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3rd sense
3rd sense 2
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、、、そうだった。
航平くんはあたしのこと好きで、ふたりは両想いだったんだ。
なのに、どうしてちゃんと思い出せないんだろ?
魂が震えて感動するくらいの、素敵な出来事だったのに。
制服の胸のあたりに、あたしはそっと手を置いてみる。
昨日、夜更かしして書いたラブレター。
内ポケットにちゃんとしまってある。
もっと早く、あたしに告白する勇気があればよかったのに。
今日こそは、絶対渡そう!
それからも、航平くんの行くあとを、あたしはずっとついて回った。
姿が見えないのって、こういうとき便利いい。
航平くんの隣で、あたしは彼のすることを全部見ていた。
下校途中で本屋に寄って、バトミントンの雑誌やコミック本を立ち読みするとことか。
家に帰るなり、制服も着替えずに冷蔵庫開けて、腰に手を当てたベタなポーズで、牛乳をグビグビ飲んでるとことか。
自分の部屋でスマホにヘッドフォンつないで、ラケットの手入れや机の片付けしてるとことか。
さすがに、はだかでお風呂に入ってる姿は、ドキマギしすぎて直視できなかったけど。
、、、航平くんの胸板って、意外と厚みがある。
こんなに細いからだが、バネのようにシナって、目にも止まらないスピードでラケットを振り抜き、すごい速さでシャトルコックを飛ばすんだ。
バトミントンをやってるときの航平くんは、ほんとにかっこいい。
これからいつでも、彼の姿を見てられるんだ。
あたしにはもう、勉強もないし、家の手伝いもない。
塾にも行かなくていいし、なんにもすることがなくなっちゃった。
だから、毎日好きなことを、、、
航平くんを、追っかけてるだけでいい。
それはそれで、結構幸せかも。
だけど、、、
どんなにいっしょにいても、心を通い合わせることはできない。
話しをすることも、触れ合うこともできない。
辛い。
航平くんは時々、あたしの画像を眺めては、悲しみにくれてる。
ガムシャラにバトミントンの練習に励んでるのも、その悲しみを紛らすため。
人前では決して弱音を吐いたりせずに、突っ張ってるのに、ひとりになるとこっそり、泣いてるときがある。
<航平くん、あたし、こんなに近くにいるんだよ>
<いつだって側にいるんだよ>
泣いてる航平くんの側に寄り添い、あたしはささやく。
だけど、どうしても航平くんには伝わらない。
もどかしい。
なんとかして、航平くんと話をしたい。
この想いを伝えたい。
ラブレター、どうしても渡さなきゃ!
その日の朝。
教室に入ったあたしは、クラスの様子が今までと違ってることに戸惑った。
どうやら席替えをしたらしい。
航平くんは窓際のうしろの方に移動してたし、あたしの席だった場所にはミクが座ってる。
どうしたらいいの?
あたしの居場所がないじゃない。
あたしの席はどこよ?!
みんなでシカトしないでよ!
むかついたあたしは、ミクの椅子を思いっきり蹴っとばした。
なのにミクは、平然と授業を受けてる。
いったいなんなの?
なんであたしのことスルーするの?!
ミクとはいちばんの親友だったじゃない!
いつからあんた、そんなに冷たくなったのよ!!
ミクを叩いたり蹴ったりしているあたしを、斜めうしろに座ってた如月摩耶が、じっと眺めてた。
そういえば如月は、あたしのことが見えたんだっけ。
彼女とは以前、大事な話をした気がするんだけど、なんだっけ?
記憶があやふや。
、、、最近なんだか、物忘れがひどい。
あの、夜更かししてラブレターを書いて遅刻しそうになって、学校に走っていってたときに、目の前がブラックアウトしたあとからだ。
あの日を境に、あたしは変わってしまった。
いろんなできごとを、あまり覚えられなくなった。
まるで、夢のなかをふらふら彷徨ってるみたい。
それでも、いつでも心に引っかかってるのは、航平くんへの想い。
そういえばラブレター、まだ渡せてない。
今日こそは!
