Cotton Candy

いちご

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第二章

千紗SIDE 3

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時雨が大学に行った後確かめたのだが、鎖の先端は寝室のベッドの下付近で固定されていた。
そして本当に長さ的に玄関マット迄しか行けなかった。
圏外になり、ネット環境がない為電話もLINEも出来ない。
TVを付けたがいつも観ない時間帯な為観たいのがない。
でも寂しいから取り敢えず付けっ放しにした。

暇な為、家の中を探索する事にした。
鍵は絶対時雨が肌身離さず持っていると思われるが、もしかしたらスペアキーがあるかもしれない。
見付けれたら外せるかも。
淡い期待を抱きながら俺は動きだした。

リビングやキッチンには無いと思う。
もし自分が鍵を隠すとしたら何処だろう。
…………靴箱…か?
そう閃き早速全ての靴を確認したが見付からなかった。
トイレの給水タンクとかも怪しいよな。
箪笥の中とか本棚の本の間とかも気になる。

少しでも怪しいと思える所は全て虱潰しに探すが、散らかすのは悪いから探した後は前と同じ様に片付ける。
そのせいでめちゃくちゃ時間が掛かる為、全く作業が捗らない。
捜索と片付けの同時進行は疲れる。
4時間程必死に頑張ったが、流石に疲れてソファーに寛いだ。
続きは一休みしてからしよう。
あ~流石時雨チョイス。座り心地最高。
ゴロリそのまま寝転び目を閉じた。


サラリ優しく髪を梳かれる感触に目を開けると
「ただいま千紗。千紗の顔が見たくて講義終了後急いで帰ってきちゃいました」
ニコニコ微笑む時雨が居た。
「おかえりなさい」

って、ヤバイあのまま寝ちゃったのか俺。

「あのさ時雨。コレ不便だから外してくれないか?家にも帰りたいしさ?」
別にトイレや移動では邪魔にならないけれど、ずっと着けてるのはジャラジャラ鳴るし嫌。
首輪と足枷がセットのファッションってヤツなのかもしれないけれど、俺の趣味ではないんだよなコレ。

「家、ですか?」
ん?何キョトンってしてるんだ?
「家ならもう帰ってるでしょ?」
は?
「貴方の家は此処ですよ千紗」
うん。流石時雨。またワケの分からない事言ってる。

「あのさ、時雨。悪いけど俺しなきゃいけない事沢山あるから帰るよ」
掃除洗濯しなきゃいけないし、壮嗣のご飯も作りたい。
ていうか、逢いたい。
大学行きたいし、語学や秘書の勉強もしなきゃいけないし、こんな所でじっとしてる時間なんかないんだ。

「勉強ですか?それなら安心して下さい。休みの間は全面的に協力します。今日千紗が行く予定だった講義は全て録画してますので何時でも見れます。なんなら今から観ますか?もしそうなら1時間程待って頂けますか?今から編集しますので」
編集?
別室に移動する時雨の後に着いて行くと時雨はPCを起動した。

………………。

ちょっと待て。

デスクトップの画像俺じゃね?
それも寝顔。
いつ撮ったんだよ、コレ。
ていうか、恥ずかしいから変えて欲しい。
よく見たらアイコンも全て色々な画像の俺になっている。
何これ怖い。

激しくドン引きしている俺を気にせず何か作業を始めた時雨。
カチカチ小さいけれど速いキーの音と共に様々な画像や動画が編集されていく。
真面目な顔で無言のまま進む作業。
PCに詳しくない俺から見ると、何をしているのかサッパリ分からない早さだ。
邪魔にならない様に先程のソファーに戻った。

TVに視線を向けると高校の近くが映っていた為懐かしくて見入った。
冷蔵庫からお茶を出して飲みながら寛いでいたら
「お待たせしました」
時雨がDVDを持って現れた。
そしてソレをセットし、再生ボタンを押した。

其処に写っていたのはいつもの大学での講義。
資料を使用する時は講義と資料の2画面になる。
周囲の声はほぼ消され、講師の声は鮮明に聞こえる様に修正されている。

何だこれ。
普通の講義より分かりやすい。
聞き損じたりもう一度聞きたい所は巻き戻せるし、資料をじっくり見たい時は停止も出来る。
映像で勉強するの良いかも。
時間も忘れ、全ての講義に目を通した。

見終わり休憩すると、語学もしますか?と教えてくれた。
いつも独学でしてたけれど、やはりマスターしてる人から教えられるのは分かりやすい。
取り敢えず今日は英語と中国語を選択し、習った。
時雨は教え方が丁寧で分かりやすい。
まるで講師に習っているみたいだった。
基本勉強は嫌いではない。
時間を忘れ学習していたらお腹が鳴った。
マスターキーを探すのに必死だった上に寝落ちしてしまったせいでお昼食べ忘れていた。

「何か食べますか?」
時雨の台詞に全力で頭を縦に振った。

いつもは自分で作る料理を作って貰えるのはかなり楽だった。
尚且つめちゃくちゃ美味しい。

まぁ、普段は好きでしてるんだが。
自分が作ったのを壮嗣に食べて貰えるのってスッゴク嬉しいし幸せを感じる。
以前壮嗣に新婚みたいだなって言われてバカか?って言い返したが、最近は自分もそうみたいだなって感じていた。
ていうか、物凄く逢いたいんだけど壮嗣に。
壮嗣不足で死にそう。
時雨が今居るって事は電波繋がってるって事だよな?
早速LINEにスタンプを送信したが、既読が付かなかった。

『あれ?』
いつまで待っても付かない既読。
いつもならスグ返信くるのにおかしい。
電話にするかと考え直し掛けてみたが、圏外なのか電源が入ってないのか定かじゃないが、サッパリ繋がらなかった。
どうしたんだろう?
取り敢えず後でもう一度掛け直す事にした。

だがおかしな事にその日LINEの既読は一向に付かず、電話も繋がらないままだった。
因みに俺は右足に装着されたファッションだか何だか知らんが邪魔なチェーンのせいで帰宅出来なかった。
まぁ、ご飯美味しかったし、お風呂気持ち良かったから満足したけどさ。


翌朝、俺は時雨に抱き着かれた形で寝ていた。
絶対色々されるだろうから一緒のベッドではなくソファーで寝た筈なのだが、いつの間にか移動させられていたらしい。
まぁ、服着てるから抱かれてはないと思う。

つうか、睫毛長いな。
鼻高いし顔小さいし肌も綺麗。
寝ていてもハッキリ分かる美しさを間近で観察しながら思うは、何故自分なんだろうだった。
俺限定で変態なのを除けば時雨は完璧な人間だ。
外見も頭脳も運動神経も優れているし、金持ちだし将来有望だし手伝いながら少しだが会社の経営も任されている。
非の打ち所がない人間とはまさに時雨の事を言うのだろう。
そんな人が何故俺なんかを好きなんだろう。
不思議で堪らない。
ゆっくり開かれた瞳。
嗚呼、凄く綺麗だ。

「おはようございます」
寝起きだからかいつもより柔らかさに拍車が掛かった笑顔で挨拶され
「おはよう時雨」
ほんっと何で俺なんだよ。
マジ勿体ない。
本気でそう思った。
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