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9th stage
レモンでもチーズでもスイカでもない
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「え? なにを?」
「あたし… 嘘ついた」
「ええっ?!」
そっ、それってもしかして、、、
『、、、なんちゃって。今までの話はぜ~んぶ嘘だよ~。お兄ちゃんをからかっただけ~』
とか言う、ドッキリみたいなやつ?!
ってことは、『ぼくの事が好き』だってのも、『バージンあげたい』ってのも、みんな嘘って事で、、、
思わず目の前が真っ暗になりかける。
だが、栞里ちゃんが話しはじめたのは、そんな事ではなかった。
「昼間、イベント会場で、『別にお兄ちゃんに会いに来たわけじゃない』って言ったでしょ」
「う、うん」
「あれ、嘘」
「え?」
「ほんとは、お兄ちゃんに会いに行ったの」
「ええっ? ぼくに??」
「うん。会いたくて会いたくて。死ぬほど会いたかった」
「そっ、そんなに、、、」
「ついでに言えば、『だれとつきあってたって構わない』って言ったのも、嘘。
ゲーム画面を見せられた時、『彼女じゃなくてよかった』って、心の底からほっとした」
「…」
「あの時あたし、はっきりわかったの。あたし、お兄ちゃんが好きなんだな、って」
「うっ、嬉しいよ。そんな風に言ってくれて。ぼくも栞里ちゃんの事、好きだよ」
「その『好き』っていうのは…」
そう言ったところで、信号が青に変わり、ぼくたちは横断歩道を渡りはじめた。
栞里ちゃんは急に黙ってしまう。
ぼくも、なんて言っていいかわからない。
お互い無言のまま、駅へ着いた。
夜の11時を回った駅はさすがに人も少なく、仕事でくたびれた風のOLとか、スーツ姿のほろ酔いのおじさんがポツポツといるくらいで、コンコースは閑散としてる。
券売所に立ち寄ったぼくは、栞里ちゃんの切符を買ってあげた。
「お兄ちゃん… ちょっとしゃがんでみて」
切符を受け取り、改札に入ろうとしたた栞里ちゃんは、歩を止め、思いついた様に言った。
「え? 、、、こう?」
言われるまま、ぼくは少ししゃがんで栞里ちゃんを見る。
顔の高さが彼女と同じくらいになる。
“チュッ”
そんなぼくの唇に、栞里ちゃんは軽く唇をくっつけた。
キッ、キッス?!?!
栞里ちゃんとのファーストキス!!!
しかも栞里ちゃんからっ!!!!
ゲームでの高瀬みくタンとのキスなんて、硬くて冷たいガラスの味しかしないけど、リアルなキスは全然違う!!!!
一瞬だったけど、栞里ちゃんの唇の感触は、あったかくて、ふにっと柔らかくて、もう最っ高っ!!!!!
すごく、いいっ!!!!!!
女の子の方からのファーストキスなんて、なんか、シチュエーション的に逆の様な気もするけど、そんな事はどうでもいい。
あまりの嬉しさで、ぼくはすっかりほっぺたが赤くなり、涙が出そうになる。
「さっき話してたあたしの『好き』は、こういう『好き』なの」
「そっ、それって」
「これであたしたち、ちゃんと恋人同士だね」
栞里ちゃんは上目づかいにぼくを見て、はにかむ様にちょっぴり頬を染めて言う。
こっ、恋人同士?!
栞里ちゃんの口から、そんな言葉が聞けるなんて!
自分にまさか、こんな日がやって来ようとは!
ぼくはもう、『独男』なんかじゃない。
『佐倉栞里』っていう、とびきり可愛い14歳の彼女ができたんだ!!
