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寄り道バースデー(R18
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秋深まり、すっかり日も短くなってきた。
秋と言えば……。読書の秋、芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋。
俺は主には食欲。そして当然、秋尋様の秋!
字だけの話ではなくて、11月に誕生日があるからだ。
毎年プレゼントを贈っては嫌そうな顔で突き返されていたけれど、今年はきちんと受け取ってもらえそうだし。
当日をワクワクと待ちながら、何を贈ろうか想いをはせていたのに……。
「今年もプレゼントは要らないぞ」
「え!? どうしてですか!?」
前もって釘を刺された。要らないって予め言われたのはコレが初めてだ。どうせ突き返すんだから先に言っておこうという優しさ? その優しさ、胸に痛すぎるんですけど。
仲良くなってからも要らないだなんて、お前のくれる安物など必要ないぞってことなの?
「僕に関することだと基本ポジティブなのに、今は暗めのことを考えているな」
「秋尋様は俺をなんだと思ってるんですか。冷たくされたら、普通に傷つきます」
「たまに嬉しそうにしてるけどな……」
「そっ、それは、まあ……そういうこともあります」
でも正直、ショックが大きい。
ハンドクリーム凄く嬉しかったし、俺も何か秋尋様に心からの贈り物をあげたかったのに。
「秋尋様にいただいた誕生日プレゼント、とても嬉しかったです。俺、あの容器を洗って今でも大切にとってあるんです」
「それはもうただのゴミだろう。捨てろ」
無慈悲な……。
「だ、だから、俺も秋尋様に、それくらい嬉しいって思っていただけるものを贈りたかったのです。何かありませんか?」
「必要な物は自分で買うからな」
「でしたら、それを」
「今は何もない」
「でもご両親にはプレゼントを貰うでしょう?」
「ああ。このソファを新調してもらう予定でいたな」
秋尋様はそう言いながら、今俺たちが座っているソファを軽く叩いた。まだ綺麗で、買い換えるには全然早いように見える。
それは一体、おいくら万円になるんだ。
こういうのはお金じゃなくて気持ち。気持ちだから。
「今までで一番、秋尋様を気持ちよくする! とかはいかがでしょう!」
「……それは、お前が嬉しいだけじゃないのか?」
ジトッと睨まれた。否定はしない。
「ですが、どうしても何かしたいのです。せっかくの誕生日なのですから。今年こそはきちんとお祝いできると……」
「それは、お前が貯めた金だ。自分のために使え」
まさか俺のためだったとは。なんとお優しい……!
ますます何かしてあげたい。望めばなんでも手に入るこの人に、俺は何ができるのだろう。
……やっぱり、えっちなことしか思い浮かばない。でも秋尋様も言ってたけど、俺が嬉しいことだからなあ。
せめて望んでくれたなら……。
「秋尋様にプレゼントするのは、俺のためにもなります。貴方の誕生日に何もできないなんて、つらくて死んでしまいます」
「そうか……。朝香らしいといえば、らしいな。うーん……。なら、僕が喜ぶようなことを考えて、何かしてくれ」
「秋尋様が喜ぶようなこと……」
「ああ。僕がしてほしいことを告げたら、お前、誕生日じゃなくても普通になんでもするだろう? だから僕からは何も言わない」
確かにその通りだ。秋尋様が俺のことをよくわかってくれてて嬉しい。
それに誕生日を一緒に過ごせるだけで、俺のほうがプレゼントを貰ってる気がする。
だって、これってそういうこと……だよね? 予定があれば時間も指定するだろうし。
「はい! 俺、せいいっぱい頑張りますね!」
抱きつきたい気持ちをグッとこらえながらガッツポーズを作ると、秋尋様がヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「楽しみにしているぞ」
「光栄です……!」
すでに幸せすぎる。秋尋様大好き……。
……けど、えっちなこと以外となると、これは難題だ。
秋尋様を喜ばせるようなことがすぐに思い浮かばないなんて、使用人として失格では? いくらつい最近までぞんざいに扱われていたとはいえ、ずっとお傍にいたのに。
俺を虐めてる時も、特に楽しそうだったわけではないしなあ。いくらでも虐めていいですよ! とか言ったら、喜ぶよりは引かれる、間違いなく。
「朝香が悩んでいるのを見るのは、割と楽しいな」
秋尋様が楽しそうに、フフッと笑う。頭の中が秋尋様でいっぱいになる。
あ……。これ、ダメだ。一緒にいる時は何も思い浮かばないやつ。
「ひ、膝枕をしてあげるとかはどうでしょうか?」
「誕生日にと言っただろう。今訊くんじゃない」
そう言って横になると、俺の膝にポフッと頭を乗せた。
えっ。うわ、嘘ッ。なんで……。
「こうして欲しかったんだろう?」
「は、はい……」
本当はされたかったりするんだけど。でもこれも死ぬほど幸せ……。
こうして何も決まらないまま、秋の夜長が過ぎていくのだった。
秋尋様の誕生日当日。各方面に相談した結果『寄り道』を提案することにした。
学校へ通い始めた頃、一緒にしてみたくて話題に上らせたことがある。残念ながら冷たい反応をされ、それ以後は誘えずにいた。
寄り道をしない理由としては、先生がダメって言ってるから、という可愛らしいものだったので、もしかすると今誘っても無理かなと少し思っていた。
けど……。
「いいな。思えば、もう中学校生活も終わるというのに、一度もしたことがなかった」
頬を染めながら、やや興奮気味に賛成してくれた。
今ならわかる。本当は秋尋様、してみたかったのに友達がいなくてできなかったから、俺が訊いた時にやたらと冷たい態度だったんだ。
それが今や、俺との放課後デートを喜びながら受け入れてくれるまでに! しかも誕生日に!!
