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本編
煩悩と除夜の鐘2(R18
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元々少し柔らかくなっていたのもあって、ローションを足した指先を三本くわえこめるようになるまで、そう時間はかからなかった。
指の腹で何度もいいところを押してやると、東吾さんは綺麗な金色の髪を振って乱れ、早く僕ので泣かせてやりたい気持ちでいっぱいになる。
もっと丁寧にしたかったけど、僕の理性が先に限界を迎えてしまった。
東吾さんの瞳も身体もすっかりとろけてるし、多分……大丈夫だよな。うん、大丈夫。
自分に言い聞かせるようにして、指を引き抜いた。
完全に引き抜く間際、中がきゅうぅっと、指に吸い付いて収縮する。
「は……っ、あ」
名残惜しげな東吾さんの声と中の動きに、僕の熱はますます体積を増した。もう張り詰めて痛いくらいだ。理性より先にこっちが暴発しそう。
「僕の指、そんなに気持ちいいですか?」
「うん……」
東吾さん、凄くホワホワしてて、僕の言葉がちゃんと届いてるか不安。なんかこれ、このままヤッちゃっても大丈夫なのかな。
でも、王子様の恥ずかしさのツボって多少ズレてるし、素直なのもいつものことだから……。
「指じゃなくて、そろそろこっち……入れますけど」
ゴムを手早くつけてから足をかかえあげて先端を押し当てると、東吾さんの目がハッと見開いて僕の身体を押し返した。
「ま、待って。少し……待ってくれないか」
「やっぱり、怖いですか?」
「いや……。実は、洗っていた時はね、凄く気持ち悪かったんだ」
「でも、僕の指は気持ち良さそうにしてましたよ」
「うん。君の指だと、気持ちよかった……。指でもそうなのに、それを入れられたらどうなるかわからなくて、心の準備が」
この人はもー……。そんな台詞を吐かれて止まれる男がいると思うのか。
「すみません。僕の愚息がもう準備バッチリすぎて限界です」
「ぐそくって?」
「……少し、黙って……。舌を噛んじゃうかもしれませんから」
さっき探っていたのとは別の指を東吾さんの口へ突っ込んで身体を押し進める。
鈍い痛みが指先に走ったけど、東吾さんの苦痛はこれ以上に違いない。
薄い膜一枚越しでも充分に伝わる熱さと、きつい締め付け。搾られてるみたいで、すっごい気持ちがいい。
「力抜いて……。指、抜きますから、喋らないできちんと息してくださいね」
東吾さんが頷いて、僕の指を舐めてから大きく息を吸った。
……なんだ。思った以上に、余裕がありそうじゃないか。
「は、入って……る?」
「まだ半分ですよ。太いとこ抜けたから、もうすぐ全部」
「凄く変な感じだ。中がいっぱいで、苦しくて、でも、嬉しい」
「東吾さん」
可愛すぎる。無茶苦茶に貪って喘がせたい。僕はそのまま、最奥を目指して深く深く突き上げた。
「っ……ア! 待っ、せーた……ぁ」
「すみません。もう待てません」
やっぱり声は抑えられないみたいで、東吾さんはまた服を手繰り寄せてさっきより強く噛み締めてしまった。
もっと心置き無く喘がせてあげたいし僕も聞きたいけど、今日は仕方ないか。
ようやく入れた東吾さんの中は熱くてきゅうきゅうしてて、記憶にある穴なんかより遥かに気持ちいい。
思うがまま突き上げそうになるのをぐっとこらえて、優しく中を擦る。
東吾さん初めてだし、優しくするって言ったし……。本当なら入ったまま、しばらく動かないであげたほうがいいんだろうけど、気持ちよすぎて動かさずにはいられない。
腰を引くと、先から根元まで順に揉みしだかれるみたいでやばい。
「何これ、気持ちよすぎ。と、東吾さんも……ちゃんと、気持ちい?」
気持ちよさから声を殺してるんだったらいいけど、苦痛からだったら可哀想だ。
東吾さんは服をくわえたままコクコクと頷いて、ねだるように自分から腰を押し付けてきた。
無意識かどうかはわからないけど、こんなことしてくれるなんて思わなかった。凄い。興奮で頭が煮えちゃいそう。
これなら、遠慮は……要らない、かも。
ぬるつく中を舐めるように小刻みに突き上げると、東吾さんはくぐもった息を洩らしながら僕を締め付けた。
今、噛み締めてる服を取り上げたらどんな声を上げてくれたんだろう。聞きたい。僕のほうが焦らしプレイをされているみたいだ。
「ん、ん……んっ」
でも、何度も聞こえるこの呻き声だけで充分エロくて煽られる。
動かす度にどろりとした熱が背中から腰へたまっていって、覚えのある射精感に腰を止める。
イキたいけど、東吾さんより先にイクっていうのはどうなのか。それに、この気持ちよさを、もう少し引き伸ばしたい気もする……。
「東吾さん、イッていいですか? 貴方の中でイキたい」
戯れにお伺いを立てながら耳にチュッとキスをして、軽く噛んで舐めた。
……うわ。わ。中が、なんか……っ。今までとは違う感じで締め付けてきて……ッ。我慢ができない。
断続的に痙攣してるし、これってもしかして、東吾さんイッてる?
