弟を好きになりました

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中学生編

嫉妬と雨音(R15

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 律も中学3年。高校へ入ったら一緒に暮らすよって約束を貰えたおかげで、俺は律が囁く永遠を信じられるようになってきた。
 俺の大部分は律への想いで占められているから、同時に仕事も上手くいくようになった。
 心の余裕が生まれたからかな……。前なら律が来ない日でもひょっとしたらを考えて家で待機してたけど、飲み会にも顔を出すようにした。
 相変わらず人間関係は当たり障りなく、律が最優先なのは変わらない。
 
 律は春の身体測定で167だったらしく、ついに俺との差は8センチまで縮まった。来年には抜かされているかもしれない。
 変声期も完全に終わって低い綺麗な声になった。男にしては少し高めなのかな。俺と似てるとは思うのに、なんだか艶がある気がする。

 ……あの時の声とか。
 低く囁かれると本気で腰が砕けそうになる。


 
 季節は春になって、そして梅雨が来た。最近は毎日しとしと雨が降っている。
 
「最近雨ばかりだね」
 
 ベランダの窓から外を眺めながら律が呟く。暗い夜空から降り注ぐ雨がガラス戸を濡らす。
 
「梅雨だから」
 
 俺もそれに並んで寄り添う。律が肩に頭を乗せてきた。
 もう立っていても簡単に頭が乗っちゃうんだな。愛しくて髪を軽く撫でた。律が幸せそうに笑ったので、撫でるだけじゃ物足りなくて抱きしめた。
 明日は休みだから今日は最後までかな。触れ合ってるだけも幸せだけど、もう俺から欲しくなる。
 唇をゆっくり近付けて額にキスをしようとした瞬間、後ろで携帯が鳴った。
 着信音、仕事仲間からだ。まさか明日出勤とか言わないよな。
 
「ごめん、仕事」
「うん」
 
 電話に出る。毎日聞いてる声が響く。
 書類をお前が持ち帰ってるかもしれないから確かめてくれ、という内容だった。
 確認すると告げて電話を切る。
 
「ちょっと部屋確認してくる」
「戻って来たら雨、一緒に見ようね。見ながら待ってる」
 
 雨を見るよりもう律と抱き合いたい感じなんだけど。
 そう思いながら、部屋へ行って急いで鞄を探る。
 今日に限っていくつか持ち帰ってて、確認に手間取った。
 ……あ、これだな。
 
 リビングへ戻ると、律がやたら不機嫌そうな顔でソファに寝転がっていた。
 雨見てるって言ってたのに。
 
「律? どうかした?」
「今、電話あって……その書類じゃなかった、って言ってた」
「電話?」
 
 見れば律は俺の携帯を手に持っている。
 
「ごめん、勝手に出て。持って行こうと思ったんだけど、通話押しちゃったみたいで」 
「いや、いいけど……。そうか。人騒がせだなー」
「ごめんなーって、いっぱい謝ってた」
「律に?」
「兄さんと間違えてたんだと思う」
 
 確かに電話越しなら俺と律を間違えてもおかしくなさそうだ。
 直に聞けば律の方がぐっとくる声をしてるんだけど。
 律は俺の携帯を口元にあてながら相変わらず難しい顔をしている。
 
「律……?」
「征って呼んでた、兄さんのこと」
「え?」
 
 トーンを低くして呟かれた俺の名前に、鼓動がどきりと跳ね上がる。
 兄さんって呼ばれるの好きだけど、名前もなんか新鮮な感じ。
 
「下の名前で呼ぶ同僚くらい、それはいるよ」
「そうだよね、判ってるんだけど……」
 
 律が手を伸ばして声なく俺を呼ぶ。吸い寄せられるように近付くと、ぎゅっと抱きしめられた。
 
「なんか腹が立つんだ。僕の兄さんを気安く呼ぶなって」
 
 これ、もしかして嫉妬されてる?
 恋人同士になる前に、兄弟として独占欲示されたことはあったけど……。
 ど、どうしよう、なんか嬉しい。
 今まではずっと、俺が妬く側だったから……。 

「俺は律のだよ」
「うん」
 
 躊躇いなく肯定してもらえて、頭の芯が痺れる。
 抱き締められた身体を、そのままソファーに押し倒されて、シャツをまさぐられた。
 
「り、律……」
「抱かせて、最後まで」
「まっ、待って、ここで……? んっ」
 
 キスで抵抗を封じられる。やばい、ここ、ローションもゴムもないのに。
 前ここでされかかった時は、な……舐め、られたし……。
 
「ダメ、だって。その……。するなら、お風呂入るから」
「そのままでいい」
「だ、だめ……」
 
 嫉妬をしているせいか、いつもより強引に肌に口付け、吸い上げてくる。荒々しく触れてくる指先が、ことのほか気持ちよすぎてやばい。なんだこれ。
 
「……ふぅん」
「な、何……?」
 
 笑った律に、俺は本気で恐怖を覚えた。初めての時以来、こんなふうに感じたことなかったのに。
 それに……強引に進めてくる時もあるにはあったけど、いつでも律は優しかった。
 
「初めての時に怯えてたからさ、こういうの嫌いなのかと思ったけど、兄さん実は、ちょっと酷くされるの好き?」
「そんな、変態みたいな……」
 
 いや、確かに俺は律に関してだったら変態だけど、そんな性癖ない、はずなんだ……けど。
 
「でもここ、もうこんなになってる」
「うぁっ……。痛いって、律……そんな強く握ったら」
「じゃあ舌で舐めるならいい? 強く吸い上げてあげる」
「や、待って……! っ……い、っちゃうから」
 
 律の指先は気持ち良すぎるし、何より怒っていると言っても俺にじゃなくて、妬いてるだけ。だからちょっとした優越感というか、嬉しさみたいなところもあって……。凄く、感じた。
 だって律がそれだけ俺を求めてくれてるってことだから。他の誰にも渡したくないほど。自分だけのものにしたいんだって律の気持ちが伝わってきて、触られた場所から全部熱くなっていく。
 
「可愛い。ねえ、絶対に……。こんな可愛い姿、僕以外には見せないでね?」
「見せない。見せないよ。律だけ。大好き、好きだよ……。でも、その……そのままするなら、せめてゴム……」
「だめ。そのまましたい」
「じゃあお風呂……」
「いいから……足、開いて」
「っ……」
 
 準備が何もなくても、ゆっくり律に触れるだけで俺の身体は全部開いていく。時間をかけて舐めて丁寧にほぐされて、そのまま結局最後までソファーでしてしまった。




 正直、やばいくらいに燃えた。多分律もいつも以上に興奮してたし、肩に噛み跡とかつけられてしまった。そんな跡すら、愛しい。
 
「ごめんね、我慢できなかった。兄さん、お風呂行く?」
「ん、うん……」
「…………征」
 
 律が俺の名前を呼び捨てにして、ちゅっと頬に口付けてきた。ぞくぞくっと、足の辺りから頭のてっぺんまで、快感が駆け上がる。
 
「行こうか」
「ダメ、腰……立たない」
「え、ごめん、そこまで酷くしちゃった? そのまま出しちゃったし」
 
 俺はゆっくりと首を横に振った。身体を見て悟った律が、嬉しそうに笑って俺を抱き締める。
 
「……もう一回、する?」
「ん……」
 
 こんな状態の身体で、嫌だなんて言ってみせたところで結果は同じだからキスをして、抱き返した。
 ローションなんて使ってないのに、雨の音がささやかになってしまうほどの水音で部屋が埋め尽くされていた。
 
 ……ソファは見事に買い換えになったけど、後悔はしてない。
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