いくら友達同士とはいえ、誕生日の放課後に出かけるなんて、これはもう本当にデートでは?
「だが、寄り道というのは、どういうことをするんだ? 何かプランがあるのか?」
「もちろん。プレゼントなのですから。といっても、学校帰りにするということが特別なのであって、たいしたことではないですけど……」
「確かに、重要なのはそこだな。なんだかワクワクする」
そう思ってもらいたくて提案したので、まずは成功。
でも楽しい誕生日を過ごせたという気持ちが残るかどうかは、ここからの行動で決まる。
頑張らなくては。そして、俺も楽しまなくては。
「バスが出てますけど、駅前までは小松さんに送ってもらいましょう」
「何故だ? 普通の寄り道なら、僕らもバスに乗ればいいんじゃないか?」
「狭い車内はさすがに危険すぎますから。秋尋様のように美しいと痴漢にあうかもしれません」
秋尋様が俺の頭から爪先まで見て、溜息をついた。
「お前のほうが、変態に狙われそうだが」
夏祭りでも変な男に絡まれているから、否定はできない。
何より素直に諦めてくれるならそのほうがありがたいし、秋尋様が俺のことを心配してくださるのも嬉しい。
こうして俺たちは小松さんに駅前まで送ってもらい、まずはカラオケ店に足を運んだ。
密室。二人きり。秋尋様の美声が聞ける……。素晴らしい。
部屋はパーティルームを指定したから、それなりに広々としている。秋尋様の部屋よりは狭いけど。
「へえ……。歌って遊ぶのか」
「はい。この機械で曲を選んでいれるらしいです」
秋尋様は興味深そうに機械を弄っている。
そして……。俺たちは、そのまま固まってしまった。
「あの。秋尋様……。何か、歌われないんですか?」
「普段クラシックしか聴かないからな。歌えるようなものは……。朝香はどうなんだ」
「……音楽とは無縁の生活をしていますね」
まさかの、寄り道作戦大失敗では。俺は秋尋様と、こうしていられるだけで嬉しいんだけど、明らかに気まずい雰囲気が流れている。
「学校で習った曲くらいなら歌えるが、こういうところにきてまで歌おうという気にはならないな」
「俺は聴きたいですけど」
「嫌だ」
「では……。あの、飲み放題らしいですし、ジュースを飲んだりケーキを食べたりして過ごしましょう」
予約の時に誕生日だからと説明したら、ケーキの持ち込みを許可してもらえた。家でももちろん、豪華な料理やケーキを食べるだろうから、ホールだけどかなり控えめなサイズだ。その分、値段は奮発した。
もう歌わずとも、このケーキだけ食べて帰ればいいかな。
カラオケにした意味がまったくなかったけど、学生が使うような個室に学校帰り2人で来られた、その事実だけで充分。
「朝香。お前が歌え」
「えっ。だから俺、歌は何も……」
「本当に何も歌えないのか? お前のことだから、練習しているだろうと思ったんだがな」
「えっ……。あっ!?」
バースデーソングリストが置かれていた。カードも。
大切な人の誕生日です。カラオケ初めてです。と緊張しながら伝えたから、気を遣ってくれたのかもしれない。学生が使う中でも少し高めの店を選んだとはいえ、普通の店でこういうサービスをして貰えるとは思わなかった。
確かに、この曲なら俺でも歌える。練習もした……。
「曲を入れるとどんなふうになるのか見てみたい」
「はい。頑張ります!」
誰かのために歌うのも、初めてだ。上手く歌えるかはわからないけど、気持ちだけはいっぱいいっぱい込めよう。
秋尋様。産まれてきてくださって、ありがとうございます。この朝香、死ぬまで貴方に仕えていきます。
「ハッピバスデー、トゥーユー……」
それは本当に短い一曲。でも全身全霊を込めたからか、歌い終わった途端、ドッと疲れがきた。
「朝香……。お前、音痴だな」
そんな俺に追い打ちをかける秋尋様。
「だが、なんか重……いや、心がこもってる感じはした」
「秋尋様がこの世に存在してくださる、その尊さを歌で表現しました」
「おも……」
少し引き気味だけど嫌がってはいなさそう。きっと俺の気持ちを受けとめてくれたに違いない。ラブフォーエバーです、秋尋様。
心を込めた歌も無事に披露できたし、ケーキも美味しかった。
多分もう、この先カラオケに来ることはないだろうけど、なんとか無事に終わって良かった。無事……。多分無事。
予定より早めにカラオケ店を出たため、少し時間が余った。
他にも寄り道の候補は数あれど、誕生日にするにはちょっとな……という躊躇いがうまれ、これでオシマイだ。
あとは家で本格的なマッサージをしてあげる予定なんだけど……。素直にうけてもらえるかな。また、お前が嬉しいだけだろうとか言われるかな。でもそんなこと言ってたら、何もできなくなってしまう。だって俺が秋尋様に何かをすることで嬉しくないことなんてないもの。
一応、形に残る物も必要だなって、なんでもいうこときく券とかも作ってみたけど、これも渡したら使われるのを心待ちにしてしまうだけだし。
「さて。次はなんだ、朝香」
「とりあえずは帰宅です。あとは家ですることなので」
「そ、そうか……」
何を考えたのか、秋尋様が頬を染めた。ドキドキした。
もしかしてこれはマッサージをする流れでちょっとやらしいことをしてもいい雰囲気では……?
