使用人の我儘

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舐める(R15

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「お高くとまってるとか、陰口を叩かれることもあったんだ。今思うと……。僕が他人の気持ちを無視したことになっていたんだろうな」
「宝来先輩は、本当に酷いことをしますね」

 まあ俺も秋尋様が誰かからラブレター貰ってたなら、ソレ燃やすつもりでしたけど。

「でも貰ったところで、応えることはないのでしょう?」
「それはそうだが、さすがに無視はしないぞ」

 秋尋様から返事が貰えるなら俺も書きたい。それがお断りの文字であっても泣きながら家宝にする。

「だが僕のことが好きなのに、宝来は何故お前に手を出そうと思ったんだろうな。それに、あんな……。わざわざ僕を呼び出して、朝香を襲うようなシーンを目撃させようとするなんて。変態なのか? それとも実は、新手の嫌がらせだったのか」

 俺には少しだけ、わかるけどな。きっと、俺のことが妬ましい気持ちと、使用人を寝取ってみせたら秋尋様がどんな反応をするのか見てみたかったとか、そんなところだろう。
 あとは……。秋尋様に妬いてほしかった、とか。

 変態だというのは否定しない。

 秋尋様は帰りの車の中ではずっと無言だった。でも、俺の手を握っててくれた。
 秋尋様もショックだったろうに、愛おしいなー!!
 今の俺はニヤニヤしそうな表情を引き締めるので精一杯だ。

 ここで今日の誕生日パーティーはやっぱりやめようと言い出されるのが最大の恐怖だったけど、そんなこともなく。俺は帰宅後、近衛夫妻から貰っていたケーキを持って秋尋様の部屋を訪れた。
 真ん中にいつもはないテーブルがあって、その上に小さな箱が置いてある。プレゼントかもしれない。

「ケーキを置いて、こっちへ来い」

 秋尋様はソファへ座って、その隣をポンポンと叩いてみせた。
 俺は逸る気持ちを抑えながらゆっくりとテーブルの上にケーキを置き、元気のなさそうな様子で秋尋様の隣に腰かけた。
 ……ギュッと抱きしめられた。

「心臓が止まるかと思った。宝来に襲われているお前を見て」
「驚かせてしまいましたね」

 俺は秋尋様の背を慰めるように、そっと撫でた。

「馬鹿。ショックを受けたのはお前のほうだろう。その……小さい頃にも、ああいう……ことを、されたことがあるのか?」
「義理の父親に少し触られたくらいですよ」
「そ、そうか……。悪いことを訊いたな」

 いいえ。貴方の気を引きたくて言ったので。

「宝来先輩くらい簡単に倒せる気でいたんですけど、過去のことがこんなにも俺の心を蝕んでるなんて思いませんでした」
「朝香……」

 俺を抱きしめる秋尋様の手に力がこもる。
 温かいその肌に、安心感よりも興奮を覚えてしまう。

「あと。俺も秋尋様に同じことをしてしまったかなって、不安になって……」
「……あれは、僕が、め、命令……したから、だろう。強引でなかったとは言わないが、無理矢理ではなかった」

 強引だった自覚はある。しかたない。秋尋様が可愛すぎたから。
 でも無理矢理ではなかったと言ってもらえて、ひと安心だ。

「それに……。なんだか、僕以外がお前に触れているのも許せなくて……」

 ……えっ。ちょっ……。確かに妬いてくれないかなと期待はした。したけど、まさか。本当に!?

「僕は自分が思うよりも、お前のことを……。自分の使用人なのだと思っていたらしい」

 そういうオチ。いや、それでも充分嬉しいけれども。
 秋尋様に自覚がないだけで、それが恋ならいいのに。

 ご主人様と使用人。これ以上の関係を望むつもりなんてなかったのに、距離が近くなったせいか欲が出てきた。
 あと少しだけ。また、もう少し。心も身体も近づきたいと。

「俺が秋尋様以外に仕えることなど、ありませんよ。一生ね」
「うちの両親に、命じられてもか?」
「そ、それは……。夫妻には大変お世話になりましたが、俺が仕えたいのは秋尋様だけですので……」
「……そうなのか」

 安心したようにはにかむ秋尋様が、お可愛すぎて、もう。
 密着してるし身体がマズイことになってきた。そもそも期待してここへ来たし。

「そういえば、僕が触るのは大丈夫なのか?」
「何故、そんな当たり前なことを訊くんです?」

 俺が秋尋様の手を拒んだことなんて、一度もないのに。

「お前、その、いつも……。僕に触るばかりで、僕には触らせないだろう。だから……」

 なるほど。そっちの話か。
 秋尋様に俺のちんちんを触らせるなんて、申し訳なさすぎて、そんなことさせられないからな……。いつも僕が触るばかりで、秋尋様の申し出はやんわりと断ってきた。今回のことで、それが気になったんだろう。

「今、触ってますけど」
「そういうことじゃない。わかってて言ってるな?」

 もちろん、わかった上で言っている。

 秋尋様にしてほしいか、してほしくないかで言えば、してほしいに決まってる。
 ただ罪悪感のほうが上回ってしまって、なんだかもげそうな気持ちにもなるのだ。

「今日はお前の誕生日だし、お前が……。僕にされるのを、怖いと思ったりしないなら、僕も擦ってやろうかと……」

 その言葉と想像だけで出ちゃいそう。
 秋尋様が、俺のを! 夢では何度も見たし、想像ではもっとえげつないこともしてる。でも現実ではダメゼッタイ、そんなこと。
 秋尋様に俺の不浄な棒を握らせるなど……ッ!

「やっぱり嫌か?」
「お願いします」

 あーっ! 俺の馬鹿!!
 誘惑と秋尋様の少し悲しそうな顔には勝てなかったよ……。何即答してるんだよ……。

「そうか。良かった。なら、今日のこともあるし、いっぱい慰めてやる」

 刺激が強すぎる、こんな優しい秋尋様。俺の誕生日だからだろうけど。
 いや、それにしたって言い方がやらしすぎ。ハートマークがついて聴こえるくらい。最高です。

「でもその、俺、す、すっごく速くて、恥ずかしいんですけど」
「それはそれで僕が楽でいいし、いつも僕だって恥ずかしいんだからな。たまには朝香も恥ずかしがるといい」

 どこか楽しそうに、秋尋様は俺の服をもぞもぞし始めた。
 いつも俺が脱がす側なので、なんだかとっても新鮮……。
 スボンの前をくつろがせた秋尋様は、驚いたようにビクッと身体を震わせた。

「す、凄いな。もうこんなに……」
「本当に恥ずかしいです……」

 擦ってやるとか慰めてやるとか言われたり、自分のもろくにしたことないのに、俺のちんちんを優しく撫でてくれるんだなあと思って、勃たないはずがない。

「多分、上手くはないと思うが……。痛かったりしたら言ってくれ」

 やや緊張した面持ちで、秋尋様が俺のモノに指を近づける。
 あれが。あの、白魚のように美しい秋尋様の手に、これから擦られ……。

「うっ……」
「え!? さ、触ってないのに、出るものなのか!?」
「ご、ごめんなさ……っ! っていうか、顔、顔に!! 秋尋様のお美しい顔に! どど、どうしましょう。た、タオル、いや……」

 俺は自分の服で秋尋様の顔を擦ろうとして、ハッとした。
 これだと、摩擦で傷つけるかもしれない。
 結果、舐めた。猫がミルクでも舐めるように、秋尋様の顔をペロペロと。

「馬鹿。そんなもの舐めるな。顔を洗えば済む話だ」
「あっ。そ、そうですね!」
「ふ、ふふっ……。お前がそこまで焦るとは思わなかった……。恥ずかしかったのか?」
「それよりも秋尋様のお顔に飛ばしてしまったことがショックで……」

 そこまで顔が近かったわけではないけど、手を重ねる前で遮るものが何もなかったから、結構まともにかかってしまった。あまりの罪悪感に、俺のちんちんはすっかりシュンとしている。
 やらしい光景だったし、普通は興奮するものかもしれないけど、俺はダメだ。かけられるほうなら興奮する、というかしてほしい。

 秋尋様は部屋に備え付けの水場で洗顔タイムのち、神妙な面持ちで俺の傍へ戻ってきた。
 思わず、ズボンの前を開けたままだったろうかと確認する。
 大丈夫だ。ちゃんとしまってた。

「……なあ。結局、何もしてやれてなくないか? 僕は」
「顔にあんなものをかけられて、怒っていないだけで充分です。お気持ちが嬉しかったですし……」
「なんだ。お前、へこんでるのか」

 秋尋様は微笑んでから、からかうように笑った。

「まあ、あれだけ速ければへこみもするか」
「そ、それもありますけど!」

 あと、触ってもらえなかったのも、少し残念だなって。
 別にちんちんをよしよししてもらう必要はない。頭でもいいし、手でもいい。とにかくどこかしら、触っていてほしい。

 俺は秋尋様に擦り寄って、胸にぽふんと顔を埋めた。
 相変わらず、いい匂いがする。

「意外とお前、甘えたなんだな」
「今までは甘える相手もおりませんでしたから」

 同情を引いたのは正解だった。秋尋様はお願いしていないのに、頭と背中を撫でてくれた。
 俺は、それが心地よくて、安心できて……。また、勃ってきた……。少しは自重できないものだろうか、俺の下半身は。

