使用人の我儘

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たくさん(R18

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 慣れるまでたくさんしたいと言ってくれたのに、あれから一向に触らせてくれる気配がない。
 ……と。今までのパターンであれば大体そうなったし、今回もそうなるかなと思っていた。

 ところが。

 秋尋様は夜、部屋へ戻ろうとする俺の服の裾を掴んで言ったのだ。

「昨日はきちんとできなかったから、き、今日……するか?」

 さすがに翌日すぐは無理かと思って遠慮していたのに、まさか秋尋様から申し出てくださるなんて。
 俺が今日どうですかと訊いたところで『また明日な』がエンドレスで返ってきそうな、あの秋尋様が……。

「……朝香?」

 衝撃のあまり無言でいたせいか、秋尋様が不安気な表情で俺の名前を呼んだ。
 はあ。なんだこれ。可愛い。可愛すぎて無理。

「もちろんです! 嬉しいです!!」

 それに昨日の今日で来てくれるってことは、秋尋様も早く俺とセックスできるようになりたいと思ってくれてるってことで……。その事実だけでイケそうなほど興奮するし、飛び上がって喜びたい。でもあまりにはしゃぐのもカッコ悪いかも。いや、全身で喜んでみせたほうが、秋尋様も安心する? 呆れられるのがオチかな。
 少し考えて、俺は秋尋様の身体を抱きしめてそのまま担ぎ上げた。

「うわっ! 馬鹿、人を軽々と持ち上げるな!」
「まあまあ。部屋まですぐですし」

 気が変わってしまう前に、俺の手で部屋へお持ち帰り。

「こんなことしなくたって逃げないのに……」

 結局されるがままになりながらも、不服そうにブツブツ言ってるのがまた可愛い。
 ベッドまで運んだのは愛しさとは別に逃げ道を塞ぐ意味もあったので、俺の意図はきっちり見抜かれている。
 まあ、もし嫌がられたら無理強いなんてできないんだけどさ。

「俺のがどこまで入っているか確認できれば、少しは恐怖も薄れると思うんです」
「だから別に僕は、怖いわけでは」
「そう。お腹が変にならなくなると思うんです!」

 言い直すと溜息をひとつつかれて、ふいっと視線を逸らされた。

「で、どうすればいいんだ?」
「している時に、手のひらをこうやってお腹にあててみてください」
「それって凄く恥ずかしくないか?」
「恥ずかしいですかね」

 深く考えてはいなかったけど、確かに恥ずかしいかも。プレイみたいかも。そしてきっと、とってもえっちだ。
 見てみたさもあって代替案は出さずに返事を待つと、秋尋様が頷いた。

「わかった、やってみる」

 珍しく素直だ。本当にたくさんしてくれるらしいことも含め、なんだかいつもと違う気がする。俺としては嬉しい変化だから、そこを追求するつもりはない。機嫌を損ねて逃げられるのは勘弁だし。

 服越しに肌をなぞって、頬にキスをする。気を取られている間に服を脱がせて、今度は直に指を這わせる。隙を与えずにほぼ毎回この動作をしてるけど、これもマンネリに入るのかなってちょっと考えてたら、秋尋様に手を止められた。

「しなくていい」

 まさか、こんな早くにストップ? 最中よりはマシ? いや、可愛い姿を欠片も見られないほうが俺にとってはツライ。

「じ、じゅんび……してある」

 自分で。準備。秋尋様が。……それって、中を……指で……自分で……?
 めくるめく妄想が、一瞬で頭の中に広がった。

「想像するなよ」
「無理です……。見たいですし……。あっ、でも、俺がしたい……」

 俺のを受け入れるためにほぐしてくれたのかと思うとたまらない気持ちになるけど、かわりにじっくりと開かせる楽しみが失われてしまう。悩ましい。

「何を考えてるか大体わかるけどな。嫌なんだよ。僕だけされっぱなしになるのは」
「俺は秋尋様がイク姿を見られるだけで嬉しいですけど」

 実際、性欲処理としてそれだけしていたこともあった。
 これに関しては挿入できるほうが圧倒的に嬉しいけど。恋人とひとつになりたいという、当然の欲求だ。
 ただ、秋尋様としては、自分だけされるのは恥ずかしいからっていう理由だろうな、多分。でも……俺と同じ理由だったら、とっても嬉しい。

