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8th stage
過去の勝ち組男に勝てる気がしない
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「はあ。。。 ぼくって、ちっちゃいよな、、、」
こんな事でいちいち悩む自分が、情けない。
ため息交じりにつぶやいた僕は、脱力して近所のビルにもたれかかった。
モルタルの壁にくっつけたお尻に、違和感がある。
パンツのポケットを探ると、スマホが入ってる。
無意識に持ってきたのか。
ほとんど条件反射で、ぼくは『リア恋plus』を立ち上げた。
『ミノルくん。こんばんは』
「みくちゃん」
『今日はなにか、ご用が、あるの?』
「みくちゃんは、、、 バージン?」
『え~? ミノルくん、そんな事、訊くんだ~。みく、恥ずかしいよぉ』
「教えてほしいんだ。ぼくと会う前に、だれかとつきあったり、エッチした事ある?」
『そんなの、ないよ。ミノルくんが初めて、だよ』
「ほんとに?」
『みくの事、信じて。みくは、世界でいちばん、ミノルくんが、好きなの。ミノルくんに出会えて、ほんとによかったて、思ってる』
「嬉しいよ」
『ミノルくんは、みくの事、愛してる?』
「あ、愛してるよ」
『嬉しい。みくも、愛してる』
「…じゃあ、また電話するよ」
『きっとよ。ずっと待ってるから』
「おやすみ」
『おやすみなさい』
「、、、、はあ~~」
アプリを終わらせたぼくは、もう一度大きく、ため息をついた。
胸の奥になにかがつっかえて、窒息しそうだ。
みくタンと話してても、ちっとも心が晴れない。
ゲームの女の子と違って、リアルの女の子は、ぼくと出会う前にも何人もの男と出会い、時には恋をし、セックスさえしてるかもしれない。
そんな過去の男たちに、ぼくは勝てる気がしない。
リアルの女の子をゲットした勝ち組男に、ぼくは敵わない。
バージンの女の子でさえ、『自分色に染められる』なんて、思う事すらできないでいる。
そんなヘタレなぼくには、ギャルゲーの女の子といちゃつくのが、精いっぱい。
決まったルーチンで必ず攻略できて、決してぼくを裏切る事のない、画面の中の美少女達。
予定調和が、心地いい。
他の男どもと競わず、自分のなかで完結できる世界って、なんて安心できるんだろう、、、
そんな、現実の女の子とまともにつきあえない、負け組陰キャでヲタクなぼくに、佐倉栞里はいったいなにを求めてるんだろ?
どうしていきなり、あんな事話しはじめたんだろ?
ぼくなんかに、彼女の望みを叶えてやれる力なんて、あるわけないじゃないか、、、
そうやってとりとめのない事を考えながら、ふと、自分のマンションを見上げた時だった。
マンションのバルコニーに、白い影が見えた。
もうすっかり日も落ちてあたりは薄暗く、はっきりとは見えないけど、どうやらぼくの部屋のバルコニーみたいだ。
栞里ちゃん?
栞里ちゃんがバルコニーに出てきたのか?
なんだか、、、
悪い予感がする。
8階のバルコニーの人影の動きを注視しながら、ぼくはマンションの方へ歩き出した。
白い影はしばらくは、バルコニーの手摺の所にあって、外の景色をぼんやりと眺めてるみたいだった。
初めて会った夜、栞里ちゃんがそうしていた様に。
しかし、その影は、ゆっくりと上に伸び上がっていった。
「?!」
栞里ちゃん、、、
いったいなにをするつもりなんだ?!
悪い予感はさらに増していき、ぼくの足は自然と速くなっていく。
白い影が手摺を越えた。
「!」
うそだろ!