「朝香。僕に……さ、触るか?」
「えっ!? よろしいんですか?」
「何を今更。いつもしていることだろう」

 秋尋様から言い出してくれたのは初めてだし、誕生日だからだろうけど、俺がしたいことをさせてやろうって思ってくれるのは結構凄いことだと思う。
 ……だって、いつもしているとはいえ、性的なことなんだよ。

 もうなんか、秋尋様がえっちなことシテもいいよって言ってるのが……。すご……凄い。

 俺は声も出なくって、かわりに秋尋様をギュウと抱きしめた。

「お、おい朝香」

 そのままぐりぐりと、胸に額を押しつける。唇で柔らかいシャツのボタンを開けて、白い肌をそっと舐めた。

「僕は触るかと訊いたんだ。舐めるな。学校から帰ってきたばかりで、まだ風呂に入ってないんだぞ」
「申し訳ありません。幸せすぎて、つい」
「犬みたいな奴だな……」

 もう本当は全身舐め尽くしてしまいたい。

「秋尋様。俺、秋尋様にいつもと違うことがしてみたいです」
「そうか。好きにしていいぞ」
「ちょ……、秋尋様。俺、まだ何がしたいか言ってませんよ!?」
「ああ……。だが、お前は僕を傷つけることはしないだろう?」

 信頼されている。ジワジワと、嬉しさがこみ上げてくる。
 そうです。俺は絶対に貴方を傷つけることはしないし、何があっても味方でいます。
 でも、あまりにも無防備すぎますっ!
 本当は俺、貴方のこと、どろどろのぐちゃぐちゃにしたいと思ってるんですから。

 ……まあ、それは。あまり驚かせると、身体はともかくプライドや心を傷つけたりしそうだから、おいおい段階を踏んで。

「あっ。でも、命令はしたほうがい」
「是非! お願いします!」

 喰い気味に返事をする俺に、秋尋様は笑って……。

「朝香。僕のこと、いつもより気持ちよくしろ」

 とてもとても、お可愛らしい命令をくださった。




 恋い焦がれている相手の身体はどうしてこうも特別に見えるのか。
 着替えさせる時は平静を装うけど、本当はいつだってドキドキしている。
 
「ん、んん……。舐めるなと、言ったのに」
「でも、気持ちよくないですか?」
「くすぐったい……」

 力のこもってない指先が俺の肩を掴んで離れる。
 秋尋様の乳首は透き通った薄いルビーのような色で、俺はそこを何度も舐めて転がしてみたいと思っていた。もっと表現するに相応しい色の名前があるのだろうけれど、残念ながらそれほど知らない。ようやくこうして妄想が現実になったことだし、いつか色図鑑とにらめっこしてみるのもいいかもしれない。

 ただ、秋尋様は妄想とは違って喘いだりしなかった。くすぐったそうに身を竦めては、たまにふふっと声をもらす。
 俺はもう、それが可愛くって可愛くって、ひたすらに舐めたり吸ったりした。
 気持ちよくしろって言われたのに、ダメだな、俺は……自分の欲望ばかりで。

「そんなに吸っても、何も出ないぞ」

 でも、気持ちよくもなさそうなのに、秋尋様はダメだと言わないし、どこか機嫌も良さそうだ。今まで知らなかったけれど、秋尋様は案外甘えられるのが好きらしい。
 俺は秋尋様を護りたいとか彼の役に立ちたいとばかり考えていて、甘やかすだけ甘やかして、甘えることは一切しなかった。それを不敬だと考えていたし。
 だから、こんな彼は知らなかった。秋尋様に優しくされる度、生きることを許されているような気分になる。

「秋尋様……」
「あっ……。朝香……?」

 最後にもう一度、濡れていやらしく光る乳首をひと舐めして、俺は舌をゆっくりと下半身のほうへ移動させた。
 そんな俺の頭を、秋尋様が綺麗なおみ足でギュッと挟み込む。
 挟んでもらえる日がくるなんて、幸せすぎてどうにかなりそう。

「いや、それは本当にダメだ。どうかしてる」
「でもココを舐めたり吸ったりしたら、絶対に、震えるほど気持ちいいですよ」

 あ。と口を開けて指先で示してみせる。
 ねとりとまとわりつく感触を想像しただけで、男ならそこが脈打つに違いない。秋尋様も例外ではなかったようでコクリと喉を慣らしたし、止めようとする手のひらにも力はまったく入っていなかった。