確認する間もなく、腰が砕ける気持ちよさに、僕はあえなく墜落させられた。
「は、はああー……」
東吾さんの平たい胸に倒れ込んで溜め息を吐く。
お腹がぬめってしたから、やっぱり東吾さんもイッてたんだな。
よかった、僕だけ出しちゃわなくて……。
「東吾さん、口、あって開けて」
噛んでいた服を引っ張り出すと、すっかり涎でべちゃべちゃになっていた。よほど噛み締めたのか、穴も開いてる。
口の回りについた唾液を舐めとるようにキスをして、舌を絡ませた。
息苦しそうにはしてたけど、僕のキスには健気に応えてくれてる。
「初めてなのに、中だけでイクなんて凄いですね」
「ち、違う。君が……。な、中で、出すとか言うから、そ、想像したら……」
「えっ」
それはそれで、もっと凄いような気がするんだけど。
「コンドームはつけてますから、直接は出てないですよ」
「え……男同士でもつけるものなのかい?」
「お腹壊しちゃうらしいんで」
「そうか……」
「……あの。もしかして、中に……出してほしかった、とか」
「うん」
頬を染めながら、こくりと頷く。どれだけ素直なんですか、王子様。
中に出してほしかったとかさあ。うわあああ。次は絶対出してやる。後で処理してあげれば大丈夫だよね、多分。
僕の王子様が素直可愛すぎてツライ。
できるはずないのに、孕ませてしまいそうだ。
「ふふ……。せーたとこういう関係になれて嬉しい」
「僕もです」
しちゃったらもう、東吾さんがますます愛しすぎて仕方ない。
「でも、本当に声が押さえられなくてビックリした! 押し出されるような感じで」
「そ、そうですか……」
さすがのムードクラッシャー。大発見した小学生みたいに目を輝かせているからか、エロイ雰囲気が消えて後ろめたい気分になってきた。
こう、天使の羽をもいでしまったかのような……。
「あっ。もちろん気持ちよかったからっていうのもあるけど」
「東吾さんも気持ちよくなってくれたなら良かったです。僕だけだったら申し訳ないなって思ってたので」
「それは私も思っていたよ。こんなに気持ちのいいものだとは思わなかったし。せーたの指先は神が琴を奏でるように芸術的だった」
キザを通り越して面白い台詞になってますよ、東吾さん。いや割りと元からか。
上手いって褒めてもらったんだと前向きに喜んでおこう。
今から次の話なんてしにくいけど、声が抑えられないとなると……アパートでするのはきつそうだなあ。東吾さんはそのあたり、どう考えてるんだろう。
感動するほど気持ちよかったみたいだから、すること自体は問題なさそうだけど。
「あ、シャワー……。先どうぞ。べたべたして気持ち悪いでしょう」
「こういう時、一緒に入れたらいいいのにね」
「まあ、ちょっと物理的に無理ですよね……」
僕だってできることなら一緒に入ってイチャイチャしたい。でもそれが許されない狭さ。みっちり詰まってしまうレベルだと思う。
このボロアパートなら風呂とトイレが共同でないだけでも奇跡だけど。
もし共同だったりついてなかったりしたら、さすがに東吾さんは別のアパートへ越していたかもしれない。ついてて良かった。
「私はあとでいいから、君が先に入るといい」
「え、でも……。もしかして、痛くて動けないとかじゃないですよね?」
「それは大丈夫。せーたはとても優しかったから」
「なら……」
まさかこんな時までレディファーストを発揮してるんじゃなかろうな。今レディだったのはどちらかといえば東吾さんなのに。
「べたついているのは君も一緒だし、むしろ……、その。私ので、汚れているわけだから」
ああ、そういう。心情を考えたら確かにそうか。
東吾さんは手にした服と僕の身体をチラチラと見比べている。
拭こうにも、涎まみれで拭けないからモヤモヤしてるのかもしれない。
「それに……君の匂いに包まれて、もう少しだけ余韻に浸っていたいかな」
「東吾さん……ッ」
思わず抱き締めて、キスをしてしまった。
改めて思う。僕はどうにも、この人の言動すべてに弱いみたい。
しばらくイチャイチャしながらキスを繰り返していると、除夜の鐘が鳴り始めた。
