5 / 25
第一期 おカネに関する初歩的なお話
4)銀行の誕生としくみ~銀行は打ち出の小槌
しおりを挟む
(じいちゃん)
今日は「銀行の誕生としくみ」について話そうと思う。ネコは、銀行はいつ頃からあったと思う?
(ねこ)
うにゃ。おカネを貸す商売は、たぶん相当な昔からあったと思うにゃ。だから、銀行は紀元前のローマ時代にはあったと思うにゃ。
(じいちゃん)
う~ん、残念じゃが、今日のような銀行はかなり後になってから誕生してくる。なぜなら「金貸し業」と「銀行」はまったく異なる事業だからじゃ。
(ねこ)
ふにゃ、金貸しも銀行もおカネを貸しているのに、ぜんぜん違うのかにゃ。
(じいちゃん)
そう、全然違う。金貸し業は紀元前の昔からあったと考えられている。商売などでおカネを儲けてたくさんのおカネを貯め込んだ人々の中に、貯めたおカネを他人に貸して利息を得ようと考える者が現れるのは不思議ではない。だから、金貸しは大昔から居た。
じゃが、それらの金貸し業者が発展して、今日のような銀行になったわけではない。銀行の起源は、金貸し業とはまったく別のところにあるのじゃ。
(ねこ)
金貸し業者が銀行になったんじゃないのか。じゃあ、誰が銀行の始まりだったのかにゃ。
(じいちゃん)
「カネ預かり業者」じゃよ。金貨や貴金属を預かる金庫業のようなものじゃな。中世時代になると、商売などで大儲けして大量の金貨や銀貨を貯め込む富裕層が増えてきた。しかし大量の金銀を自宅で保管するとなれば、強盗に襲われたりする危険性がある。そこで、武装した警備員に守られた金庫で富裕層のおカネを預かる商売が登場してきた。カネ預かり業者じゃよ。
(ねこ)
へええ、カネ預かり業者か。カネを預かるだけで、貸すわけじゃないのかにゃ。
(じいちゃん)
最初は単にカネを預かるだけじゃった。そしてカネ預かり業者は、カネを預かった証明として「預り証書」を発行して金貨を預けた人に渡したんじゃ。この預り証書こそが、のちに銀行券となる。
そして、金貨を預けた人が金貨を引き出したいときには、預り証書をカネ預かり業者に渡す。預り証書と引き換えに、預かり業者は金貨を渡す。こうして預り証書があれば、預かり業者からいつでも金貨を引き出すことができた。
(ねこ)
なるほどにゃ。カネ預かり業者が発行する預り証書が銀行券の起源なのかにゃ。でも、預り証書が、なんでおカネになったんだにゃ。
(じいちゃん)
預り証書は、カネ預かり業者へ行けば、いつでも金貨と交換できる。ということは、預り証書に金貨とほとんど同じ価値があると考えることができる。そのため、わざわざ金貨を引き出して買い物や取引をしなくても、この預り証書を使って買い物や取引をする人が増えてきたんじゃ。
金貨は重たいし、金貨をもってブラブラ歩いていれば、いつ強盗に襲われるかわかったものじゃない。だから紙でできている預り証書の方が便利だったんじゃな。こうして預り証書はおカネになった。
そして、カネ預かり業者は「銀行」となり、預り証書は「銀行券」となったのじゃよ。
(ねこ)
そうか、それで今でも銀行はおカネを預かるんだにゃ。でも、おカネは貸さないのかにゃ。
(じいちゃん)
そう、最初はおカネを貸さなかった。しかし、やがて銀行は預かった金貨をおカネの借りたい人に貸し出し、利息を得て、預金者にも利息の一部を分け与えるようになった。だが、ここから、銀行の特殊な性質が明らかになる。
経済活動が活発になるにつれて、おカネを借りたいという人はどんどん増えていった。とはいえ、金庫の金貨をどんどん貸し出すのはリスクがある。しかも金庫の中の金貨の量は限られている。だから、いくら借りたい人がたくさん居ても、貸し出しできる金貨の量には限界があったのじゃ。
そこで、銀行は金貨ではなく、銀行券を貸し出すようになった。銀行券を貸し出せば、金貨を貸し出す必要はない。しかも銀行券は紙に印刷するだけだから、いくらでも作れる。そこで、銀行は銀行券をどんどん発行して、おカネを借りたい人に貸し出すようになった。
銀行は、預金者から集めた金貨を貸したのではない。銀行券を発行して、銀行券を貸したのである。
今日「信用創造」と呼ばれる銀行の金融機能は、ここに起源がある。