それに……次はなんだと訊いてくれたってことは、まだ俺に時間をくださるということ。特別な日に、一緒にいてくれるの嬉しい。秋尋様の誕生日なのに、こんなにも俺が幸せでいいんだろうか。
夢心地のまま屋敷へ戻って、秋尋様の部屋でプレゼントの内容を打ち明けた。
リラックスしてもらうために用意したアロマキャンドルとオイル。図書室から借りたマッサージの本。
「金は自分のことに使えと言ったのに。今日借りていた個室だって、中学生には負担だったんじゃないのか? 金額まではわからないが……」
喜んでほしかったのに、反応はよろしくない。
もっとお金がかからないものにしたほうが良かったのかも。
「いえ! 実は俺、きちんとマッサージを学びたくて! なので俺のために使ってるとこあります!」
「お前はマッサージ師でも目指すつもりか」
「秋尋様の使用人として、これくらいはできるようになっておきたかったのです」
「……結局、僕のためでは」
「でもクビにならないよう、色々なことを学んでおかなくてはいけませんから」
「まあ、そういうことにしておくか」
それに服を自然に脱いでもらえるんですよ。身体をヌルヌルした液体に塗れさせて触り放題できるんですよ。もう俺のため以外の何物でもないっていうか……。
「俺がプレゼントです。とか言い出さないだけマシだしな」
「えっ。それアリでした?」
「ナシだ。ナシ」
俺はとっくに秋尋様のモノだと思ってるし、秋尋様から所有宣言されたら嬉しくて死んでしまうから、それをプレゼントにすることは考えてなかったな。貰ってくれるなら、本当に喜んで捧げたいんだけど。
「貰ってほしい……」
「ナシだと言ってるだろう」
「えっ!? 今、声に出てました!?」
欲望が溢れすぎた。
「大体、その……。お前は、どういう気持ちで、そういう……。いや、なんでもない」
秋尋様は諦めたような表情で、俺の頭をワシャワシャと撫でた。
……頭を撫でてもらえるのは嬉しいけど、今のはちょっとヤバかったかな。さすがに気持ちがバレたかも。いや大丈夫だ。使用人としてだと思ってるはず。いつも通り。
「で。マッサージだったな」
「はい!! それでは服を脱いでください!」
「は?」
自然に脱いでは貰えなかった。
マッサージオイルと本を交互に見せて目で訴えると、渋々ながらも脱いでくれた。
バスタオルを敷いたベッドに、下着姿で俯せになる秋尋様。俺も汚れないように服を脱いだ。
今日はやらしいことをするためではないけれど、当然、そういう気分にはなる。ただでさえ下心は満載だ。秋尋様も、少しはそんな気分になってくれてる?
「それじゃ、始めますね」
オイルをゆっくり手で温めてから、まずは肩をマッサージしていく。少しの痛みもないよう、ゆっくり、丁寧に。
「ん……。朝香、く、くすぐったいだけだぞ」
「ちょっとソフトすぎました? 少しずつ力を込めるので、痛かったら言ってくださいね」
「わかった」
白くて柔らかい肌に、俺の指が沈んでいく。マッサージとしてなら少しは落ち着いて触れるかなって思ったけど、やっぱりダメだな。むちゃくちゃ興奮する。
たまに気持ち良さそうな声がもれるのとか、熱い溜息とか、どうしたって連想するし。
「今度は足のほうです」
一応、何をするかひとつずつ了解をとってから行う。返事がくるたびに、受け入れてくれているのがわかって幸せな気持ちになる。
「ふっ。ふふ……。足はさすがに、くすぐったすぎる」
「前はよく舐めさせてくださったのに」
「やめてくれ。そのことは反省しているんだ」
俺は今でも舐めたい。というか、全身舐めたい。秋尋様は嫌がるけど。ちんちん舐めるのも気持ちよすぎるから嫌だって言うし。そんなこと言われたら、余計に興奮するに決まってるのに。
「でも……。オイルで、足の指とかヌルヌルされると、思い出しませんか?」
「思い出したくないと言ってる」
「俺は全然嫌ではなかったので、秋尋様が反省なさる必要はないんですよ」
「お前、本当にヘンタイだな」
まごうことなき変態です。秋尋様に対しては。
でもここはただのマゾだと思わせておこう。最近、間違ってはいない気もしてきているし。
「ふぁ……ッ! 待て、そこはダメだ!」
爪先から徐々にもみほぐす箇所を上げていったら、太腿のあたりで待ったがかかった。
そろそろ足の付け根のあたりまでいけるって、やらしい期待でいっぱいになってたのに。
それに、可愛いけど、太腿だけで気持ちよくなっちゃうってヤバすぎない? 他の人にされてもこうなのかと思うと心配になるし、俺の手つきに下心が溢れすぎていたのかもって不安にもなる。
だって、純粋にマッサージとしては癒やしてあげられないってことでしょ。今はいいけど、将来必要になった時に他の人を呼ばれたりしたらと思うともう。
「俺、そんなに下手でした?」
「違う。その、お前……。いつも、いらないところまでたくさん撫でたりするから……。へ、変な感じになるんだよ」
「でも、付け根のあたりとかはリンパもあって」
クッと軽く押し込むと、秋尋様が嫌がって足を上げた。
今日はマッサージという名目だし、秋尋様もそれを許可してくれている。普段だって俺は触ることを許されている。だから、まさかこんなに強い抵抗をされるとは思ってもみなかった。
そして……。オイルでヌルヌルしていた俺の手がズルンと滑って、下着の中に潜り込み、あろうことか指先が肛門にズッポリとハマッてしまうなんて。
「あっ! ば、馬鹿……! なっ、ぬ、抜け……!」
「申し訳ありません! わざとでは!」
わざとではないけど、俺の指が……秋尋様の中に入ってると思うと、もったいなくてたまらない。狭くて熱くてキュッとしてる。
実はマッサージを勉強する流れで、このあたりのことも一通り覚えてしまったんだけど……。自分の身体で練習してからと思ってたから、秋尋様のお尻に指を突っ込む気は、今日のところはなかった。
でもこれは不可抗力だし。まだ、入ってたい……。いつかは、俺のちんちんを……ここに、入れたいな。
……確か、気持ちいのって、このへん……。
「あっ、な、何ッ……。朝香、今のとこ、変……」
「ここですか?」
「ッ……!? や、抜けって……」
「このまま気持ちいいマッサージに……しても、いいですか?」
指を中に入れたまま、別の手で足の付け根を押す。また抵抗されるかなと思ったけど、今度はやらしくビクリと跳ねただけだった。
「きちんとしたマッサージを、すると……言ってたのに……」
「もちろん、そのつもりでした。でも……秋尋様が、気持ちよさそうにするから……」
「僕のせいだとでも言いたいのか」
実際、ズッポリしてしまったのは、秋尋様が足を上げたせいなのですが。
「いいえ。俺が、我慢できなくなってしまいました」
これも事実だ。秋尋様のお尻に指を入れている。それだけで俺のソコは痛いほど張り詰めている。
……まあ、これは。マッサージを始めた時から、ほぼマックスだったけど。
「ああ。でもその前に……。結構、勢いよく滑り込みましたし、まずは怪我をしていないかきちんと中を確認しないといけませんね」
指先で熱い内部を、優しく何度も擦りあげる。
「あっ、ん、んん……ッ。やぁ、やだって……!」
「痛くはないですか?」
秋尋様は震えながら、ギュウッとシーツを掴んでいる。うつぶせなのが残念すぎる。顔、見たい。きっと今、たまんなくやらしい顔してる。
爪、きちんと切ってて良かったなあ。でも下着が引っかからなかったら、それでも傷つけてたかも。デリケートな場所だから、優しく優しくしないと。それこそ、舌とかで。
こんなトコ、普段は絶対に舐めさせてくれないだろうから、言い訳できる今は千載一遇のチャンスなのでは?
「不慣れで指だと傷つけてしまいそうで怖いので、舌を入れてもいいですか?」
「いいわけないだろ! 馬鹿!!」
……冷静に考えたらそうなるよね。ちょっと頭が煮えすぎてた。
何も言わずに舐めてしまえば良かったかも。
しかも、俺ならやりかねないとでも思ったのか、そのあとは抵抗も強くなって指も抜かざるを得なくなってしまった。
もうちょっと入っていたかったな……。どんなチャンスがあるかわからないし、とりあえず今度、自分の身体で練習しとこ……。
「朝香。そこへなおれ」
「はい」
秋尋様がベッドへ腰掛けて足を組む。下着をつけているとはいえ、隙間からチラリと見えそうなんですけど。
「僕は、そんなところを舐めた唇とキスするのは、絶対に嫌だからな」
「えっ! キスしてもいいんですか?」
「ッ……。いつもするくせに、何を、そんな……今更」
だってそれならキスをする時に嫌がればいい話で。
なのに、わざわざ先に止めたってことは、まるで俺とキスしたい、みたいな……。
「別に僕がしたいわけじゃない。でも、せ、せっかくの誕生日だぞ……。お前がしたいって、思ってると……可哀想だろう」
「秋尋様……。俺のために……」
「ち、ちが……。いや、うう……」
どこを否定しても墓穴しかないことに気づいたのか、秋尋様は唸って俯いた。
「あの。今日、今までで一番、秋尋様を気持ちよくさせていただいてよろしいですか?」
「結局こうなるのか……」
そう言いながらも、抵抗はしないんですよね。
唇を重ねようとすると、おとなしく目を閉じてしまうんですよね。
その後はお尻に指も入れなかったし、他の場所をそう舐めたりもしなかったけど、マッサージに使ったオイルで2人ともたっぷりヌルヌル、俺も今までで一番気持ち良かった。キスもいっぱいさせてもらえた。
そして俺が渡した『なんでもいうこときく券』を手にした秋尋様は。
「いつかコレを使ってお前の尻にも指を突っ込んでやる」
と報復のようなことを口にしてくださったので、喜んで! と笑顔で答えたらとても嫌そうにしていた。
俺はこんな券などなくてもなんでもいうことをきいてしまうから、あまり意味がないかもしれない。でもそれを貴方が持っていてくださることに意味がある。
本当に今日の1日は、俺へのプレゼントみたいなものだった。
秋尋様も……。少しは楽しんでくれたかな。
いつか。プレゼントは俺ですって、貴方に言ってもいいですか?
秋と言えば……。読書の秋、芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋。
俺は主には食欲。そして当然、秋尋様の秋!
字だけの話ではなくて、11月に誕生日があるからだ。
毎年プレゼントを贈っては嫌そうな顔で突き返されていたけれど、今年はきちんと受け取ってもらえそうだし。
当日をワクワクと待ちながら、何を贈ろうか想いをはせていたのに……。
「今年もプレゼントは要らないぞ」
「え!? どうしてですか!?」
前もって釘を刺された。要らないって予め言われたのはコレが初めてだ。どうせ突き返すんだから先に言っておこうという優しさ? その優しさ、胸に痛すぎるんですけど。
仲良くなってからも要らないだなんて、お前のくれる安物など必要ないぞってことなの?
「僕に関することだと基本ポジティブなのに、今は暗めのことを考えているな」
「秋尋様は俺をなんだと思ってるんですか。冷たくされたら、普通に傷つきます」
「たまに嬉しそうにしてるけどな……」
「そっ、それは、まあ……そういうこともあります」
でも正直、ショックが大きい。
ハンドクリーム凄く嬉しかったし、俺も何か秋尋様に心からの贈り物をあげたかったのに。
「秋尋様にいただいた誕生日プレゼント、とても嬉しかったです。俺、あの容器を洗って今でも大切にとってあるんです」
「それはもうただのゴミだろう。捨てろ」
無慈悲な……。
「だ、だから、俺も秋尋様に、それくらい嬉しいって思っていただけるものを贈りたかったのです。何かありませんか?」
「必要な物は自分で買うからな」
「でしたら、それを」
「今は何もない」
「でもご両親にはプレゼントを貰うでしょう?」
「ああ。このソファを新調してもらう予定でいたな」
秋尋様はそう言いながら、今俺たちが座っているソファを軽く叩いた。まだ綺麗で、買い換えるには全然早いように見える。
それは一体、おいくら万円になるんだ。
こういうのはお金じゃなくて気持ち。気持ちだから。
「今までで一番、秋尋様を気持ちよくする! とかはいかがでしょう!」
「……それは、お前が嬉しいだけじゃないのか?」
ジトッと睨まれた。否定はしない。
「ですが、どうしても何かしたいのです。せっかくの誕生日なのですから。今年こそはきちんとお祝いできると……」
「それは、お前が貯めた金だ。自分のために使え」
まさか俺のためだったとは。なんとお優しい……!
ますます何かしてあげたい。望めばなんでも手に入るこの人に、俺は何ができるのだろう。
……やっぱり、えっちなことしか思い浮かばない。でも秋尋様も言ってたけど、俺が嬉しいことだからなあ。
せめて望んでくれたなら……。
「秋尋様にプレゼントするのは、俺のためにもなります。貴方の誕生日に何もできないなんて、つらくて死んでしまいます」
「そうか……。朝香らしいといえば、らしいな。うーん……。なら、僕が喜ぶようなことを考えて、何かしてくれ」
「秋尋様が喜ぶようなこと……」
「ああ。僕がしてほしいことを告げたら、お前、誕生日じゃなくても普通になんでもするだろう? だから僕からは何も言わない」
確かにその通りだ。秋尋様が俺のことをよくわかってくれてて嬉しい。
それに誕生日を一緒に過ごせるだけで、俺のほうがプレゼントを貰ってる気がする。
だって、これってそういうこと……だよね? 予定があれば時間も指定するだろうし。
「はい! 俺、せいいっぱい頑張りますね!」
抱きつきたい気持ちをグッとこらえながらガッツポーズを作ると、秋尋様がヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「楽しみにしているぞ」
「光栄です……!」
すでに幸せすぎる。秋尋様大好き……。
……けど、えっちなこと以外となると、これは難題だ。
秋尋様を喜ばせるようなことがすぐに思い浮かばないなんて、使用人として失格では? いくらつい最近までぞんざいに扱われていたとはいえ、ずっとお傍にいたのに。
俺を虐めてる時も、特に楽しそうだったわけではないしなあ。いくらでも虐めていいですよ! とか言ったら、喜ぶよりは引かれる、間違いなく。
「朝香が悩んでいるのを見るのは、割と楽しいな」
秋尋様が楽しそうに、フフッと笑う。頭の中が秋尋様でいっぱいになる。
あ……。これ、ダメだ。一緒にいる時は何も思い浮かばないやつ。
「ひ、膝枕をしてあげるとかはどうでしょうか?」
「誕生日にと言っただろう。今訊くんじゃない」
そう言って横になると、俺の膝にポフッと頭を乗せた。
えっ。うわ、嘘ッ。なんで……。
「こうして欲しかったんだろう?」
「は、はい……」
本当はされたかったりするんだけど。でもこれも死ぬほど幸せ……。
こうして何も決まらないまま、秋の夜長が過ぎていくのだった。
秋尋様の誕生日当日。各方面に相談した結果『寄り道』を提案することにした。
学校へ通い始めた頃、一緒にしてみたくて話題に上らせたことがある。残念ながら冷たい反応をされ、それ以後は誘えずにいた。
寄り道をしない理由としては、先生がダメって言ってるから、という可愛らしいものだったので、もしかすると今誘っても無理かなと少し思っていた。
けど……。
「いいな。思えば、もう中学校生活も終わるというのに、一度もしたことがなかった」
頬を染めながら、やや興奮気味に賛成してくれた。
今ならわかる。本当は秋尋様、してみたかったのに友達がいなくてできなかったから、俺が訊いた時にやたらと冷たい態度だったんだ。
それが今や、俺との放課後デートを喜びながら受け入れてくれるまでに! しかも誕生日に!!
いくら友達同士とはいえ、誕生日の放課後に出かけるなんて、これはもう本当にデートでは?
「だが、寄り道というのは、どういうことをするんだ? 何かプランがあるのか?」
「もちろん。プレゼントなのですから。といっても、学校帰りにするということが特別なのであって、たいしたことではないですけど……」
「確かに、重要なのはそこだな。なんだかワクワクする」
そう思ってもらいたくて提案したので、まずは成功。
でも楽しい誕生日を過ごせたという気持ちが残るかどうかは、ここからの行動で決まる。
頑張らなくては。そして、俺も楽しまなくては。
「バスが出てますけど、駅前までは小松さんに送ってもらいましょう」
「何故だ? 普通の寄り道なら、僕らもバスに乗ればいいんじゃないか?」
「狭い車内はさすがに危険すぎますから。秋尋様のように美しいと痴漢にあうかもしれません」
秋尋様が俺の頭から爪先まで見て、溜息をついた。
「お前のほうが、変態に狙われそうだが」
夏祭りでも変な男に絡まれているから、否定はできない。
何より素直に諦めてくれるならそのほうがありがたいし、秋尋様が俺のことを心配してくださるのも嬉しい。
こうして俺たちは小松さんに駅前まで送ってもらい、まずはカラオケ店に足を運んだ。
密室。二人きり。秋尋様の美声が聞ける……。素晴らしい。
部屋はパーティルームを指定したから、それなりに広々としている。秋尋様の部屋よりは狭いけど。
「へえ……。歌って遊ぶのか」
「はい。この機械で曲を選んでいれるらしいです」
秋尋様は興味深そうに機械を弄っている。
そして……。俺たちは、そのまま固まってしまった。
「あの。秋尋様……。何か、歌われないんですか?」
「普段クラシックしか聴かないからな。歌えるようなものは……。朝香はどうなんだ」
「……音楽とは無縁の生活をしていますね」
まさかの、寄り道作戦大失敗では。俺は秋尋様と、こうしていられるだけで嬉しいんだけど、明らかに気まずい雰囲気が流れている。
「学校で習った曲くらいなら歌えるが、こういうところにきてまで歌おうという気にはならないな」
「俺は聴きたいですけど」
「嫌だ」
「では……。あの、飲み放題らしいですし、ジュースを飲んだりケーキを食べたりして過ごしましょう」
予約の時に誕生日だからと説明したら、ケーキの持ち込みを許可してもらえた。家でももちろん、豪華な料理やケーキを食べるだろうから、ホールだけどかなり控えめなサイズだ。その分、値段は奮発した。
もう歌わずとも、このケーキだけ食べて帰ればいいかな。
カラオケにした意味がまったくなかったけど、学生が使うような個室に学校帰り2人で来られた、その事実だけで充分。
「朝香。お前が歌え」
「えっ。だから俺、歌は何も……」
「本当に何も歌えないのか? お前のことだから、練習しているだろうと思ったんだがな」
「えっ……。あっ!?」
バースデーソングリストが置かれていた。カードも。
大切な人の誕生日です。カラオケ初めてです。と緊張しながら伝えたから、気を遣ってくれたのかもしれない。学生が使う中でも少し高めの店を選んだとはいえ、普通の店でこういうサービスをして貰えるとは思わなかった。
確かに、この曲なら俺でも歌える。練習もした……。
「曲を入れるとどんなふうになるのか見てみたい」
「はい。頑張ります!」
誰かのために歌うのも、初めてだ。上手く歌えるかはわからないけど、気持ちだけはいっぱいいっぱい込めよう。
秋尋様。産まれてきてくださって、ありがとうございます。この朝香、死ぬまで貴方に仕えていきます。
「ハッピバスデー、トゥーユー……」
それは本当に短い一曲。でも全身全霊を込めたからか、歌い終わった途端、ドッと疲れがきた。
「朝香……。お前、音痴だな」
そんな俺に追い打ちをかける秋尋様。
「だが、なんか重……いや、心がこもってる感じはした」
「秋尋様がこの世に存在してくださる、その尊さを歌で表現しました」
「おも……」
少し引き気味だけど嫌がってはいなさそう。きっと俺の気持ちを受けとめてくれたに違いない。ラブフォーエバーです、秋尋様。
心を込めた歌も無事に披露できたし、ケーキも美味しかった。
多分もう、この先カラオケに来ることはないだろうけど、なんとか無事に終わって良かった。無事……。多分無事。
予定より早めにカラオケ店を出たため、少し時間が余った。
他にも寄り道の候補は数あれど、誕生日にするにはちょっとな……という躊躇いがうまれ、これでオシマイだ。
あとは家で本格的なマッサージをしてあげる予定なんだけど……。素直にうけてもらえるかな。また、お前が嬉しいだけだろうとか言われるかな。でもそんなこと言ってたら、何もできなくなってしまう。だって俺が秋尋様に何かをすることで嬉しくないことなんてないもの。
一応、形に残る物も必要だなって、なんでもいうこときく券とかも作ってみたけど、これも渡したら使われるのを心待ちにしてしまうだけだし。
「さて。次はなんだ、朝香」
「とりあえずは帰宅です。あとは家ですることなので」
「そ、そうか……」
何を考えたのか、秋尋様が頬を染めた。ドキドキした。
もしかしてこれはマッサージをする流れでちょっとやらしいことをしてもいい雰囲気では……?
それに……次はなんだと訊いてくれたってことは、まだ俺に時間をくださるということ。特別な日に、一緒にいてくれるの嬉しい。秋尋様の誕生日なのに、こんなにも俺が幸せでいいんだろうか。
夢心地のまま屋敷へ戻って、秋尋様の部屋でプレゼントの内容を打ち明けた。
リラックスしてもらうために用意したアロマキャンドルとオイル。図書室から借りたマッサージの本。
「金は自分のことに使えと言ったのに。今日借りていた個室だって、中学生には負担だったんじゃないのか? 金額まではわからないが……」
喜んでほしかったのに、反応はよろしくない。
もっとお金がかからないものにしたほうが良かったのかも。
「いえ! 実は俺、きちんとマッサージを学びたくて! なので俺のために使ってるとこあります!」
「お前はマッサージ師でも目指すつもりか」
「秋尋様の使用人として、これくらいはできるようになっておきたかったのです」
「……結局、僕のためでは」
「でもクビにならないよう、色々なことを学んでおかなくてはいけませんから」
「まあ、そういうことにしておくか」
それに服を自然に脱いでもらえるんですよ。身体をヌルヌルした液体に塗れさせて触り放題できるんですよ。もう俺のため以外の何物でもないっていうか……。
「俺がプレゼントです。とか言い出さないだけマシだしな」
「えっ。それアリでした?」
「ナシだ。ナシ」
俺はとっくに秋尋様のモノだと思ってるし、秋尋様から所有宣言されたら嬉しくて死んでしまうから、それをプレゼントにすることは考えてなかったな。貰ってくれるなら、本当に喜んで捧げたいんだけど。
「貰ってほしい……」
「ナシだと言ってるだろう」
「えっ!? 今、声に出てました!?」
欲望が溢れすぎた。
「大体、その……。お前は、どういう気持ちで、そういう……。いや、なんでもない」
秋尋様は諦めたような表情で、俺の頭をワシャワシャと撫でた。
……頭を撫でてもらえるのは嬉しいけど、今のはちょっとヤバかったかな。さすがに気持ちがバレたかも。いや大丈夫だ。使用人としてだと思ってるはず。いつも通り。
「で。マッサージだったな」
「はい!! それでは服を脱いでください!」
「は?」
自然に脱いでは貰えなかった。
マッサージオイルと本を交互に見せて目で訴えると、渋々ながらも脱いでくれた。
バスタオルを敷いたベッドに、下着姿で俯せになる秋尋様。俺も汚れないように服を脱いだ。
今日はやらしいことをするためではないけれど、当然、そういう気分にはなる。ただでさえ下心は満載だ。秋尋様も、少しはそんな気分になってくれてる?
「それじゃ、始めますね」
オイルをゆっくり手で温めてから、まずは肩をマッサージしていく。少しの痛みもないよう、ゆっくり、丁寧に。
「ん……。朝香、く、くすぐったいだけだぞ」
「ちょっとソフトすぎました? 少しずつ力を込めるので、痛かったら言ってくださいね」
「わかった」
白くて柔らかい肌に、俺の指が沈んでいく。マッサージとしてなら少しは落ち着いて触れるかなって思ったけど、やっぱりダメだな。むちゃくちゃ興奮する。
たまに気持ち良さそうな声がもれるのとか、熱い溜息とか、どうしたって連想するし。
「今度は足のほうです」
一応、何をするかひとつずつ了解をとってから行う。返事がくるたびに、受け入れてくれているのがわかって幸せな気持ちになる。
「ふっ。ふふ……。足はさすがに、くすぐったすぎる」
「前はよく舐めさせてくださったのに」
「やめてくれ。そのことは反省しているんだ」
俺は今でも舐めたい。というか、全身舐めたい。秋尋様は嫌がるけど。ちんちん舐めるのも気持ちよすぎるから嫌だって言うし。そんなこと言われたら、余計に興奮するに決まってるのに。
「でも……。オイルで、足の指とかヌルヌルされると、思い出しませんか?」
「思い出したくないと言ってる」
「俺は全然嫌ではなかったので、秋尋様が反省なさる必要はないんですよ」
「お前、本当にヘンタイだな」
まごうことなき変態です。秋尋様に対しては。
でもここはただのマゾだと思わせておこう。最近、間違ってはいない気もしてきているし。
「ふぁ……ッ! 待て、そこはダメだ!」
爪先から徐々にもみほぐす箇所を上げていったら、太腿のあたりで待ったがかかった。
そろそろ足の付け根のあたりまでいけるって、やらしい期待でいっぱいになってたのに。
それに、可愛いけど、太腿だけで気持ちよくなっちゃうってヤバすぎない? 他の人にされてもこうなのかと思うと心配になるし、俺の手つきに下心が溢れすぎていたのかもって不安にもなる。
だって、純粋にマッサージとしては癒やしてあげられないってことでしょ。今はいいけど、将来必要になった時に他の人を呼ばれたりしたらと思うともう。
「俺、そんなに下手でした?」
「違う。その、お前……。いつも、いらないところまでたくさん撫でたりするから……。へ、変な感じになるんだよ」
「でも、付け根のあたりとかはリンパもあって」
クッと軽く押し込むと、秋尋様が嫌がって足を上げた。