「き、汚いだろう。さっきも言ったが、風呂もまだだし……」

 むしろご褒美すぎます。

「秋尋様が気持ちよくなってくださることが至上の喜びですので、まったく気になりません」
「おかしいぞ、お前……」

 さすがに少し引き気味だったけど、拒否するような言葉は出てこなかったので、躊躇っているうちにそれをぱっくりと咥えた。
 秋尋様の匂い、味、形。味わうように舌で擦りあげる。濡れた肉塊は今まで食んだことのない感触だった。俺にとってはずっと入れておきたいほど甘美だ。
 だんだんと硬くなっていくのがわかって、夢中になる。
 秋尋様が……。俺の舌で、唇で……気持ちよくなってくれている。
 死ぬほど幸せだし、舐めてるだけで気持ちよくって、腰のあたりがゾワゾワした。

「っ……う」

 少しだけ甘い声が聞こえて、口の中にどろりとした液体が吐き出される。よほど気持ちよかったのか、秋尋様も速かった。俺はそれを噛み締めるようにして、飲み干した。
 これが秋尋様の味……。2度はないかもしれないし、いっぱい味わっておかないと。
 はあ……。毎日でも、舐めろって命令されたい……。

「信じられない。あんなの……舐めたり飲んだりするなんて」

 秋尋様はカタカタと震えながら俺の頬を撫でた。ニコッと笑って見せると、真っ赤な顔で涙を零した。

「も、申し訳ありません! そ、そんなに嫌でしたか!?」
「いや。お、驚いただけだ。それに怖かった。お前、肩を押してもびくともしないし」

 まずい。もしかして途中から抵抗されていたのか。夢中になりすぎて気づいてなかった。

「お前は平気なのか? こんなことを……」
「秋尋様を傷つけたのだと思ったら、平気ではありません」

 俺も泣いた。ソファから降りて土下座した。
 床に額が当たる音が派手に響いて、痛みが走る。

「ばっ、馬鹿! 驚いただけだと言っただろう。今、凄い音がしたぞ。見せてみろ」

 秋尋様はすぐに俺の顔を上げさせて、額を柔らかな手のひらで撫でてくれた。

「僕は、いつもより気持ちよくて……。と、とけるかと思った。だから土下座なんてしなくていい」

 なんかもう、額が割れるまで打ちつけたいくらいなんですけど。俺のほうがとけそう。最高かな……。

「ではまた、命令……してくだいますか?」
「な……舐めるのは、もうダメだぞ。あんなの、おかしくなる」

 おかしくなって欲しいんですけど……!!
 でも、そうか。命令はしてくれるんだ。なら、いつか舐められることの気持ちよさを思い出して命じてくれるかもしれないな。それを期待しよう。

「ほら、もういいだろう。ケーキを食べよう」
「……はい」

 近衛夫妻にいただいたケーキは、かなり大きな苺のショートケーキだ。
 指をくわえて見ることしかできなかったケーキ屋さんのショーケースに並ぶ、綺麗なケーキたち。それが今、目の前にあって、大好きな人と食べることができている。

 そんなノスタルジー溢れるような光景なのに、俺は……もったりとした甘いクリームより、さっき飲んだ秋尋様の白いののほうがが甘かったな……とか、苺を見ては、秋尋様の乳首はもっと綺麗な色をしていたな、とか。頭の中がえっちなことでいっぱいになっていた。
 これからは毎年、誕生日ケーキを食べるたびに思いだしそう。

「プレゼントも用意してあるぞ」

 もう充分に貰ってしまった気もするけれど、形に残る物を貰えるのはまた違う感動がある。
 渡されたプレゼントの箱のラッピングを促されて解くと、中には可愛らしい感じのハンドクリームが入っていた。
 中学生の、しかも男に贈るにはかなり変わったプレゼントだ。
 ……でも、確かに俺の手は、結構荒れてるかも。トレーニングのしすぎで皮が剥けたりすることもあるし。

「ありがとうございます、家宝にします!」
「きちんと使ってくれ。触られると、カサついてるのがわかって気になるんだ」

 なるほど。それでハンドクリームなのか!!
 あああ……。俺、秋尋様に触れることがただただ嬉しくって、そんなことにまで気が回ってなかった。なんてことだ。

「申し訳ありません! 俺、すべっすべにします! 秋尋様が、触られたいって思うような手になります!!」
「ッ、いや、違……。おっ……、お前に触られたくて買ったわけじゃないからな。か、勘違いするなよ」

 そんなことを真っ赤な顔で言われて、俺は今度こそとけた。もう、どっろどろだ。


 ……手、すべすべにしよ。
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