感動で目がうるんでなにも言えないぼくを見て、栞里ちゃんはちょっと不安そうに言った。
「…ほんとにあたし、お兄ちゃんのカノジョ、でいいのかな?」
「えっ?」
「あたし、まだ中学生だし… お兄ちゃんから見ればまだまだ子供だし。あたしの方が勝手に恋人って思ってるだけで、、、」
「そんな事ない。そんな事ないよ!」
「ほんとに?」
「ごめん。あんまり突然だったから、びっくりしちゃって、、、
すっごい嬉しかった。でも、ぼくの方こそ、『ぼくみたいなディープなオタクが、栞里ちゃんの恋人でいいのかな』って思っちゃって、なんか不安で、、、」
「あは。お兄ちゃんもなんだ」
キモオタのぼくはともかく、栞里ちゃんもぼくと同じ様に、不安に思ってたなんて、、、
そんな夢みたいな事があっていいのか?
「ぼくも、、、 ぼくも栞里ちゃんの事、大好きだよ!
世界で一番好きだよ!
ずっとずっと、大事にしてあげたいって、思ってるよ!!」
思わずそんなキザなセリフが口から溢れ出てくる。
ふだんなら言えない歯の浮く様な言葉が、スラスラ出てきた自分が怖い。
ぼくの言葉で、栞里ちゃんは真っ赤になってうつむく。
その姿が、かっ、可愛過ぎる!!
「じゃあまたね。お兄ちゃん」
恥ずかしさを隠す様に、そのまま彼女は、クルリと背を向けて改札を抜けようとした。
「まっ、待って。送るから!」
反射的にその後ろ姿に、ぼくは声をかけた。
「え?」
「も、もう遅いし、危ないから。だから家まで送ったげるから」
「でも… うちまで来たら終電が。お兄ちゃんが帰れなくなっちゃう」
「大丈夫。大丈夫だから!」
そう言いながら、アタフタとSuicaの入ったスマホを取り出し、自動改札機にタッチすると、ぼくは栞里ちゃんの隣に並んだ。
『送る』なんて、ただの口実だ。
夜道が心配なのは確かだけど、ほんとは栞里ちゃんと離れたくないだけだ。
離れたくない。
ずっといっしょにいたい。
これが、恋って気持ちなんだなぁ、、、
つづく
「あたし… 嘘ついた」
「ええっ?!」
そっ、それってもしかして、、、
『、、、なんちゃって。今までの話はぜ~んぶ嘘だよ~。お兄ちゃんをからかっただけ~』
とか言う、ドッキリみたいなやつ?!
ってことは、『ぼくの事が好き』だってのも、『バージンあげたい』ってのも、みんな嘘って事で、、、
思わず目の前が真っ暗になりかける。
だが、栞里ちゃんが話しはじめたのは、そんな事ではなかった。
「昼間、イベント会場で、『別にお兄ちゃんに会いに来たわけじゃない』って言ったでしょ」
「う、うん」
「あれ、嘘」
「え?」
「ほんとは、お兄ちゃんに会いに行ったの」
「ええっ? ぼくに??」
「うん。会いたくて会いたくて。死ぬほど会いたかった」
「そっ、そんなに、、、」
「ついでに言えば、『だれとつきあってたって構わない』って言ったのも、嘘。
ゲーム画面を見せられた時、『彼女じゃなくてよかった』って、心の底からほっとした」
「…」
「あの時あたし、はっきりわかったの。あたし、お兄ちゃんが好きなんだな、って」
「うっ、嬉しいよ。そんな風に言ってくれて。ぼくも栞里ちゃんの事、好きだよ」
「その『好き』っていうのは…」
そう言ったところで、信号が青に変わり、ぼくたちは横断歩道を渡りはじめた。
栞里ちゃんは急に黙ってしまう。
ぼくも、なんて言っていいかわからない。
お互い無言のまま、駅へ着いた。
夜の11時を回った駅はさすがに人も少なく、仕事でくたびれた風のOLとか、スーツ姿のほろ酔いのおじさんがポツポツといるくらいで、コンコースは閑散としてる。
券売所に立ち寄ったぼくは、栞里ちゃんの切符を買ってあげた。
「お兄ちゃん… ちょっとしゃがんでみて」
切符を受け取り、改札に入ろうとしたた栞里ちゃんは、歩を止め、思いついた様に言った。
「え? 、、、こう?」
言われるまま、ぼくは少ししゃがんで栞里ちゃんを見る。
顔の高さが彼女と同じくらいになる。
“チュッ”
そんなぼくの唇に、栞里ちゃんは軽く唇をくっつけた。
キッ、キッス?!?!
