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3rd sense
3rd sense 4
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如月に連れていかれたお通夜の会場で、棺に横たわって目を閉じてるあたしを、見た様な気がする。
お父さんやお母さんが泣いてて、、、
兄も両手をギュッと握りしめて肩を怒らせ、うつむいて嗚咽を漏らしてたっけ。
航平くんはあたしに焼香してくれて、そのあとあたしはフラフラと、家までついてったんだった。
あれは、夢なんかじゃなかったの?
ってことは、、、
<じゃあ、ここにいるあたしは、幽霊ってわけ?>
彼女は黙ってうなずく。
そんな大事なこと、どうして忘れてたんだろ?!
「人は死んでしまったときから、もう変化することはないのです」
あたしの気持ちを察しているかのように、如月は語りだした。
「死ぬということはつまり、魂の不活性化。
例えると、種のような状態になることなのです」
<種?>
「生命として発芽するのを、じっと待っているだけ。
新しくなにかを経験することも、記憶することもほとんどできない。媒体となるからだがないのだから、それは当たり前なのですけど…」
<だけどあたし、今この一瞬もいろんなものを見てるじゃない? 考えることだって話すことだってできるし>
「それは、過去の記憶や行動を反芻しているだけ。新たな経験の蓄積とは違うのです」
<、、、>
「酒井さんに昇華しきれない執着がある限り、あなたは永遠に、その想いの中だけを巡ることになる」
<どういうこと?>
「あれを見て下さい」
立ち止まった如月は、向かいの高いビルを指差した。
夕陽に照らされ、血のように真っ赤に染まったビルの屋上に、人影が見える。
ブレザーに短いスカート。
どうやら女子高生のようだ。
屋上のフェンスを乗り越えたその女子高生は、ビルの端につま先で立った。
あっ!!
声を上げるヒマもなかった。
鳥のように両手を広げた彼女は、床を蹴って浮かび上がった。
だけどすぐに、真っ逆さまに地上へと落ちていく。
固いコンクリートの地面にぶつかったそのからだは、グシャリと潰れ、頭からは鮮血が飛び散った。
<きゃ~~~っ!!>
思わず両手で顔を覆い、目をつぶる。
どうして如月は、彼女があそこから飛び降りるのを知ってて、平然と眺めてられるんだろ?!
「酒井さん。ちゃんと見ていて下さい」
震える声で、如月は言う。
おずおずと、あたしは視線をそちらへ向け直し、ありえない光景に目を疑った。
<???>
死んだと思ったその女子高生が、ムックリと起き上がったのだ。
<え? どうして、、、>
「とうの昔に、彼女は死んでいるのです」
<え? でも、、、>
「…ほら」
そう言いながら、如月はビルの方を見る。
女子高生はフラフラした足取りで、ビルのなかに消えていった。
が、しばらくすると、また屋上に姿を現した。
そうして再びフェンスを乗り越えると、彼女はまた地上へ身を投げた。
「…彼女は昨年、あのビルから飛び降りて亡くなっているのです。
ニュースにもなりました」
<、、そういえば>
そのニュースは覚えがある。
いじめが原因で、隣の学校の女子高生が飛び降り自殺したって。
じゃあ、あの子が、、、
「あの人はずっと、ああしてビルから飛び降りることを、繰り返すんです」
悲しそうに、彼女は言った。
<どうして? もう死んでるのに?!>
「もちろん、最初に飛び降りたときに、あの人は亡くなってしまいました。
だけど、『死にたい』『死ななきゃ』という強い気持ちだけがこの世に残り、自分が死んだこともわからず、何度も自死を繰り返しているのです」
<そんな、ひどい、、、>
「残存念思…」
<残存念思?>
「この世に残した執着です。それがある限り、魂はこの世とあの世の境で、苦しむことになる」
<…>
「あの女子高生だけではないです。街中あちこちにこうして、死にきれない… 自分が死んだことをわかっていない霊たちが、彷徨っています。ほら、あそこにも…」
つづく
お父さんやお母さんが泣いてて、、、
兄も両手をギュッと握りしめて肩を怒らせ、うつむいて嗚咽を漏らしてたっけ。
航平くんはあたしに焼香してくれて、そのあとあたしはフラフラと、家までついてったんだった。
あれは、夢なんかじゃなかったの?
ってことは、、、
<じゃあ、ここにいるあたしは、幽霊ってわけ?>
彼女は黙ってうなずく。
そんな大事なこと、どうして忘れてたんだろ?!
「人は死んでしまったときから、もう変化することはないのです」
あたしの気持ちを察しているかのように、如月は語りだした。
「死ぬということはつまり、魂の不活性化。
例えると、種のような状態になることなのです」
<種?>
「生命として発芽するのを、じっと待っているだけ。
新しくなにかを経験することも、記憶することもほとんどできない。媒体となるからだがないのだから、それは当たり前なのですけど…」
<だけどあたし、今この一瞬もいろんなものを見てるじゃない? 考えることだって話すことだってできるし>
「それは、過去の記憶や行動を反芻しているだけ。新たな経験の蓄積とは違うのです」
<、、、>
「酒井さんに昇華しきれない執着がある限り、あなたは永遠に、その想いの中だけを巡ることになる」
<どういうこと?>
「あれを見て下さい」
立ち止まった如月は、向かいの高いビルを指差した。
夕陽に照らされ、血のように真っ赤に染まったビルの屋上に、人影が見える。
ブレザーに短いスカート。
どうやら女子高生のようだ。
屋上のフェンスを乗り越えたその女子高生は、ビルの端につま先で立った。
あっ!!
声を上げるヒマもなかった。
鳥のように両手を広げた彼女は、床を蹴って浮かび上がった。
だけどすぐに、真っ逆さまに地上へと落ちていく。
固いコンクリートの地面にぶつかったそのからだは、グシャリと潰れ、頭からは鮮血が飛び散った。
<きゃ~~~っ!!>
思わず両手で顔を覆い、目をつぶる。
どうして如月は、彼女があそこから飛び降りるのを知ってて、平然と眺めてられるんだろ?!
「酒井さん。ちゃんと見ていて下さい」
震える声で、如月は言う。
おずおずと、あたしは視線をそちらへ向け直し、ありえない光景に目を疑った。
<???>
死んだと思ったその女子高生が、ムックリと起き上がったのだ。
<え? どうして、、、>
「とうの昔に、彼女は死んでいるのです」
<え? でも、、、>
「…ほら」
そう言いながら、如月はビルの方を見る。
女子高生はフラフラした足取りで、ビルのなかに消えていった。
が、しばらくすると、また屋上に姿を現した。
そうして再びフェンスを乗り越えると、彼女はまた地上へ身を投げた。
「…彼女は昨年、あのビルから飛び降りて亡くなっているのです。
ニュースにもなりました」
<、、そういえば>
そのニュースは覚えがある。
いじめが原因で、隣の学校の女子高生が飛び降り自殺したって。
じゃあ、あの子が、、、
「あの人はずっと、ああしてビルから飛び降りることを、繰り返すんです」
悲しそうに、彼女は言った。
<どうして? もう死んでるのに?!>
「もちろん、最初に飛び降りたときに、あの人は亡くなってしまいました。
だけど、『死にたい』『死ななきゃ』という強い気持ちだけがこの世に残り、自分が死んだこともわからず、何度も自死を繰り返しているのです」
<そんな、ひどい、、、>
「残存念思…」
<残存念思?>
「この世に残した執着です。それがある限り、魂はこの世とあの世の境で、苦しむことになる」
<…>
「あの女子高生だけではないです。街中あちこちにこうして、死にきれない… 自分が死んだことをわかっていない霊たちが、彷徨っています。ほら、あそこにも…」
つづく
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