「……せっかくだから、とりあえず身体は拭くだけにして、鐘の音を聞きながら一緒に新年を迎えましょうか」
「いいね。そうしよう」
タオルをお湯で濡らして、お互いの身体を拭く。素っ裸なのもアレなので、僕は部屋着を着たけれど……。
「東吾さん、僕の服入りますか?」
「身長も結構違うけど、せーたは細いから……」
そこは反論できない。東吾さんがどうのっていうより、僕が貧弱だからな。普通の服は確かに無理だろう。
「このロングティーシャツなら、フリーサイズだし、多分入るんじゃないですかね」
「これ、何かのアニメの? せーた、アニメなんて見てたっけ」
「昔、友人に貰ったんですよ。勿体ないから着てました」
それを東吾さんに着せるハメになるとは。
「初めて着るよ。ど、どうかな?」
……イケメンが着ると、美少女ティーシャツでもサマになるんだな。凄い。
「少ししたらお風呂に入るし、ノーパンでも平気ですか?」
「あっ、う、うん。これ、膝上はギリギリあるし……。なんか心許ないけど」
東吾さんの部屋は隣なんだから、取りに行けばいい話なんだけど。離れがたくて、言えない。東吾さんも言い出さない。
同じ気持ちでいてくれてるのか、それとも気づいてないだけか。
「じゃ、布団へ入ってぬくぬくしながら除夜の鐘聞きましょう。湯たんぽも入れますね」
一応バスタオルを敷いていたから布団に被害はなかった。
先に入って東吾さんを招き入れると、素直に潜り込んできてくれた。
ぎゅーっと抱き締めると、幸せで胸がいっぱいになる。あと、あったかい。素足が絡んでくるのもエロくってイイ。
「あっ、ちょっと……足触らないで」
「いいじゃないですか。東吾さんの肌ってすべすべで気持ちいい」
「っ……んん。ダメだって。君の……シャツを、汚したくないよ」
見れば東吾さんは酷く困った顔をしていて、思わず笑いそうになってしまった。
「じゃあ、キスもダメなんですか?」
「や、やらしいのでなければ」
「やらしいキスしただけで、シミができそうになるくらい、感じちゃいそうだから?」
「君は……本当に、こういう時は意地悪だなっ」
「東吾さんが可愛いから」
汚してもいいですよ、と耳元で囁いて、膝上にあるシャツの裾を指先でめくりあげる。
下に何も穿いてないのって、凄くやらしいな。……シャツの柄については、この際忘れておこうか。
「除夜の鐘を聞きながら、こんな、こと……」
「煩悩、ちっとも消える様子がありませんね」
「数えていないからだ。今から数えよう」
「すでにいくつかわからないのに、意味あるんですか?」
「勘で……数えていって、近いほうが勝ちというのはどうかな」
それはちょっと面白そうかも。
「なら僕は、今10で」
「私は15からかな……」
「勝ったら続き、しちゃいますよ?」
「シャワーを浴びるんじゃなかったのかい?」
はたして、効果は……てきめんだった。数えていくうち、煩悩は見事に打ち払われてしまったのだ。
……ただしそれは神の力ではなく、睡魔という抗えない魔の力によって。
よく考えれば激しい運動をした後みたいなものだし、寒い冬に二人で布団にぬくぬく入りながら数なんて数えてたらオチなんて見えてたよなー……。
僕より疲れただろう東吾さんは、まだすうすうと規則正しい寝息を立てている。
カーテン越しの空は既に明るく、隙間から入る太陽の光が東吾さんの髪をキラキラと照らしていた。
金色が透けて、眩しいくらい。天使みたい。いや、天使っていうか、本当に。
「王子様、みたいだなあ……」
眠れる森の美女ならぬ、王子様。
僕はしがない貧乏学生だけど、素敵なハッピーエンドを迎えてしまった。
でもこれは現実で、物語もおしまいになんてならない。
僕が口づけたら綺麗な青い瞳を瞬かせて、笑顔を見せてくれる。また、幸せな一日が始まるんだ。
思わず唇を寄せて触れるだけのキスを落とすと、本当に王子様が目を見開いた。それはもう、見事にパッチリと。
「私にとっては、せーたのほうが王子様なのだけれど」
「……起きてたんですね」
「キスで、目が覚めたんだよ」
僕が、王子様だから?