つづく
航平くんはあたしのこと好きで、ふたりは両想いだったんだ。
なのに、どうしてちゃんと思い出せないんだろ?
魂が震えて感動するくらいの、素敵な出来事だったのに。
制服の胸のあたりに、あたしはそっと手を置いてみる。
昨日、夜更かしして書いたラブレター。
内ポケットにちゃんとしまってある。
もっと早く、あたしに告白する勇気があればよかったのに。
今日こそは、絶対渡そう!
それからも、航平くんの行くあとを、あたしはずっとついて回った。
姿が見えないのって、こういうとき便利いい。
航平くんの隣で、あたしは彼のすることを全部見ていた。
下校途中で本屋に寄って、バトミントンの雑誌やコミック本を立ち読みするとことか。
家に帰るなり、制服も着替えずに冷蔵庫開けて、腰に手を当てたベタなポーズで、牛乳をグビグビ飲んでるとことか。
自分の部屋でスマホにヘッドフォンつないで、ラケットの手入れや机の片付けしてるとことか。
さすがに、はだかでお風呂に入ってる姿は、ドキマギしすぎて直視できなかったけど。
、、、航平くんの胸板って、意外と厚みがある。
こんなに細いからだが、バネのようにシナって、目にも止まらないスピードでラケットを振り抜き、すごい速さでシャトルコックを飛ばすんだ。
バトミントンをやってるときの航平くんは、ほんとにかっこいい。
これからいつでも、彼の姿を見てられるんだ。
あたしにはもう、勉強もないし、家の手伝いもない。
塾にも行かなくていいし、なんにもすることがなくなっちゃった。
だから、毎日好きなことを、、、
航平くんを、追っかけてるだけでいい。
それはそれで、結構幸せかも。
だけど、、、
どんなにいっしょにいても、心を通い合わせることはできない。
話しをすることも、触れ合うこともできない。
辛い。
航平くんは時々、あたしの画像を眺めては、悲しみにくれてる。
ガムシャラにバトミントンの練習に励んでるのも、その悲しみを紛らすため。
人前では決して弱音を吐いたりせずに、突っ張ってるのに、ひとりになるとこっそり、泣いてるときがある。
<航平くん、あたし、こんなに近くにいるんだよ>
<いつだって側にいるんだよ>
泣いてる航平くんの側に寄り添い、あたしはささやく。
だけど、どうしても航平くんには伝わらない。
もどかしい。
なんとかして、航平くんと話をしたい。
この想いを伝えたい。
ラブレター、どうしても渡さなきゃ!
その日の朝。
教室に入ったあたしは、クラスの様子が今までと違ってることに戸惑った。
どうやら席替えをしたらしい。
航平くんは窓際のうしろの方に移動してたし、あたしの席だった場所にはミクが座ってる。
どうしたらいいの?
あたしの居場所がないじゃない。
あたしの席はどこよ?!
みんなでシカトしないでよ!
むかついたあたしは、ミクの椅子を思いっきり蹴っとばした。
なのにミクは、平然と授業を受けてる。
いったいなんなの?
なんであたしのことスルーするの?!
ミクとはいちばんの親友だったじゃない!
いつからあんた、そんなに冷たくなったのよ!!
ミクを叩いたり蹴ったりしているあたしを、斜めうしろに座ってた如月摩耶が、じっと眺めてた。
そういえば如月は、あたしのことが見えたんだっけ。
彼女とは以前、大事な話をした気がするんだけど、なんだっけ?
記憶があやふや。
、、、最近なんだか、物忘れがひどい。
あの、夜更かししてラブレターを書いて遅刻しそうになって、学校に走っていってたときに、目の前がブラックアウトしたあとからだ。
あの日を境に、あたしは変わってしまった。
いろんなできごとを、あまり覚えられなくなった。
まるで、夢のなかをふらふら彷徨ってるみたい。
それでも、いつでも心に引っかかってるのは、航平くんへの想い。
そういえばラブレター、まだ渡せてない。
今日こそは!
つづく
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