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第ニ期 41話~80話
第四十三話 キャサリン暴走する②
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通りは行き止まりになっていて、行き止まりには八百屋が店を構えていた。店の主人が店先で暇そうにあくびをした。
「ふあああ。いやあ、今日はちっとも客が来ないな」
そこへサルが走ってきた。サルは一瞬だけ立ち止まり、店の主人の顔を見ると、素早く店の中へ逃げ込んだ。
「おや、サルか。これは縁起が良いな。お客さんがたくさん来るかも知れないな、うひひ」
どどど、と地鳴りがしたので、店の主人がふと顔をあげると、通りの正面から土煙を上げながら、血相を変えた大集団が全速力で店に向かってくるのが見えた。主人は仰天して腰を抜かした。
「なな、なんだありゃあ。どう見てもお客さんじゃねえよな」
店の主人に向かって、キャサリンが大声で叫んだ。
「おやじさーん、サルを見なかったああ?」
「サ、サルならたったいま、店の中に入っていったけど・・・」
「よし、突入!」
「うわわ、お客さん、ダメだよ」
キャサリン、レイラに続いて人間、犬、ヤギ、馬などが次々に店内になだれ込む。野菜や果物が飛び散る、転がる、もうめちゃくちゃである。
店の中へ入ると向こうに出口が見えた。サルは出口から逃げてゆく。それを見たキャサリンも出口から外へ飛び出そうとしたが、出口のすぐ下は水路だった。気付いたキャサリンは、すんでのところで踏みとどまった。
「きゃあ、な、なんでこんな町の真ん中に水路があるのよ、あぶないじゃないの」
しかし、あまりの勢いで店の中に突入したものだから、後続の連中が勢い余ってキャサリンに次々にぶつかり、野菜や果物と一緒にそのまま全員が水路に落ちてしまった。当のサルはといえば、頭上のロープにぶら下がって、尻を叩いている。
「うわわ、流される」
「きゃああ」
一行は、水流に押されて水路を流れていった。
ーーーーーー
その頃、宮廷では三国同盟の調印式を終えて、ルーク国王ご自慢の庭で祝賀パーティーがとり行われていた。
「乾杯」
緑の多いイシル国では、庭園もまた素晴らしい出来栄えである。きれいに刈り込まれた庭木が歩道の両側に整然と並び、歩道には白い玉砂利が敷き詰められている。花壇には美しい花が咲き乱れ、香りが漂い、可憐な蝶も舞っている。庭の中央にある広場で、イシル国のルーク国王が居並ぶ外国の要人たちに庭を解説していた。
「あちらが、女神の滝になります」
庭を囲む高い石造りの外壁の、ひときわ高いところから、かなりの水量の滝が流れ落ち、豪快に水しぶきをあげていた。滝が流れ出す場所の左右には、大理石で作られた見事な女神の像が腕を広げている。
「我が国の宗教では滝はとても神聖な場所で、大変に縁起が良いとされています。私も毎朝、国民の幸福を願って、この滝に向かって祈りを捧げています。この滝を作るために、わざわざ町の真ん中に水路を掘って水を引き込んでおります。どうぞ、よく御覧ください」
みんなの視線が滝に注がれているその時である。
「ひいいいいい」
太ももむき出しでピンク色のドレスを着た女が、ふいに滝の上から飛び出し、回転しながら滝壺へ落ちていった。
「うお、何だ?」
「女が落ちていったぞ」
一瞬、背筋がざわっとした。キャサリンか?いやいや、キャサリンはレイラと食事をしているはずだ。こんなところにいるはずがない。それに、レイラを見張りとして付けたんだから、大丈夫だ。
「ああああああ」
甲冑を着た、巨大な女が滝壺へ落ちていった。見誤るはずもない、レイラである。あいつら、何をしてるんだ。どうやったら、あんなところから出てくることになるんだ。
しかも、二人の女に続いて大量の野菜、ドワーフ、ハーフリング、キャンキャン吠えるイヌが十数匹も落ちてきた。さらに、男が二人、ウマ三頭、ヤギ十匹も落ちてきた。周囲は大騒ぎになった。これを見た司祭の婆さんが仰天し、腰を抜かしたまま滝を指さして叫んでいる。
「不吉じゃー、不吉じゃー、女が滝から落ちてきたぞいー」
これはやばい。俺は知らんぞ。他人だ、他人のふりをするんだ。俺は反対側を向いて、必死に見ないふりをした。
キャサリンとレイラは滝から落ちたショックで、ずぶ濡れのまま池の中で茫然(ぼうぜん)とへたり込んでいたが、やがて俺の姿を発見するや、ものすごく嬉しそうな顔をして大声で叫びながらこちらへ向かって走ってきた。
「お兄様、お兄様、アルフレッドお兄様あ~~」
「陛下、陛下、アルフレッド陛下あ~~」
俺はうろたえた。
「うわ、わ、やかましい、声がでかいぞ、静かにしろ!」
一斉に、周囲の視線が俺に降り注いだ。ひそひそ声が聞こえる。
「あの女は、アルカナ王国の、アルフレッド殿の関係者らしいな」
もはや言い逃れはできない。滝のそそぐ池では、イヌがわんわん走り回り、ウマやらヤギやらが徘徊して、動物園状態になった。宮殿の品格がぶち壊しである。ルーク国王がこちらへ向かって歩み寄ってきた。これはまずい。だが、ルーク国王の顔は、それほど怒ってはいないようだった。むしろ、なんだか嬉しそうにも見える。なぜだろうか。
「アルフレッド殿。こちらが、妹のキャサリンお嬢様ですか?」
キャサリンが言った。
「そうよ、わたくしがキャサリンですわ。というか、なんでこの人、横を向いて話するのよ。わたくしをバカにしているのかしら」
「いや、そうじゃなくて、お国によっていろいろ複雑な事情があるんだよ。そこは立ち位置が悪いから、キャサリンはこっちにきなさい」
ルーク国王がキャサリンの正面に向き直って言った。
「私が、イシル公国の国王、ルーク・ベアードです。ルークです。私の宮殿の美しいお庭にようこそ、おいでくださいました。心から歓迎いたします」
ルークがおもいっきり作り笑いをすると、キラリと歯が光った。ははあ、これはキャサリンに惚れたな。まあ、キャサリンは金髪美少女の最上級品みたいな外見をしているからな。おまけにピンクのミニドレスが、滝から落ちて、ずぶ濡れでスケスケだ。妙なスイッチが入るのも無理はないな。しかし、キャサリンの性格を知ったら驚くだろうな。
だが待てよ、これは好都合ではないか。キャサリンとルーク国王がくっつけば、イシル国の王族とアルカナ国の王族が親戚になるから、強力な関係を築ける。しかも、あのキャサリンが俺の周りをずっと付きまとうこともなくなる。俺はキャサリンに水を向けてみた。
「やあ、キャサリン。どうだい、ルーク様は素敵なお方だろう」
「まあまあ、ですわね。でもお兄様には及びませんわ。お兄様に比べたら、ナメクジみたいなものですわね」
「こ、こら、キャサリン。失礼だぞ」
「ははは、これは手厳しいですね。キャサリン様はお兄様が、よっぽどお好きと見える」
ルーク国王はそう言いながら笑ったが、俺を見る視線に、どことなく殺意を感じる。そこへ例の司祭の婆さんが飛んできた。
「これ!何を血迷うとるのじゃ、ルーク殿。この女は、アルフレッド殿に女難の厄(やく)をもたらしておる元凶の一人じゃぞ。貧乏神に取り憑かれておる、そんな女に近づいてはならん。不吉を招き入れるだけじゃ」
ルークが意地になって言い返した。
「うるさい、うるさい。キャサリン様は、女神の滝から落ちてきたのだぞ。これは間違いなく女神様の思し召しだ。絶対にそうだ」
ふと気がつくと、ずぬ濡れの二人の男が池の中に呆然と立っていた。俺は不思議に思って、男たちに尋ねてみた。
「失礼ですが、お二人は、どちらの方でしょうか」
男たちは我に返って、慌てた様子で答えた。
「あ、兄貴とあっしは、強盗で・・・」
兄貴分が弟分の頭を思い切り殴りつけた。
「違います。お嬢様の、その、お、お友達です。そうです、今日、お友達になりました。町の雑貨屋で偶然に出会いまして、サルを捕まえるお手伝をさせていただいたんですよ、あははは、いや、お手伝いは大変でした。本当に死ぬかと思いました」
キャサリンがむくれて言った。
「そのことは思い出したくもありませんわ」
いやいや、俺も聞きたくないぞ。レストランで大人しく食事しているはずの妹が、どんだけ無茶苦茶なことをすると、ウマやヤギと一緒に宮廷の滝から落ちてくるというのか。まわりに及ぼした被害が恐ろしくて聞けないわ。
キャサリンの友達と聞いて、ルーク国王がしゃしゃり出てきた。
「キャサリン様のお友達ですか、そうですか、そうですか。キャサリン様のお友達なら、大歓迎です。これも何かの御縁ですので、パーティのお食事を召し上がっていってください」
ルーク国王が指さした先には、大きな焼肉の固まり、焼き立てのパンやケーキ、色とりどりの果物など、豪華な料理が山積みになったテーブルが並んでいる。給仕のメイドたちが頭を下げた。
「や、やったぞ!これで飯が食えるぞ」
「やりましたね、兄貴、ううっ」
手を取り合い、泣きながら喜んでいる。よっぽど大変な目にあったのだろうか。
レイラが俺のそばに来ると、申し訳無さそうに大きな体を小さくして言った。
「申し訳ありません、アルフレッド様。性悪なサルたちに挑発されたもので、つい、カッとなって暴走してしまいました」
「いや、何の話かさっぱりわからんが、気にするな。キャサリンを止められる者などアルカナには誰も居ない」
もはや祝賀会はめちゃくちゃである。ルーク国王と司祭は、キャサリンを巡ってののしりあっている。エラル国王は飲み過ぎでゲロを吐いている。ミックは迷惑をかけた貴族たちや押しかけた市民たちに頭を下げまくっている。ナッピーは動物たちと池で水遊びをしている。ルミアナはどこかへ姿を消した。
大丈夫なのか?三国同盟。
「ふあああ。いやあ、今日はちっとも客が来ないな」
そこへサルが走ってきた。サルは一瞬だけ立ち止まり、店の主人の顔を見ると、素早く店の中へ逃げ込んだ。
「おや、サルか。これは縁起が良いな。お客さんがたくさん来るかも知れないな、うひひ」
どどど、と地鳴りがしたので、店の主人がふと顔をあげると、通りの正面から土煙を上げながら、血相を変えた大集団が全速力で店に向かってくるのが見えた。主人は仰天して腰を抜かした。
「なな、なんだありゃあ。どう見てもお客さんじゃねえよな」
店の主人に向かって、キャサリンが大声で叫んだ。
「おやじさーん、サルを見なかったああ?」
「サ、サルならたったいま、店の中に入っていったけど・・・」
「よし、突入!」
「うわわ、お客さん、ダメだよ」
キャサリン、レイラに続いて人間、犬、ヤギ、馬などが次々に店内になだれ込む。野菜や果物が飛び散る、転がる、もうめちゃくちゃである。
店の中へ入ると向こうに出口が見えた。サルは出口から逃げてゆく。それを見たキャサリンも出口から外へ飛び出そうとしたが、出口のすぐ下は水路だった。気付いたキャサリンは、すんでのところで踏みとどまった。
「きゃあ、な、なんでこんな町の真ん中に水路があるのよ、あぶないじゃないの」
しかし、あまりの勢いで店の中に突入したものだから、後続の連中が勢い余ってキャサリンに次々にぶつかり、野菜や果物と一緒にそのまま全員が水路に落ちてしまった。当のサルはといえば、頭上のロープにぶら下がって、尻を叩いている。
「うわわ、流される」
「きゃああ」
一行は、水流に押されて水路を流れていった。
ーーーーーー
その頃、宮廷では三国同盟の調印式を終えて、ルーク国王ご自慢の庭で祝賀パーティーがとり行われていた。