「嘘ばっかり。会話の流れ、わかってるじゃないですか」
独り言、聞かれてた。恥ずかしい。
「ふふ。明けましておめでとう、せーた」
「お、おめでとうございます……」
「昨年は、本当に世話になってしまった。今年は私のほうが、何かしてあげられたらいいな」
確かに大変お世話をした。
年末ギリギリだったけど、下半身なら僕もお世話になっ……いや、正月早々、下ネタになる発言は控えておこう。
おきまりの挨拶をして、布団の中で身を寄せあう。
昨日湯たんぽを入れた段階で一旦ストーブを止めてしまったから肌寒い。近くにある体温は酷く貴重だ。
「最後の一回は、結局聞けずじまいか……」
「どっちが勝ったんでしょうね」
「せーたかな」
「どうしてそう思うんです?」
「せーたが勝ったことに、したいから」
「それって……」
昨夜の続きをしていいってこと?
「汚したくないから、シャツを脱いでからで……。あと、声が抑えられないときついから、触るだけ……で、いいかな? 私も君に触れたいな」
「はい」
そういえば昨日はキスマークつけなかったな。
今日はお互いに、つけあってみようか。
外気の寒さなんて気にならないくらい、互いの熱を高めあう。
これが終わったら、一緒にお雑煮を食べて初詣。去年までなら全部、めんどくさくてやらなかったことだ。
……でも、東吾さんとなら、面倒ごともそう悪くはない。
今年は大変そうだけど、幸せな一年になりそうだ。
指の腹で何度もいいところを押してやると、東吾さんは綺麗な金色の髪を振って乱れ、早く僕ので泣かせてやりたい気持ちでいっぱいになる。
もっと丁寧にしたかったけど、僕の理性が先に限界を迎えてしまった。
東吾さんの瞳も身体もすっかりとろけてるし、多分……大丈夫だよな。うん、大丈夫。
自分に言い聞かせるようにして、指を引き抜いた。
完全に引き抜く間際、中がきゅうぅっと、指に吸い付いて収縮する。
「は……っ、あ」
名残惜しげな東吾さんの声と中の動きに、僕の熱はますます体積を増した。もう張り詰めて痛いくらいだ。理性より先にこっちが暴発しそう。
「僕の指、そんなに気持ちいいですか?」
「うん……」
東吾さん、凄くホワホワしてて、僕の言葉がちゃんと届いてるか不安。なんかこれ、このままヤッちゃっても大丈夫なのかな。
でも、王子様の恥ずかしさのツボって多少ズレてるし、素直なのもいつものことだから……。
「指じゃなくて、そろそろこっち……入れますけど」
ゴムを手早くつけてから足をかかえあげて先端を押し当てると、東吾さんの目がハッと見開いて僕の身体を押し返した。
「ま、待って。少し……待ってくれないか」
「やっぱり、怖いですか?」
「いや……。実は、洗っていた時はね、凄く気持ち悪かったんだ」
「でも、僕の指は気持ち良さそうにしてましたよ」
「うん。君の指だと、気持ちよかった……。指でもそうなのに、それを入れられたらどうなるかわからなくて、心の準備が」
この人はもー……。そんな台詞を吐かれて止まれる男がいると思うのか。
「すみません。僕の愚息がもう準備バッチリすぎて限界です」
「ぐそくって?」
「……少し、黙って……。舌を噛んじゃうかもしれませんから」
さっき探っていたのとは別の指を東吾さんの口へ突っ込んで身体を押し進める。
鈍い痛みが指先に走ったけど、東吾さんの苦痛はこれ以上に違いない。
薄い膜一枚越しでも充分に伝わる熱さと、きつい締め付け。搾られてるみたいで、すっごい気持ちがいい。
「力抜いて……。指、抜きますから、喋らないできちんと息してくださいね」
東吾さんが頷いて、僕の指を舐めてから大きく息を吸った。
……なんだ。思った以上に、余裕がありそうじゃないか。
「は、入って……る?」
「まだ半分ですよ。太いとこ抜けたから、もうすぐ全部」
「凄く変な感じだ。中がいっぱいで、苦しくて、でも、嬉しい」
「東吾さん」
可愛すぎる。無茶苦茶に貪って喘がせたい。僕はそのまま、最奥を目指して深く深く突き上げた。
