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第一期 おカネに関する初歩的なお話
11)借金ではないおカネの仕組み「政府通貨制度」
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(じいちゃん)
今日は「借金ではないおカネの仕組み」について話そうと思うのじゃ。今までの話で、現代のおカネはすべて借金から作られていることがわかったと思う。
一方、誰も借金しなくともおカネを作り出す方法がある。借金ではないおカネを使った通貨制度を「政府通貨制度」と呼ぶ。あるいは「ソブリンマネー」と呼ぶ。ねこは政府通貨制度という言葉を聞いたことはあるかな?
(ねこ)
初めて聞いたにゃ。面白そうにゃ。借金せずに、どんな方法でおカネを作るのかにゃ。
(じいちゃん)
簡単じゃ。銀行制度ができる前の、昔の方法でおカネを発行すればよいだけじゃ。今は銀行から借金することでおカネを作り出しておるが、そうではなく、政府が直接おカネを作ればよいのじゃ。
昔の政府は、金や銀を鋳造して金貨や銀貨を作っていた。だから、誰からもどこからも借金することなく、おカネを作っていた。今日、金や銀で政府がおカネを作ることはなくなったが、今でも政府はニッケルや銅を使って500円や100円といった硬貨を作っている。これらも、誰からもどこからも借金すること無く作られる。
こうして政府は金属を使っておカネを作っているが、必ずしも金属でおカネを作らねばならない理由はない。金属の代わりに、紙で紙幣を印刷しても同じである。誰からもどこからも借金すること無く、紙幣を作ることはできる。それは「政府通貨」や「政府紙幣」と呼ばれるのじゃ。
そして、銀行から借金することでおカネを作り出すことを一切やめて、政府だけがおカネを作り出す制度のことを政府通貨制度と呼ぶのじゃ。
(ねこ)
ふにゃ。政府通貨制度は今の通貨制度に比べて何がいいんだにゃ。
(じいちゃん)
最も良いところは、誰にでもわかりやすく、馴染みやすい制度である点じゃ。
ほとんどの人々は、今日のおカネが借金から作られている事実を知らない。説明を聞いても理解できる人は少ない。そのため、日銀の金融政策の話を聞いても、まともに理解できる人はほとんどいない。こんな状態で金融政策や国債の問題を争点として国政選挙が行われても、的確な選挙が行われるはずがない。誰でもわかりやすい通貨制度に改める必要がある。
その点、政府通貨制度は、ほとんどの人がイメージするおカネの仕組みにぴったりマッチしている。おカネは借金から作られるのではなく、単に輪転機を回して作られる。おカネを作るために政府が国債を発行する必要はない。それはほとんどの人のおカネに関するイメージと同じだ。難しいことを考える必要はなくなるのじゃ。誰でも容易に理解できる通貨制度じゃ。
もう一つは、バブルと、バブル崩壊によるデフレ不況を引き起こさないことじゃ。
先にも話したが、借金でおカネを作る現代の金融システムが、バブルとバブル崩壊を引き起こす原因じゃ。政府通貨制度にすれば、銀行が預金をどんどん発行することはできなくなり、銀行は預金者から集めたおカネだけを貸し出すようになる。だから、借金がどんどん膨れ上がるバブルを引き起こすことがなくなる。
さらに、国債を発行する必要がなくなるので、国の借金問題は、そもそも発生しなくなる。
国債を発行する代わりに政府通貨を発行するので、政府が二度と借金することはなくなる。前回も話したように、国債を発行しようが、国債の代わりに政府がおカネを発行しようが、調達したおカネで財政出動をすれば世の中のおカネは同じように増える。だから、国債の代わりにおカネを発行しても同じなのじゃ。わざわざ借金する必要はない。
このように、政府がおカネを発行する政府通貨制度には、様々なメリットがあるのじゃ。
(ねこ)
う~ん、でも反対する人もいるんじゃないかにゃ。
(じいちゃん)
反対する人の意見として「政府がおカネを発行すると、おカネを発行する誘惑に負けて、おカネを過剰に発行してインフレをまねく」という主張がある。その歴史的な例として、アメリカの南北戦争の際にリンカーン大統領が発行した政府通貨の例、そして日本の西南戦争の際に、政府が軍事支出のために発行した政府通貨を引き合いに出すことが多い。
しかし、だからといって、政府通貨制度よりも現在の金融システムの方が優れているとは言えないのじゃ。現代の金融システムも歴史的に多くの問題を引き起こしている。世界大恐慌を引き起こして世界を破滅の瀬戸際に叩き落とし、日本のバブル崩壊を引き起こして失われた30年のデフレを招き、その後もITバブル、リーマンショックとそれに続く世界経済の長期停滞を引き起こした。歴史的に見ても、現代の金融システムには極めて大きな問題がある。
しかも、リンカーンの政府通貨も、西南戦争の際の日本の政府通貨も、インフレを引き起こしたとは言え、歴史的に大切な役割を果たした。もし政府通貨の発行をためらい、リンカーンが南北戦争で負けたり、日本政府が反乱軍に負けていたら、歴史は大きく変わっていた恐れもある。その点、現代の金融システムが引き起こしたバブルとバブル崩壊は失われた30年や長期停滞を引き起こし、富裕層をいっそう太らせただけだ。
(ねこ)
歴史的に見ても、現代の通貨制度の方が政府通貨制度より優れているとは言えないにゃ。
(じいちゃん)
政府通貨制度は、通貨発行に歯止めが効きにくいかもしれないが、それとて現代の通貨制度も同じじゃ。借り手の要求に応じて、銀行の貸し出しに歯止めが効かなくなるため、預金と借金が際限なく膨張し、バブルが拡大し、崩壊するのだ。それを歴史的に何度も繰り返している。しかも、それらは昔の話ではなく最近の話なのじゃ。
さて、2024年3月現在、アメリカの株価は高値を更新し、日本の株価もどんどん上昇している。現代の金融システムによって、歴史的に同じことがまた繰り返されないことを祈るばかりじゃ。
今日は「借金ではないおカネの仕組み」について話そうと思うのじゃ。今までの話で、現代のおカネはすべて借金から作られていることがわかったと思う。
一方、誰も借金しなくともおカネを作り出す方法がある。借金ではないおカネを使った通貨制度を「政府通貨制度」と呼ぶ。あるいは「ソブリンマネー」と呼ぶ。ねこは政府通貨制度という言葉を聞いたことはあるかな?
(ねこ)
初めて聞いたにゃ。面白そうにゃ。借金せずに、どんな方法でおカネを作るのかにゃ。
(じいちゃん)
簡単じゃ。銀行制度ができる前の、昔の方法でおカネを発行すればよいだけじゃ。今は銀行から借金することでおカネを作り出しておるが、そうではなく、政府が直接おカネを作ればよいのじゃ。
昔の政府は、金や銀を鋳造して金貨や銀貨を作っていた。だから、誰からもどこからも借金することなく、おカネを作っていた。今日、金や銀で政府がおカネを作ることはなくなったが、今でも政府はニッケルや銅を使って500円や100円といった硬貨を作っている。これらも、誰からもどこからも借金すること無く作られる。
こうして政府は金属を使っておカネを作っているが、必ずしも金属でおカネを作らねばならない理由はない。金属の代わりに、紙で紙幣を印刷しても同じである。誰からもどこからも借金すること無く、紙幣を作ることはできる。それは「政府通貨」や「政府紙幣」と呼ばれるのじゃ。
そして、銀行から借金することでおカネを作り出すことを一切やめて、政府だけがおカネを作り出す制度のことを政府通貨制度と呼ぶのじゃ。
(ねこ)
ふにゃ。政府通貨制度は今の通貨制度に比べて何がいいんだにゃ。
(じいちゃん)
最も良いところは、誰にでもわかりやすく、馴染みやすい制度である点じゃ。
