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【番外編】(時系列バラバラ・基本甘々・ときどき腹黒四季)
大切にするよ。(SSS)
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※ 此方はSSSです ※
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昼休憩。
会社勤めにもすっかり慣れたころ。
今日はやりたいことがあって、10時休憩中に素早く買ってきた総菜パンを齧る。
昼食は皆社食か外に行く人が多くデスクで食べる人は少ない。
そんな状況で紅葉は心置きなく自分の世界に入る。
「・・・迷うな」
もぐもぐと咀嚼しながら、煌びやかなアクセサリーが並んだパンフレットに張られた付箋のページを捲る。
ジュエリーショップの店員がペアリングのページに付箋をつけてくれているのだ。
本当は店に足を運んでいたのだが土日は四季と過ごす為、紅葉が自由に出来るのは仕事が終わった後である。
その為、閉店間近ので足を運ぶ事数回重ねたころに、紅葉がパートナーへのサプライズなのだと言うと店員が気をきかせてくれたのだ。
もう大方は絞り込んでいてじっくり迷っているところである。
思ったきっかけは休みの日に見ていた情報番組である。
大切な人とお揃いのものをというのは長らくあるものだが、その特集の一つでペアリングを取り扱っていた。
それをサプライズで渡す作戦だったのだが、渡されたパートナーも渡された方も嬉しそうだった。
それとみて紅葉も四季に何かを渡したくなったのだ。
『お揃い』であれば色々なものがあるが、紅葉はその中でも指輪を選んだ。
指輪は特別でなんだか証の様で指揮に紅葉の証を付けていて欲しいのだ。
そんなわけでパンフレットに夢中にいなっている紅葉だったのだが、突然隣から声を掛けられる。
「まーた幸せそうな顔をしちゃって」
紅葉はびっくりしながらも春野を見上げた。
どうやら昼食から帰ってきたらしい。
見れば数人が入口の方に見えた。
「!春野さんお帰りなさい」
次々人が帰ってきたようで部内がいつの間にかにぎやかになり始めてきた。
集中しすぎて気付かなかったが、もしかして緩んだこの顔を事情を知っている春野以外にも見られるのは恥ずかしかった。
春野は目ざとくアクセサリーのパンフレットを見てニヤニヤと笑った。
「っ・・・内緒にしてくださいね」
紅葉は照れながら鞄にパンフレットを仕舞い込むと、春野は身を屈めると紅葉にしか聞こえない声で囁く。
「結婚指輪?」
「けっ!?・・・そんなんじゃないです!」
思ってもみない言葉にブンブンと首を振った。
今が幸せ過ぎて結婚なんて考えたことがなかった。
もしかして、ペアリングは軽い気持ちで上げてはいけない物だろうか。
いや、紅葉とてそんな軽い気持ちではないのだが、結婚となれば別になる。
不安になりながら尋ねた。
「あら。そうなの?ペアリングを見てるから」
「ペアリングは結婚指輪なんですか・・・?」
声を抑えながらも驚けば春野は首を横に振る。
「必ずしもそうではないけれど。でもなら何故?」
不思議そうにする春野から視線を逸らした。
最近春野は四季とのことを揶揄ってからのだ。
「・・・あげたくなったから」
「あらあらあら。差し詰自分のものって印を付けておきたいのかしら」
「そんなんじゃ!」
にまぁと微笑む春野はとても楽しそうだ。
「冗談。いえ・・・冗談ではないのだけど。
そんなの普通よ。それにあの人ならきっと喜んでくれるから大丈夫よ」
どうやら揶揄われていたようだ。
クスクスと笑うと春野は自分の席へと戻って行った。
時間を見れば午後の仕事の始まりだ。
紅葉は残りのパンを慌てて食べると急いで飲み込んだ。
★★★
それから数週間後。
繁忙期で四季の帰りが遅い日が続いた。
営業部長は年齢が高齢だと言うのは聞いているが、そのフォローが中々の大変なのだと聞いていた。
紅葉の方はそれほど忙しい事はなく家に先に帰ると分担していた家事を全部こなした。
とは言っても洗濯や簡単に掃除、それにチルドの総菜を温めだけだしサラダやスープの準備だ。
四季がいるなら四季が簡単に肉や魚のメイン料理を作るのだが、流石に疲れてしまうという事で最近はすっかり冷凍やチルド食品である、
紅葉も作れればいいのだが、そこまで難しい料理は出来ない。
卵焼きだとか目玉焼きだとかスクランブルエッグだとか。後は焼くだけの餃子。
四季と一緒になる前には一時期家事をやっていたわけだが、その時だって冷凍食品で温めるだけだとか、パスタにレトルトのソースを掛けるだとかそう言ったものだった。
「・・・料理・・・覚えようかな」
冷凍食品の裏面をみてそんなことを思ってしまう。
自分が食べるとなると全く気にならなかったことだが、体の事を考えているという四季の事を考えるとあまり体には良さそうではない。
なるべくサラダは作るようにはしているのだが、四季の事を考えると足りないよう気がしてきてしまうのだから仕方がない。
今日は他社と飲んで帰ってくると聞いているからそれすらも必要無いのだが。
見ていた冷凍食品を冷凍庫にしまうと時計を見た。
そろそろ帰ってくる時間で、今日は食事の代わりに味噌汁だけ準備をして置く。
まぁこれはインターネットで調べた知識で以前作ったら喜んでくれたので、呑んで帰ってくる日には作っている。
以前は料理なんてこれっぽっちも作る気力なんて無かったのに、四季のためだと思うとやる気が俄然出るから不思議だ。
0時を回った頃。
四季は疲れた様子で帰ってきたが、玄関で紅葉に気付いた途端笑顔になる。
「おかえりなさい。四季さん」
「ただいま。紅葉」
そしてぎゅっと抱きしめられた。
いつもとは違うタバコの香りだとかするが、こんな風に子供のように甘えてくるのは酔っている時なので嫌では無い。
チュッとキスを交わして部屋の中に入ってくる。
酔っていても外ではシャキッと歩いているのに、部屋に入ると気が抜けるのか少しふらついてるのを気にかけながらリビングに行く。
自分には気を抜いてるそれに気を良くしながら四季の座る元へいくとミネラルウォーターを出した。
「大丈夫?」
「!あぁ。ありがとう・・・大丈夫だ」
そうは言いながら受け取ったペットボトルを持ったまま目を閉じている。
「開けようか?」
「大丈夫」
甲斐甲斐しく世話をしようとする紅葉にクスリと笑いながら答える四季。
言動だけは確かに普段通りなのだが最近の多忙さもあり疲れが見える。
明日は朝から出かける予定だったが仕方がない。
今は四季の体調優先だ。
それにメインは夜の為、たぶん夜までには回復しているだろう。
「もう歯を磨いて休んだ方が良いですよ」
ネクタイを解きに掛かるとその手を取られた。
閉じていた目はパチリと開かれてジッと見つめられる。
「四季さん?」
「・・・愛してる」
「僕も愛してる」
「いや。俺の方が紅葉のことを愛してる」
「競うこと・・・?でも、僕だって負けない」
クスクス笑いながら言うもの引き寄せられ、膝の上に紅葉は横抱きの状態で乗せられてしまう。
「だったら何故紅葉は未だに俺のことを苗字で呼ぶんだ?」
「え?」
「俺の名前知っているか?」
触れ合いそうなほど近くてドキドキとする。
そんな距離で拗ねる様に言われた。
「知ってるよ。当たり前」
「誤魔化してるんじゃないのか?言ってみろ」
「だ、だめ」
拒否をしてみせると不満気に眉を顰められる。
機嫌の良さそうだったそれは一気に曇った。
「っ嫌とかそんなんじゃなくて。
・・・一回呼んだら癖になっちゃうでしょ?」
「別に良い」
「駄目だよ。仕事中に呼んだらどうするの」
「大丈夫だ」
「いや、ケジメが」
「・・・紅葉は真面目だな」
どうやら皮肉らしいそれ。
そこまで呼んで欲しいとは思わなかった。
自分が呼ばれたときはまだ意識する前で、今名前で呼ばれなくなるのは確かに嫌かも知れない。
「・・・透」
つぶやく様にいえば四季がピタリと動きを止めた。
「・・・、もう一回」
「透」
「もう一回」
「とーる」
紅葉をギュッと抱きしめて嬉しそうにする四季。
「俺はそれだけで幸せになるんだぞ?手軽じゃ無いか?毎日それで呼ぼうと思わないか?」
「あははっ・・・でも、僕もし・・・透に会社以外で今更秋山って言われるの嫌かも」
「そうだろう?
俺も会社で呼んでしまいそうになるのを頑張っているんだ。紅葉も頑張れば良い」
なんて横暴なのだろう。
けど内容が可愛くてクスクスと笑った。
「・・・わかったよ。透がそこまで喜んでくれるなら」
慣れないこそばゆさと呼ぶだけでなんだか温かい気分になる。
紅葉も心地良くて。
なんだか自分も手軽だなと思うのだった。
★★★
次の日。
今日は起こさないでおこうと思ったのだが紅葉の思惑とは違い四季はしっかり目を覚ましていた。
むしろ休日だからと紅葉の方が寝かされてしまった。
聞けばルーティンだから目が覚めるのだとか。
すごい。僕なんか在宅の時はタスクがない時はずっと寝てたよ・・・
そのかわりタスクが終わるまでは寝ない日もある訳だが、規則正しい生活はまだ慣れない。
今も四季に起こされて漸く起きてる状態だ。
「四季・・・じゃなくてっ・・・と・・・透・・・おはよう」
「あぁ。おはよう紅葉」
言い直した紅葉に四季は嬉しそうに笑った。
「昨日は悪かった」
「いいよ。可愛い透がみれたから」
「付き合いの飲みなんて最悪だと思っていたが紅葉がお願いを聞いてくれるならそれも良いかもしれない」
「お願い?なぁに?」
四季が差したのは『透』と呼んでくれたことなのだが、紅葉にとってはお願いを聞いた範疇ではなくて首を傾げた。
嬉しそうにそちらに行って隣に座ると困った様に苦笑している。
「何を嬉しそうにしてるんだ」
「だって。透の喜ぶ事したい」
少し驚いた様だが意地悪気に微笑む四季。
「そんな事簡単に言ったら駄目だ」
「?何故?」
すると紅葉の頬を撫でて首の後ろに手を置いたと思うと引き寄せられた。
「悪戯したくなるだろう?」
「悪戯?透が?・・・いつだって大人なのに。
ふぅん?なにをするの?」
どんな悪戯をするのだろう?
年齢的にも振る舞いも大人の四季には不釣り合いな言葉。
四季の大人らしくないと言うか空気を読めない行動と言えば、フリーランスの時に打ち合わせのオンラインミーティングで、要件は終わったはずなのになかなか返してくれなかった事くらいしか思いつかない。
それはまた、紅葉にしかみせない一面をみれると言う事なのだろうか?と、思うと楽しくなってくる。
わくわくとした様子の紅葉に四季は一瞬驚いた後に苦笑してわしゃわしゃと撫でられる。
「わぁっ・・・これがいたずら?」
「あぁ」
「なんだ」
「不満そうだな」
「もっと違うのがくると思ったから」
「ふぅん?例えば?」
そう聞かれても困ってしまう。
うーん。と悩んだ後、閃いた紅葉は胸の前で手をわきわきと動かして悪い顔をする。
「くすぐるとか?」
「ふっ・・・随分可愛い悪戯だ。
ちなみに俺は効かないぞ?・・・そんながっかりしても感じないものは感じない。ほら」
つまらなそうにする紅葉に四季は苦笑して飲んでいたコーヒーのカップをローテーブルに置くと両腕を上げた。
くすぐって良いと言う合図だが、くすぐったがりの紅葉は遠慮がちに脇腹をつつく。
しかし、本人が言う通り全くくすぐったくなさそうで、どんどん遠慮がなくなっていく。
両手でわしゃわしゃとくすぐるも本当にダメージが無さそうで。余計にムゥっとしてまう。
「・・・透は本当に弱点無いな」
「そんな事ないが、紅葉にそう思われてるなら嬉しいな」
「僕はもっと知りたいのに」
「・・・これからゆっくり探していけば良いさ」
そう言いながら嬉しそうに微笑む四季は、腕を下ろすと紅葉の頬に手を添えてチュッと口付けた。
「ところで」
「ん?」
「紅葉はくすぐり弱いのか?」
ビクンと震える紅葉に四季はニヤリと微笑む。
「えっ・・・いや、そんなこと、ないと思うけど」
「ふぅん?・・・試して良いか?」
「っ・・・駄目!」
咄嗟に四季の両手首をそれぞれの手で掴んだ。
・・・のだが。
簡単にその手は逆に取られてしまい、紅葉はソファーに押し倒され頭の上で一纏めにされる。
見上げた四季は意地気に微笑んでいる。
紅葉に見せつける様に手が伸びてくる。
「!」
もう、それだけでくすぐったい。
逃げ出そうともがくと簡単に纏められていた手は簡単に解けたのだが、四季の手がするりと脇腹に触れてしまった。
「ひぃあ!」
「・・・、・・・」
「やぁっ」
本当にくすぐったくて半泣きになりながら腕をピンと張って四季が近寄らない様に抵抗しながらキッと睨む。
「くすぐるの禁止っ」
「・・・、・・・、あぁ」
「ぁっ」
強く言い過ぎてしまったのか直ぐに体を起こし顔を背ける四季に、離れてくれたはずなのに不安になってしまった。
「っごめん」
「ん?」
「でも本当にくすぐったくて」
そう言うとクスクスと笑う四季。
そしてチュッと頬に口付けられた。
「なにか勘違いしていないか?」
「なにを・・・?」
「今の反応はな。・・・もっと紅葉に触れたくなったんだ」
「くすぐらないなら・・・いいけど?」
「本当の悪戯になる」
「?いいよ」
分かっている四季にそう言うと、少し固まったが徐々に近寄ってくると、ソファーの背もたれに手を置かれる。
好きな人とこんな至近距離になるとドキドキとする。
「・・・、」
ジッと見つめられながら、不意に触れられる耳。
くすぐったくて身をよじらせたのだが。
「紅葉」
「っ」
「俺の手でも嫌か?」
そう良いながら耳の穴の辺りをするりと撫でられる。
「んっ」
「・・・良い形だ。キスをしたくなるな」
「っ、」
形の良い肉厚のその唇が、耳に触れるところを想像すると息を飲んだ。
「・・・しても良いか?」
「だ、め」
頬が熱くなるのを感じながら見上げると四季はニッと笑みを浮かべている。
「でも。悪戯して良いんだろう?」
「!」
「だが嫌ならしかたないか」
そう言うと手を外された。
ホッとしたのだがソファーと背中の間に手を入れると引き寄せてきた。
先程とは違いくすぐったさはないが、動向が気になり視線を四季の右腕に向けるもすぐに顎を掬われた。
熱っぽい視線にキスをするのだとわかり、それを受け止めた。
四季と付き合うことになり、すっかりキスが好きになった紅葉。
朝には少し刺激が強いそれは、胸元まで伸びてきた手が寝巻きの上から乳首を撫でる。
柔らかかったのが固くなっていくのがわかった。
「ぁっ・・・ん」
「紅葉・・・わかったか?」
「なに・・・が?」
「簡単に悪戯して良いって煽ったらダメだってこと」
「っ・・・ごめん、・・・なさい」
素直に謝れば四季がチュッと口付けながら乳首を摘まれる。
「っ・・・っ」
「分かったなら良い。
俺は紅葉のことを愛しているのだ自覚してくれ。
その相手にそんな風に理性を試すような事をされたら簡単に狼になる。・・・、分かっているのか?」
少し怒ったように見てくる四季にコクコクと頷いたのだが、納得してないようで小さくため息をつくとわしゃわしゃと頭を撫でると、すくりとたちあがった。
「今日は出掛けるんだったな。準備してくる」
「ぇ、あ。うん」
そう言うとバスルームに向かう四季を見ながら首を傾げた。
「・・・お風呂入った後なのかと思った」
髪もしっとりしていたしお風呂後のボディミストの香りがしていたのだが。
その後ろ姿をみながら、自分の熱くなってしまった下半身をみる。
「・・・。・・・そうだ、あの言語の公式のドキュメントみよ」
やましい事を考えてしまう熱を誤魔化すようにタブレットを開くのだった。
★★★
10時くらいに出掛けると水族館に向かった。
紅葉の要望としてはちゃんとしたところで話ができれば良くて夜時間もらえればそれで良かった。
けれど四季曰くデートしたいと言われる。
落ち着いた所と選ばれたのが水族館である。
売店でチケット買ってパンフレットを貰った。
それを見ながら四季を見上げる。
「デートなんて初めてで何か失敗したら、・・・ごめん。
・・・透?」
数秒だが固まる四季。
最近何気ない時に紅葉を凝視することがある。
名前を呼んで見上げる紅葉にハッとして微笑む四季。
「という事は、俺とが初デートと言うことか。
今日は紅葉のデートコースを堪能するとして、次は俺と行こう」
「でも、透忙しいでしょう」
「土日の休みは余程のことが無い限り取れているだろう?
心配してくれてありがとう。
でも、俺は紅葉と色々な所に行きたい。
・・・もしかして、外出好きじゃないか?」
「予定がなく出掛けるのは苦手だけど。
透とならそれも楽しいかもしれない」
「俺もだ。・・・さぁ。混んでくる前に進もうか」
伸ばしてきた手を取ると紅葉達は水族館を周り始める。
水族館なんていつぶりだろうか?
大人でも楽しめるような作りに、2人で何気ない話をしながら回る。
すると分かってくるのは四季の博識さだ。
「良く知ってるね」
「大学の友人でそっち系に進んだやつが居て、水族館とか海とか川とか。兎に角水辺にくると急に水を得た魚のようにイキイキとする奴が話が上手くてさ。・・・あー・・・うるさかったか?」
「そんなことないよ。とても楽しい!」
フッと目元が優しくやわらぐ。
四季の話は本当に面白くて驚きが絶えない。
改めて自分の持っている知識は偏っているなと思ってしまう。
水族園内はイルカやラッコにシャチ。
花形とも言える動物達の可愛らしい姿に感動した。
そして水族館のメインとも言える大きな水槽に向かった。
「・・・わぁ。
テレビで見たことあったけど・・・すごいな」
「海の中歩いてるみたいだな」
「うん。・・・十戒てこんな感じなのかな」
「あぁ・・・そうかもな」
想像以上に楽しい。
目に飛び込んでくるものすべてが新鮮で、紅葉ははしゃいでいた。
話しかけて見上げるたびに四季が優しく微笑んでくれて、時にからかわれたりして。
全てを回って出る頃には再び都会に戻ってしまった。
なんだか夢の世界から抜け出てきたような気分。
「楽しかったですね」
「あぁ。可愛かった」
「あ。ペンギンの赤ちゃん?あれは確かに可愛かった」
丁度生まれたての子供がいて、それを間近で見学をしたのだ。
大人のペンギンも可愛いのだが、子供は別格だった。
「もっと可愛いのがいるじゃないか」
「え?・・・んん・・・ラッコ?」
「いや。・・・あぁ、俺にしか見えなかったかもしれない」
一緒に見ていたはずだが、そんなものあっただろうか。
パンフレットを覗き込みながら悩む。
「紅葉。外に出て丁度いいからデパートを見に行かないか?」
「え?うん」
確か家を出るときに生活用品が足りないと言っていたのを思い出し頷く。
しかし、四季の先ほどの言葉が気になってしまい考えていると、四季がクスクスと笑いながら近寄ってきたかと思うと耳元で囁いた。
「紅葉の事だよ」
「・・・っ・・・何が?」
「可愛いの」
「っ・・・っ」
『可愛い』と言われるのは男として嫌な事なのだが、四季に言われるのは嬉しく感じてしまった。
腕を掴むと腕を引っ張って歩き出すのだった。
★★★
日が落ちてレストランを予約していた時間になり、四季を連れてその店に向かった。
今は会社勤務だがフリーランスでほぼ引きこもりだった紅葉がそんな洒落た店を知っている訳も、そんなのを知っている友人もいない。
ネット色々調べてみたが、なんだかピンと来なくて結局立仙を頼った。
紅葉のお願いに立仙は快く引き受けてくれて、立仙本人も良く良くお店を教えてくれた。
個人経営だが雰囲気があって料理がとても美味しいというそのお店に紅葉はすぐにそこに決める。
立仙のセンスはとても良く、その彼が進めてくれる店なら問題が無いと思ったのだ。
何度もお礼を言うと『今度またこっちにも来てね』なんて言ってくれる。
社長という仕事は実は暇なんじゃないかと疑いたくなるけれども、そうではないらしい。
実の所殆ど店は開いていないし、客は四季と紅葉に知り合いが数人くらいだそうで、基本皆連絡を入れてから来てくれているので休業続きなのだとか。
それに掃除だとか足りない酒の発注、客があらかじめ来るとわかってる日の食材の準備や、店の手入れは他のフロアーの店長にしてもらっているらしい。
だから立仙は仕事終了後8時くらいに店に来て客と酒を飲んで軽く店じまいをして帰るという事なのらしい。
少し話がずれてしまった。
そんな立仙が紹介してくれた店に、紅葉は一度下見に来ている。
四季と過ごすのに妥協はしたくなかったのだ。
重厚そうな店の扉を開くとカランとベルが鳴ると、スーツを着ているウェイターがこちらに気付くと、紅葉に気が付くとニコリと微笑んだ。
「こんばんは」
「秋山様。お連れのお客様も。お待ちしておりました」
上着や荷物を預けるとこの店一番の雰囲気のいい席へ案内される。
「どうぞこちらへ」
円卓の上にはキャンドルが光を灯している。
店内の流れる音楽も心地よく落ち着ける音楽なのだが、紅葉は一層に緊張していった。
だが、ここで失敗するわけには行かない。
ウェイターに飲み物のリストを渡されて2人で選び乾杯をすると今日の事を振り返る。
「今日はとても楽しかった。ありがとう。紅葉」
「楽しんでもらえたなら良かった。僕も楽しかった」
フッと優し気に微笑む四季に頬が熱くなる。
ムーディーな明かりのお陰で気づきにくい事にホッとした。
「紅葉が急に時間を取って欲しいと言うから何事かと思った」
「驚かせた?ごめんね」
「いや。嬉しい。是非これからも誘ってくれ」
紅葉が気後れしたのかと思ったのかそんなことを言う四季に紅葉はクスリと笑う。
「うん。勿論」
「でも、次は俺が案内するから」
「楽しみにしてる」
暫くして前菜が出される。
今日お願いしていたのはコース料理である。
立仙がおすすめしてくれただけであってどれも美味しかった。
四季はこの料理にはこの酒が合うだとかで、飲むものを変えるのだが紅葉はそんなことを経験したことはなく、それは四季に合わせてみたのだが、本当においしい。
やはり6歳と言う差も経験も全然違う。
「・・・、」
「紅葉?」
「っ・・・ぁ・・・いや。透は物知りだなと思って」
「そうか?」
「僕はあまりそう言う事を考えて食事なんてしたことはなかった」
「付き合い上仕方なくな」
「開発部の部長でも?」
四季は今は営業部副部長の立場ではあるが、その前は紅葉のいる開発部部長であったのだ。
「それはそうだな。
でも俺だけじゃないし課長であった冬海達だって初顔合わせには同席するときはあるさ。
だから特別という事はない」
「でもなら何故?」
素直な疑問に尋ねると四季は少し視線を逸らしたが、すぐに視線を戻した。
「俺とマスターが親戚だと言うのは話したな」
「あ。・・・そうだった。・・・もしかして透は・・・」
「いやいや。普通だよ。・・・いや。少しは金持ちかな?
幼稚園から大学まで一貫したエスカレーター式の大学だったからな」
確かにそう聞くと裕福の家に聞こえる。
「遠縁で本家とは殆ど関係はない。あっても年末年始の挨拶くらいだ。
あ。あとコネ入社だな」
そう言っていたずらっ子の様に悪い笑みを浮かべる四季に苦笑を浮かべた。
コネ入社なのだとしても一般的なイメージの悪い様子は一切ない。
「透はちゃんとやることをやっていると思うよ。
冬海さんも春野さんも透のこと何も言わないし」
「あの2人が?意外だな。言いたいことは言う奴らだからな」
「ぁ。でも敵に回ると厄介だって」
そう言うと、四季はおかしそうに笑った。
「そんなに厳しいことは言っていないだろう?
いくら新人が増えたからとは言え、今は紅葉もいるのだから」
自分を期待してくれるそんな言葉に嬉しくなる。
四季は何故こんなに自分の嬉しくなる言葉をいつも言ってくれるのだろう。
紅葉も同じように四季を喜ばせたいのだが思いつかない。
そんな事『どんなことを言われたら嬉しい?』なんて聞くことでもない。
こればかりは四季と時間を過ごさないとわからないことだ。
紅葉がそれで悩んでいると四季は良く「好きになった時間が違うからな」と笑う。
その一方で「愛し合った時間は関係ない」とか言うのだがら、今度は紅葉が笑ってしまうのだが。
・・・
・・
・
食事はデザートまで終わりまったりと落ち着いてきた頃。
四季が色々な話をしてくれる。
楽しいのだが気がそぞろになった。
ポケットの中に忍ばせたジュエリーボックスに手を置く。
改めて言おうと思うと緊張してくる。
やはり指輪はやめた方が良かっただろうか?などと考えるがこんな風に悩んでいても進まなくて、紅葉はポケットの中の物を取り出すと四季の前に差し出した。
そしてパカリと蓋を開ける。
「・・・これは」
「、・・・透」
声が少し震えているのが解る。
四季はそんな紅葉の言いたいことを止めずに聞いてくれる。
「透には言っても言い切れない程のことをしてもらって、僕はまだ何一つも返せていないのだけけど・・・、
・・・僕を好きになってくれてありがとう」
「・・・、」
「そっけなくしていたのに、諦めないでくれてありがとう」
あの頃、四季からの想いを感じ取りながらもそれに応えるわけには行かなかった。
話し方も仕事の姿勢も、どれをとっても魅力的に映っていたが、それをあえて冷たくあしらう事で紅葉自身に期待をさせない様にしていた。
もう一生変わらないと思っていたのだ。
だが、それを破って手を差し伸べてくれたのは四季である。
「愛しています。
・・・僕はまだつたない所はあるけれど、透の隣に居ても透が恥ずかしくならない様に頑張るから。
・・・これからもそばに居させてください」
心臓が今までに無い程震えた。
手を当てなくても心音が聞こえる程緊張する。
そんな紅葉に四季はニコリと微笑む。
「あぁ」
その言葉に嬉しくなる。
「つけても・・・いい?」
コクリと頷く四季の手を震える手で取った。
かっこ悪くて照れて笑うも四季は嬉しそうに微笑んでいる。
紅葉はゆっくりとその男らしい指に指輪を通していく。
すると四季はその指についた指はを見て嬉しそうに微笑んだ後、ジュエリーボックスからもう一つの指輪を抜き去ると紅葉の手に付けてくれる。
指先からゆっくりと入っていくところを見ながら、幸せが指先から溢れてくる。
「紅葉。・・・今日ほど嬉しい日は無い」
「・・・透が喜んでくれるなら・・・良かった」
「喜ばないわけないだろう?・・・紅葉からのプロポーズを」
「え」
「え?」
しばし2人で顔を見合わせた。
そして、紅葉はポポポと頬が熱くなっていく。
ふと、春野の反応を思い出す。
やはり指輪を渡すとなるとそう言った意味なのだろうか。
だが、今渡したのはペアリングであり紅葉は困惑した。
「ちっ・・・ちがっ・・・いやっ・・ちがくなくって・・・えっとっ
透と結婚したくないとかじゃなくってっ・・・えっと・・・そのだから・・・僕が・・・一緒のもの・・・つけたくてっ・・・だからっ」
必死に結婚が嫌ではないという事とと、買った経緯を説明する紅葉。
四季は最初呆気に取られていたが、すぐに笑顔になった。
そして、紅葉の手を引き寄せるとその付けたばかりの指輪にチュッと口付けた。
「俺は紅葉と結婚したい」
「っ!?」
「紅葉。愛している」
「っ」
「プロポーズの返事は今じゃなくて良い。
大切な事だから、ゆっくり考えていい。
・・・紅葉。この指輪をくれてありがとう。・・・・本当に嬉しい。
一生大切にする。この指輪も。紅葉も」
そんな言葉は紅葉を満たしていく。
嬉しくてつい目の奥が熱くなった。
四季と出会ってすっかり涙腺が弱くなってしまったが、必死に涙を堪えるのだった。
★★★
それから2人はすぐにタクシーを拾う。
ホテルに行くよりも家の方が早いからという理由らしいのだが、そんなあけすけに言ったのは四季である。
口を開いたらもっと触れたくなってしまいそうな衝動を抑えながら乗るタクシーの中はシンとしていた。
だけど、2人の手は強く握られていて。
会話が無くても何も不安はなかった。
いや。不安を感じている暇がなかった。
緊張が高まりもうどうしようもない程だった。
それから数十分すると2人の家にたどり着くと、エントランスを抜けエレベータに乗る。
いつも何気なく歩いているこの道が今はただひたすら長く感じた。
部屋にたどり着き、玄関がとじるの同時に腕は引き寄せられ、四季に口づけられた。
少し荒々しく紅葉の唇をむさぼる。
「んっ・・・ふぅぁ・・・」
「・・・はぁ・・・やっとキス出来た」
「っ・・・ぼ・・・く、も」
2人きりになりたかったのは紅葉も同じだ。
もうたまらなくてもう一度キスをせがむ様に背伸びをすると、四季はそれに応えてくれた。
再び触れ合う2人の唇。
「紅葉。俺の首に腕を回せ」
「?・・・わぁっ」
言われるがままに腕を回すと紅葉の体は抱き上げられた。
四季は靴を脱ぎ捨てたのか、ガコンッと音を立てた。
「っ・・・とーるっ僕っ靴・・・!」
「大丈夫だ」
それだけ言うと部屋に入っていく四季。
おろしてくれたのは寝室だった。
性急な様子のギャップに驚いてしまう。
するとすぐに覆いかぶさってくると再び塞がれる唇。
「と・・・る」
キスの合間に名前を呼ぶと、四季は嬉しそうに微笑む。
「紅葉・・・」
「・・・透」
するりと伸びてきた手は服の隙間に忍び込んでくる。
それだけでも四季の存在を感じ取ってビクンと体が震えた。
ボタンを外すのも煩わしいのかたくし上げて紅葉の肌をさらす。
肌を撫でて胸の乳首を指ではじき、もう片方の乳首をチュッと口付けた。
「ぁ!」
舌先で舐められ転がされるとそれだけで声が上がってしまう。
四季に散々悪戯されぷくりと膨れる乳首を軽く噛むと引っ張って見せた。
「んっ・・・いたっ」
「あぁ・・・すまない」
そう言うとれろれろと舐め始める四季。
「痛い所は・・・どこだ?」
「あぁっ・・・んんっ・・・ふぅぁっ」
本当に痛い所を探そうと思っているのだろうか?
ジュっと音を立てて紅葉を追い立てるそれに、体は簡単に熱くなった。
紅葉の体は四季の愛撫に簡単に悶え濡れた。
まだ触れられてもいない下着の中はすでに濡れている感覚がある。
もう触って欲しくて無意識のうちに四季の体に擦りつけていた。
そんな紅葉にフッと笑うとベルトを外すと、ボトムを脱がし始める四季。
ドキドキして四季を見つめていると、スッと四季は体を起き上がらせると上着を脱ぎ捨て首回りのボタンを外すと一気に脱ぎ捨てた。
そして同様に紅葉の服をすべて脱がし足を大きく開かせると、蜜を滴らせるそれを根元から先端までゆっくりを撫でる。
「っ・・・ぁ」
「ここまで濡れてる」
尻孔を撫でられるとそれだけでそこは四季を期待する。
ひくんと引くつき始めると、パクパクと開く。
素直な紅葉の反応にくすりと笑い、紅葉のモノを扱きながらその奥の孔を悪戯する。
期待してても普段閉じているそこの緊張を取るまで繰り返し、良き頃合いになったのだろうか。
四季はベッドサイドからローションを取り出すと手に取った。
「膝を自分で抱えられるか?」
「っ」
四季に恥ずかしい所を見せ付けるようなそんな格好に、羞恥で頬が熱くなる。
付き合うようになって何度か体を重ねているが、四季は優しく扱ってくれるが、羞恥はどうしても出てくる。
これが必要なことだというのは分かっているし今更だ。
足を開げ膝を抱え、四季に自ら恥部を晒した。
「っ」
「力を抜いてるんだぞ」
伸びてきたローションを纏った指先がそこに触れる。
「んっ」
後孔を先ほどのように撫でながら紅葉のものを扱かれる。
「!」
四季に扱かれるだけでも気持ちがいいのに、後ろを解されながらそれも滴る先走りをまるで蜜のように舐め始めるではないか。
「ひっ・・・っあぁっだめぇ」
いやらしい水の音をたてながら、指と口が連動しているかのようにどちらかが進めば、もう片方も進まされたり。
最近まで性に薄い生活をしてきた紅葉には、未だにそれ強烈な愛撫で紅葉はあえぐことしか出来ない。
紅葉のモノが根元まで咥えられると、同じく指の付け根まで紅葉の奥に入り込んだ指がクイっと折り曲げられる。
「んぁぁっ」
迷いもせずに前立腺をえぐられるともう、ジッとはしてられなかった。
体をよじられせて快楽に揺れる。
ある程度広がる頃には紅葉の目元には涙が流れていた。
「ぁっ・・・と、・・・る」
息を弾ませ四季に助けを求める。
この体の熱はもう四季に頼るしか無いのだ。
うるむ瞳で四季を見つめ強請る。
その腰を少し上げた。
「なんだ?」
「っも、・・・とーる・・・欲しいっ」
切羽詰まった声にギュッと抱きしめられると、熱いものが押し当てられ口をつぐんだ。
ついにまった刺激が来るのだから当然だ。
「わかった。・・・力を抜いて」
徐々に入ってくる四季の熱くて硬い男根。
あんなに解されたというのに、指とは比べ物にならないがゆっくりと紅葉の様子をみて労ってくれる。
「っぁぁ・・・ぁっ」
「っ」
息が漏れてきてそれがキュンとした。
一生懸命力を抜いているのだが四季は動きを止める。
たしかに圧迫感はあるが痛くはない。
ここまで慎重にしてくれなくても大丈夫だ。
足を抑えてる手を離すと腹の上に手を置いた。
「っ・・・いい、よ」
「っ・・・なにが?」
「ここまで、来て」
「っ」
我慢しているのだと思い、そう言ったのだが四季は急に雰囲気が変わった。
膝を押さえていたもう片方の手を外すと両手を引っ張り体を抱き抱えられた。
挿入したまま体位を変えられる。
急に荒々しい動きに紅葉にはまさか自分の言動全てが煽っているとは思わなかった。
「あぁ・・・んっ」