「っ……ア! 待っ、せーた……ぁ」
「すみません。もう待てません」
やっぱり声は抑えられないみたいで、東吾さんはまた服を手繰り寄せてさっきより強く噛み締めてしまった。
もっと心置き無く喘がせてあげたいし僕も聞きたいけど、今日は仕方ないか。
ようやく入れた東吾さんの中は熱くてきゅうきゅうしてて、記憶にある穴なんかより遥かに気持ちいい。
思うがまま突き上げそうになるのをぐっとこらえて、優しく中を擦る。
東吾さん初めてだし、優しくするって言ったし……。本当なら入ったまま、しばらく動かないであげたほうがいいんだろうけど、気持ちよすぎて動かさずにはいられない。
腰を引くと、先から根元まで順に揉みしだかれるみたいでやばい。
「何これ、気持ちよすぎ。と、東吾さんも……ちゃんと、気持ちい?」
気持ちよさから声を殺してるんだったらいいけど、苦痛からだったら可哀想だ。
東吾さんは服をくわえたままコクコクと頷いて、ねだるように自分から腰を押し付けてきた。
無意識かどうかはわからないけど、こんなことしてくれるなんて思わなかった。凄い。興奮で頭が煮えちゃいそう。
これなら、遠慮は……要らない、かも。
ぬるつく中を舐めるように小刻みに突き上げると、東吾さんはくぐもった息を洩らしながら僕を締め付けた。
今、噛み締めてる服を取り上げたらどんな声を上げてくれたんだろう。聞きたい。僕のほうが焦らしプレイをされているみたいだ。
「ん、ん……んっ」
でも、何度も聞こえるこの呻き声だけで充分エロくて煽られる。
動かす度にどろりとした熱が背中から腰へたまっていって、覚えのある射精感に腰を止める。
イキたいけど、東吾さんより先にイクっていうのはどうなのか。それに、この気持ちよさを、もう少し引き伸ばしたい気もする……。
「東吾さん、イッていいですか? 貴方の中でイキたい」
戯れにお伺いを立てながら耳にチュッとキスをして、軽く噛んで舐めた。
……うわ。わ。中が、なんか……っ。今までとは違う感じで締め付けてきて……ッ。我慢ができない。
断続的に痙攣してるし、これってもしかして、東吾さんイッてる?
確認する間もなく、腰が砕ける気持ちよさに、僕はあえなく墜落させられた。
「は、はああー……」
東吾さんの平たい胸に倒れ込んで溜め息を吐く。
お腹がぬめってしたから、やっぱり東吾さんもイッてたんだな。
よかった、僕だけ出しちゃわなくて……。
「東吾さん、口、あって開けて」
噛んでいた服を引っ張り出すと、すっかり涎でべちゃべちゃになっていた。よほど噛み締めたのか、穴も開いてる。
口の回りについた唾液を舐めとるようにキスをして、舌を絡ませた。
息苦しそうにはしてたけど、僕のキスには健気に応えてくれてる。
「初めてなのに、中だけでイクなんて凄いですね」
「ち、違う。君が……。な、中で、出すとか言うから、そ、想像したら……」
「えっ」
それはそれで、もっと凄いような気がするんだけど。
「コンドームはつけてますから、直接は出てないですよ」
「え……男同士でもつけるものなのかい?」
「お腹壊しちゃうらしいんで」
「そうか……」
「……あの。もしかして、中に……出してほしかった、とか」
「うん」
頬を染めながら、こくりと頷く。どれだけ素直なんですか、王子様。
中に出してほしかったとかさあ。うわあああ。次は絶対出してやる。後で処理してあげれば大丈夫だよね、多分。
僕の王子様が素直可愛すぎてツライ。
できるはずないのに、孕ませてしまいそうだ。
「ふふ……。せーたとこういう関係になれて嬉しい」
「僕もです」
しちゃったらもう、東吾さんがますます愛しすぎて仕方ない。
「でも、本当に声が押さえられなくてビックリした! 押し出されるような感じで」
「そ、そうですか……」
さすがのムードクラッシャー。大発見した小学生みたいに目を輝かせているからか、エロイ雰囲気が消えて後ろめたい気分になってきた。
こう、天使の羽をもいでしまったかのような……。
