれてる今、ふたりの気持ちがシンクロしてるに違いない。
今、この瞬間なら、航平くんとコンタクトできるかもしれない!

航平くんはしばらく、キョロキョロと周りを気にしていた。
しかし、しばらくすると机の本棚からクリアファイルを取り出し、プリントを仕舞って、気を取り直すように教科書を広げた。

、、、もう。
あたしの声は聞こえないのか、、、、、、、、
残念。

でも、今日はさらに希望が見えてきた。
とりあえずあたしは、その光に向かって、突き進むしかない。
もっと想いが昂じれば、航平くんはきっと、あたしに気づいてくれるはず!
それを信じて、あたしはいつでも航平くんの側にピッタリ、き添ってるしかないんだ!!

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶
大衆娯楽
女性にとっては普通の毎日のことでも、男性にとっては知らないことばかりかも。 そんな世界を覗いてみてください。

カメラとわたしと自衛官〜不憫なんて言わせない!カメラ女子と自衛官の馴れ初め話〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
「かっこいい……あのボディ。かわいい……そのお尻」ため息を漏らすその視線の先に何がある? たまたま居合わせたイベント会場で空を仰ぐと、白い煙がお花を描いた。見上げた全員が歓声をあげる。それが自衛隊のイベントとは知らず、気づくとサイン会に巻き込まれて並んでいた。  ひょんな事がきっかけで、カメラにはまる女の子がファインダー越しに見つけた世界。なぜかいつもそこに貴方がいた。恋愛に鈍感でも被写体には敏感です。恋愛よりもカメラが大事! そんか彼女を気長に粘り強く自分のテリトリーに引き込みたい陸上自衛隊員との恋のお話? ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。 ※もちろん、フィクションです。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

彼女は処女じゃなかった

かめのこたろう
現代文学
ああああ

柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」 高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。 理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、 青春なんていらない。 瑞希はそう思っていた。 部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。 それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。 その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。 ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。

処理中です...