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8th stage
ヒーローみたいな加速装置はついてない
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「うわああああああああああああああああ!!!!!」
落ちていく白い影は、まるでスローモーション。
栞里ちゃんと過ごした1週間が、頭の中でフラッシュバックする。
ツンとすました横顔。
たまに見せる笑顔。
怒った顔。
すがる様な瞳。
その瞬間、すべてがわかった!
栞里ちゃんを好きだという事。
理屈なんかじゃなく、好きなんだという事。
失いたくないという事。
なにをしてやれなくても、ただ、彼女の側にいてあげたいという事。
栞里ちゃんから信頼されてたって事。
なのにぼくは、彼女を見捨ててしまったって事。
そして彼女は、支えるものがなくなって、、、
自由落下、、、、、、、、
「栞里ちゃん!栞里ちゃん!栞里ちゃん!栞里ちゃん!栞里ちゃんっっっ!!!!」
狂った様に何度も彼女の名前を呼んで落下地点へダッシュしていきながら、ぼくは彼女を置き去りにしてコンビニなんかに出かけた事を、激しく後悔した。
どんなに後悔したって、もう遅い。
自由落下をはじめた彼女を止められるものは、もうない。
アニメのヒーローみたいに加速装置でもあれば、落下地点に回り込んで彼女を受け止めてあげられるのに。
しかし、ただのモブキャラでしかない愚かで無力なぼくは、佐倉栞里が落下していき、出会った日に栞里ちゃんがベランダから投げ捨てたアイスクリームの様に、彼女が地面にぶつかってへしゃげる音を、聞くしかないのだ!
愛する人の潰れる音を聞き、脳みそや内臓が飛び散って息絶えた姿を見る。
それが、現実から逃げ出したぼくに与えられた、罰!!
発狂不可避。。。。
しかし、、、
落下地点に、彼女の潰れた姿はなかった。
ぼくの部屋の真下の地面に落ちていたのは、栞里ちゃんが着てた淡いピンクのカットソー。
それだけだった。
「栞里ちゃん、、、、、、」
気が抜けたぼくはその場にヘナヘナと座り込み、カットソーを手にして、マンションを見上げた。
また、なにか落ちてくる。
“ファサ”
花びらの様に地面に広がったそれは、彼女のはいてたスカート。
無意識のうちに、ぼくはそれも手に取った。
自分の着てる服を、どうしてバルコニーから投げ捨てるんだ?
いや!
そんな事考えてる場合じゃない!
次は栞里ちゃん本体が落ちてくるかもしれない!!
そう考えるといてもたってもいられなくなり、慌ててマンションに駆け込んだぼくは、ガチャガチャとエレベーターのボタンを押した。
エレベーターは、4階付近を上がってる途中だった。
なかなか下がってこない。
イライラする、、、
ここでもたついてるうちに、栞里ちゃんが飛び降りないとも限らない。
反射的にエレベーターの隣にある非常階段の重いドアを開け、ぼくは階段を2段跳ばしで駆け上がりはじめた。
だけど、走っても走っても、8階は遠い。
運動不足の脚は鉛の様に重く、太ももはなかなか上がってくれない。
息が切れて苦しい。
「くそっ!」
それでもぼくは走る事をやめなかった。
ここで休んで、その間に栞里ちゃんが飛び降りたりしたら、永遠に後悔し続ける事になる。
そんなの、イヤだ!
絶対イヤだっ!!
「しっ、栞里ちゃんっ!!」
“バタン”と勢いよく玄関のドアを開け、部屋に飛び込んだぼくは、大声で彼女の名を呼んだ。
「…」
返事は、、、 なかった。
狭い部屋をバタバタと横切ってバルコニーに駆けていき、ぼくは外を見た。
栞里ちゃんは、、、
いた。
パンツとブラだけを着けたまま、彼女はバルコニーの隅で両脚を抱えて座り込み、頭を膝の間に埋める様にしてた。
その姿がなんだかとってもちっちゃくて、弱々しい。
『ちゃんと生きてる!』
そう思って、ぼくはホッと胸を撫で下ろした。
「栞、、ハァハァ、、、 里ちゃん、、、 よかっ、、ハァハァ、た」
彼女に声をかけようとしたけど、息が切れてまともにしゃべれない。
栞里ちゃんは、膝に顔を埋めたまま、ポツリと言う。
「、、、そつき」
つづく
落ちていく白い影は、まるでスローモーション。
栞里ちゃんと過ごした1週間が、頭の中でフラッシュバックする。
ツンとすました横顔。
たまに見せる笑顔。
怒った顔。
すがる様な瞳。
その瞬間、すべてがわかった!
