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4th sense
4th sense 3
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<ね。教えてよ!
『想いがパワーアップすれば、航平くんと話せる』とかだったら、あたし頑張ってみるから!>
「それはあまり、お薦めできません」
<え?>
「リスクが… 高すぎます」
<なんで?! どんなリスクがあるってのよ?>
問い詰めるあたしに、『ふぅ』とため息つきながらうつむいた如月は、おもむろに顔を上げると、悲しげに言った。
「確かに、想いが昂じたとき、霊でも物理的な影響を与えることができます。
しかし、そのためにはますます、現世に執着しなくてはなりません。
それは、来世に向かわなければならない霊にとっては、余計なしがらみでしかないのです。
それにその、『パワーアップした想い』というのは、得てして、恨みや憎しみに転じやすいのです」
<恨みや憎しみに?>
「善の感情は脆いものです。だけど負の感情は、根深く、強大な力を持っています。
人は簡単に、闇に支配され、煉獄へと堕ちてしまう…
それは、霊でも同じです」
<、、、>
「酒井さん。辛いでしょうけど、過去に引きずられないで下さい。
この世とあの世の境目で苦しまないためにも、もう浅井さんのことは、諦めて下さい」
<、、、諦められるわけ、ないじゃん!!>
声を荒げて、あたしは言った。
<あんたにはなにもわかんないわよ!
あたしは2年間も、航平くんのことが好きだったんだから!
ずっとずっと航平くんのことだけ見てて、ラブレターまで書いて。
航平くんの気持ちもわかって、これからだってときに、住む世界が違っちゃって、、、
その辛さがあんたにわかる?!
諦めるなんて、無理!
航平くんに認めてもらうまで、あたしはなんでもするからっ!!>
「酒井さ…」
あたしを引き止めようと手を差し出した如月の姿が、ふっと消えた。
部屋もなくなって、あたしは真っ黒な空間を落ちていく。
いや、、、
彼女が消えたんじゃない。
どうやらあたしは、またテレポートしたらしい、、、
気がつくとあたしは、教室にいた。
誰もいない仄暗い教室の自分の席に、あたしはポツンと座ってた。
窓の外に目をやると、血のように真っ赤な夕陽が、ビルの谷間から最後の残光を放ってる。
いけない!
もう下校の時間だ!
そろそろ航平くんも部活を終えて、家に帰る支度をはじめる頃。
早く会いにいかなきゃ!!
慌ててあたしは教室を飛び出し、階段を駆け下りると、校庭の隅の体育館に走っていった。
航平くんは、いた。
ちょうど部活を終えたらしく、体育館から出てきたところだった。
ラケットの入った大きなスポーツバッグを肩に抱えて、同級生二人とこちらに歩いてくる。
<航平くん!>
思わず声をかけてしまった。
だけど航平くんは、同級生と話しながらあたしをスルーして、隣を通り過ぎていく。
やっぱり航平くんには、あたしの姿が見えないし、声も聞こえないんだ。
いったいどうしたらいいんだろ、、、
途方に暮れながら、あたしは航平くんのあとをずっとついて歩いた。
「腹減ったな~。コンビニ寄ってこうぜ」
「航平、おまえ今日もいつもの、アレか?」
「まあな」
「よく飽きね~よな」
そう言いながら、三人は駅の近くのコンビニに入っていく。
あたしもそのあとに続いた。
つづく
『想いがパワーアップすれば、航平くんと話せる』とかだったら、あたし頑張ってみるから!>
「それはあまり、お薦めできません」
<え?>
「リスクが… 高すぎます」
<なんで?! どんなリスクがあるってのよ?>
問い詰めるあたしに、『ふぅ』とため息つきながらうつむいた如月は、おもむろに顔を上げると、悲しげに言った。
「確かに、想いが昂じたとき、霊でも物理的な影響を与えることができます。
しかし、そのためにはますます、現世に執着しなくてはなりません。
それは、来世に向かわなければならない霊にとっては、余計なしがらみでしかないのです。
それにその、『パワーアップした想い』というのは、得てして、恨みや憎しみに転じやすいのです」
<恨みや憎しみに?>
「善の感情は脆いものです。だけど負の感情は、根深く、強大な力を持っています。
人は簡単に、闇に支配され、煉獄へと堕ちてしまう…
それは、霊でも同じです」
<、、、>
「酒井さん。辛いでしょうけど、過去に引きずられないで下さい。
この世とあの世の境目で苦しまないためにも、もう浅井さんのことは、諦めて下さい」
<、、、諦められるわけ、ないじゃん!!>
声を荒げて、あたしは言った。
<あんたにはなにもわかんないわよ!
あたしは2年間も、航平くんのことが好きだったんだから!
ずっとずっと航平くんのことだけ見てて、ラブレターまで書いて。
航平くんの気持ちもわかって、これからだってときに、住む世界が違っちゃって、、、
その辛さがあんたにわかる?!
諦めるなんて、無理!
航平くんに認めてもらうまで、あたしはなんでもするからっ!!>
「酒井さ…」
あたしを引き止めようと手を差し出した如月の姿が、ふっと消えた。
部屋もなくなって、あたしは真っ黒な空間を落ちていく。
いや、、、
彼女が消えたんじゃない。
どうやらあたしは、またテレポートしたらしい、、、
気がつくとあたしは、教室にいた。
誰もいない仄暗い教室の自分の席に、あたしはポツンと座ってた。
窓の外に目をやると、血のように真っ赤な夕陽が、ビルの谷間から最後の残光を放ってる。
いけない!
もう下校の時間だ!
そろそろ航平くんも部活を終えて、家に帰る支度をはじめる頃。
早く会いにいかなきゃ!!
慌ててあたしは教室を飛び出し、階段を駆け下りると、校庭の隅の体育館に走っていった。
航平くんは、いた。
ちょうど部活を終えたらしく、体育館から出てきたところだった。
ラケットの入った大きなスポーツバッグを肩に抱えて、同級生二人とこちらに歩いてくる。
<航平くん!>
思わず声をかけてしまった。
だけど航平くんは、同級生と話しながらあたしをスルーして、隣を通り過ぎていく。
やっぱり航平くんには、あたしの姿が見えないし、声も聞こえないんだ。
いったいどうしたらいいんだろ、、、
途方に暮れながら、あたしは航平くんのあとをずっとついて歩いた。
「腹減ったな~。コンビニ寄ってこうぜ」
「航平、おまえ今日もいつもの、アレか?」
「まあな」
「よく飽きね~よな」
そう言いながら、三人は駅の近くのコンビニに入っていく。
あたしもそのあとに続いた。
つづく
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