ネコでもわかる経済の話

のらねこま(駒田 朗)

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第一期 おカネに関する初歩的なお話

18)インフレによる貧困は分配政策の失敗が原因

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(じいちゃん)

 インフレによる貧困の原因は、分配政策の失敗にあるのじゃよ。今回は、少しだけややこしい話になる。

(ねこ)

 インフレで物価が上がったから貧困になるんじゃないのかにゃ。

(じいちゃん)

 以前にも話したが、インフレで生活が貧しくなるのは物価が上がるためではなく、「賃金の上昇」が「物価の上昇」に追いつかないことにある。このことを、まずはおカネではなく、商品の生産と分配から考えてみよう。

 戦争や災害などで商品の供給力が損なわれていないのであれば、商品の品不足は生じていないはずじゃ。商品は必要なだけきちんと生産されている。ということは、それを公平に国民に分配すれば、どこかに貧困が生じるはずがない。にもかかわらず、貧困な世帯が生じるということは、分配が特定の裕福な層に偏っていることを意味する。

 たとえば、国民全体が必要とする商品の量が全部で100個だったとする。仮に国民が10人だったとする。格差がない場合、100個の商品を10人に分配すれば、一人当たり10個の商品が手に入る。これですべての国民に必要な商品が満たされていたとする。

 ここで、もし商品の価格が二倍になったとしても、つまり、インフレ率が100%だったとしても、単に商品の価格が二倍になるだけなら何の問題も生じない。なぜなら、商品の生産量は100個のままだから、それを10人に分配すれば一人当たり10個の商品を手に入れることになり、以前とまったく同じじゃ。

 次に、先ほどの例をおカネをからめて考えてみよう。

 世の中のおカネの量が総額で100円とすると、それが公平に分配されていたなら、10人の国民がそれぞれに10円の所得を有することになる。そして商品の生産量が100個で、単価が1円とする。それぞれの国民は市場で10円のおカネを払って10個の商品を入手できる。

 次に、世の中のおカネを二倍の200円にする。すると10人の国民がそれぞれに20円の所得を有することになる。単純に言えば、市場取引を通じて(需要と供給の関係から)商品の単価は二倍になり、インフレ率が100%になる。つまり、商品の単価は2円になる。しかし、それぞれの国民の所得も二倍の20円だから、市場で20円のおカネを払って10個の商品を入手できる。単価が上がったところで、同時に所得があがっているから、同じことじゃ。

 では、なぜ貧困が生じるのか?インフレと同時に格差が生じることに原因がある。つまり、世の中のおカネの量が二倍の200円になったのに、10人のうち2人は所得が30円になり、3人は所得が20円になり、5人は16円になったとする。すると、5人は商品を8つしか入手できなくなり、生活が貧しくなる。

 これが、インフレで貧困が生じる理由じゃ。インフレと同時に、格差が生じている。世の中のおカネの量が増えているのに、ある人の所得は増えて、ある人の所得はほとんど増えない。だから貧困が生じるのじゃ。

(ねこ)

 でも、所得が増えたって人の話は聞かないにゃ。

(じいちゃん)

 そんなの当たり前じゃ。インフレで豊かになった人は、何も言わず黙っている。しかも、そういう人々は富裕層なので、数も少ない。一方、インフレで貧しくなった人は大騒ぎするし、人数も多い。だから、インフレで生活が苦しいという話しかマスコミには出てこないのじゃ。

(ねこ)

 信じられないにゃ。

(じいちゃん)

 まあ、よく考えてみることじゃ。ただし、おカネだけで考えては本質を見失うぞ。商品(物やサービス)の生産を含めて考えなければ、おカネの理屈に振り回されることになる。

(ねこ)

 じゃあ、格差を解消するにはどうすればいいにゃ。

(じいちゃん)

 物価の上昇に見合うだけ十分な所得が得られていない人に対して、政府が給付金を配ればよいのじゃ。物価の上昇に見合うだけの所得を政府が補えば、生活が苦しくなることはない。

(ねこ)

 そんなことしたら、ますます物価が上がるにゃ。

(じいちゃん)

 物価が上がっても何の問題もない。何度も繰り返すが、物価の上昇と貧困化に直接的な因果関係はない。価格とは、おカネと商品の単なる交換レートに過ぎないからじゃ。仮に物価が上昇しても、国民の需要を満たすために十分な量の商品が(輸入も含めて)生産できるなら、人々が貧しくなることはない。

 経済活動の本質は「商品を生産し、市場を通じて分配すること」じゃ。商品の生産量が順調なのであれば、単価が上がっても品不足が生じることはない。商品の単価よりも、国民一人ひとりの所得が公平に分配されることが重要なのじゃよ。

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