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3rd sense
3rd sense 3
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「あの… 安藤さん」
休み時間になったとき、如月が遠慮がちに、ミクに話しかけてきた。
「え。如月さん?! なに?」
「あの…」
「どうしたの?」
「…」
あたしの席に座ったまま、萌香と話してたミクは、訝しげに如月を振り返った。
躊躇って口ごもる彼女に、ミクは苛ついて急かす。
「なに? 話しがあるなら早く言ってよ」
「あの… その席は… 」
「わたしの席?」
「そこは、さ、酒井さんの席だから…」
「酒井… あずさの?!」
「ええ… だから安藤さんは、別の席に替わった方がいいかと」
「は? なに言ってるの?? あずさはもういないでしょ」
「その… います」
「まさか」
「本当です」
「じゃあなに? あずさはこんな昼間っから幽霊になって、この教室にいるとでもいうの?
「信じてもらえないかもしれませんが、その、『まさか』なんです」
「ばっかじゃない? 人間は死んだら無になって、消滅するのよ。幽霊なんて、いるわけないじゃない!」
「いいえ。酒井さんはまだ、この教室にいます。安藤さんがそこに座っているから、居場所がなくて彷徨ってて…」
「ふざけないでよ!」
「ふざけてません。自分の席を取られたと思って、あずささんはさっきから、あなたの椅子を蹴飛ばしたり、机の上に座り込んで、あなたを睨んだりしているんです」
「え~~っ。こっ、怖いこと言わないでよ!!」
キョロキョロとまわりを見渡し、ミクは怯えたように椅子から飛びのいた。
その隙にあたしは席に着く。
如月GJ!
「やっぱ如月、頭ヘンだわ」
「あずさが教室のなかにいるとか、気味悪~」
「でも、もしほんとに見えてるとしたら、どうする?」
「あずさの席に座ったら、呪われるかもよ」
「え~~~、やだ。幽霊なんているわけないけど…
なんか気持ち悪いから、わたし、席変わる」
あたしの席のまわりでしばらくみんなはザワついてたけど、次の授業がはじまる前に、ミクは遠く離れた空いてる席に移っていった。
その間中、如月は黙ったまま、うつむいてた。
だけど先生がやってきて、みんなの気がそちらに逸れると、秘めやかな声であたしにささやいてきた。
「…酒井さん。今日の放課後、わたしにつきあって下さい」
<え? ダメ。あたし、放課後は用事があるから>
「お願いです。大事な話があるんです」
<しつこいな~。都合悪いって言ってるじゃない>
「…浅井航平さんのことなんです」
<えっ?!>
『浅井航平』
その言葉で、思わずあたしは振り返った。
憂いと悲しみに満ちた真剣なまなざしで、彼女はあたしを見つめ、ポツリと言った。
「…浅井さんと、あなたに関することです」
<わたしたちに関すること? でも、、、>
「…今日は体育館に行かないで、わたしと帰ってくれませんか?」
体育館って、、、
そんなことまで知ってるのか。
、、、気になる。
<う、、 うん。そんなに言うなら、、、>
あたしはうなずいた。
放課後。
如月といっしょに、あたしは校門をくぐった。
夕暮れの街は、霞がかかったようにもやもやとしてて、陰気な色に染まってる。
空が赤黒い。
ふだん見てる夕焼けとは違った、禍々しい色。
<、、、で。話って、なに?>
「…」
あたしの問いには答えず、如月は黙って日の暮れかかった舗道を歩いていた。
<如月さん?!>
「…酒井さんはもう、覚えていないのですね」
彼女は逆に、あたしに訊いてきた。
<え? なにを?>
「あなたはもう、死んでしまったということを」
<えっ? あたしが死んだ?!>
「ええ。もう1週間ほど前、あなたは交通事故で死んでしまったんです」
<そんなの、嘘でしょ>
「先週、あなたも見たはずです。自分自身のお通夜と、自分の死に顔を」
<、、、>
そういえば、、、
つづく
休み時間になったとき、如月が遠慮がちに、ミクに話しかけてきた。
「え。如月さん?! なに?」
「あの…」
「どうしたの?」
「…」
あたしの席に座ったまま、萌香と話してたミクは、訝しげに如月を振り返った。
躊躇って口ごもる彼女に、ミクは苛ついて急かす。
「なに? 話しがあるなら早く言ってよ」
「あの… その席は… 」
「わたしの席?」
「そこは、さ、酒井さんの席だから…」
「酒井… あずさの?!」
「ええ… だから安藤さんは、別の席に替わった方がいいかと」
「は? なに言ってるの?? あずさはもういないでしょ」
「その… います」
「まさか」
「本当です」
「じゃあなに? あずさはこんな昼間っから幽霊になって、この教室にいるとでもいうの?
