ネコでもわかる経済の話

のらねこま(駒田 朗)

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第一期 おカネに関する初歩的なお話

3)昔のおカネは、国債を発行することなく、政府が作った

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(じいちゃん)

 今日は「昔のおカネは、国債を発行することなく、政府が作った」という話をしよう。

 前回は国がおカネを発行する方法を話した。国がおカネを発行するには、政府が国債を発行して日銀から借金をしなければならないということじゃった。これが管理通貨制度と呼ばれる仕組みじゃな。

 しかしそれは現代の国家の話じゃ。では昔の国家はどのようにしておカネを発行していたのじゃろうか。

(ねこ)

 う~ん、やっぱり政府が銀行から借金していたのかにゃ。

(じいちゃん)

 いやいや、そもそも昔は銀行なんて無かった。だからおカネは政府が作っていた。それが金貨や銀貨じゃな。ローマ帝国はローマ金貨を発行していたし、江戸幕府は大判小判などを発行していた。

 昔の政府は金山や銀山を所有し、金や銀を採掘し、それらを鋳造することで金貨や銀貨を作っていたのじゃ。じゃから昔の政府は、誰からもおカネを借りること無く、おカネを作ることができた。

(ねこ)

 へええ、そうなのかにゃ。金貨や銀貨のような硬貨なら、政府が借金せずにおカネを発行できるのかにゃ。

(じいちゃん)

 そうじゃよ。じゃから、今でも500円や100円のような硬貨は、政府が日銀から借金すること無く、発行することができる。こうした硬貨は「金属貨幣」とも呼ばれる。一万円や千円といった紙幣は日銀が発行する銀行券なので、お札には「銀行券」と印字されておる。一方、硬貨は日本国政府が発行しているので「日本国」と刻印されておる。

 つまり、銀行券と硬貨は、ことなる起源を持つおカネなのじゃよ。

(ねこ)

 そうなのかにゃ。硬貨なら、政府が借金しなくても発行できるのか。それなら日本も銀行券じゃなくて金貨や銀貨を発行すればいいにゃ。それなら政府の借金も減るにゃ。

(じいちゃん)

 そうしたいのは山々じゃが、今の政府は金山も銀山も保有していない。それに、そもそも金や銀のような貴金属の量は極めて限られている。だから、金貨や銀貨でおカネを作ることは、とても現実的ではないのじゃよ。

(ねこ)

 へえ? でも、昔の社会は金貨や銀貨を使っていたにゃ。なんで昔は金貨や銀貨でもよかったのかにゃ。

(じいちゃん)

 それは、昔の経済規模が現代とは比較にならないほど小さかったからじゃ。経済規模が小さいから、社会全体が取引に使うためのおカネの総量も少なくて済んだ。だから、世の中にある金や銀でおカネを作っても、その程度の量で間に合ったんじゃな。

 ところが、大航海時代、そして産業革命と時代がすすむにつれて、経済の規模がどんどん大きくなり、それに応じて社会全体が取引に使うおカネの量もどんどん増えていった。だから、とてもじゃないが、金貨や銀貨を発行していただけでは、おカネの量が少なすぎて、経済の成長に間に合わなくなったんじゃ。

 一方、銀行の発行するおカネである銀行券は、紙に印刷すれば作れるので、作ろうと思えば、ほぼ無限に作り出せる。だから今は銀行から政府が借りる紙幣が主流になっておる。

(ねこ)

 たしかに金貨や銀貨じゃあ、作れる量は限られるにゃ。それで、政府が日銀から銀行券を借りているのか。・・・・でも、それなら、日銀から借りなくても、政府が紙におカネを印刷して、お札をつくればいいんじゃないかな。

(じいちゃん)

 そうした考えも当然ある。それは「政府通貨」と呼ばれる。昔は金や銀を使って政府が金貨や銀貨を作っていたのだから、現代の社会でも、政府が紙をつかって紙幣を発行することに何ら不自然さはない。こうした考えを支持する人もいるのじゃ。じゃが、その話はまた今度にしようかのう。

 そのまえに、そもそも銀行とは何なのかを知る必要があるのじゃ。

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