53 / 77
8th stage
美少女の告白なんて聞きたくない
しおりを挟む
やっと納得できた。
栞里ちゃんが家出した理由。
彼女にとって、自分を取り巻く環境は、『世間じゃよくあるフツーの事』、なんかじゃない。
そりゃ、離婚もいじめも、世間には珍しくもないかもしれないけど、そのど真ん中にいて、荒波をモロに受けてる栞里ちゃんには、他人には想像もつかないほど、深刻な悩みなんだ。
そんな悩みを、ぼくなんかがどうやって解決してやれるというんだろう?
戸惑いをよそに、彼女の話はどんどんエスカレートしていった。
「今回の家出で、2回目なの」
「2回目?」
「初めて家出したのは夏休みに入ってすぐ。
その夜は行くとこなくて、公園のベンチで寝ちゃった」
「そっ、そんな、危ないよ!
公園のベンチなんか。だれかに襲われたらどうするんだい!」
「あたし、、、 そうなるのを待ってたのかも…」
「えっ?」
「だって、勇気がなくって…
不可抗力なら、例えそれで犯されても殺されても、『しかたない』って諦められるじゃん」
「…」
「だけど、その夜はなんにもなくて、、、 拍子抜けしちゃった。だから次の日はネカフェで、いろんな掲示板見て回ったの」
「掲示板って… 家出少女と泊め男の出会い掲示板、みたいな?」
「そう。そこで知り合った40歳くらいの男の人の家に、泊めてもらったの。もちろん、タダで泊めてもらったわけじゃない」
「…」
「それが初めてだった。けど、、、 相手なんて、だれでもよかった。あたしどうせビッチだもん。だれとでもエッチするの」
「…」
「でも、援交はしたくない。『お小遣いあげる』って言われたけど、受け取らなかった。
だって、お金とかもらったら、ただの売春じゃん。そんな即物的な理由で、家出したわけじゃないし」
「…そ、それで、、、 家出はずっとしてたの? そっ、その、おじさん家に」
「ううん。一晩泊まったあと、『仕事があるから』って言われて追い出されて、しかたないから家に帰った。
でもね。おかしいのはね。あたしが二日も家にいなくても、だれもなんにも言わない事。
だれも『どこに行ってたの?』って、訊きもしないし、探してもないのよ。
なんか、、、
家のなかじゃあたし、だれからも必要とされてないんだなって、はじめてわかった」
「…」
「2度目の家出は、お兄ちゃんと会う3日前。泊めてくれたのは大学生の男の人だった。向こうも夏休みだったから、2日間ずっと、エッチばっかりされてた。
だけど、3日目の夜。その人こっそり友達に電話してたの。『中坊拾ったからみんなでヤろう』って。
あたし、なんだか怖くなって、隙をみて逃げ出したの。そしてその晩、このマンションの入口に隠れてて、お兄ちゃんに声かけられたのよ」
「…」
、、、なにも言えなかった。
栞里ちゃんの淡々とした口調から、彼女の話が実際に起こった事だとは、とても思えなかった。
だけど、こんな事でぼくに嘘をついても、なんの得もないだろう。
じゃあこれは、ほんとの話に違いない。
だったら、、、
どうしてこんな重い話を、あっけらかんと言えるんだ?
それをぼくに話して、いったいどうしてほしいっていうんだ?
ぼくの困惑をよそに、栞里ちゃんの話は続いた。
「原宿でお兄ちゃんと別れたあと、ファーストフードで別の人に拾われて、その人とホテルに泊まったの。そいつとは二日つきあって、昨日の夜はまた別のおじさんに拾われた」
「…」
「そいつのエッチがねちっこくって。ブルマとか女児服とかヘンな服着せたがるし、からだじゅう舐め回すし、おしっこかけてとか足で踏んでくれとか言われるし、なんか変態っぽかった」
「しっ、栞里ちゃんは…」
「え?」
「その… 訊いていいかな?」
「なに? いいよ」
「エッ、エッチとか、、、 好きなの?」
「…大っキライ!」
眉をひそめて、彼女は言い放った。
「じゃあ、どうして…」
「罰なの」
「罰?」
「あたしは、だれからも必要とされてない、いらない人間だから。ダメな人間だから。こうしてみんなから汚されて、堕とされて、罰を受けなきゃいけないの」
「そ、そんな…」
「だから、お金なんかもらわない。これはあたしへの罰なんだから」
「…」
「最後の人からはやっぱり、『お金払う』って言われたけど、断ったら、この服くれたの。
その人の趣味で買ったジュニア服だったから、イヤだったけど、今まで着てた服は汗ばんで臭くて気持ち悪かったし、とりあえずもらうしかないかって思って…」
「…」
「でも…」
「でも?」
「…」
それっきり、栞里ちゃんは口を閉ざした。
両手をぎゅっと握りしめ、うつむいてる。
肩がかすかに揺れてるのがわかる。
ふっくらとした可憐な唇が、、、 震えてる。
おっ、、、 重い。
重過ぎる!
こんな話、聞くんじゃなかった。
栞里ちゃんからこんな重い話、聞きたくなかった!!