「乾杯」
緑の多いイシル国では、庭園もまた素晴らしい出来栄えである。きれいに刈り込まれた庭木が歩道の両側に整然と並び、歩道には白い玉砂利が敷き詰められている。花壇には美しい花が咲き乱れ、香りが漂い、可憐な蝶も舞っている。庭の中央にある広場で、イシル国のルーク国王が居並ぶ外国の要人たちに庭を解説していた。
「あちらが、女神の滝になります」
庭を囲む高い石造りの外壁の、ひときわ高いところから、かなりの水量の滝が流れ落ち、豪快に水しぶきをあげていた。滝が流れ出す場所の左右には、大理石で作られた見事な女神の像が腕を広げている。
「我が国の宗教では滝はとても神聖な場所で、大変に縁起が良いとされています。私も毎朝、国民の幸福を願って、この滝に向かって祈りを捧げています。この滝を作るために、わざわざ町の真ん中に水路を掘って水を引き込んでおります。どうぞ、よく御覧ください」
みんなの視線が滝に注がれているその時である。
「ひいいいいい」
太ももむき出しでピンク色のドレスを着た女が、ふいに滝の上から飛び出し、回転しながら滝壺へ落ちていった。
「うお、何だ?」
「女が落ちていったぞ」
一瞬、背筋がざわっとした。キャサリンか?いやいや、キャサリンはレイラと食事をしているはずだ。こんなところにいるはずがない。それに、レイラを見張りとして付けたんだから、大丈夫だ。
「ああああああ」
甲冑を着た、巨大な女が滝壺へ落ちていった。見誤るはずもない、レイラである。あいつら、何をしてるんだ。どうやったら、あんなところから出てくることになるんだ。
しかも、二人の女に続いて大量の野菜、ドワーフ、ハーフリング、キャンキャン吠えるイヌが十数匹も落ちてきた。さらに、男が二人、ウマ三頭、ヤギ十匹も落ちてきた。周囲は大騒ぎになった。これを見た司祭の婆さんが仰天し、腰を抜かしたまま滝を指さして叫んでいる。
「不吉じゃー、不吉じゃー、女が滝から落ちてきたぞいー」
これはやばい。俺は知らんぞ。他人だ、他人のふりをするんだ。俺は反対側を向いて、必死に見ないふりをした。
キャサリンとレイラは滝から落ちたショックで、ずぶ濡れのまま池の中で茫然(ぼうぜん)とへたり込んでいたが、やがて俺の姿を発見するや、ものすごく嬉しそうな顔をして大声で叫びながらこちらへ向かって走ってきた。
「お兄様、お兄様、アルフレッドお兄様あ~~」
「陛下、陛下、アルフレッド陛下あ~~」
俺はうろたえた。
「うわ、わ、やかましい、声がでかいぞ、静かにしろ!」
一斉に、周囲の視線が俺に降り注いだ。ひそひそ声が聞こえる。
「あの女は、アルカナ王国の、アルフレッド殿の関係者らしいな」
もはや言い逃れはできない。滝のそそぐ池では、イヌがわんわん走り回り、ウマやらヤギやらが徘徊して、動物園状態になった。宮殿の品格がぶち壊しである。ルーク国王がこちらへ向かって歩み寄ってきた。これはまずい。だが、ルーク国王の顔は、それほど怒ってはいないようだった。むしろ、なんだか嬉しそうにも見える。なぜだろうか。
「アルフレッド殿。こちらが、妹のキャサリンお嬢様ですか?」
キャサリンが言った。
「そうよ、わたくしがキャサリンですわ。というか、なんでこの人、横を向いて話するのよ。わたくしをバカにしているのかしら」
「いや、そうじゃなくて、お国によっていろいろ複雑な事情があるんだよ。そこは立ち位置が悪いから、キャサリンはこっちにきなさい」
ルーク国王がキャサリンの正面に向き直って言った。
「私が、イシル公国の国王、ルーク・ベアードです。ルークです。私の宮殿の美しいお庭にようこそ、おいでくださいました。心から歓迎いたします」
ルークがおもいっきり作り笑いをすると、キラリと歯が光った。ははあ、これはキャサリンに惚れたな。まあ、キャサリンは金髪美少女の最上級品みたいな外見をしているからな。おまけにピンクのミニドレスが、滝から落ちて、ずぶ濡れでスケスケだ。妙なスイッチが入るのも無理はないな。しかし、キャサリンの性格を知ったら驚くだろうな。
だが待てよ、これは好都合ではないか。キャサリンとルーク国王がくっつけば、イシル国の王族とアルカナ国の王族が親戚になるから、強力な関係を築ける。しかも、あのキャサリンが俺の周りをずっと付きまとうこともなくなる。俺はキャサリンに水を向けてみた。
「やあ、キャサリン。どうだい、ルーク様は素敵なお方だろう」
「まあまあ、ですわね。でもお兄様には及びませんわ。お兄様に比べたら、ナメクジみたいなものですわね」
「こ、こら、キャサリン。失礼だぞ」
「ははは、これは手厳しいですね。キャサリン様はお兄様が、よっぽどお好きと見える」
ルーク国王はそう言いながら笑ったが、俺を見る視線に、どことなく殺意を感じる。そこへ例の司祭の婆さんが飛んできた。
「これ!何を血迷うとるのじゃ、ルーク殿。この女は、アルフレッド殿に女難の厄(やく)をもたらしておる元凶の一人じゃぞ。貧乏神に取り憑かれておる、そんな女に近づいてはならん。不吉を招き入れるだけじゃ」
ルークが意地になって言い返した。
「うるさい、うるさい。キャサリン様は、女神の滝から落ちてきたのだぞ。これは間違いなく女神様の思し召しだ。絶対にそうだ」
ふと気がつくと、ずぬ濡れの二人の男が池の中に呆然と立っていた。俺は不思議に思って、男たちに尋ねてみた。
「失礼ですが、お二人は、どちらの方でしょうか」
男たちは我に返って、慌てた様子で答えた。
「あ、兄貴とあっしは、強盗で・・・」
兄貴分が弟分の頭を思い切り殴りつけた。
「違います。お嬢様の、その、お、お友達です。そうです、今日、お友達になりました。町の雑貨屋で偶然に出会いまして、サルを捕まえるお手伝をさせていただいたんですよ、あははは、いや、お手伝いは大変でした。本当に死ぬかと思いました」
キャサリンがむくれて言った。
「そのことは思い出したくもありませんわ」
いやいや、俺も聞きたくないぞ。レストランで大人しく食事しているはずの妹が、どんだけ無茶苦茶なことをすると、ウマやヤギと一緒に宮廷の滝から落ちてくるというのか。まわりに及ぼした被害が恐ろしくて聞けないわ。
キャサリンの友達と聞いて、ルーク国王がしゃしゃり出てきた。
「キャサリン様のお友達ですか、そうですか、そうですか。キャサリン様のお友達なら、大歓迎です。これも何かの御縁ですので、パーティのお食事を召し上がっていってください」
ルーク国王が指さした先には、大きな焼肉の固まり、焼き立てのパンやケーキ、色とりどりの果物など、豪華な料理が山積みになったテーブルが並んでいる。給仕のメイドたちが頭を下げた。
「や、やったぞ!これで飯が食えるぞ」
「やりましたね、兄貴、ううっ」
手を取り合い、泣きながら喜んでいる。よっぽど大変な目にあったのだろうか。
レイラが俺のそばに来ると、申し訳無さそうに大きな体を小さくして言った。
「申し訳ありません、アルフレッド様。性悪なサルたちに挑発されたもので、つい、カッとなって暴走してしまいました」
「いや、何の話かさっぱりわからんが、気にするな。キャサリンを止められる者などアルカナには誰も居ない」
もはや祝賀会はめちゃくちゃである。ルーク国王と司祭は、キャサリンを巡ってののしりあっている。エラル国王は飲み過ぎでゲロを吐いている。ミックは迷惑をかけた貴族たちや押しかけた市民たちに頭を下げまくっている。ナッピーは動物たちと池で水遊びをしている。ルミアナはどこかへ姿を消した。
大丈夫なのか?三国同盟。
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