信用創造とは、銀行がおカネを発行する仕組みのことを指す。今日における銀行は、日本銀行であろと、民間銀行であろうと、信用創造によっておカネを発行しているのじゃ。
(ねこ)
なるほどにゃあ。でも、金貨を預からないのに銀行券をどんどん発行したら、銀行の金庫の中の金貨の量よりも、世の中に出回っている銀行券のほうが多くならないのかにゃ。
(じいちゃん)
そのとおりじゃ。そのため、仮に銀行券を持っている人々がいっせいに銀行に押しかけて、金貨を引き出そうとすれば、銀行は引き出し要求に応じることができず、閉鎖される。これを「取り付け騒ぎ」というのじゃ。これは今日における取り付け騒ぎと同じじゃ。
社会が安定している時は、銀行から現金を引き出そうとする人はあまり居ない。しかし社会に不安が広がると、銀行から現金を引き出そうとする人が増える。マスコミが「あの銀行はあぶない」などと騒ぐと、その銀行の預金者がいっせいに銀行に押しかけて現金を引き出そうとするので、銀行の金庫のおカネではまったく対処できず、銀行は閉鎖に追い込まれるのじゃ。
(ねこ)
銀行って、おカネをどんどん発行して貸し出すことができるんだにゃ。まるで打ち出の小槌にゃ。
(じいちゃん)
そうじゃよ。銀行の信用創造とは打出の小槌なんじゃ。
(ねこ)
でも、そんなことしたら、おカネが無限に増えて、世の中が大変なことになるにゃ。
(じいちゃん)
そのとおり。じゃから、現代社会では民間銀行が好き勝手におカネを発行しないよう、制度を整えて制限を儲けている。その制度が準備預金制度というのじゃ。
(ねこ)
へええ、面白いにゃ。こんな話は聞いたことがなかったにゃ。
(じいちゃん)
そうじゃな、おカネの仕組みについては、学校でも教わらないし、新聞やテレビでも報じられない。だから大多数の国民は何も知らないのじゃよ。本当に知りたければ、自分で調べるしかない。幸いなことに、今はインターネットがあるから、いくらでも自分で調べられるのじゃよ。
これに興味を持ったら、ぜひ、自分でも調べることをおすすめするのじゃ。
次回は、現代社会のおける民間銀行のおカネの発行方法、すなわち準備預金制度について説明したい。
今日は「銀行の誕生としくみ」について話そうと思う。ネコは、銀行はいつ頃からあったと思う?
(ねこ)
うにゃ。おカネを貸す商売は、たぶん相当な昔からあったと思うにゃ。だから、銀行は紀元前のローマ時代にはあったと思うにゃ。
(じいちゃん)
う~ん、残念じゃが、今日のような銀行はかなり後になってから誕生してくる。なぜなら「金貸し業」と「銀行」はまったく異なる事業だからじゃ。
(ねこ)
ふにゃ、金貸しも銀行もおカネを貸しているのに、ぜんぜん違うのかにゃ。
(じいちゃん)
そう、全然違う。金貸し業は紀元前の昔からあったと考えられている。商売などでおカネを儲けてたくさんのおカネを貯め込んだ人々の中に、貯めたおカネを他人に貸して利息を得ようと考える者が現れるのは不思議ではない。だから、金貸しは大昔から居た。
じゃが、それらの金貸し業者が発展して、今日のような銀行になったわけではない。銀行の起源は、金貸し業とはまったく別のところにあるのじゃ。
(ねこ)
金貸し業者が銀行になったんじゃないのか。じゃあ、誰が銀行の始まりだったのかにゃ。
(じいちゃん)
「カネ預かり業者」じゃよ。金貨や貴金属を預かる金庫業のようなものじゃな。中世時代になると、商売などで大儲けして大量の金貨や銀貨を貯め込む富裕層が増えてきた。しかし大量の金銀を自宅で保管するとなれば、強盗に襲われたりする危険性がある。そこで、武装した警備員に守られた金庫で富裕層のおカネを預かる商売が登場してきた。カネ預かり業者じゃよ。
(ねこ)
へええ、カネ預かり業者か。カネを預かるだけで、貸すわけじゃないのかにゃ。
(じいちゃん)
最初は単にカネを預かるだけじゃった。そしてカネ預かり業者は、カネを預かった証明として「預り証書」を発行して金貨を預けた人に渡したんじゃ。この預り証書こそが、のちに銀行券となる。
そして、金貨を預けた人が金貨を引き出したいときには、預り証書をカネ預かり業者に渡す。預り証書と引き換えに、預かり業者は金貨を渡す。こうして預り証書があれば、預かり業者からいつでも金貨を引き出すことができた。
(ねこ)