つづく
栞里ちゃんが家出した理由。
彼女にとって、自分を取り巻く環境は、『世間じゃよくあるフツーの事』、なんかじゃない。
そりゃ、離婚もいじめも、世間には珍しくもないかもしれないけど、そのど真ん中にいて、荒波をモロに受けてる栞里ちゃんには、他人には想像もつかないほど、深刻な悩みなんだ。
そんな悩みを、ぼくなんかがどうやって解決してやれるというんだろう?
戸惑いをよそに、彼女の話はどんどんエスカレートしていった。
「今回の家出で、2回目なの」
「2回目?」
「初めて家出したのは夏休みに入ってすぐ。
その夜は行くとこなくて、公園のベンチで寝ちゃった」
「そっ、そんな、危ないよ!
公園のベンチなんか。だれかに襲われたらどうするんだい!」
「あたし、、、 そうなるのを待ってたのかも…」
「えっ?」
「だって、勇気がなくって…
不可抗力なら、例えそれで犯されても殺されても、『しかたない』って諦められるじゃん」
「…」
「だけど、その夜はなんにもなくて、、、 拍子抜けしちゃった。だから次の日はネカフェで、いろんな掲示板見て回ったの」
「掲示板って… 家出少女と泊め男の出会い掲示板、みたいな?」
「そう。そこで知り合った40歳くらいの男の人の家に、泊めてもらったの。もちろん、タダで泊めてもらったわけじゃない」
「…」
「それが初めてだった。けど、、、 相手なんて、だれでもよかった。あたしどうせビッチだもん。だれとでもエッチするの」
「…」
「でも、援交はしたくない。『お小遣いあげる』って言われたけど、受け取らなかった。
だって、お金とかもらったら、ただの売春じゃん。そんな即物的な理由で、家出したわけじゃないし」
「…そ、それで、、、 家出はずっとしてたの? そっ、その、おじさん家に」
「ううん。一晩泊まったあと、『仕事があるから』って言われて追い出されて、しかたないから家に帰った。
でもね。おかしいのはね。あたしが二日も家にいなくても、だれもなんにも言わない事。
だれも『どこに行ってたの?』って、訊きもしないし、探してもないのよ。
なんか、、、
家のなかじゃあたし、だれからも必要とされてないんだなって、はじめてわかった」
「…」
「2度目の家出は、お兄ちゃんと会う3日前。泊めてくれたのは大学生の男の人だった。向こうも夏休みだったから、2日間ずっと、エッチばっかりされてた。
だけど、3日目の夜。その人こっそり友達に電話してたの。『中坊拾ったからみんなでヤろう』って。
あたし、なんだか怖くなって、隙をみて逃げ出したの。そしてその晩、このマンションの入口に隠れてて、お兄ちゃんに声かけられたのよ」
「…」
、、、なにも言えなかった。
栞里ちゃんの淡々とした口調から、彼女の話が実際に起こった事だとは、とても思えなかった。
だけど、こんな事でぼくに嘘をついても、なんの得もないだろう。
じゃあこれは、ほんとの話に違いない。
だったら、、、
どうしてこんな重い話を、あっけらかんと言えるんだ?
それをぼくに話して、いったいどうしてほしいっていうんだ?
ぼくの困惑をよそに、栞里ちゃんの話は続いた。
「原宿でお兄ちゃんと別れたあと、ファーストフードで別の人に拾われて、その人とホテルに泊まったの。そいつとは二日つきあって、昨日の夜はまた別のおじさんに拾われた」
「…」
「そいつのエッチがねちっこくって。ブルマとか女児服とかヘンな服着せたがるし、からだじゅう舐め回すし、おしっこかけてとか足で踏んでくれとか言われるし、なんか変態っぽかった」
「しっ、栞里ちゃんは…」
「え?」
「その… 訊いていいかな?」
「なに? いいよ」
「エッ、エッチとか、、、 好きなの?」
「…大っキライ!」
眉をひそめて、彼女は言い放った。
「じゃあ、どうして…」
「罰なの」
「罰?」
「あたしは、だれからも必要とされてない、いらない人間だから。ダメな人間だから。こうしてみんなから汚されて、堕とされて、罰を受けなきゃいけないの」
「そ、そんな…」
「だから、お金なんかもらわない。これはあたしへの罰なんだから」
「…」
「最後の人からはやっぱり、『お金払う』って言われたけど、断ったら、この服くれたの。
その人の趣味で買ったジュニア服だったから、イヤだったけど、今まで着てた服は汗ばんで臭くて気持ち悪かったし、とりあえずもらうしかないかって思って…」
「…」
「でも…」
「でも?」
「…」
それっきり、栞里ちゃんは口を閉ざした。
両手をぎゅっと握りしめ、うつむいてる。
肩がかすかに揺れてるのがわかる。
ふっくらとした可憐な唇が、、、 震えてる。
おっ、、、 重い。
重過ぎる!
こんな話、聞くんじゃなかった。
栞里ちゃんからこんな重い話、聞きたくなかった!!
つづく
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる