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第一期 おカネに関する初歩的なお話
7)政府が借金(国債)を負うべき理由
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(じいちゃん)
今日は、政府が借金を負うべき理由について話をしよう。政府の借金とは国債の事じゃな。ところでねこは、日銀の金融緩和政策によって、世の中のおカネが増えて、おカネがじゃぶじゃぶになっていると思うか?
(ねこ)
そりゃあ、日銀がおカネをたくさん発行したんだから、その分だけ世の中のおカネが増えて、じゃぶじゃぶになってると思うにゃ。
(じいちゃん)
普通の人はそう思うじゃろう。ところがそんな単純なものではないのじゃ。つまり、日銀がおカネを発行すれば、そのぶんだけ、そのまま世の中のおカネが増えるわけではない。例えば日銀が10億円のおカネを発行しても、世の中のおカネが1億円しか増えないこともあり得るのじゃよ。
(ねこ)
それは不思議だにゃ。なんでそんなことになるのかにゃ。
(じいちゃん)
それは、金融の仕組みが二重構造になっているからだ。これまで話してきたように、おカネには国が発行するおカネと、民間銀行が発行するおカネの二つがある。この二重構造がおカネの流れを複雑にしている。
(ねこ)
それがどうして複雑なんだにゃ。
(じいちゃん)
おカネの大本(おおもと)は国が発行する現金じゃ。これは日銀が発行する日本銀行券や日銀当座預金がある。じゃが、それら国の発行したおカネは、そのまま世の中に出回るわけではないんじゃ。
例えば、金融緩和政策として、日銀は民間銀行が保有している国債を買い取っておる。その際、日銀は現金を発行して国債を買い取る。例えば日銀が10億円の国債を民間銀行から買い取る場合、日銀が日銀当座預金を10億円発行し、それを民間銀行の日銀当座預金口座に振り込む。これで、民間銀行に10億円が渡ったことになる。
しかしこれは、日銀の発行したおカネが民間銀行に渡っただけであって、個人や企業におカネが渡ったわけではない。本来であれば、この現金を利用して民間銀行が個人や企業に貸し出しを行うことで、世の中のおカネが増える。しかし貸し出しが増えなければ、現金が民間銀行の金庫の中で唸っているだけで、世の中のおカネは増えない。これを俗に「豚積み」などと言っておる。
民間銀行からおカネを借りたいという人がいなければ、どれだけ日銀がおカネを発行しても世の中のおカネは増えない。だから、日銀が10億円を増やしても、世の中のおカネは1億円しか増えない、といったことが起きる。
実際、日銀が大量のおカネを発行しているわりに、世の中のおカネはあまり増えていない。これが、いまいち金融緩和の効果が低い原因でもあるんじゃ。
(ねこ)
なるほどにゃ。日銀がおカネをバンバン発行しても、借金する人がいないと、世の中のおカネは増えないんだにゃ。じゃぶじゃぶにはならないにゃ。
でも、借りたい人が居ないなら、無理に貸さなくてもいいんじゃないのかにゃ。借りたい人が居ないということは、世の中のおカネの量は足りているんじゃないのかにゃ。
(じいちゃん)
それはまったく違うのじゃ。そもそも、世の中のおカネはすべて借金から作られておることは、いままで話したとおりじゃ。
ということは、もしおカネを借りる人が居なくなり、おカネを返す人が増えると、世の中のおカネはどんどん減り続けることになる。それが現実に生じたのが1929年に始まったとされる「世界大恐慌」じゃ。この時はおカネを借りる人がどんどん減り続け、それに応じて世の中のおカネもどんどん減り続けた。
その結果、おカネが不足して経済が極度なデフレに陥り、経済が回らなくなり、失業が溢れ、商品の生産が止まり、経済は恐慌に陥った。
つまり、単におカネを借りたいという人におカネを貸しているだけでは、経済を健全に運営するために必要な量のおカネを維持することができない場合がある。
これと同じようなことは、デフレに陥った、失われた30年の日本でも生じた。もちろん、世界大恐慌のような極端な通貨収縮(おカネが減ること)は生じておらん。じゃが、おカネの増え方が他の先進国に比べて、ダントツのビリという状況が30年以上も続いたのじゃ。
(ねこ)
それはひどいにゃ。借りたい人におカネを貸すだけでは、世の中のおカネが足りなくなる場合があるんだにゃ。でも、借りたい人が居ないのに、どうやって世の中のおカネを増やすのかにゃ。
(じいちゃん)
確実な方法が一つある。おカネを借りたい人が居ないのなら、代わりに政府が銀行からおカネを借りればいいのじゃよ。日銀や民間銀行が政府の発行する国債を買い、その代金として受け取ったおカネを使って、政府が財政出動(公共工事や社会保障)を行えば、世の中のおカネを直接増やすことができる。
(ねこ)
え~、でも国の借金が増えるにゃ。
(じいちゃん)
たしかにそうじゃ。じゃがよく考えてみることじゃ。世の中のおカネがすべて借金から作られておるのじゃから、貨幣経済を維持するためには、常に誰かが借金を負わなければならない決まりじゃ。誰かが借金を負わなければ経済は破綻する。
そうであるなら、個人や企業に借金を押し付けるべきじゃろうか? どうせ誰かが負わねばならない借金なら、公共のために政府が負うべきではないのかな。
(ねこ)
う~ん、確かにそうだにゃ。誰かが借金を負わなければならないのだから、個人や企業に負わせるのではなく、政府が負うべきだと思うにゃ。でも、個人や企業が借金で苦しまなくて済む代わりに、国の借金が増えて、日本が潰れてしまうにゃ。
(じいちゃん)
ほっほっほ。まあ、ねこの心配もよくわかる。じゃが、いくら借金しても日本が潰れない方法はある。まあ、長くなるので、その話はまた別の機会にしようかのう。
今日は、政府が借金を負うべき理由について話をしよう。政府の借金とは国債の事じゃな。ところでねこは、日銀の金融緩和政策によって、世の中のおカネが増えて、おカネがじゃぶじゃぶになっていると思うか?
(ねこ)
そりゃあ、日銀がおカネをたくさん発行したんだから、その分だけ世の中のおカネが増えて、じゃぶじゃぶになってると思うにゃ。
(じいちゃん)
普通の人はそう思うじゃろう。ところがそんな単純なものではないのじゃ。つまり、日銀がおカネを発行すれば、そのぶんだけ、そのまま世の中のおカネが増えるわけではない。例えば日銀が10億円のおカネを発行しても、世の中のおカネが1億円しか増えないこともあり得るのじゃよ。
(ねこ)
それは不思議だにゃ。なんでそんなことになるのかにゃ。
(じいちゃん)
それは、金融の仕組みが二重構造になっているからだ。これまで話してきたように、おカネには国が発行するおカネと、民間銀行が発行するおカネの二つがある。この二重構造がおカネの流れを複雑にしている。
(ねこ)
それがどうして複雑なんだにゃ。
(じいちゃん)
おカネの大本(おおもと)は国が発行する現金じゃ。これは日銀が発行する日本銀行券や日銀当座預金がある。じゃが、それら国の発行したおカネは、そのまま世の中に出回るわけではないんじゃ。
例えば、金融緩和政策として、日銀は民間銀行が保有している国債を買い取っておる。その際、日銀は現金を発行して国債を買い取る。例えば日銀が10億円の国債を民間銀行から買い取る場合、日銀が日銀当座預金を10億円発行し、それを民間銀行の日銀当座預金口座に振り込む。これで、民間銀行に10億円が渡ったことになる。
しかしこれは、日銀の発行したおカネが民間銀行に渡っただけであって、個人や企業におカネが渡ったわけではない。本来であれば、この現金を利用して民間銀行が個人や企業に貸し出しを行うことで、世の中のおカネが増える。しかし貸し出しが増えなければ、現金が民間銀行の金庫の中で唸っているだけで、世の中のおカネは増えない。これを俗に「豚積み」などと言っておる。
民間銀行からおカネを借りたいという人がいなければ、どれだけ日銀がおカネを発行しても世の中のおカネは増えない。だから、日銀が10億円を増やしても、世の中のおカネは1億円しか増えない、といったことが起きる。
実際、日銀が大量のおカネを発行しているわりに、世の中のおカネはあまり増えていない。これが、いまいち金融緩和の効果が低い原因でもあるんじゃ。
(ねこ)
なるほどにゃ。日銀がおカネをバンバン発行しても、借金する人がいないと、世の中のおカネは増えないんだにゃ。じゃぶじゃぶにはならないにゃ。
でも、借りたい人が居ないなら、無理に貸さなくてもいいんじゃないのかにゃ。借りたい人が居ないということは、世の中のおカネの量は足りているんじゃないのかにゃ。
(じいちゃん)
それはまったく違うのじゃ。そもそも、世の中のおカネはすべて借金から作られておることは、いままで話したとおりじゃ。
ということは、もしおカネを借りる人が居なくなり、おカネを返す人が増えると、世の中のおカネはどんどん減り続けることになる。それが現実に生じたのが1929年に始まったとされる「世界大恐慌」じゃ。この時はおカネを借りる人がどんどん減り続け、それに応じて世の中のおカネもどんどん減り続けた。
その結果、おカネが不足して経済が極度なデフレに陥り、経済が回らなくなり、失業が溢れ、商品の生産が止まり、経済は恐慌に陥った。
つまり、単におカネを借りたいという人におカネを貸しているだけでは、経済を健全に運営するために必要な量のおカネを維持することができない場合がある。
これと同じようなことは、デフレに陥った、失われた30年の日本でも生じた。もちろん、世界大恐慌のような極端な通貨収縮(おカネが減ること)は生じておらん。じゃが、おカネの増え方が他の先進国に比べて、ダントツのビリという状況が30年以上も続いたのじゃ。
(ねこ)
それはひどいにゃ。借りたい人におカネを貸すだけでは、世の中のおカネが足りなくなる場合があるんだにゃ。でも、借りたい人が居ないのに、どうやって世の中のおカネを増やすのかにゃ。
(じいちゃん)
確実な方法が一つある。おカネを借りたい人が居ないのなら、代わりに政府が銀行からおカネを借りればいいのじゃよ。日銀や民間銀行が政府の発行する国債を買い、その代金として受け取ったおカネを使って、政府が財政出動(公共工事や社会保障)を行えば、世の中のおカネを直接増やすことができる。
(ねこ)
え~、でも国の借金が増えるにゃ。
(じいちゃん)
たしかにそうじゃ。じゃがよく考えてみることじゃ。世の中のおカネがすべて借金から作られておるのじゃから、貨幣経済を維持するためには、常に誰かが借金を負わなければならない決まりじゃ。誰かが借金を負わなければ経済は破綻する。
そうであるなら、個人や企業に借金を押し付けるべきじゃろうか? どうせ誰かが負わねばならない借金なら、公共のために政府が負うべきではないのかな。
(ねこ)
う~ん、確かにそうだにゃ。誰かが借金を負わなければならないのだから、個人や企業に負わせるのではなく、政府が負うべきだと思うにゃ。でも、個人や企業が借金で苦しまなくて済む代わりに、国の借金が増えて、日本が潰れてしまうにゃ。
(じいちゃん)
ほっほっほ。まあ、ねこの心配もよくわかる。じゃが、いくら借金しても日本が潰れない方法はある。まあ、長くなるので、その話はまた別の機会にしようかのう。
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