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第一期 おカネに関する初歩的なお話
17)ハイパーインフレと世界大恐慌の違い
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(じいちゃん)
ドイツのハイパーインフレと世界大恐慌の違いについて話をしようと思う。どちらも経済がめちゃくちゃになって、多くの人々が貧困化した。じゃが、ハイパーインフレと大恐慌はまったく別の原因によるものじゃ。
(ねこ)
おんなじようなものかと思っていたにゃ。
(じいちゃん)
第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレは、文字通り猛烈なインフレじゃ。その原因は戦争による供給力の破壊と、賠償金の支払いのための巨額な通貨発行にある。つまりインフレ要因の強烈なダブルパンチによって引き起こされたものじゃ。
戦争によって領土を占領されたり、工場やインフラなどの生産設備に甚大な被害を受けると、供給力(商品の生産力)が著しく低下する。商品を作り出す能力がなくなるため、商品が極端に不足した状態となる。それにより、市場では商品が大きく値上がりする。
また、戦勝国に賠償金を支払うために自国通貨を大量に発行すると、そのおカネは戦勝国だけでなく、そこから国内に流れ込み、それこそおカネがジャブジャブの状態になるのじゃ。多くの人々が大量のおカネを持っているため、市場では商品の激しい値上がりを招いた。
どれくらいジャブジャブだったのか?なんと、第一次世界大戦の前から、10年間でおカネの量がおよそ一万倍以上に増えたのじゃ。アベノミクスでじゃぶじゃぶなどと言われるが、せいぜい1.2倍になった程度じゃ。まさに桁外れにおカネを発行した。
この二つの要因によって、まさにおカネが紙くずほどの価値になった。お札(銀行券)をリヤカーに山積みにして運ぶ写真が有名じゃが、ああいうことになった。しかし、こうしたハイパーインフレの事態は、それこそ、このドイツの例のように、戦争と巨額の賠償金のような極端なことが生じない限り起こらないと言える。
マスコミには、口を開けば「日本がハイパーインフレになるぞー」と騒ぐ評論家も居るが、過去のハイパーインフレの例を冷静に分析すれば、そんなことは絶対に起きないとすぐにわかるはずじゃ。日本は工場もインフラも破壊されていないし、おカネも1.2倍になっただけじゃ。
ハイパーインフレでは多くの人々が貧困になったが、これはインフレが原因ではない。商品がなくなったからじゃ。値段が高くても、おカネがあれば買うことはできる。しかし、商品そのものがない、極端な物不足の状態なのじゃから、いくらおカネがあっても買うことが出来ない。だから貧困になるのじゃ。ここは非常に重要じゃ。モノがないことが貧困化の本質的な原因じゃ。
(ねこ)
うにゃ、インフレになったから貧困になったわけじゃないんだにゃ。よく覚えておくにゃ。
(じいちゃん)
次に世界大恐慌じゃが、これはハイパーインフレとはまるで違う。
まず商品の供給力が破壊されたわけではない。それどころか、大恐慌の発生の直前は、空前の好景気、バブル状態じゃった。そのため、工場やインフラなどの生産設備がフル活動して、あふれるほど多くの商品が生産されていた。
同時に、おカネの量は増え続けていた。バブルによって銀行による貸し出しが増加していたからだ。とはいえ、ハイパーインフレの時のように、一万倍もおカネを発行するというレベルではない。こうして世の中にあふれ出したおカネによって、経済は絶好調じゃった。
ところが、バブルが崩壊すると状況が一変する。バブル崩壊と同時に資産価格が暴落すると、銀行に借金を返せなくなる人や企業が続出するようになり、銀行は不良債権の山積みになった。そのため金融危機が発生。貸し出しが極端に減ったことから、借金を借りる人より返す人が多くなり、世の中のおカネの量が減り始めた。通貨収縮である。
世の中のおカネの量が減ると、おカネの量が増えるのとは逆のことが発生する。市場では商品がうれなくなり、値段が下落し始めた。デフレである。商品が売れないので、企業は労働者の賃金を下げることになる。賃金が下がった人々は、市場で商品を買うことができないので、ますます商品が売れなくなる。
やがて、商品が売れないので、工場は生産休止に追い込まれ、労働者が大量に解雇される。失業者はおカネがないので、商品を買うことができず、ますます商品が売れなくなる。するとさらに多くの工場が生産休止に追い込まれ、従業員が解雇され、世の中は失業者であふれる。
インフレとは逆に、デフレによっておカネの価値はどんどん上昇したが、おカネの価値があがったところで、人々の所得がそれ以上に減り続けるため人々はどんどん貧しくなる。同時に、工場の多くは閉鎖されて、商品が作られなくなる。
つまり、大恐慌の原因は商品がなくなったからではない。おカネがなくなったからじゃ。商品を作る供給力は有り余るほどあっても、人々にそれを買うためのおカネがないのじゃ。だから商品は生産されなくなり、人々は貧困になる。
(ねこ)
にゃんと、ハイパーインフレも大恐慌も、どちらも貧困を引き起こすけど、貧困の原因はまったく違うのにゃ。ハイパーインフレの原因は商品が足りないことが原因で、大恐慌はおカネは足りないことが原因なんだにゃ。
(じいちゃん)
