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ステージ7
繰り返し
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片恋期間もあったとはいえ、真山くんと恋人同士でいられたのは実質身体をつなげたあの日だけ。
お正月にかわしたキスも、あの日の出来事も、なかったことになっている。少なくとも、表面上は。
真山くんはもう、俺のことを好きだって言わない。俺も何も言わない。親友同士の日々だ。
協力してくれた香織さんには、真山くんは今家のことで大変だから、もうしばらくはこのままでいようと思う、と話してある。
一度海外へ飛んだという話も伝わってるから、信じてもらうのは簡単だった。
……まあ、実際、真実のほうが真実らしくない話だからな。
親友同士の振りをしていても想いが通じ合った過去は消えないし、何より今は……この日常が期限付きだということを知ってしまっている。
今度の真山くんは、いったいどんな気持ちを抱えてこの世界を去っていくんだろうか。
電子の海にとけるのは、いったいどんな感じがするんだろう。
前にちらっと聞いた感じでは、向こうに違う日常が待っているって訳でもなさそうだった。ただ暗い海の中を、泳ぐような感じなのかな……。
真山くんは結局、こたつより先にベッドを買った。狭いシングルルームにセミダブル。
暖を取るためとはいえ、同じベッドでひっついて眠っているとさすがに妙な気分になってくる。
寝ぼけてうっかり背中に擦りつけてしまった時は、後始末が大変だった。
そんな状態で眠っているせいかいつの間にかくっつくことに躊躇いはなくなっていて、ベッドへ座る真山くんに背中からぎゅうっと抱き着いてみた。
「お前な~。親友同士でこの距離は、おかしいだろ」
どうやら真山くんの中では、まだいつものことになってないらしい。意識されているにしては、口調はいつも通りだ。
でも俺は抱き着いていたい。できるだけ、この体温を覚えていたかった。
嫌がるのもなんだか可愛くて、思わず背中にほお擦りする。泣きたいくらい、温かい。
「真山くん、スキンシップ好きなんだからいいじゃん」
「ったく。襲うぞ」
「襲えないくせに」
「お前、残酷だな」
「……ごめん、わかってる。でも、君が……この世界からいなくなることを考えると、たまらないんだ」
だって最近……あまり大学へ行かなくなったじゃないか。起きてる時間も短くなった。
……嫌でも、そろそろなんだって、わかってしまう。
朝起きて、君がいることを確認する。
毎日が不安で、それでも君が傍にいることで安心するなんて、なんだか変な感じ……。
そして一月の終わりには、真山くんは一日の半分以上を寝て過ごすようになっていた。
「なんだ……。また大学休んだのか?」
起きた真山くんが、俺の頬に手を触れさせる。
「だって……」
「オレ、どうせ寝てるんだから……行ってきたらいいのに。お前がいる時間は、なるべく起きてるようにするからさ」
「その間に、君がいなくなるかと思ったら、怖くてダメなんだ」
「ったく、引きこもりにでもなるつもりかよ。馬鹿だな」
そう言って笑った次の日、君は再び俺の前から姿を消した。
さよならの言葉はなかった。前より唐突ではなかったけど、それでも俺は一日中泣いた。
再び彼をインストールする? 同じことになるかもしれないのに。俺にとっても、彼にとってもつらいだけなのに。
でも、もし、今度は俺のことを覚えていたら……?
君にまた、初めまして、と言われることが……酷く、怖かった。
お正月にかわしたキスも、あの日の出来事も、なかったことになっている。少なくとも、表面上は。
真山くんはもう、俺のことを好きだって言わない。俺も何も言わない。親友同士の日々だ。
協力してくれた香織さんには、真山くんは今家のことで大変だから、もうしばらくはこのままでいようと思う、と話してある。
一度海外へ飛んだという話も伝わってるから、信じてもらうのは簡単だった。
……まあ、実際、真実のほうが真実らしくない話だからな。
親友同士の振りをしていても想いが通じ合った過去は消えないし、何より今は……この日常が期限付きだということを知ってしまっている。
今度の真山くんは、いったいどんな気持ちを抱えてこの世界を去っていくんだろうか。
電子の海にとけるのは、いったいどんな感じがするんだろう。
前にちらっと聞いた感じでは、向こうに違う日常が待っているって訳でもなさそうだった。ただ暗い海の中を、泳ぐような感じなのかな……。
真山くんは結局、こたつより先にベッドを買った。狭いシングルルームにセミダブル。
暖を取るためとはいえ、同じベッドでひっついて眠っているとさすがに妙な気分になってくる。
寝ぼけてうっかり背中に擦りつけてしまった時は、後始末が大変だった。
そんな状態で眠っているせいかいつの間にかくっつくことに躊躇いはなくなっていて、ベッドへ座る真山くんに背中からぎゅうっと抱き着いてみた。
「お前な~。親友同士でこの距離は、おかしいだろ」
どうやら真山くんの中では、まだいつものことになってないらしい。意識されているにしては、口調はいつも通りだ。
でも俺は抱き着いていたい。できるだけ、この体温を覚えていたかった。
嫌がるのもなんだか可愛くて、思わず背中にほお擦りする。泣きたいくらい、温かい。
「真山くん、スキンシップ好きなんだからいいじゃん」
「ったく。襲うぞ」
「襲えないくせに」
「お前、残酷だな」
「……ごめん、わかってる。でも、君が……この世界からいなくなることを考えると、たまらないんだ」
だって最近……あまり大学へ行かなくなったじゃないか。起きてる時間も短くなった。
……嫌でも、そろそろなんだって、わかってしまう。
朝起きて、君がいることを確認する。
毎日が不安で、それでも君が傍にいることで安心するなんて、なんだか変な感じ……。
そして一月の終わりには、真山くんは一日の半分以上を寝て過ごすようになっていた。
「なんだ……。また大学休んだのか?」
起きた真山くんが、俺の頬に手を触れさせる。
「だって……」
「オレ、どうせ寝てるんだから……行ってきたらいいのに。お前がいる時間は、なるべく起きてるようにするからさ」
「その間に、君がいなくなるかと思ったら、怖くてダメなんだ」
「ったく、引きこもりにでもなるつもりかよ。馬鹿だな」
そう言って笑った次の日、君は再び俺の前から姿を消した。
さよならの言葉はなかった。前より唐突ではなかったけど、それでも俺は一日中泣いた。
再び彼をインストールする? 同じことになるかもしれないのに。俺にとっても、彼にとってもつらいだけなのに。
でも、もし、今度は俺のことを覚えていたら……?
君にまた、初めまして、と言われることが……酷く、怖かった。
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