ほとんどの人々は、今日のおカネが借金から作られている事実を知らない。説明を聞いても理解できる人は少ない。そのため、日銀の金融政策の話を聞いても、まともに理解できる人はほとんどいない。こんな状態で金融政策や国債の問題を争点として国政選挙が行われても、的確な選挙が行われるはずがない。誰でもわかりやすい通貨制度に改める必要がある。
その点、政府通貨制度は、ほとんどの人がイメージするおカネの仕組みにぴったりマッチしている。おカネは借金から作られるのではなく、単に輪転機を回して作られる。おカネを作るために政府が国債を発行する必要はない。それはほとんどの人のおカネに関するイメージと同じだ。難しいことを考える必要はなくなるのじゃ。誰でも容易に理解できる通貨制度じゃ。
もう一つは、バブルと、バブル崩壊によるデフレ不況を引き起こさないことじゃ。
先にも話したが、借金でおカネを作る現代の金融システムが、バブルとバブル崩壊を引き起こす原因じゃ。政府通貨制度にすれば、銀行が預金をどんどん発行することはできなくなり、銀行は預金者から集めたおカネだけを貸し出すようになる。だから、借金がどんどん膨れ上がるバブルを引き起こすことがなくなる。
さらに、国債を発行する必要がなくなるので、国の借金問題は、そもそも発生しなくなる。
国債を発行する代わりに政府通貨を発行するので、政府が二度と借金することはなくなる。前回も話したように、国債を発行しようが、国債の代わりに政府がおカネを発行しようが、調達したおカネで財政出動をすれば世の中のおカネは同じように増える。だから、国債の代わりにおカネを発行しても同じなのじゃ。わざわざ借金する必要はない。
このように、政府がおカネを発行する政府通貨制度には、様々なメリットがあるのじゃ。
(ねこ)
う~ん、でも反対する人もいるんじゃないかにゃ。
(じいちゃん)
反対する人の意見として「政府がおカネを発行すると、おカネを発行する誘惑に負けて、おカネを過剰に発行してインフレをまねく」という主張がある。その歴史的な例として、アメリカの南北戦争の際にリンカーン大統領が発行した政府通貨の例、そして日本の西南戦争の際に、政府が軍事支出のために発行した政府通貨を引き合いに出すことが多い。
しかし、だからといって、政府通貨制度よりも現在の金融システムの方が優れているとは言えないのじゃ。現代の金融システムも歴史的に多くの問題を引き起こしている。世界大恐慌を引き起こして世界を破滅の瀬戸際に叩き落とし、日本のバブル崩壊を引き起こして失われた30年のデフレを招き、その後もITバブル、リーマンショックとそれに続く世界経済の長期停滞を引き起こした。歴史的に見ても、現代の金融システムには極めて大きな問題がある。
しかも、リンカーンの政府通貨も、西南戦争の際の日本の政府通貨も、インフレを引き起こしたとは言え、歴史的に大切な役割を果たした。もし政府通貨の発行をためらい、リンカーンが南北戦争で負けたり、日本政府が反乱軍に負けていたら、歴史は大きく変わっていた恐れもある。その点、現代の金融システムが引き起こしたバブルとバブル崩壊は失われた30年や長期停滞を引き起こし、富裕層をいっそう太らせただけだ。
(ねこ)
歴史的に見ても、現代の通貨制度の方が政府通貨制度より優れているとは言えないにゃ。
(じいちゃん)
政府通貨制度は、通貨発行に歯止めが効きにくいかもしれないが、それとて現代の通貨制度も同じじゃ。借り手の要求に応じて、銀行の貸し出しに歯止めが効かなくなるため、預金と借金が際限なく膨張し、バブルが拡大し、崩壊するのだ。それを歴史的に何度も繰り返している。しかも、それらは昔の話ではなく最近の話なのじゃ。
さて、2024年3月現在、アメリカの株価は高値を更新し、日本の株価もどんどん上昇している。現代の金融システムによって、歴史的に同じことがまた繰り返されないことを祈るばかりじゃ。
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