その光景を見た瞬間、さっと背筋に冷たいものが走った。
と同時に、心臓がドクンドクンと、破れる程に高鳴るのがわかる。
そして、、、
外へ乗り出した白い影は、手摺を蹴って一瞬ふわりと宙に浮き、支えるものがなくなったあとは、引力の法則に従って自由落下をはじめた。
「うわああああああああああああああああ!!!!!」
つづく
こんな事でいちいち悩む自分が、情けない。
ため息交じりにつぶやいた僕は、脱力して近所のビルにもたれかかった。
モルタルの壁にくっつけたお尻に、違和感がある。
パンツのポケットを探ると、スマホが入ってる。
無意識に持ってきたのか。
ほとんど条件反射で、ぼくは『リア恋plus』を立ち上げた。
『ミノルくん。こんばんは』
「みくちゃん」
『今日はなにか、ご用が、あるの?』
「みくちゃんは、、、 バージン?」
『え~? ミノルくん、そんな事、訊くんだ~。みく、恥ずかしいよぉ』
「教えてほしいんだ。ぼくと会う前に、だれかとつきあったり、エッチした事ある?」
『そんなの、ないよ。ミノルくんが初めて、だよ』
「ほんとに?」
『みくの事、信じて。みくは、世界でいちばん、ミノルくんが、好きなの。ミノルくんに出会えて、ほんとによかったて、思ってる』
「嬉しいよ」
『ミノルくんは、みくの事、愛してる?』
「あ、愛してるよ」
『嬉しい。みくも、愛してる』
「…じゃあ、また電話するよ」
『きっとよ。ずっと待ってるから』
「おやすみ」
『おやすみなさい』
「、、、、はあ~~」
アプリを終わらせたぼくは、もう一度大きく、ため息をついた。
胸の奥になにかがつっかえて、窒息しそうだ。
みくタンと話してても、ちっとも心が晴れない。
ゲームの女の子と違って、リアルの女の子は、ぼくと出会う前にも何人もの男と出会い、時には恋をし、セックスさえしてるかもしれない。
そんな過去の男たちに、ぼくは勝てる気がしない。
リアルの女の子をゲットした勝ち組男に、ぼくは敵わない。
バージンの女の子でさえ、『自分色に染められる』なんて、思う事すらできないでいる。
そんなヘタレなぼくには、ギャルゲーの女の子といちゃつくのが、精いっぱい。
決まったルーチンで必ず攻略できて、決してぼくを裏切る事のない、画面の中の美少女達。
予定調和が、心地いい。
他の男どもと競わず、自分のなかで完結できる世界って、なんて安心できるんだろう、、、
そんな、現実の女の子とまともにつきあえない、負け組陰キャでヲタクなぼくに、佐倉栞里はいったいなにを求めてるんだろ?
どうしていきなり、あんな事話しはじめたんだろ?
ぼくなんかに、彼女の望みを叶えてやれる力なんて、あるわけないじゃないか、、、
そうやってとりとめのない事を考えながら、ふと、自分のマンションを見上げた時だった。
マンションのバルコニーに、白い影が見えた。
もうすっかり日も落ちてあたりは薄暗く、はっきりとは見えないけど、どうやらぼくの部屋のバルコニーみたいだ。
栞里ちゃん?
栞里ちゃんがバルコニーに出てきたのか?
なんだか、、、
悪い予感がする。
8階のバルコニーの人影の動きを注視しながら、ぼくはマンションの方へ歩き出した。
白い影はしばらくは、バルコニーの手摺の所にあって、外の景色をぼんやりと眺めてるみたいだった。
初めて会った夜、栞里ちゃんがそうしていた様に。
しかし、その影は、ゆっくりと上に伸び上がっていった。
「?!」
栞里ちゃん、、、
いったいなにをするつもりなんだ?!
悪い予感はさらに増していき、ぼくの足は自然と速くなっていく。
白い影が手摺を越えた。
「!」
うそだろ!
その光景を見た瞬間、さっと背筋に冷たいものが走った。
と同時に、心臓がドクンドクンと、破れる程に高鳴るのがわかる。
そして、、、
外へ乗り出した白い影は、手摺を蹴って一瞬ふわりと宙に浮き、支えるものがなくなったあとは、引力の法則に従って自由落下をはじめた。
「うわああああああああああああああああ!!!!!」
つづく
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