恋とかできるわけがない 〜ヲタクがJC拾ってもなにもできない件

茉莉 佳

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6th stage

未成年は18禁本を見ちゃいけない

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 サークルスペースではヨシキが店番してて、麗奈ちゃんもまだいたが、ふたりとも栞里ちゃんのコスプレ姿を見て、驚いた様子。

「きゃ~~っ、可愛い~~♪ 高瀬みくちゃんね! 似合ってる~♪」

真っ先に嬌声きょうせいを上げたのは、麗奈ちゃんだった。

「あ、栞里ちゃん。こっちはコスプレイヤーの美咲麗奈さん。そこに座ってるのが、ぼくの相方のヨシキ」

ふたりにも栞里ちゃんを紹介する。
麗奈ちゃんに会わせると、どんな事を吹き込まれるかわからないから不安だけど、行きがかり上、しかたがない。

「はじめまして。ヨシキって言います。栞里ちゃんは今日がコスプレデビュー? すごく可愛いね」

ヨシキは優しく微笑みかける。栞里ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤らめ、うつむいた。

おいおいヨシキ。
あまりカッコいいキメ顔で、栞里ちゃんを見つめるんじゃない!
彼女がおまえに惚れてしまったら、どうするんだよぉ。
こいつに栞里ちゃんを会わせるのも、別の面で不安だ、、、orz

「その衣装すっごい可愛いよね~。あたしも欲しいんだけど、値段が高くって買えないの。いいな~。羨ましいな~。ちょっと見せてよ。参考にしたいし」

栞里ちゃんの着ている『高瀬みくスーパーアイドルデート服』をあちこち触りながら、麗奈ちゃんが妬ましげに話しかける。栞里ちゃんは戸惑っている様子。

「ど、どうも…」
「すっごいスカート短いよね。アンダースコートはちゃんと穿いてる? パンツ狙いのヤツとか多いから、ローアングルで撮るカメコには気をつけてね。初心者はその辺のガードが甘いから、狙われやすいのよ」
「え? ええ…」

馴れ馴れしく栞里ちゃんの腕に手を回して、麗奈ちゃんはコスプレのアドバイスなんかはじめた。

「すっごいこだわりの激しいオタクなカメコは、ポーズ指示が細かいから、あんまり気にしないでテキトーにスルーしていいわよ」
「はぁ、、、」
「ねえねえ、あとであたしのボカロの衣装も着てみない?」
「え?」
「せっかくだからいろいろ着てみようよ。服の取り替えっこしよ~よ。可愛いと思うよ~」
「…」
「あたしのボカロ服。オーダーメイドで作った特注品なのよ。あ、でも栞里ちゃんじゃ、胸がかなり余りっちゃうか」
「…」
「はははは。そのかわり、ウエストと尻はガバガバなんじゃね?」

どう応えていいかわからずうろたえてる栞里ちゃんに、ヨシキが横からチャチャを入れてきた。
さりげなく栞里ちゃんの体型ディスって、マウント取る麗奈ちゃんも黒いけど、ヨシキの切り返しも毒があるな、、、
って、この険悪な雰囲気を、なんとかしないと; ; 

「ミノル。オレもう留守番飽きた。そろそろカメコに戻りたいぞ。おまえと栞里ちゃんで、ここの売り子やってくれ」

カメラを持って立ち上がったヨシキは、ぼくたちに席を譲ると、麗奈ちゃんのおしりをパシッと叩いた。

「麗奈。撮影行こうぜ。おまえのそのデカパイと尻、サイコーだよ。もっと撮らせろよ。うんとエロい感じで」
「やんっ。もうっヨシキったら。バカ!」

そう言ってお尻を押さえた麗奈ちゃんは、まんざらでもない様子で、撮影スペースへ向かうヨシキのあとを追った。

「じゃ。あとよろしくな」

そう言ってヨシキは振り向き、ニヤリと笑う。

そうか。
『撮影に行く』ってのは、ぼくたちの事を思ってのことか。

今の流れがまずいのを察して、ヨシキは麗奈ちゃんを連れ出してくれたんだ。
ふたりを引き離してくれて、助かった。
栞里ちゃんといっしょに、まったり売り子もできるし。
サンキュ、ヨシキ。


「な、なんか、初対面なのにゴメンね。変な奴らで」
栞里ちゃんに椅子を勧めながら、ぼくは彼女をうかがった。
イベント自体にまだ慣れてない彼女は、左右のスペースを見回したり、テーブルの上の本を眺めたりと、落ち着かない様子。

「ううん。ちょっとびっくりしたけど…」
「しばらくここで売り子でもして、イベントの雰囲気に慣れるといいよ」
「うん」
「売り子っていっても、そんなに難しい事ないから。お客さんからお金受け取って、この紙袋に本を入れて渡すだけ。本の値段は値札に書いてるから。
あ、このノベルティとペーパーもいっしょに入れてね。ポスカは1枚150円だけど、10枚以上まとめ買いした人には、1枚120円に割引するんだよ」

テーブルに並べられた本やグッズを指差し、ぼくはだいたいの流れを説明した。

「…これ。お兄ちゃんが描いた本?」

山積みになった本を一冊手に取って、栞里ちゃんは訊きながらパラパラめくる。

ヤバい!

それはR-18指定の、『リア恋plus_高瀬みく』触手系陵辱本!
今まで描いたヤツでいちばんエロく、鬼畜度の高い本だ!!
18歳未満の栞里ちゃんが見ちゃいけない!!!

「………」

案の定、パタンと本を閉じてテーブルに戻した栞里ちゃんは、真っ赤になってうつむいた。

「……エロい」

ひと言そうつぶやくと、とがめる様にジトっとぼくを見る。

「ごっ、ごめん」
「…ま。いいけど」
「一応18禁本だから、栞里ちゃんは中身見ないで売ってね」
「…そうする」

なんか気まずい。
ぼくがこんなエロマンガを描いて売ってるのを、栞里ちゃんに知られるのって。

つづく
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