栞里ちゃんとのファーストキス!!!
しかも栞里ちゃんからっ!!!!
ゲームでの高瀬みくタンとのキスなんて、硬くて冷たいガラスの味しかしないけど、リアルなキスは全然違う!!!!
一瞬だったけど、栞里ちゃんの唇の感触は、あったかくて、ふにっと柔らかくて、もう最っ高っ!!!!!
すごく、いいっ!!!!!!
女の子の方からのファーストキスなんて、なんか、シチュエーション的に逆の様な気もするけど、そんな事はどうでもいい。
あまりの嬉しさで、ぼくはすっかりほっぺたが赤くなり、涙が出そうになる。
「さっき話してたあたしの『好き』は、こういう『好き』なの」
「そっ、それって」
「これであたしたち、ちゃんと恋人同士だね」
栞里ちゃんは上目づかいにぼくを見て、はにかむ様にちょっぴり頬を染めて言う。
こっ、恋人同士?!
栞里ちゃんの口から、そんな言葉が聞けるなんて!
自分にまさか、こんな日がやって来ようとは!
ぼくはもう、『独男』なんかじゃない。
『佐倉栞里』っていう、とびきり可愛い14歳の彼女ができたんだ!!
感動で目がうるんでなにも言えないぼくを見て、栞里ちゃんはちょっと不安そうに言った。
「…ほんとにあたし、お兄ちゃんのカノジョ、でいいのかな?」
「えっ?」
「あたし、まだ中学生だし… お兄ちゃんから見ればまだまだ子供だし。あたしの方が勝手に恋人って思ってるだけで、、、」
「そんな事ない。そんな事ないよ!」
「ほんとに?」
「ごめん。あんまり突然だったから、びっくりしちゃって、、、
すっごい嬉しかった。でも、ぼくの方こそ、『ぼくみたいなディープなオタクが、栞里ちゃんの恋人でいいのかな』って思っちゃって、なんか不安で、、、」
「あは。お兄ちゃんもなんだ」
キモオタのぼくはともかく、栞里ちゃんもぼくと同じ様に、不安に思ってたなんて、、、
そんな夢みたいな事があっていいのか?
「ぼくも、、、 ぼくも栞里ちゃんの事、大好きだよ!
世界で一番好きだよ!
ずっとずっと、大事にしてあげたいって、思ってるよ!!」
思わずそんなキザなセリフが口から溢れ出てくる。
ふだんなら言えない歯の浮く様な言葉が、スラスラ出てきた自分が怖い。
ぼくの言葉で、栞里ちゃんは真っ赤になってうつむく。
その姿が、かっ、可愛過ぎる!!
「じゃあまたね。お兄ちゃん」
恥ずかしさを隠す様に、そのまま彼女は、クルリと背を向けて改札を抜けようとした。
「まっ、待って。送るから!」
反射的にその後ろ姿に、ぼくは声をかけた。
「え?」
「も、もう遅いし、危ないから。だから家まで送ったげるから」
「でも… うちまで来たら終電が。お兄ちゃんが帰れなくなっちゃう」
「大丈夫。大丈夫だから!」
そう言いながら、アタフタとSuicaの入ったスマホを取り出し、自動改札機にタッチすると、ぼくは栞里ちゃんの隣に並んだ。
『送る』なんて、ただの口実だ。
夜道が心配なのは確かだけど、ほんとは栞里ちゃんと離れたくないだけだ。
離れたくない。
ずっといっしょにいたい。
これが、恋って気持ちなんだなぁ、、、
つづく
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