「信じてもらえないかもしれませんが、その、『まさか』なんです」
「ばっかじゃない? 人間は死んだら無になって、消滅するのよ。幽霊なんて、いるわけないじゃない!」
「いいえ。酒井さんはまだ、この教室にいます。安藤さんがそこに座っているから、居場所がなくて彷徨ってて…」
「ふざけないでよ!」
「ふざけてません。自分の席を取られたと思って、あずささんはさっきから、あなたの椅子を蹴飛ばしたり、机の上に座り込んで、あなたを睨んだりしているんです」
「え~~っ。こっ、怖いこと言わないでよ!!」
キョロキョロとまわりを見渡し、ミクは怯えたように椅子から飛びのいた。
その隙にあたしは席に着く。
如月GJ!
「やっぱ如月、頭ヘンだわ」
「あずさが教室のなかにいるとか、気味悪~」
「でも、もしほんとに見えてるとしたら、どうする?」
「あずさの席に座ったら、呪われるかもよ」
「え~~~、やだ。幽霊なんているわけないけど…
なんか気持ち悪いから、わたし、席変わる」
あたしの席のまわりでしばらくみんなはザワついてたけど、次の授業がはじまる前に、ミクは遠く離れた空いてる席に移っていった。
その間中、如月は黙ったまま、うつむいてた。
だけど先生がやってきて、みんなの気がそちらに逸れると、秘めやかな声であたしにささやいてきた。
「…酒井さん。今日の放課後、わたしにつきあって下さい」
<え? ダメ。あたし、放課後は用事があるから>
「お願いです。大事な話があるんです」
<しつこいな~。都合悪いって言ってるじゃない>
「…浅井航平さんのことなんです」
<えっ?!>
『浅井航平』
その言葉で、思わずあたしは振り返った。
憂いと悲しみに満ちた真剣なまなざしで、彼女はあたしを見つめ、ポツリと言った。
「…浅井さんと、あなたに関することです」
<わたしたちに関すること? でも、、、>
「…今日は体育館に行かないで、わたしと帰ってくれませんか?」
体育館って、、、
そんなことまで知ってるのか。
、、、気になる。
<う、、 うん。そんなに言うなら、、、>
あたしはうなずいた。
放課後。
如月といっしょに、あたしは校門をくぐった。
夕暮れの街は、霞がかかったようにもやもやとしてて、陰気な色に染まってる。
空が赤黒い。
ふだん見てる夕焼けとは違った、禍々しい色。
<、、、で。話って、なに?>
「…」
あたしの問いには答えず、如月は黙って日の暮れかかった舗道を歩いていた。
<如月さん?!>
「…酒井さんはもう、覚えていないのですね」
彼女は逆に、あたしに訊いてきた。
<え? なにを?>
「あなたはもう、死んでしまったということを」
<えっ? あたしが死んだ?!>
「ええ。もう1週間ほど前、あなたは交通事故で死んでしまったんです」
<そんなの、嘘でしょ>
「先週、あなたも見たはずです。自分自身のお通夜と、自分の死に顔を」
<、、、>
そういえば、、、
つづく
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