「ほら、もういいからさっさと挿れてみろ」

 ん、とローションを手渡される。秋尋様の準備発言でせっかくえっちな雰囲気になってたのに、あまりにもムードがなさすぎる。
 突っ込むだけなんて、そんな作業みたいなのは、俺はちょっと。

「いいか、朝香。早くしないと、僕の気が変わってしまうんだぞ」
「わかりました!!」

 なるほど……。覚悟の問題だったか。
 ビビリの秋尋様が準備まで終えて次の日には俺の部屋へ来てくれた。それはとても凄いことだし、その事実を考えればやらしい雰囲気は勝手に頭の中に浮かんでくる。

 せめて手のひらに出したローションを、秋尋様が気持ちよくなれますようにって愛情込めてあっためてから塗りこもう。

「あれ……?」
「言うな。何も言うなよ」
「……はい」

 ローション、中に仕込んであった。えっちすぎる。
 俺のに塗りこむんだったら冷たいままでもいいや。ちんちん、めっちゃ熱くなってるから、すぐにあったまるだろうし。

「じゃ、挿れますね」

 秋尋様がこくりと頷いて、自分のお腹にそっと手を添えた。
 もう片方の手は頭の上のあたりで、シーツを手繰り寄せるようにキュッと掴んでいる。少し、震えてる。

 興奮しすぎて目眩がした。血が頭にいってるか、下半身にいってるかわからない。沸騰しそうだから、案外きちんと全身を巡ってるかもしれない。

 秋尋様の膝頭を軽く押さえ、ゆっくりと開かせながら挿入していく。いつもならとろとろになってる秋尋様が、入っていく様子をじいっと見てる。
 自分で慣らしてきたのは、こうやって目できちんと確認したいからって意味も、あったのかな。

「ほ、本当に入っていく……」
「いつもちゃんと、入ってますよ」

 昨日したばかりなのもあって、ほどなくして全部飲み込まれていった。

「どうですか?」
「わからない」

 その、お腹をさすさすってしてるの、外から俺の形を探そうとしてるからですか? たまんない。
 あの。でも、多分。もうちょっと下のほうだと思うんです。

 ……やらしさが切なさで、ちょびっと相殺される。

「さわってわからないくらいなら、お腹を破るようなことはないと思いませんか?」
「そうだな……」
「動いてみますね」
「ああ」
「気持ち悪くなったら、すぐ言ってください」
「ん……ッ」

 昨日とは違って、気持ちよさそうにしてる。嬉しい。
 俺が動くと熱い息を漏らし、たまに手のひらできゅっとお腹を押さえる。

「あ、あっ、あ……ッ」

 俺のほうにも、いつもと違う振動がきてヤバイ。視覚効果もとてつもないし。秋尋様が、俺のを確かめてるっていうのが、もう。
 外からなのに、ちんちんを握られてるみたいな気がする。

「朝香……。こ、怖い」
「えっ」

 秋尋様の目尻から涙が溢れて、一気に熱が引いていく。

「気持ち良すぎて、こわい」

 そのとんでもない発言に、また一気に上がったけど。
 秋尋様……、もうっ。こういうの駆け引きじゃなくて素でやってるんだから、本当に敵わない。熱が下がったり上がったりで俺のほうが気持ち悪くなりそう。

「安心、した顔を、するなっ……」
「これは興奮した顔です」

 涙目で睨まれて頬をつねられる。そんな様子も可愛くて、痛みなんて遥か彼方だ。

「お前のせいだ。本当に……ッ」

 結局俺のせいなのか。でも、甘い響きにしか聞こえない。
 昨日、身体の変化云々って言ってて、俺のちんちんのことかって思ってたけど……。もしかして、前よりも中で感じすぎるようになったからとか、そういう……。そういう、ことだったり?

 秋尋様は自慰も自分ではできないし、ちんちん挿れられるといっぱい感じてしまうって、そんなの、もう、全部俺のせいでいい……。

「秋尋様、好きです。大好きです。もっといっぱい、俺のせいにしてください」

 このまま俺の傍でしか、息ができないくらいになってくれたらいいのに。俺が貴方の傍でしか生きられないみたいに。

 とりあえず、まずは。慣れるまで……ではなく、俺の身体なしではいられなくなるまで、たくさん、しませんか?

 もう慣らす必要がないくらい気持ちよさそうにしてくださる秋尋様を揺すりながら、切にそう思った。
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