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No.11 プロローグ
しおりを挟む宇佐美は仏間の天井を指さした。
「近い将来、カグヤ様は世界を征服し、次に月を攻撃します♪我ら月の民は、その未来を変えるため、躍起になっているのです♪」
(一体、カグヤは何の恨みがあるというのだ‥‥‥)
「それには古い歴史があります♪」
‥‥‥‥
カグヤは、月の王の”姪っ子”にあたるらしい。月の王の弟にあたるカグヤの父は、前王の後継者争いに破れると、月の代わりに地球征服を目論んだ。
しかし、それは月の王に阻まれ、カグヤの父は政治犯の罪を問われ処刑された。その娘:カグヤは、友愛の精神を学ぶべく、地球へ流刑される。
刑期を終え、月に戻ったカグヤは、自ら開発した”時越装置”を使って未来の日本へ舞い戻った。
月の王は時越装置の存在を知ると、驚愕した。カグヤによって月が攻撃される未来を知ったからだ。
「月の王はカグヤ様の類稀な才能を買っておられます♪その才を月の為に使って欲しいのです♪」
「父親が殺されたんじゃ、カグヤが月を敵対視するのも、わからなくはないな‥‥なんなら、時越してカグヤの父親を処刑しなきゃいいんじゃないの?」
「残念ながら、時越装置が完成した日の以前(過去)には時越することが出来ないのです~♪」
「便利なんだか、よくわからんなー‥‥」
そう言うと、京子は肩を落とした。
(ところで、この屋敷に『天の羽衣』がある事を、カグヤは知っておるのか?)
「それはわかりません♪ただ、私と玄次郎がここにいる事が知られたら、怪しまれるでしょうね♪」
(この屋敷には、血妖術がかけらておる。おれの勘が正しければ、虎の子に気付かれることはなかろう)
玄次郎は仏壇の前にお座りすると、壁に掛けられた写真を見た。
「血妖術?まさか、お爺ちゃんが?」
(阿保、おれがキツネの姿に帰る前に施した。どうせ消えてしまう肉体だ、死する寸前まで血を使ったぞ)
「何か気分悪くなってきた‥‥どんな術なの?」
《妖術:下弦城塞:カゲンジョウサイ》
(天の羽衣にかけられた術式を模倣し、各所に印を仕込んだ。この屋敷にいる間は、虎の子図鑑でおれや宇佐美を察する事は出来ぬだろう)
「素晴らしい♪天の羽衣が、木常の妖気に覆われることで効力を無くす現象を、応用したのですねー♪木常の妖気は特異なもの、やはりカグヤ様の科学力に対抗するには、木常妖術が必要不可欠です♪」
骨董店から出なければ、虎の子図鑑で見つかることは無いってことか‥‥。
京子は虎の子図鑑をめくりながら、2人の話を聞いていた。
「この図鑑、何でこんなに白紙だらけなの?こんなに分厚いのに‥‥‥」
「時越者は虎の子図鑑に登録されています♪しかし、個々が所有する図鑑において、詳細を閲覧できるのは”捜索圏内”に入った時越者のみが対象になります♪プライバシー保護の観点ですね♪」
玄次郎とピクシー、それと宇佐美しか詳細情報が載っていないのは、そのせいか‥‥
「我々が持っている虎の子図鑑は、あくまでも”コピー”です♪カグヤ様は虎の子図鑑の開発者ですので、この時越システムのユーザー情報は、全て把握しているでしょう♪」
「あたしは時越者じゃないから、今まで見つからなかったってこと?玄次郎がここに来る前でも、探す時間はあったじゃん?」
「カグヤ様はこの時代の木常家については、問題視していません♪妖術を使える者がいないからです♪しかし、玄次郎がこの時代に来たらどう思うでしょう♪」
(おれが『天の羽衣』を手に入れる事を恐れるか?)