今日はマッサージという名目だし、秋尋様もそれを許可してくれている。普段だって俺は触ることを許されている。だから、まさかこんなに強い抵抗をされるとは思ってもみなかった。
そして……。オイルでヌルヌルしていた俺の手がズルンと滑って、下着の中に潜り込み、あろうことか指先が肛門にズッポリとハマッてしまうなんて。
「あっ! ば、馬鹿……! なっ、ぬ、抜け……!」
「申し訳ありません! わざとでは!」
わざとではないけど、俺の指が……秋尋様の中に入ってると思うと、もったいなくてたまらない。狭くて熱くてキュッとしてる。
実はマッサージを勉強する流れで、このあたりのことも一通り覚えてしまったんだけど……。自分の身体で練習してからと思ってたから、秋尋様のお尻に指を突っ込む気は、今日のところはなかった。
でもこれは不可抗力だし。まだ、入ってたい……。いつかは、俺のちんちんを……ここに、入れたいな。
……確か、気持ちいのって、このへん……。
「あっ、な、何ッ……。朝香、今のとこ、変……」
「ここですか?」
「ッ……!? や、抜けって……」
「このまま気持ちいいマッサージに……しても、いいですか?」
指を中に入れたまま、別の手で足の付け根を押す。また抵抗されるかなと思ったけど、今度はやらしくビクリと跳ねただけだった。
「きちんとしたマッサージを、すると……言ってたのに……」
「もちろん、そのつもりでした。でも……秋尋様が、気持ちよさそうにするから……」
「僕のせいだとでも言いたいのか」
実際、ズッポリしてしまったのは、秋尋様が足を上げたせいなのですが。
「いいえ。俺が、我慢できなくなってしまいました」
これも事実だ。秋尋様のお尻に指を入れている。それだけで俺のソコは痛いほど張り詰めている。
……まあ、これは。マッサージを始めた時から、ほぼマックスだったけど。
「ああ。でもその前に……。結構、勢いよく滑り込みましたし、まずは怪我をしていないかきちんと中を確認しないといけませんね」
指先で熱い内部を、優しく何度も擦りあげる。
「あっ、ん、んん……ッ。やぁ、やだって……!」
「痛くはないですか?」
秋尋様は震えながら、ギュウッとシーツを掴んでいる。うつぶせなのが残念すぎる。顔、見たい。きっと今、たまんなくやらしい顔してる。
爪、きちんと切ってて良かったなあ。でも下着が引っかからなかったら、それでも傷つけてたかも。デリケートな場所だから、優しく優しくしないと。それこそ、舌とかで。
こんなトコ、普段は絶対に舐めさせてくれないだろうから、言い訳できる今は千載一遇のチャンスなのでは?
「不慣れで指だと傷つけてしまいそうで怖いので、舌を入れてもいいですか?」
「いいわけないだろ! 馬鹿!!」
……冷静に考えたらそうなるよね。ちょっと頭が煮えすぎてた。
何も言わずに舐めてしまえば良かったかも。
しかも、俺ならやりかねないとでも思ったのか、そのあとは抵抗も強くなって指も抜かざるを得なくなってしまった。
もうちょっと入っていたかったな……。どんなチャンスがあるかわからないし、とりあえず今度、自分の身体で練習しとこ……。
「朝香。そこへなおれ」
「はい」
秋尋様がベッドへ腰掛けて足を組む。下着をつけているとはいえ、隙間からチラリと見えそうなんですけど。
「僕は、そんなところを舐めた唇とキスするのは、絶対に嫌だからな」
「えっ! キスしてもいいんですか?」
「ッ……。いつもするくせに、何を、そんな……今更」
だってそれならキスをする時に嫌がればいい話で。
なのに、わざわざ先に止めたってことは、まるで俺とキスしたい、みたいな……。
「別に僕がしたいわけじゃない。でも、せ、せっかくの誕生日だぞ……。お前がしたいって、思ってると……可哀想だろう」
「秋尋様……。俺のために……」
「ち、ちが……。いや、うう……」
どこを否定しても墓穴しかないことに気づいたのか、秋尋様は唸って俯いた。
「あの。今日、今までで一番、秋尋様を気持ちよくさせていただいてよろしいですか?」
「結局こうなるのか……」
そう言いながらも、抵抗はしないんですよね。
唇を重ねようとすると、おとなしく目を閉じてしまうんですよね。
その後はお尻に指も入れなかったし、他の場所をそう舐めたりもしなかったけど、マッサージに使ったオイルで2人ともたっぷりヌルヌル、俺も今までで一番気持ち良かった。キスもいっぱいさせてもらえた。
そして俺が渡した『なんでもいうこときく券』を手にした秋尋様は。
「いつかコレを使ってお前の尻にも指を突っ込んでやる」
と報復のようなことを口にしてくださったので、喜んで! と笑顔で答えたらとても嫌そうにしていた。
俺はこんな券などなくてもなんでもいうことをきいてしまうから、あまり意味がないかもしれない。でもそれを貴方が持っていてくださることに意味がある。
本当に今日の1日は、俺へのプレゼントみたいなものだった。
秋尋様も……。少しは楽しんでくれたかな。
いつか。プレゼントは俺ですって、貴方に言ってもいいですか?
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