そうじゃ。これはインフレとデフレの違いを理解する最も基本的な知識じゃから、きちんと覚えておいたほうが良いのじゃよ。
ドイツのハイパーインフレと世界大恐慌の違いについて話をしようと思う。どちらも経済がめちゃくちゃになって、多くの人々が貧困化した。じゃが、ハイパーインフレと大恐慌はまったく別の原因によるものじゃ。
(ねこ)
おんなじようなものかと思っていたにゃ。
(じいちゃん)
第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレは、文字通り猛烈なインフレじゃ。その原因は戦争による供給力の破壊と、賠償金の支払いのための巨額な通貨発行にある。つまりインフレ要因の強烈なダブルパンチによって引き起こされたものじゃ。
戦争によって領土を占領されたり、工場やインフラなどの生産設備に甚大な被害を受けると、供給力(商品の生産力)が著しく低下する。商品を作り出す能力がなくなるため、商品が極端に不足した状態となる。それにより、市場では商品が大きく値上がりする。
また、戦勝国に賠償金を支払うために自国通貨を大量に発行すると、そのおカネは戦勝国だけでなく、そこから国内に流れ込み、それこそおカネがジャブジャブの状態になるのじゃ。多くの人々が大量のおカネを持っているため、市場では商品の激しい値上がりを招いた。
どれくらいジャブジャブだったのか?なんと、第一次世界大戦の前から、10年間でおカネの量がおよそ一万倍以上に増えたのじゃ。アベノミクスでじゃぶじゃぶなどと言われるが、せいぜい1.2倍になった程度じゃ。まさに桁外れにおカネを発行した。
この二つの要因によって、まさにおカネが紙くずほどの価値になった。お札(銀行券)をリヤカーに山積みにして運ぶ写真が有名じゃが、ああいうことになった。しかし、こうしたハイパーインフレの事態は、それこそ、このドイツの例のように、戦争と巨額の賠償金のような極端なことが生じない限り起こらないと言える。
マスコミには、口を開けば「日本がハイパーインフレになるぞー」と騒ぐ評論家も居るが、過去のハイパーインフレの例を冷静に分析すれば、そんなことは絶対に起きないとすぐにわかるはずじゃ。日本は工場もインフラも破壊されていないし、おカネも1.2倍になっただけじゃ。
ハイパーインフレでは多くの人々が貧困になったが、これはインフレが原因ではない。商品がなくなったからじゃ。値段が高くても、おカネがあれば買うことはできる。しかし、商品そのものがない、極端な物不足の状態なのじゃから、いくらおカネがあっても買うことが出来ない。だから貧困になるのじゃ。ここは非常に重要じゃ。モノがないことが貧困化の本質的な原因じゃ。
(ねこ)
うにゃ、インフレになったから貧困になったわけじゃないんだにゃ。よく覚えておくにゃ。
(じいちゃん)
次に世界大恐慌じゃが、これはハイパーインフレとはまるで違う。
まず商品の供給力が破壊されたわけではない。それどころか、大恐慌の発生の直前は、空前の好景気、バブル状態じゃった。そのため、工場やインフラなどの生産設備がフル活動して、あふれるほど多くの商品が生産されていた。
同時に、おカネの量は増え続けていた。バブルによって銀行による貸し出しが増加していたからだ。とはいえ、ハイパーインフレの時のように、一万倍もおカネを発行するというレベルではない。こうして世の中にあふれ出したおカネによって、経済は絶好調じゃった。
ところが、バブルが崩壊すると状況が一変する。バブル崩壊と同時に資産価格が暴落すると、銀行に借金を返せなくなる人や企業が続出するようになり、銀行は不良債権の山積みになった。そのため金融危機が発生。貸し出しが極端に減ったことから、借金を借りる人より返す人が多くなり、世の中のおカネの量が減り始めた。通貨収縮である。
世の中のおカネの量が減ると、おカネの量が増えるのとは逆のことが発生する。市場では商品がうれなくなり、値段が下落し始めた。デフレである。商品が売れないので、企業は労働者の賃金を下げることになる。賃金が下がった人々は、市場で商品を買うことができないので、ますます商品が売れなくなる。
やがて、商品が売れないので、工場は生産休止に追い込まれ、労働者が大量に解雇される。失業者はおカネがないので、商品を買うことができず、ますます商品が売れなくなる。するとさらに多くの工場が生産休止に追い込まれ、従業員が解雇され、世の中は失業者であふれる。
インフレとは逆に、デフレによっておカネの価値はどんどん上昇したが、おカネの価値があがったところで、人々の所得がそれ以上に減り続けるため人々はどんどん貧しくなる。同時に、工場の多くは閉鎖されて、商品が作られなくなる。
つまり、大恐慌の原因は商品がなくなったからではない。おカネがなくなったからじゃ。商品を作る供給力は有り余るほどあっても、人々にそれを買うためのおカネがないのじゃ。だから商品は生産されなくなり、人々は貧困になる。
(ねこ)
にゃんと、ハイパーインフレも大恐慌も、どちらも貧困を引き起こすけど、貧困の原因はまったく違うのにゃ。ハイパーインフレの原因は商品が足りないことが原因で、大恐慌はおカネは足りないことが原因なんだにゃ。
(じいちゃん)
そうじゃ。これはインフレとデフレの違いを理解する最も基本的な知識じゃから、きちんと覚えておいたほうが良いのじゃよ。
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