「あっ。もちろん気持ちよかったからっていうのもあるけど」
「東吾さんも気持ちよくなってくれたなら良かったです。僕だけだったら申し訳ないなって思ってたので」
「それは私も思っていたよ。こんなに気持ちのいいものだとは思わなかったし。せーたの指先は神が琴を奏でるように芸術的だった」
キザを通り越して面白い台詞になってますよ、東吾さん。いや割りと元からか。
上手いって褒めてもらったんだと前向きに喜んでおこう。
今から次の話なんてしにくいけど、声が抑えられないとなると……アパートでするのはきつそうだなあ。東吾さんはそのあたり、どう考えてるんだろう。
感動するほど気持ちよかったみたいだから、すること自体は問題なさそうだけど。
「あ、シャワー……。先どうぞ。べたべたして気持ち悪いでしょう」
「こういう時、一緒に入れたらいいいのにね」
「まあ、ちょっと物理的に無理ですよね……」
僕だってできることなら一緒に入ってイチャイチャしたい。でもそれが許されない狭さ。みっちり詰まってしまうレベルだと思う。
このボロアパートなら風呂とトイレが共同でないだけでも奇跡だけど。
もし共同だったりついてなかったりしたら、さすがに東吾さんは別のアパートへ越していたかもしれない。ついてて良かった。
「私はあとでいいから、君が先に入るといい」
「え、でも……。もしかして、痛くて動けないとかじゃないですよね?」
「それは大丈夫。せーたはとても優しかったから」
「なら……」
まさかこんな時までレディファーストを発揮してるんじゃなかろうな。今レディだったのはどちらかといえば東吾さんなのに。
「べたついているのは君も一緒だし、むしろ……、その。私ので、汚れているわけだから」
ああ、そういう。心情を考えたら確かにそうか。
東吾さんは手にした服と僕の身体をチラチラと見比べている。
拭こうにも、涎まみれで拭けないからモヤモヤしてるのかもしれない。
「それに……君の匂いに包まれて、もう少しだけ余韻に浸っていたいかな」
「東吾さん……ッ」
思わず抱き締めて、キスをしてしまった。
改めて思う。僕はどうにも、この人の言動すべてに弱いみたい。
しばらくイチャイチャしながらキスを繰り返していると、除夜の鐘が鳴り始めた。
「……せっかくだから、とりあえず身体は拭くだけにして、鐘の音を聞きながら一緒に新年を迎えましょうか」
「いいね。そうしよう」
タオルをお湯で濡らして、お互いの身体を拭く。素っ裸なのもアレなので、僕は部屋着を着たけれど……。
「東吾さん、僕の服入りますか?」
「身長も結構違うけど、せーたは細いから……」
そこは反論できない。東吾さんがどうのっていうより、僕が貧弱だからな。普通の服は確かに無理だろう。
「このロングティーシャツなら、フリーサイズだし、多分入るんじゃないですかね」
「これ、何かのアニメの? せーた、アニメなんて見てたっけ」
「昔、友人に貰ったんですよ。勿体ないから着てました」
それを東吾さんに着せるハメになるとは。
「初めて着るよ。ど、どうかな?」
……イケメンが着ると、美少女ティーシャツでもサマになるんだな。凄い。
「少ししたらお風呂に入るし、ノーパンでも平気ですか?」
「あっ、う、うん。これ、膝上はギリギリあるし……。なんか心許ないけど」
東吾さんの部屋は隣なんだから、取りに行けばいい話なんだけど。離れがたくて、言えない。東吾さんも言い出さない。
同じ気持ちでいてくれてるのか、それとも気づいてないだけか。
「じゃ、布団へ入ってぬくぬくしながら除夜の鐘聞きましょう。湯たんぽも入れますね」
一応バスタオルを敷いていたから布団に被害はなかった。
先に入って東吾さんを招き入れると、素直に潜り込んできてくれた。
ぎゅーっと抱き締めると、幸せで胸がいっぱいになる。あと、あったかい。素足が絡んでくるのもエロくってイイ。
「あっ、ちょっと……足触らないで」
「いいじゃないですか。東吾さんの肌ってすべすべで気持ちいい」
