ブラックアウトガール

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
17 / 70
4th sense

4th sense 2

しおりを挟む
「あぁ… 酒井さんですか。ありがとうございます」

なにかから解き放たれたかのようにかのように、ほっと肩を撫で下ろした如月は、弱々しい笑顔をあたしに向けた。

<いっ、今のはいったいなんだったの?>
「あれは、、 下級霊や動物霊、成仏できない魂たちです」
<霊や魂? それがなんであんなにたくさん、、、>
「わたし、霊に憑かれやすい体質なのです」
<憑かれやすい?>
「はい。自分が見えるからかもしれませんけど、ああいった下級霊や行き場のない彷徨う魂を、わたしは引き寄せてしまうんです」
<引き寄せるって、、、 あんなにたくさん纏わり憑かれて、怖いとか気持ち悪いとか、、、 なんともないの?>
「もう、慣れました」
<慣れたって、、、
如月さんって、いつからあんなのが見えるようになったの?>
「物心ついた頃から」
<怖くなかった?>
「はじめのうちは恐ろしかったです。
昼でも夜でも、霊たちがわたしの周りを彷徨っていて…
だれに言っても信じてもらえず、それどころか、気味の悪いことを言う、変な子供と思われて。
ずっと孤独でした。
だけどそのうち、気がついたのです」
<気がついた?>
「霊たちもみな、孤独だということに」
<孤独、、、>
「ええ… 霊たちはみなひとりぼっちで、だれとも接することができなくて、寂しいのだと思います。
だから、自分のことを認めてもらえる人がいると、嬉しくなるのです。
それで、彼らが見えるわたしが頼られて、纏わり憑かれてしまう…」
<ええっ? そんなのウザいだけじゃん>
「そう思うこともありましたが… わたし自身がひとりぼっちだから、霊のおかげで慰められることもあるのです」
<…>
「大丈夫です。彼らは特に悪さをしてくるわけではないですから。ただ…」
<ただ?>
「霊障というか… あまり纏わり憑かれると、頭痛や吐き気がひどくなって、めまいがすることがあります。
そういうときは気持ちを鎮めて、霊たちに早く帰ってくれるように呼びかけるのですが、みんなわがままで、なかなか言うことを聞いてくれなくて…
でも、今夜は酒井さんが追い払ってくれて、助かりました」
<いや、あたしは別に、、、>

『特になにかしたわけじゃないんだけど、、、』
と言いかけて、はっと気づく。

<もっ、もしかして、、、 あたしも、如月さんに憑いてる霊のひとりってわけ??>

なんか、やだ。

生きてた頃のあたしって、いつもみんなに囲まれて、ワイワイ賑やかで、ひとりぼっちなんかじゃなかったのに。
今のあたしは話す相手もいなくて、如月に取り憑くしかないなんて、、、

なんか、みじめ。

だけど如月は、『安心して』とでも言いたげな優しい眼差しであたしを見つめ、かぶりを振った。

「酒井さんはわたしの同級生です。
素敵な方だなと、あなたのことをいつもまぶしく見ていました。
あなたが死んでしまって、わたしは本当に悲しく思いました。
だから、こうして今、あなたとお話できることが、なにより嬉しいのです。
あなたがこの世の執着を断ち切って、無事に来世に旅立てるまで、わたしは力をお貸しします」

如月摩耶!
なんていいヤツなんだ~!!
あんな変な霊どもに纏わり憑かれて、毎日苦労してるっていうのに。
そんなことも知らずに、『変人』とか『ネクラ』とか『頭おかしい』とか、みんなで陰口叩いてたなんて、、、
あたしってば、ほんっと無知でバカ。

「それで。こんな夜中に、なんのご用です?」

如月は訝しげに訊いた。
そうだった。
如月に訊きたい事があったから、ここに来たんだった。
彼女の真ん前に座り込み、あたしは真剣な瞳で尋ねた。

<如月さん。教えてほしいの!
こないだあなた、言ったよね?!
『恨みや憎しみを持った霊は、場合によっては実体化して、人間に害をなす』って>
「はい」
<ってことは、霊でも人間の世界に干渉できるってこと?
想いが昂じればそのパワーで、ふつうの人間にも見えたり触ったりできるようになるってことなの?>
「それは…」

戸惑うように、如月は口を噤んだ。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

ゼンタイリスト! 全身タイツなひとびと

ジャン・幸田
ライト文芸
ある日、繁華街に影人間に遭遇した! それに興味を持った好奇心旺盛な大学生・誠弥が出会ったのはゼンタイ好きの連中だった。 それを興味本位と学術的な興味で追っかけた彼は驚異の世界に遭遇する! なんとかして彼ら彼女らの心情を理解しようとして、振り回される事になった誠弥は文章を纏められることができるのだろうか?  

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...