なるほどにゃ。カネ預かり業者が発行する預り証書が銀行券の起源なのかにゃ。でも、預り証書が、なんでおカネになったんだにゃ。
(じいちゃん)
預り証書は、カネ預かり業者へ行けば、いつでも金貨と交換できる。ということは、預り証書に金貨とほとんど同じ価値があると考えることができる。そのため、わざわざ金貨を引き出して買い物や取引をしなくても、この預り証書を使って買い物や取引をする人が増えてきたんじゃ。
金貨は重たいし、金貨をもってブラブラ歩いていれば、いつ強盗に襲われるかわかったものじゃない。だから紙でできている預り証書の方が便利だったんじゃな。こうして預り証書はおカネになった。
そして、カネ預かり業者は「銀行」となり、預り証書は「銀行券」となったのじゃよ。
(ねこ)
そうか、それで今でも銀行はおカネを預かるんだにゃ。でも、おカネは貸さないのかにゃ。
(じいちゃん)
そう、最初はおカネを貸さなかった。しかし、やがて銀行は預かった金貨をおカネの借りたい人に貸し出し、利息を得て、預金者にも利息の一部を分け与えるようになった。だが、ここから、銀行の特殊な性質が明らかになる。
経済活動が活発になるにつれて、おカネを借りたいという人はどんどん増えていった。とはいえ、金庫の金貨をどんどん貸し出すのはリスクがある。しかも金庫の中の金貨の量は限られている。だから、いくら借りたい人がたくさん居ても、貸し出しできる金貨の量には限界があったのじゃ。
そこで、銀行は金貨ではなく、銀行券を貸し出すようになった。銀行券を貸し出せば、金貨を貸し出す必要はない。しかも銀行券は紙に印刷するだけだから、いくらでも作れる。そこで、銀行は銀行券をどんどん発行して、おカネを借りたい人に貸し出すようになった。
銀行は、預金者から集めた金貨を貸したのではない。銀行券を発行して、銀行券を貸したのである。
今日「信用創造」と呼ばれる銀行の金融機能は、ここに起源がある。
信用創造とは、銀行がおカネを発行する仕組みのことを指す。今日における銀行は、日本銀行であろと、民間銀行であろうと、信用創造によっておカネを発行しているのじゃ。
(ねこ)
なるほどにゃあ。でも、金貨を預からないのに銀行券をどんどん発行したら、銀行の金庫の中の金貨の量よりも、世の中に出回っている銀行券のほうが多くならないのかにゃ。
(じいちゃん)
そのとおりじゃ。そのため、仮に銀行券を持っている人々がいっせいに銀行に押しかけて、金貨を引き出そうとすれば、銀行は引き出し要求に応じることができず、閉鎖される。これを「取り付け騒ぎ」というのじゃ。これは今日における取り付け騒ぎと同じじゃ。
社会が安定している時は、銀行から現金を引き出そうとする人はあまり居ない。しかし社会に不安が広がると、銀行から現金を引き出そうとする人が増える。マスコミが「あの銀行はあぶない」などと騒ぐと、その銀行の預金者がいっせいに銀行に押しかけて現金を引き出そうとするので、銀行の金庫のおカネではまったく対処できず、銀行は閉鎖に追い込まれるのじゃ。
(ねこ)
銀行って、おカネをどんどん発行して貸し出すことができるんだにゃ。まるで打ち出の小槌にゃ。
(じいちゃん)
そうじゃよ。銀行の信用創造とは打出の小槌なんじゃ。
(ねこ)
でも、そんなことしたら、おカネが無限に増えて、世の中が大変なことになるにゃ。
(じいちゃん)
そのとおり。じゃから、現代社会では民間銀行が好き勝手におカネを発行しないよう、制度を整えて制限を儲けている。その制度が準備預金制度というのじゃ。
(ねこ)
へええ、面白いにゃ。こんな話は聞いたことがなかったにゃ。
(じいちゃん)
そうじゃな、おカネの仕組みについては、学校でも教わらないし、新聞やテレビでも報じられない。だから大多数の国民は何も知らないのじゃよ。本当に知りたければ、自分で調べるしかない。幸いなことに、今はインターネットがあるから、いくらでも自分で調べられるのじゃよ。
これに興味を持ったら、ぜひ、自分でも調べることをおすすめするのじゃ。
次回は、現代社会のおける民間銀行のおカネの発行方法、すなわち準備預金制度について説明したい。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる