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第一期 1話~40話
第三十話 監獄からの救出
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ルミアナが目覚めるとすでに夕方になっていた。部屋はきれいに片付けられており、床の血もなくなっていた。寝ている間に店の主人が掃除してくれたようだ。レイラは大人しく部屋の椅子に座っている。ルミアナがベッドから起き上がると、レイラが声をかけた。
「昨日はどうだった? ジャビ帝国の総督府は見つかったのか?」
「ええ、予想通り旧宮殿の中にあったわ。昨日はあまり奥まで入り込めなかったけど、トカゲ族の下っ端役人たちの話を盗み聞きしたわ。それによるとジャビ帝国の本国で奴隷の労働力が不足し始めたらしい。近いうちに奴隷狩りのための戦争を始めるかもしれないわね」
「そうなのか、それは危険だな」
ルミアナはレイラの傍に寄ると、小声で耳打ちした。
「それと、総督府に潜んでいたナンタルのレジスタンスの少年に偶然会った」
驚いたレイラがルミアナの顔を見た。ルミアナは続けた。
「その少年の話によると、少年の所属するレジスタンス小隊四名がジャビ帝国に捕らえられて地下牢に閉じ込められているらしい。私はそれを今夜救出するつもりなの」
「え、騒ぎになったら、活動に支障が出るんじゃないのか」
「確かにそうだけど、ここでナンタルのレジスタンス組織と協力関係を築ければ、私たちが諜報活動をしなくても情報が入手できるようになるわ。その方がはるかに効率的」
「確かにそれは言える。ナンタルに来るだけでも汗だくで一苦労だからな」
「それに、あなたがこの町にいるだけで遅かれ早かれ騒ぎになりそうな予感がする。ワニじゃなくて、今度は別のモノが部屋に転がっていることになりそうだから」
「な、なんて失礼な、私を何だと思ってるのまったく。ルミアナなんか嫌いだ」
「ごめん、ほんの冗談よ」
「で、何時に出かけるの? 私はどうすればいい?」
「そうね、今回は完全な隠密行動だからレイラは部屋で待っていてくれればいいわ。出発は今夜の十一時、さっき話した少年と待ち合わせて地下牢に潜入するわ」
「気を付けてね」
夕食に宿屋のおやじが料理してくれたワニ肉の唐揚げを食べて一休みすると、ルミアナは少年へのお土産にワニ肉の唐揚げを三個ほど持って外に出た。待ち合わせ場所の広場に人影はなく、少年は台座の横にある石の残骸に腰掛けて退屈そうに待っていた。
「ワニ肉の唐揚げがあるけど、食べない?」
「え、食べる、食べるよありがとう。ずっと肉なんか食べていないから、すごく嬉しいよ。それに、ワニを獲るのは危険だから、ワニ肉は滅多に食べられないんだ、この肉は露店に売ってたのかい?」
「いや、私の相棒の女剣士が獲ったんだ。・・・素手で殴り殺した」
少年は食べかけの唐揚げを地面に落としてしまったが、あわてて拾いなおした。
「・・・素手でワニを叩き殺すって、すげーな。その姉ちゃん人間じゃねえぜ」
「ところで、あなたはどうしてレジスタンスをやっているの?」
「あ、おいらの名前はアズハル・サイードってんだ。おいら、もともと親も兄弟も居ない、みなしごで、ずっと路上で生活してた。だからレジスタンスに入る前は、生きていくためにスリやコソ泥をやってたんだ。捕まってしょっちゅう殴られてた」
「それは大変だったわね」
「そうさ、辛いことばかりだった。そしてこんどは、ジャビ帝国の奴らが攻めてきた。ナンタルの王様は殺され、街は略奪され、たくさんの人が奴隷として連れ去られたもんだから、スリも泥棒もできなくなっちまった。おいらもこの街から逃げようかと思ったけど、考え直してレジスタンスに入ることにした。レジスタンスで活躍すれば、みんなおいらのことを見直してくれるかも知れないって思ったんだ」
「そう、それは良い考えだと思うわ。私も協力してあげる」
「ありがとう、エルフの姉ちゃん」
「それじゃあ、そろそろみんなを助け出しに行きましょうか」
総督府の地下牢には下水路を伝って潜入することになった。下水路は町の外に出口がある。下水路に入ると、少年が先導し、ルミアナがそのすぐ後ろに続く。
下水路の中はほとんど暗闇で、小さなオイルランプ一つでは二、三メートル先の様子を知ることしかできない。まして下水路は迷路のように張り巡らされており、案内が無ければ目的地にたどり着くことなど絶対に不可能だ。臭いもひどい。
あちこち曲がりくねりながら、しばらく先へ進むと、天井に明かりが見えてきた。天井には格子がはめこまれている。先導する少年がランプを消した。
「ここは拷問道具や断頭台のある部屋だよ。人間の首やからだを切ると大量の血が出るから、それらを洗い流すために下水道が繋がってるわけ。今は真夜中だから部屋には誰もいないと思う」
少年が周囲を警戒しながら慎重に格子を押し上げ、二人は拷問部屋に出た。部屋には明かりが無くほとんど真っ暗だったが、廊下の向こうにある松明の明かりが壁に反射して、わずかに様子がわかる。部屋に扉はなかった。
ルミアナは隠密の魔法を使って二人の姿を消した。拷問部屋から廊下に出ると、少年が左を指さした。左へ進んで突き当りまで来ると通路が左右にある。右の通路の先には扉があり、壁には松明が燃えている。トカゲの見張りが扉の前に一人立っている。あそこが監獄の番人たちの詰め所だという。今は真夜中なので、扉の見張りを除いて多くは眠っているだろう。まず、あそこの連中をすべて黙らせてから牢の鍵を盗み出し、囚われているレジスタンスのメンバーを救出することにした。
ルミアナは少年にその場に留まるように合図した後、マスクのようなもので口を覆い、姿を消したまま見張りに忍び寄った。後ろに回り込んで眠り薬を染み込ませた布でトカゲの口を覆うと、トカゲはすぐに意識を失い眠ってしまった。見張りの体を静かに横に寝かせると、意識を取り戻さないよう、薬を染み込ませた布をその顔にかぶせた。
扉を開けて部屋の中に忍び込むと、六人程のトカゲがベッドに横たわっていた。それぞれのトカゲの口元に薬を染み込ませた布を置いた。これで当分の間は目覚めることが無いだろう。部屋を見回すと、壁に牢の鍵と思しき鍵束が下がっているのを見つけ、素早く奪い取ると部屋を出た。
少年のところへ戻り、左の通路を進むと両側に鉄格子の檻がならんでいるのが見えた。牢の見張りは二名。二人同時に眠らせることは難しいので、可哀そうだが死んでもらうことにした。
ルミアナが素早い動きで矢を二本放つと、ほとんど同時に二人のトカゲの頭部に命中した。それを見た少年は目を丸くして驚いた。自分の手で口を押えていなければ大声を上げていたところだ。監獄には牢が六つあったが、幸いなことに捕えられていたのはレジスタンスのメンバーだけだった。つまり部外者に見られる心配はない。
「しっ、声を出さないで、助けに来たわ」
いくつか鍵を試すと檻の扉が開いた。あとは来た道を引き返すだけだ。一行は無言のまま静かに通路を引き返した。
先ほど眠らせた見張りはそのまま眠っている。あたりは静まり返っており、今のところ脱獄に気付かれた気配はない。拷問部屋から下水路に降りると、出口へ向かって歩いた。水音だけが水路に響き渡る。しばらくすると後ろから複数の水音が近づいてきた。追手が来たようだ。一行は歩を早め出口へ急いだ。
出口が見えてきたが何か様子がおかしい。下水路の出口あたりに複数の松明の明かりが見える。挟み撃ちか。ルミアナが舌打ちした。罠に嵌められたのだ。ルミアナだけなら逃げることもできるだろうが、レジスタンスのメンバーは殺されてしまうだろう。出口付近にいたトカゲ達が一行に気付くと、松明をかざしながらこちらへ進んできた。
「おやまあ、これはレジスタンスの皆様。まんまと罠に嵌っていただきましたな。お仲間を助けにきたところを一網打尽というシナリオ通り。それにしても助けに来たのは二人だけですか、しかも女と子供。人間というのは冷たいですねえ。では監獄に連れ戻すのも面倒ですので、ここで全員に死んでいただきましょうか」
トカゲの衛兵が剣を抜いた。その時、下水路の出口の方で大きな悲鳴があがった。
「おい、何事だ」
「た、隊長、敵襲です。何者かがいきなり突進してきて、次々に衛兵が切り殺されてます。あまりの強さに手が付けられません」
「うろたえるな、レジスタンスか、何人いる」
「一人ですが、恐ろしく強いです。あれは人間じゃありません、逃げましょう。やばいです。うわ来た。ば、化け物が・・・助け、うぎゃあああ」
上半身と下半身が別々になった死体がトカゲの守備隊長の足元に崩れ落ちた。
「き、貴様は何者だ」
「私はアルカナ国のレイラだあ」
あちゃーとルミアナは思った。秘密任務だってのに、堂々と本名を名乗っちまった、しかも国名まで。レイラは隠し事のできない性格だから、秘密任務など不可能なのだ。幸いなことに、混乱に乗じてレジスタンスのメンバーは逃げおおせたようだ。こうなったら口封じのためトカゲには全員死んでもらうしかない。
「レイラ! 一人も逃がすな」
「おお。承知した」
レイラがトカゲの守備隊長を頭から一刀両断に切り捨てると、たちまちトカゲ達は大混乱に陥って逃げ始めた。レイラの横をすり抜けて出口から逃げようとしたトカゲ達は、レイラが横に振り回した大剣に胴体を二つに切られて水の中に倒れ、出口まで到達した者もルミアナの弓矢で頭部を射抜かれ、汚水と共にリフレ湖に流れていった。
下水路の奥に逃げたトカゲも次々にレイラに切り殺され、戦いはすぐに終わった。東の空が白み始めていた。レジスタンスのメンバーの姿はとうの昔にどこかへ消えていて影も形もない。まあ、そのうち会えるだろう。
ルミアナが言った。
「ありがとう、助かったよ。でも、なぜここにいると分かったの?」
「私が部屋で静かに待っていられるわけないだろ。直ぐに後を付けて下水道の出口を見張ってたんだ。そしたら案の定、トカゲ兵たちが集まってきた。どう、見直した?」
「見直したわよ。それはそうと、これ、洗わないとダメね」
二人の装備は血だらけだった。仲良く川へ洗濯に行くことにした。
「昨日はどうだった? ジャビ帝国の総督府は見つかったのか?」
「ええ、予想通り旧宮殿の中にあったわ。昨日はあまり奥まで入り込めなかったけど、トカゲ族の下っ端役人たちの話を盗み聞きしたわ。それによるとジャビ帝国の本国で奴隷の労働力が不足し始めたらしい。近いうちに奴隷狩りのための戦争を始めるかもしれないわね」
「そうなのか、それは危険だな」
ルミアナはレイラの傍に寄ると、小声で耳打ちした。
「それと、総督府に潜んでいたナンタルのレジスタンスの少年に偶然会った」
驚いたレイラがルミアナの顔を見た。ルミアナは続けた。
「その少年の話によると、少年の所属するレジスタンス小隊四名がジャビ帝国に捕らえられて地下牢に閉じ込められているらしい。私はそれを今夜救出するつもりなの」
「え、騒ぎになったら、活動に支障が出るんじゃないのか」
「確かにそうだけど、ここでナンタルのレジスタンス組織と協力関係を築ければ、私たちが諜報活動をしなくても情報が入手できるようになるわ。その方がはるかに効率的」
「確かにそれは言える。ナンタルに来るだけでも汗だくで一苦労だからな」
「それに、あなたがこの町にいるだけで遅かれ早かれ騒ぎになりそうな予感がする。ワニじゃなくて、今度は別のモノが部屋に転がっていることになりそうだから」
「な、なんて失礼な、私を何だと思ってるのまったく。ルミアナなんか嫌いだ」
「ごめん、ほんの冗談よ」
「で、何時に出かけるの? 私はどうすればいい?」
「そうね、今回は完全な隠密行動だからレイラは部屋で待っていてくれればいいわ。出発は今夜の十一時、さっき話した少年と待ち合わせて地下牢に潜入するわ」
「気を付けてね」
