13 / 70
3rd sense
3rd sense 6
しおりを挟む
、、、そう。
あたしの恋はもう、叶ったんだった。
航平くんはあたしのこと、好きだった。
あたしと同じくらい、航平くんはあたしを想ってくれてた。
家に行ったとき、あたしは確かにそれを感じたんだった。
すっごく嬉しい。
こんなに嬉しいことって、ない。
だけど、どんなにふたりが両想いになったとしても、あたしと航平くんは触れ合うことも、話をすることもできない。
もう航平くんが、あたしの気持ちを知ることはできない。
あたしがどんなに航平くんが好きだったかを。
中学3年のときから2年間。
ずっと航平くんが好きで好きで、夕べは遅くまでラブレター書いて、航平くんにこの気持ちを伝えたかったんだ。
そうだ!
今日こそはラブレター、渡さなきゃ!
<如月さん! あなたのこと、信じれる?!>
急き込みながら、あたしは如月の手を掴んで訊いた。
<親友の萌香もミクも、もうあたしのことわかってくれないし、今のあたしにはあなたしか頼れる人はいないのよ。力になってくれる?>
「…もちろんです」
期待に応えるかのように、如月はあたしの手をぎゅっと握り返した。
もちろんあたしたちは触れ合うことはできない。
だけど、彼女の気持ちが直接、あたしの魂に触れてきたのだ。
<じゃあ聞いてくれる? 如月さんにお願いしたいことがあるの>
「なんでしょう?」
<その、、、ラ、ラ、ラブ、、、レ、ターを、、、>
「ラブレター?」
<そう、それ。それを渡してほしいんだけど、、、 航平くんに>
「酒井さんの書いたラブレターを、浅井さんに渡せばいいのですね」
<もうっ。あんまりはっきり言うと照れるじゃない! まあ、そういうこと>
「わかりました。そのお手紙はどこに?」
<あたしの内ポケットのなか、、、>
そう言いながらあたしは胸の内ポケットに手を入れた。
、、、ない!
ポケットに入れてるはずのラブレターがない!
<あれぇ、、 ここにあるはずなのに、、、>
うろたえるあたしを見て、如月はハッと気づく。
「多分、事故当時、酒井さんが着ていた制服に、入っているのだと思います」
<、、、そっか。あたし今は幽霊だし、今着てるこの制服も実体がないのか。ほんとの制服は家にあるってことね>
「…では、酒井さんのおうちに伺っていいですか? お手紙を取りに」
<そうだね! じゃあついてきて、あたしん家はすぐ近くよ!>
そう言って彼女の前に立ち、あたしは歩きはじめた。
よかった。
なんか、希望が見えてきた。
ちゃんと足があったとしたら、今のあたしは軽やかなステップを踏んでたに違いない。
“ピンポーン”
如月があたしの家のベルを鳴らした。
インターフォンの向こうから、母の声が聞こえてきた。
『はい』
「あの… 酒井さんのクラスの如月と言います」
『…ちょっと待って下さい』
しばらくして、ドアの鍵をガチャガチャと開ける音が聞こえ、母が顔を出した。
どれだけ泣いたんだろうか?
母は顔色が悪く、目の下に隈ができてて、心なしかやせてるように見えた。
おずおずと、如月は会釈する。
「はじめまして。こんにちは」
「如月、さん? あずさの同級生?! いったいなんのご用?」
不審そうな顔で、母は如月を見た。
そりゃそうだ。
あたしは一度も、如月をうちに連れてきたことなんてないし、話題にしたことすらない。
「あの…」
如月はなかなか切り出せないでいたが、ようやく意を決して言った。
「酒井さんの制服の内ポケットに、お手紙が入っていたと思うのですけど…
それを見せていただけませんか?」
「…」
母の顔がみるみる引きつっていった。
まるで恐ろしいものを見るかのように、如月をまじまじと見つめてる。
つづく
あたしの恋はもう、叶ったんだった。
航平くんはあたしのこと、好きだった。
あたしと同じくらい、航平くんはあたしを想ってくれてた。
家に行ったとき、あたしは確かにそれを感じたんだった。
すっごく嬉しい。
こんなに嬉しいことって、ない。
だけど、どんなにふたりが両想いになったとしても、あたしと航平くんは触れ合うことも、話をすることもできない。
もう航平くんが、あたしの気持ちを知ることはできない。
あたしがどんなに航平くんが好きだったかを。
中学3年のときから2年間。
ずっと航平くんが好きで好きで、夕べは遅くまでラブレター書いて、航平くんにこの気持ちを伝えたかったんだ。
そうだ!
今日こそはラブレター、渡さなきゃ!
<如月さん! あなたのこと、信じれる?!>
急き込みながら、あたしは如月の手を掴んで訊いた。
<親友の萌香もミクも、もうあたしのことわかってくれないし、今のあたしにはあなたしか頼れる人はいないのよ。力になってくれる?>
「…もちろんです」
期待に応えるかのように、如月はあたしの手をぎゅっと握り返した。
もちろんあたしたちは触れ合うことはできない。
だけど、彼女の気持ちが直接、あたしの魂に触れてきたのだ。
<じゃあ聞いてくれる? 如月さんにお願いしたいことがあるの>
「なんでしょう?」
<その、、、ラ、ラ、ラブ、、、レ、ターを、、、>
「ラブレター?」
<そう、それ。それを渡してほしいんだけど、、、 航平くんに>
「酒井さんの書いたラブレターを、浅井さんに渡せばいいのですね」
<もうっ。あんまりはっきり言うと照れるじゃない! まあ、そういうこと>
「わかりました。そのお手紙はどこに?」
<あたしの内ポケットのなか、、、>
そう言いながらあたしは胸の内ポケットに手を入れた。
、、、ない!
ポケットに入れてるはずのラブレターがない!
<あれぇ、、 ここにあるはずなのに、、、>
うろたえるあたしを見て、如月はハッと気づく。
「多分、事故当時、酒井さんが着ていた制服に、入っているのだと思います」
<、、、そっか。あたし今は幽霊だし、今着てるこの制服も実体がないのか。ほんとの制服は家にあるってことね>
「…では、酒井さんのおうちに伺っていいですか? お手紙を取りに」
<そうだね! じゃあついてきて、あたしん家はすぐ近くよ!>
そう言って彼女の前に立ち、あたしは歩きはじめた。
よかった。
なんか、希望が見えてきた。
ちゃんと足があったとしたら、今のあたしは軽やかなステップを踏んでたに違いない。
“ピンポーン”
如月があたしの家のベルを鳴らした。
インターフォンの向こうから、母の声が聞こえてきた。
『はい』
「あの… 酒井さんのクラスの如月と言います」
『…ちょっと待って下さい』
しばらくして、ドアの鍵をガチャガチャと開ける音が聞こえ、母が顔を出した。
どれだけ泣いたんだろうか?
母は顔色が悪く、目の下に隈ができてて、心なしかやせてるように見えた。
おずおずと、如月は会釈する。
「はじめまして。こんにちは」
「如月、さん? あずさの同級生?! いったいなんのご用?」
不審そうな顔で、母は如月を見た。
そりゃそうだ。
あたしは一度も、如月をうちに連れてきたことなんてないし、話題にしたことすらない。
「あの…」
如月はなかなか切り出せないでいたが、ようやく意を決して言った。
「酒井さんの制服の内ポケットに、お手紙が入っていたと思うのですけど…
それを見せていただけませんか?」
「…」
母の顔がみるみる引きつっていった。
まるで恐ろしいものを見るかのように、如月をまじまじと見つめてる。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる