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6th stage

公開処刑が恥ずかしくていたたまれない

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そう思いながらふと回りに目を向けると、何人かのオタクっぽい男が、このサークルスペースを遠巻きにして、じっと様子を伺ってるのが見えた。

それだけじゃない。
近所のサークルの若い男の売り子たちも、お互いひそひそと話をしながら、盛んにこっちを気にしてる。

そりゃそうだ。

美少女系18禁サークルが並んでるこの『島』は、イベント会場の中でもいちばんディープなゾーン。
いかにも『ヲタク』といった風情の、冴えない若い男ばかりが集まってる。
そんな、掃き溜めの中に舞い降りた天使みたいに、栞里ちゃんはひとりキラキラ輝いてて、美少女オーラをムンムンと放ってる。
しかも、超レアな高瀬みくSSRコスチュームまで着てるのだ。
回りから浮いて目立ちまくるのも当然だ。
そう言えばさっきから、ひとりもお客が来ない。
このサークルの前だけ、不自然に人が寄りついてこないのだ。

それもわかる気がする。
ぼくがバイトしてる本屋だって、たまに若い男がエロ本を買いにくるけど、レジに女の子がいないタイミングを見計らって、本を持ってくるもんな。
それも、必ずと言っていいほど、表紙を裏にして本を出す。
自分が日常的にエロマンガを描いてて、そういうのは慣れっこになってるせいで、エロ本を買うのが世間的にはすごく恥ずかしい事だってのを、すっかり忘れてた(笑)。

「きゃははは。なんかキモ~い。グロ~い。なに、このバレーボールみたいなデッカイおっぱい? ありえない~♪」

いきなり栞里ちゃんが笑い出した。
隣を見ると、ぼくのR18本を読んでるじゃないか!
こらこら。
未成年は読んじゃイカ~ン!!

「『ふふふ。このヌルヌルとした感触がそそられるだろ?』
『やっ、やめてえぇ。それ以上いじられると、気が変になっちゃうぅ』
『いいぞいいぞ。おまえのからだの、穴という穴の深くに眠っている、淫靡いんびな快感を、オレ様の触手で残らず引きずり出してやるぞ』
『そんなに深く挿れないでっ。ん、、んん、 いやぁ、、』
『さあ、みく。おのれを解放するのだ!』
『はあああああああっ』って、、、
うわ~、なんかすっごい! いやらし~~!!」
「しっ、栞里ちゃん~、、 声に出して読まないで!!」

自分の描いた漫画を朗読されるのが、こんなに恥ずかしい事だとは(しかもエロ)。
特にこんな美少女があっけらかんと。
この公開処刑は恥ずかしすぎて、軽く死ねる。。。o,,,rz

「ね。この『高瀬みく』って子、お兄ちゃんがさっき見せてくれた、恋愛ゲームの女の子でしょ?」

栞里ちゃんは好奇心たっぷりに本をめくりながら、触手が絡まり、白目になって喘ぎ声を出してる全裸のキャラを指さす。
さっきの恥かしいのも忘れたみたいで、切り替えが早いっていうか、環境にすぐ順応するところは、すごい。逆にぼくの方が、恥ずかしさで真っ赤になってるってのに。
栞里ちゃんの質問に、しどろもどろになりながらも、ようやく答える。

「あ、えっと、、、 そ、そうだよ」
「え~~っ?! もしかして、今着てるのって、高瀬みくの服だったの?」
「そっ、そうだけど、、、」
「む~、、、 あたし、ライバルのコスプレしちゃってたのかぁ~…
ん~~、、、 まあ、いいや。可愛いから許す」
「え? ライ…」
「ねえねえ。もしかしてお兄ちゃんも、こんなことしたいと思ってる?」
「えっ。そ、それは、、、」
「ったく。男の人ってみんなエッチなんだから」
「ごっ、ごめん。それより、さっきのライ…」
「あの、、、 こっ。これ、お願いします」
「あっ。いらっしゃいませ~」

『ライバルって、どういうこと?』

そう訊こうとした時、遠巻きに見守ってたオタクたちからついに勇者が現れ、テーブルの本を取り上げて栞里ちゃんに渡した。

「そっ、それって、みくちゃんのスーパーアイドルデート服ですね。すっ、すっごい似合ってます。可愛いっす」

嬉しそうに本を受け取った勇者オタクは、鼻の穴を広げて興奮気味に栞里ちゃんに話しかける。

「あ、ありがとうございます」
「あの。これ下さい」
「あ。ぼくにも」
「あの~。こにある本全部買います。いくらですか?」
「コスプレには一家言いっかげんあるそれがしから見ても、おたくの高瀬みくコス、すこぶる可愛いらしいでござるよ」
「萌え~っ! リっ、リアル高校生ですか?」

勇者の登場を待っていたかの様に、ひとりが買い物をはじめると、一斉にお客が集まってきて、スペース前は一転して大混雑となった。
だれも、作者のぼくの事なんか目もくれない。
みんな、みくタンのコスプレをした栞里ちゃんから、本を渡してもらいたいらしい。

「買ってくれてありがとう。みくの恥ずかしいとこいっぱい見られちゃうけど、嬉しいです。新刊も楽しみにしといてね」

栞里ちゃんもだんだんノッてきたのか、そんな営業トークまで織り交ぜる様になった。
ついには握手を求めてくるお客まで現れて、そのうちみんな本を買ったあとに手を差し出す様になり、まるで某アイドルグループの握手会みたいになってしまった。

つづく
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