栞里ちゃんを好きだという事。
理屈なんかじゃなく、好きなんだという事。
失いたくないという事。
なにをしてやれなくても、ただ、彼女の側にいてあげたいという事。
栞里ちゃんから信頼されてたって事。
なのにぼくは、彼女を見捨ててしまったって事。
そして彼女は、支えるものがなくなって、、、
自由落下、、、、、、、、
「栞里ちゃん!栞里ちゃん!栞里ちゃん!栞里ちゃん!栞里ちゃんっっっ!!!!」
狂った様に何度も彼女の名前を呼んで落下地点へダッシュしていきながら、ぼくは彼女を置き去りにしてコンビニなんかに出かけた事を、激しく後悔した。
どんなに後悔したって、もう遅い。
自由落下をはじめた彼女を止められるものは、もうない。
アニメのヒーローみたいに加速装置でもあれば、落下地点に回り込んで彼女を受け止めてあげられるのに。
しかし、ただのモブキャラでしかない愚かで無力なぼくは、佐倉栞里が落下していき、出会った日に栞里ちゃんがベランダから投げ捨てたアイスクリームの様に、彼女が地面にぶつかってへしゃげる音を、聞くしかないのだ!
愛する人の潰れる音を聞き、脳みそや内臓が飛び散って息絶えた姿を見る。
それが、現実から逃げ出したぼくに与えられた、罰!!
発狂不可避。。。。
しかし、、、
落下地点に、彼女の潰れた姿はなかった。
ぼくの部屋の真下の地面に落ちていたのは、栞里ちゃんが着てた淡いピンクのカットソー。
それだけだった。
「栞里ちゃん、、、、、、」
気が抜けたぼくはその場にヘナヘナと座り込み、カットソーを手にして、マンションを見上げた。
また、なにか落ちてくる。
“ファサ”
花びらの様に地面に広がったそれは、彼女のはいてたスカート。
無意識のうちに、ぼくはそれも手に取った。
自分の着てる服を、どうしてバルコニーから投げ捨てるんだ?
いや!
そんな事考えてる場合じゃない!
次は栞里ちゃん本体が落ちてくるかもしれない!!
そう考えるといてもたってもいられなくなり、慌ててマンションに駆け込んだぼくは、ガチャガチャとエレベーターのボタンを押した。
エレベーターは、4階付近を上がってる途中だった。
なかなか下がってこない。
イライラする、、、
ここでもたついてるうちに、栞里ちゃんが飛び降りないとも限らない。
反射的にエレベーターの隣にある非常階段の重いドアを開け、ぼくは階段を2段跳ばしで駆け上がりはじめた。
だけど、走っても走っても、8階は遠い。
運動不足の脚は鉛の様に重く、太ももはなかなか上がってくれない。
息が切れて苦しい。
「くそっ!」
それでもぼくは走る事をやめなかった。
ここで休んで、その間に栞里ちゃんが飛び降りたりしたら、永遠に後悔し続ける事になる。
そんなの、イヤだ!
絶対イヤだっ!!
「しっ、栞里ちゃんっ!!」
“バタン”と勢いよく玄関のドアを開け、部屋に飛び込んだぼくは、大声で彼女の名を呼んだ。
「…」
返事は、、、 なかった。
狭い部屋をバタバタと横切ってバルコニーに駆けていき、ぼくは外を見た。
栞里ちゃんは、、、
いた。
パンツとブラだけを着けたまま、彼女はバルコニーの隅で両脚を抱えて座り込み、頭を膝の間に埋める様にしてた。
その姿がなんだかとってもちっちゃくて、弱々しい。
『ちゃんと生きてる!』
そう思って、ぼくはホッと胸を撫で下ろした。
「栞、、ハァハァ、、、 里ちゃん、、、 よかっ、、ハァハァ、た」
彼女に声をかけようとしたけど、息が切れてまともにしゃべれない。
栞里ちゃんは、膝に顔を埋めたまま、ポツリと言う。
「、、、そつき」
つづく
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