夕食に宿屋のおやじが料理してくれたワニ肉の唐揚げを食べて一休みすると、ルミアナは少年へのお土産にワニ肉の唐揚げを三個ほど持って外に出た。待ち合わせ場所の広場に人影はなく、少年は台座の横にある石の残骸に腰掛けて退屈そうに待っていた。
「ワニ肉の唐揚げがあるけど、食べない?」
「え、食べる、食べるよありがとう。ずっと肉なんか食べていないから、すごく嬉しいよ。それに、ワニを獲るのは危険だから、ワニ肉は滅多に食べられないんだ、この肉は露店に売ってたのかい?」
「いや、私の相棒の女剣士が獲ったんだ。・・・素手で殴り殺した」
少年は食べかけの唐揚げを地面に落としてしまったが、あわてて拾いなおした。
「・・・素手でワニを叩き殺すって、すげーな。その姉ちゃん人間じゃねえぜ」
「ところで、あなたはどうしてレジスタンスをやっているの?」
「あ、おいらの名前はアズハル・サイードってんだ。おいら、もともと親も兄弟も居ない、みなしごで、ずっと路上で生活してた。だからレジスタンスに入る前は、生きていくためにスリやコソ泥をやってたんだ。捕まってしょっちゅう殴られてた」
「それは大変だったわね」
「そうさ、辛いことばかりだった。そしてこんどは、ジャビ帝国の奴らが攻めてきた。ナンタルの王様は殺され、街は略奪され、たくさんの人が奴隷として連れ去られたもんだから、スリも泥棒もできなくなっちまった。おいらもこの街から逃げようかと思ったけど、考え直してレジスタンスに入ることにした。レジスタンスで活躍すれば、みんなおいらのことを見直してくれるかも知れないって思ったんだ」
「そう、それは良い考えだと思うわ。私も協力してあげる」
「ありがとう、エルフの姉ちゃん」
「それじゃあ、そろそろみんなを助け出しに行きましょうか」
総督府の地下牢には下水路を伝って潜入することになった。下水路は町の外に出口がある。下水路に入ると、少年が先導し、ルミアナがそのすぐ後ろに続く。
下水路の中はほとんど暗闇で、小さなオイルランプ一つでは二、三メートル先の様子を知ることしかできない。まして下水路は迷路のように張り巡らされており、案内が無ければ目的地にたどり着くことなど絶対に不可能だ。臭いもひどい。
あちこち曲がりくねりながら、しばらく先へ進むと、天井に明かりが見えてきた。天井には格子がはめこまれている。先導する少年がランプを消した。
「ここは拷問道具や断頭台のある部屋だよ。人間の首やからだを切ると大量の血が出るから、それらを洗い流すために下水道が繋がってるわけ。今は真夜中だから部屋には誰もいないと思う」
少年が周囲を警戒しながら慎重に格子を押し上げ、二人は拷問部屋に出た。部屋には明かりが無くほとんど真っ暗だったが、廊下の向こうにある松明の明かりが壁に反射して、わずかに様子がわかる。部屋に扉はなかった。
ルミアナは隠密の魔法を使って二人の姿を消した。拷問部屋から廊下に出ると、少年が左を指さした。左へ進んで突き当りまで来ると通路が左右にある。右の通路の先には扉があり、壁には松明が燃えている。トカゲの見張りが扉の前に一人立っている。あそこが監獄の番人たちの詰め所だという。今は真夜中なので、扉の見張りを除いて多くは眠っているだろう。まず、あそこの連中をすべて黙らせてから牢の鍵を盗み出し、囚われているレジスタンスのメンバーを救出することにした。
ルミアナは少年にその場に留まるように合図した後、マスクのようなもので口を覆い、姿を消したまま見張りに忍び寄った。後ろに回り込んで眠り薬を染み込ませた布でトカゲの口を覆うと、トカゲはすぐに意識を失い眠ってしまった。見張りの体を静かに横に寝かせると、意識を取り戻さないよう、薬を染み込ませた布をその顔にかぶせた。
扉を開けて部屋の中に忍び込むと、六人程のトカゲがベッドに横たわっていた。それぞれのトカゲの口元に薬を染み込ませた布を置いた。これで当分の間は目覚めることが無いだろう。部屋を見回すと、壁に牢の鍵と思しき鍵束が下がっているのを見つけ、素早く奪い取ると部屋を出た。
少年のところへ戻り、左の通路を進むと両側に鉄格子の檻がならんでいるのが見えた。牢の見張りは二名。二人同時に眠らせることは難しいので、可哀そうだが死んでもらうことにした。
ルミアナが素早い動きで矢を二本放つと、ほとんど同時に二人のトカゲの頭部に命中した。それを見た少年は目を丸くして驚いた。自分の手で口を押えていなければ大声を上げていたところだ。監獄には牢が六つあったが、幸いなことに捕えられていたのはレジスタンスのメンバーだけだった。つまり部外者に見られる心配はない。
「しっ、声を出さないで、助けに来たわ」
いくつか鍵を試すと檻の扉が開いた。あとは来た道を引き返すだけだ。一行は無言のまま静かに通路を引き返した。
先ほど眠らせた見張りはそのまま眠っている。あたりは静まり返っており、今のところ脱獄に気付かれた気配はない。拷問部屋から下水路に降りると、出口へ向かって歩いた。水音だけが水路に響き渡る。しばらくすると後ろから複数の水音が近づいてきた。追手が来たようだ。一行は歩を早め出口へ急いだ。
出口が見えてきたが何か様子がおかしい。下水路の出口あたりに複数の松明の明かりが見える。挟み撃ちか。ルミアナが舌打ちした。罠に嵌められたのだ。ルミアナだけなら逃げることもできるだろうが、レジスタンスのメンバーは殺されてしまうだろう。出口付近にいたトカゲ達が一行に気付くと、松明をかざしながらこちらへ進んできた。
「おやまあ、これはレジスタンスの皆様。まんまと罠に嵌っていただきましたな。お仲間を助けにきたところを一網打尽というシナリオ通り。それにしても助けに来たのは二人だけですか、しかも女と子供。人間というのは冷たいですねえ。では監獄に連れ戻すのも面倒ですので、ここで全員に死んでいただきましょうか」
トカゲの衛兵が剣を抜いた。その時、下水路の出口の方で大きな悲鳴があがった。
「おい、何事だ」
「た、隊長、敵襲です。何者かがいきなり突進してきて、次々に衛兵が切り殺されてます。あまりの強さに手が付けられません」
「うろたえるな、レジスタンスか、何人いる」
「一人ですが、恐ろしく強いです。あれは人間じゃありません、逃げましょう。やばいです。うわ来た。ば、化け物が・・・助け、うぎゃあああ」
上半身と下半身が別々になった死体がトカゲの守備隊長の足元に崩れ落ちた。
「き、貴様は何者だ」
「私はアルカナ国のレイラだあ」
あちゃーとルミアナは思った。秘密任務だってのに、堂々と本名を名乗っちまった、しかも国名まで。レイラは隠し事のできない性格だから、秘密任務など不可能なのだ。幸いなことに、混乱に乗じてレジスタンスのメンバーは逃げおおせたようだ。こうなったら口封じのためトカゲには全員死んでもらうしかない。
「レイラ! 一人も逃がすな」
「おお。承知した」
レイラがトカゲの守備隊長を頭から一刀両断に切り捨てると、たちまちトカゲ達は大混乱に陥って逃げ始めた。レイラの横をすり抜けて出口から逃げようとしたトカゲ達は、レイラが横に振り回した大剣に胴体を二つに切られて水の中に倒れ、出口まで到達した者もルミアナの弓矢で頭部を射抜かれ、汚水と共にリフレ湖に流れていった。
下水路の奥に逃げたトカゲも次々にレイラに切り殺され、戦いはすぐに終わった。東の空が白み始めていた。レジスタンスのメンバーの姿はとうの昔にどこかへ消えていて影も形もない。まあ、そのうち会えるだろう。
ルミアナが言った。
「ありがとう、助かったよ。でも、なぜここにいると分かったの?」
「私が部屋で静かに待っていられるわけないだろ。直ぐに後を付けて下水道の出口を見張ってたんだ。そしたら案の定、トカゲ兵たちが集まってきた。どう、見直した?」
「見直したわよ。それはそうと、これ、洗わないとダメね」
二人の装備は血だらけだった。仲良く川へ洗濯に行くことにした。
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