「っ……んん。ダメだって。君の……シャツを、汚したくないよ」
見れば東吾さんは酷く困った顔をしていて、思わず笑いそうになってしまった。
「じゃあ、キスもダメなんですか?」
「や、やらしいのでなければ」
「やらしいキスしただけで、シミができそうになるくらい、感じちゃいそうだから?」
「君は……本当に、こういう時は意地悪だなっ」
「東吾さんが可愛いから」
汚してもいいですよ、と耳元で囁いて、膝上にあるシャツの裾を指先でめくりあげる。
下に何も穿いてないのって、凄くやらしいな。……シャツの柄については、この際忘れておこうか。
「除夜の鐘を聞きながら、こんな、こと……」
「煩悩、ちっとも消える様子がありませんね」
「数えていないからだ。今から数えよう」
「すでにいくつかわからないのに、意味あるんですか?」
「勘で……数えていって、近いほうが勝ちというのはどうかな」
それはちょっと面白そうかも。
「なら僕は、今10で」
「私は15からかな……」
「勝ったら続き、しちゃいますよ?」
「シャワーを浴びるんじゃなかったのかい?」
はたして、効果は……てきめんだった。数えていくうち、煩悩は見事に打ち払われてしまったのだ。
……ただしそれは神の力ではなく、睡魔という抗えない魔の力によって。
よく考えれば激しい運動をした後みたいなものだし、寒い冬に二人で布団にぬくぬく入りながら数なんて数えてたらオチなんて見えてたよなー……。
僕より疲れただろう東吾さんは、まだすうすうと規則正しい寝息を立てている。
カーテン越しの空は既に明るく、隙間から入る太陽の光が東吾さんの髪をキラキラと照らしていた。
金色が透けて、眩しいくらい。天使みたい。いや、天使っていうか、本当に。
「王子様、みたいだなあ……」
眠れる森の美女ならぬ、王子様。
僕はしがない貧乏学生だけど、素敵なハッピーエンドを迎えてしまった。
でもこれは現実で、物語もおしまいになんてならない。
僕が口づけたら綺麗な青い瞳を瞬かせて、笑顔を見せてくれる。また、幸せな一日が始まるんだ。
思わず唇を寄せて触れるだけのキスを落とすと、本当に王子様が目を見開いた。それはもう、見事にパッチリと。
「私にとっては、せーたのほうが王子様なのだけれど」
「……起きてたんですね」
「キスで、目が覚めたんだよ」
僕が、王子様だから?
「嘘ばっかり。会話の流れ、わかってるじゃないですか」
独り言、聞かれてた。恥ずかしい。
「ふふ。明けましておめでとう、せーた」
「お、おめでとうございます……」
「昨年は、本当に世話になってしまった。今年は私のほうが、何かしてあげられたらいいな」
確かに大変お世話をした。
年末ギリギリだったけど、下半身なら僕もお世話になっ……いや、正月早々、下ネタになる発言は控えておこう。
おきまりの挨拶をして、布団の中で身を寄せあう。
昨日湯たんぽを入れた段階で一旦ストーブを止めてしまったから肌寒い。近くにある体温は酷く貴重だ。
「最後の一回は、結局聞けずじまいか……」
「どっちが勝ったんでしょうね」
「せーたかな」
「どうしてそう思うんです?」
「せーたが勝ったことに、したいから」
「それって……」
昨夜の続きをしていいってこと?
「汚したくないから、シャツを脱いでからで……。あと、声が抑えられないときついから、触るだけ……で、いいかな? 私も君に触れたいな」
「はい」
そういえば昨日はキスマークつけなかったな。
今日はお互いに、つけあってみようか。
外気の寒さなんて気にならないくらい、互いの熱を高めあう。
これが終わったら、一緒にお雑煮を食べて初詣。去年までなら全部、めんどくさくてやらなかったことだ。
……でも、東吾さんとなら、面倒ごともそう悪くはない。
今年は大変そうだけど、幸せな一年になりそうだ。
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