「それ以前に”時越してきた”ということは、月の民が関与しています♪カグヤ様にとって、それは由々しき事態でしょうね♪」
(カグヤが狙うのは、この玄次郎だということか)
「今となっては、京子もその対象になっていると思います♪そのうち、木常骨董店を調べに来るかも知れませんね♪」
「えーっと、ちょっと話がこんがらがってきた、まとめて話してくれない!?」
「わかりました♪少しプロットしてみましょう♪」
‥‥‥
‥‥‥‥
うさ耳男:宇佐美は月の王より、地球にいる月の民:竹取カグヤ送還の命を受けた。
かつて、カグヤの父(月の王族)は後継者争いに破れると、地球征服を目論んだ。
その目論みは月の王によって潰され、カグヤの父は処刑される。カグヤは、そんな父の意思を継ぎ、現代の地球へと降り立ったと思われる。
月の王はカグヤを側近に迎えようとしている。その類稀な才能を、月の為に使って欲しいと考えているようだ。月の王から命を受けた宇佐美は、カグヤを月へ送還するため、ある道具に目をつける。
《天の羽衣》だ。
月の民は羽衣が発する磁場により、反骨精神を狩られ、帰省本能を掻き立てられる。
《平安時代中期》
中秋の名月の夜‥‥‥
カグヤは月の民によって羽衣を纏わされ、一度は月に戻るが、時越装置を開発すると、忽然と姿を消した。
時越装置とは”クロノスリーブ”と”虎の子図鑑”によって構成されている。
カグヤは突如2012年の日本に姿を現し『竹取ビル』という不動産デベロッパーを起業した。
2022年の現時点‥‥‥
日本で名の知れた大企業へと成長を遂げると、カグヤは今も尚、影の頭取【権力者】として君臨している。
一方、『天の羽衣』は木常家によって代々受け継がれ、木常京子の祖父が営んでいた骨董店に保管されていた。
羽衣が木常家に渡った経緯は【今のところ不明だ】
玄次郎が骨董店で羽衣を目の当たりにした際、羽衣を覆う木常の妖気を感じ取った。その妖気は、羽衣の効力を封じていた。
【カグヤと木常家の繋がり】
妖術が施された羽衣は磁場効力を封じられていた。その甲斐あってか、カグヤは一度月へ戻るも精神を保ち続けることが出来た。
カグヤと玉藻前との間に、繋がりがあったのでは??そんな推察が、頭をよぎる。
いずれにせよ、今や”天の羽衣”を扱えるのは木常京子以外、存在しないようだ。
《平安時代末期》
玉藻前は討伐され、石になったという伝承があるが、備前村で生存し、木常家を築き上げた。
完結したと思われていた物語は、2022年の現代まで続いている。
《2022年》
宇佐美は、天の羽衣の持ち主:木常京子を頼った。
時越を幾度も繰り返し、カグヤへ挑んだが、京子は羽衣を使う以前に、返り討ちに遭ってしまう。
カグヤ送還計画は困難を極めていた。
「京子を鍛えてから、カグヤ様に挑もう♪」
宇佐美は方針を改めると、時越調査を開始した。
調査をするうちに、京子の師に相応しい人物に辿り着く。それが、木常玄次郎だ。
《1600年 関ヶ原の戦い》
玄次郎は合戦の最中、助六と共に致命傷を受ける。
突如、現れた宇佐美から京子の助力要請を受けた玄次郎は、助六の護送を条件に、子孫:京子がいる時代(2022年)へ時越した。
思念体となってしまった玄次郎は、キツネの剥製を依代に選び、京子と対面する。
時を越えた者を【時越者】という。時越者は特殊な磁場を発する。制限はあるものの、虎の子図鑑には時越者を捜索、登録する機能が備わっている。
【思念占有~虎の子】
カグヤによって思念占有を受けた時越者は”虎の子”と呼ばれている。
思念占有の方法は不明だが、カグヤは強力な妖や化け物を時越させ、配下にしているようだ。
宇佐美は、木常の二人が捜索対象になっている可能性を示唆した。
【勾玉:マガタマ】
時越者が死亡、もしくは消失すると勾玉になる。このメカニズムは、未だ解明されていない。宇佐美は研究の為、勾玉を回収している。
《うちでの小槌》を報酬条件に、宇佐美に協力する事を決めた木常京子と、その与力となった玄次郎。
対して、月の民を撃退しながら世界征服を目論む竹取カグヤが、2022年の日本で対峙する形となった。
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