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第二話「やっぱりずるいよ堀北さん」
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「——ところで何をやってんの?」
僕は誤魔化すように眼を逸らして堀北さんに聞く。
真っ暗なベランダはひんやりと冷たい風が優しく肌を撫でる。
「戦争じゃ~」
「そんなふにゃふにゃな声で物騒なこと言わないでくれよ……」
もう酔ってる。
帰ってきてまだ数分な気がするけれど早くないか。
ふんわりとほのかに石鹸の優しい香りが鼻にかかる。
——もうお風呂に入っているし。
「また課金……」
「今日は忙しくてねーようやく引けるんだ~」
「あの、ちなみに今のところ幾ら使った?」
「推しを引ければ無料なんだよな~」
「極論すぎ」
会話しながらも指を軽やかに操り、ずっとガチャを引き続けている。
推しが引ければ無料とか言ってるけど明らかに一万以上はもう貢いでいる気がする。
「あーも、全然出ない~あーやばい」
「で、いくらやっちゃったの?」
「うーん、少し」
「二万?」
「惜しい。十万」
「え! 何が惜しい?」
「ふふっ、なにさ~そこまで言うなら——やってみてよ?」
そう言って僕の方に手を伸ばしてスマホを差し出してきた。
そんな簡単に人にスマホ預けていいのか、と思う反面、堀北さんのスマホに触れられる好奇心が勝って僕は落とさないように受け取った。
スマホはカイロのように温かかった——ずっと引き続けている証拠だ。
手元にもってきてよく見てみるとゲーム内で使える通貨が通常の十倍以上に溜まっていた。
「本当に十万?」
——明らかにそれ以上かかったような……。
「二十四万くらいだったかも?」
「おい! 明日から何を食っていく気だよ」
「明日から雑草が主食かもね、ふふ」
「ふふじゃないから」
マジで。
「そうだ、もしもこれで出たらしばらく課金を控えること」
「いいよ。あ、それと一つだけなんでも言うこと聞いてあげる」
「え、ちょっとそういうのは、え、どうしよ」
僕は改めて堀北さんのことを見た。
嫌に自分の視線の行く先が堀北さんの白い綺麗な肌に向かった気がする。
何を考えてんだ、おい!
「変なこと言わんといてくださいよ……!」
「本気だよ。暦くんならね」
そう言ってニコニコと笑みを浮かべる。
——本気って、僕ならって、なんだよ、やっぱりからかってんのか?
堀北さんの顔を見ていると戸惑ってしまうから、さっさとガチャを引くことにした。散々堀北さんが引いて出なかったんだから今からたった一回引くだけで出るはずがない。そうだ、それを見越して堀北さんはそう言ったんだ。
「じゃあ引くから」
いい香りを漂わせた堀北さんを隣に僕はゆっくりと引いた。
演出の良し悪しは全く分からないけれど、次第に口の大きくなっていく堀北さんの顔を見てなんとなくわかった。
「——出た~!」
堀北さんにスマホを渡すとまるで子供のようにわきゃわきゃとはしゃぎ始めた。
しかし、僕はどうもそう簡単に喜びを共有できる状態じゃない。
——当たってしまった。
(なんでも一つ言うことを聞くってどうするんだよ……)
「すごいね、あはは、まいったな~本当に当てるなんて」
「ね」
「なんかある?」
「いや、そんな簡単には……」
「そう、あ、じゃあスマホ貸して~」
「え、なんで」
「私の連絡先を教えるから決まったらそれで伝えてってこと」
そう言うと堀北さんはささっと僕からスマホを取るとあっという間に連絡先を交換してしまった。
「あとさ、課金を控えるのは許してくれる? ——用がなくても連絡していいからさ」
「……いいけど」
——そんなのずるいって。
そんなことされたらいやでも許さざるを得ないだろ!
僕は誤魔化すように眼を逸らして堀北さんに聞く。
真っ暗なベランダはひんやりと冷たい風が優しく肌を撫でる。
「戦争じゃ~」
「そんなふにゃふにゃな声で物騒なこと言わないでくれよ……」
もう酔ってる。
帰ってきてまだ数分な気がするけれど早くないか。
ふんわりとほのかに石鹸の優しい香りが鼻にかかる。
——もうお風呂に入っているし。
「また課金……」
「今日は忙しくてねーようやく引けるんだ~」
「あの、ちなみに今のところ幾ら使った?」
「推しを引ければ無料なんだよな~」
「極論すぎ」
会話しながらも指を軽やかに操り、ずっとガチャを引き続けている。
推しが引ければ無料とか言ってるけど明らかに一万以上はもう貢いでいる気がする。
「あーも、全然出ない~あーやばい」
「で、いくらやっちゃったの?」
「うーん、少し」
「二万?」
「惜しい。十万」
「え! 何が惜しい?」
「ふふっ、なにさ~そこまで言うなら——やってみてよ?」
そう言って僕の方に手を伸ばしてスマホを差し出してきた。
そんな簡単に人にスマホ預けていいのか、と思う反面、堀北さんのスマホに触れられる好奇心が勝って僕は落とさないように受け取った。
スマホはカイロのように温かかった——ずっと引き続けている証拠だ。
手元にもってきてよく見てみるとゲーム内で使える通貨が通常の十倍以上に溜まっていた。
「本当に十万?」
——明らかにそれ以上かかったような……。
「二十四万くらいだったかも?」
「おい! 明日から何を食っていく気だよ」
「明日から雑草が主食かもね、ふふ」
「ふふじゃないから」
マジで。
「そうだ、もしもこれで出たらしばらく課金を控えること」
「いいよ。あ、それと一つだけなんでも言うこと聞いてあげる」
「え、ちょっとそういうのは、え、どうしよ」
僕は改めて堀北さんのことを見た。
嫌に自分の視線の行く先が堀北さんの白い綺麗な肌に向かった気がする。
何を考えてんだ、おい!
「変なこと言わんといてくださいよ……!」
「本気だよ。暦くんならね」
そう言ってニコニコと笑みを浮かべる。
——本気って、僕ならって、なんだよ、やっぱりからかってんのか?
堀北さんの顔を見ていると戸惑ってしまうから、さっさとガチャを引くことにした。散々堀北さんが引いて出なかったんだから今からたった一回引くだけで出るはずがない。そうだ、それを見越して堀北さんはそう言ったんだ。
「じゃあ引くから」
いい香りを漂わせた堀北さんを隣に僕はゆっくりと引いた。
演出の良し悪しは全く分からないけれど、次第に口の大きくなっていく堀北さんの顔を見てなんとなくわかった。
「——出た~!」
堀北さんにスマホを渡すとまるで子供のようにわきゃわきゃとはしゃぎ始めた。
しかし、僕はどうもそう簡単に喜びを共有できる状態じゃない。
——当たってしまった。
(なんでも一つ言うことを聞くってどうするんだよ……)
「すごいね、あはは、まいったな~本当に当てるなんて」
「ね」
「なんかある?」
「いや、そんな簡単には……」
「そう、あ、じゃあスマホ貸して~」
「え、なんで」
「私の連絡先を教えるから決まったらそれで伝えてってこと」
そう言うと堀北さんはささっと僕からスマホを取るとあっという間に連絡先を交換してしまった。
「あとさ、課金を控えるのは許してくれる? ——用がなくても連絡していいからさ」
「……いいけど」
——そんなのずるいって。
そんなことされたらいやでも許さざるを得ないだろ!
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