「紅葉・・・キスして」
「っ・・・う、ん」
無自覚で煽る唇は塞がられる。
すると紅葉の体をゆっくりと下ろし繋がりを深くしていく。
「ぁ!・・・ぁぁ」
漏れる声は全て四季の口に吸い込まれる。
「はっ・・・んぅ」
「っ・・・」
中が四季でいっぱいに満たされる。
「とぉ・・・るぅ」
「っ」
甘えた声で先の名前を呼ぶ。
「動いて・・・いいか?」
「んっ・・・とぉるが欲しい・・・!」
「っ・・・わかった」
そう返事をした後は、腰を掴んで押し付けてくる。
前立腺を攻めらると鳴き声のような声が上がった。
突き上げてくるたびに快楽に揺れる。
「あぁ!っ・・・んんっ・・・ぁぁぁっ」
「紅葉・・・」
「そこ、だけっっあぁぁ!」
紅葉の感じる所をグリグリの突き上げられ紅葉は慌てた。
駄目だと言おうとしたのは再びそこを攻められ喘ぎ声に代わる。
「ちがっ」
「でも・・・良さそうだが?」
「っんぁぁ」
ゆっくりと抉るように突き上げられると、もう堪らなかった。
無意識に自分のモノを扱き始める紅葉。
「はぁっ・・・くっ・・・んぅ」
「イイか?・・・紅葉」
「んっ・・・んっ・・・イィっきもちっ・・・とおるぅ」
舌足らずになりながら乱れる紅葉にフッと微笑まれた後、紅葉は再びベッドに押し倒された。
脇の下から回すよう肩を持たれ、紅葉の体が逃げないようにがっしり掴まれ、腰を突き上げられた。
「良い子だ」
「っ」
「俺も・・・もっと気持ちよくなって良いか?」
「っうんっ・・・僕で・・・感じて・・・!「
「っ・・・あぁ」
四季を無意識に煽りにながら宣告どおりに動き出しとグッと突き上げられるも、いつもより深いところに進み困惑する。
「とっ・・・るっ・・・・ゃっ」
突き破られそうな感覚にヒヤリと背筋が冷たくなるが、四季は良さそうにしていてその言葉を飲んだ。
「い・・・いの?」
「・・・、」
四季が良いなら我慢しよう。そう思ったのだが、様子がおかしいのに気が付いたのか、苦笑をする四季はピタリと止まると額に口付けてきた。
抱きかかえられていた体勢を崩すと紅葉に楽な状態にしてくれる。
「透・・・?」
「紅葉・・・愛している」
困惑している紅葉に愛を囁くと口付けてくる四季。
紅葉の快楽を拾うような動きに思考が奪われていく。
「ぁっ・・・はぁっ・・・んぅっ・・・あぁぁっ」
それから互いの熱は止まらなくなり次第にピストンが早くなっていき、部屋にはぐちゅぐちゅと淫靡な水音と肉のぶつかる音が響いた。
「とぉっるっ・・・も、・・・もうっ・・・!」
「っ・・・俺もだ・・・」
四季は片腕で足を抱え込み腰を打ち付けると、扱いている紅葉の手の上に重ねると一緒に扱き始める。
嬌声をあげるのに夢中でおざなりになり始めていたところの刺激と、中を突き上げられるともう我慢など出来なかった。
「とぉるっ・・・とぉるっっ」
「っ・・・・紅葉・・・っ」
名前を呼び合いながら2人は絶頂を迎えるのだった。
★★★
情事後に体を清めたベッドで抱き合いながら転がる。
紅葉の視線は四季の指輪に向いていると、こめかみに口づけられた。
「・・・。嬉しいが・・・指輪に嫉妬しそうだ」
「!・・・指輪に??」
クスクスと笑う紅葉に四季は拗ねた様にいう。
「紅葉のものだという証で嬉しいんだぞ?・・・けど、俺の指だけじゃなくて俺の事も見て欲しい」
「ふふっ・・・・ん。・・・見てるよ」
最初は情事後に恥ずかしくて視線を逸らしていた。
しかし、そんな風に思わせているなら視線をあげた。
まだ気恥ずかしくて頬が熱くなるが仕方がない。
少し照れているのを見逃すはずもなく、四季は覆いかぶさってくると唇を重ねる。
そのキスが深くなっていくと、紅葉も流石に慌てる。
「っ・・・そ・・・そんなキスされたら・・・またしたくなっちゃうでしょう?」
「そしたらまた愛し合えば良いことだろう?」
「!?もう・・・一回したのに」
「一回しかしたらいけないという決まりはないぞ?それこそ・・・ここに入りっぱなしだっていいくらいだ」
そう言いながら紅葉の尻を掴み中指で孔を悪戯につついてくる。
ひくついたそこは四季の指をくわえるのが解る。
「っ~っ・・・つ・・・疲れているでしょう?」
「全然?・・・紅葉は動かなくて良いぞ」
「!!!」
その程度の拒否は拒否ではない。
寧ろ煽られるだけでその気になるだけだ。
紅葉の機嫌を取るように顔中に口付けて来る四季。
「・・・もっと俺に紅葉の証を付けたいとは思わないか?」
「っ」
仕事では見せない顔を見せられ紅葉は断ることが出来なかった。
いや。紅葉も本当に嫌ではないのだ。
「もう・・・後悔してもしらないからね」
「あぁ。望むところだ」
そう言う四季に紅葉は押し倒したのだが、結局啼いたのは紅葉なのだった。
┬┬┬
四季が時折見せる無言は、紅葉をぞんざいに扱っていた夏川の行動を見て苛ついているのです。
※ 此方はSSSです ※
※※※※※※※※※※※
昼休憩。
会社勤めにもすっかり慣れたころ。
今日はやりたいことがあって、10時休憩中に素早く買ってきた総菜パンを齧る。
昼食は皆社食か外に行く人が多くデスクで食べる人は少ない。
そんな状況で紅葉は心置きなく自分の世界に入る。
「・・・迷うな」
もぐもぐと咀嚼しながら、煌びやかなアクセサリーが並んだパンフレットに張られた付箋のページを捲る。
ジュエリーショップの店員がペアリングのページに付箋をつけてくれているのだ。
本当は店に足を運んでいたのだが土日は四季と過ごす為、紅葉が自由に出来るのは仕事が終わった後である。
その為、閉店間近ので足を運ぶ事数回重ねたころに、紅葉がパートナーへのサプライズなのだと言うと店員が気をきかせてくれたのだ。
もう大方は絞り込んでいてじっくり迷っているところである。
思ったきっかけは休みの日に見ていた情報番組である。
大切な人とお揃いのものをというのは長らくあるものだが、その特集の一つでペアリングを取り扱っていた。
それをサプライズで渡す作戦だったのだが、渡されたパートナーも渡された方も嬉しそうだった。
それとみて紅葉も四季に何かを渡したくなったのだ。
『お揃い』であれば色々なものがあるが、紅葉はその中でも指輪を選んだ。
指輪は特別でなんだか証の様で指揮に紅葉の証を付けていて欲しいのだ。
そんなわけでパンフレットに夢中にいなっている紅葉だったのだが、突然隣から声を掛けられる。
「まーた幸せそうな顔をしちゃって」
紅葉はびっくりしながらも春野を見上げた。
どうやら昼食から帰ってきたらしい。
見れば数人が入口の方に見えた。
「!春野さんお帰りなさい」
次々人が帰ってきたようで部内がいつの間にかにぎやかになり始めてきた。
集中しすぎて気付かなかったが、もしかして緩んだこの顔を事情を知っている春野以外にも見られるのは恥ずかしかった。
春野は目ざとくアクセサリーのパンフレットを見てニヤニヤと笑った。
「っ・・・内緒にしてくださいね」
紅葉は照れながら鞄にパンフレットを仕舞い込むと、春野は身を屈めると紅葉にしか聞こえない声で囁く。
「結婚指輪?」
「けっ!?・・・そんなんじゃないです!」
思ってもみない言葉にブンブンと首を振った。
今が幸せ過ぎて結婚なんて考えたことがなかった。
もしかして、ペアリングは軽い気持ちで上げてはいけない物だろうか。
いや、紅葉とてそんな軽い気持ちではないのだが、結婚となれば別になる。
不安になりながら尋ねた。
「あら。そうなの?ペアリングを見てるから」
「ペアリングは結婚指輪なんですか・・・?」
声を抑えながらも驚けば春野は首を横に振る。
「必ずしもそうではないけれど。でもなら何故?」
不思議そうにする春野から視線を逸らした。
最近春野は四季とのことを揶揄ってからのだ。
「・・・あげたくなったから」
「あらあらあら。差し詰自分のものって印を付けておきたいのかしら」
「そんなんじゃ!」
にまぁと微笑む春野はとても楽しそうだ。
「冗談。いえ・・・冗談ではないのだけど。
そんなの普通よ。それにあの人ならきっと喜んでくれるから大丈夫よ」
どうやら揶揄われていたようだ。
クスクスと笑うと春野は自分の席へと戻って行った。
時間を見れば午後の仕事の始まりだ。
紅葉は残りのパンを慌てて食べると急いで飲み込んだ。
★★★
それから数週間後。
繁忙期で四季の帰りが遅い日が続いた。
営業部長は年齢が高齢だと言うのは聞いているが、そのフォローが中々の大変なのだと聞いていた。
紅葉の方はそれほど忙しい事はなく家に先に帰ると分担していた家事を全部こなした。
とは言っても洗濯や簡単に掃除、それにチルドの総菜を温めだけだしサラダやスープの準備だ。
四季がいるなら四季が簡単に肉や魚のメイン料理を作るのだが、流石に疲れてしまうという事で最近はすっかり冷凍やチルド食品である、
紅葉も作れればいいのだが、そこまで難しい料理は出来ない。
卵焼きだとか目玉焼きだとかスクランブルエッグだとか。後は焼くだけの餃子。
四季と一緒になる前には一時期家事をやっていたわけだが、その時だって冷凍食品で温めるだけだとか、パスタにレトルトのソースを掛けるだとかそう言ったものだった。
「・・・料理・・・覚えようかな」
冷凍食品の裏面をみてそんなことを思ってしまう。
自分が食べるとなると全く気にならなかったことだが、体の事を考えているという四季の事を考えるとあまり体には良さそうではない。
なるべくサラダは作るようにはしているのだが、四季の事を考えると足りないよう気がしてきてしまうのだから仕方がない。
今日は他社と飲んで帰ってくると聞いているからそれすらも必要無いのだが。
見ていた冷凍食品を冷凍庫にしまうと時計を見た。
そろそろ帰ってくる時間で、今日は食事の代わりに味噌汁だけ準備をして置く。
まぁこれはインターネットで調べた知識で以前作ったら喜んでくれたので、呑んで帰ってくる日には作っている。
以前は料理なんてこれっぽっちも作る気力なんて無かったのに、四季のためだと思うとやる気が俄然出るから不思議だ。
0時を回った頃。
四季は疲れた様子で帰ってきたが、玄関で紅葉に気付いた途端笑顔になる。
「おかえりなさい。四季さん」
「ただいま。紅葉」
そしてぎゅっと抱きしめられた。
いつもとは違うタバコの香りだとかするが、こんな風に子供のように甘えてくるのは酔っている時なので嫌では無い。
チュッとキスを交わして部屋の中に入ってくる。
酔っていても外ではシャキッと歩いているのに、部屋に入ると気が抜けるのか少しふらついてるのを気にかけながらリビングに行く。
自分には気を抜いてるそれに気を良くしながら四季の座る元へいくとミネラルウォーターを出した。
「大丈夫?」
「!あぁ。ありがとう・・・大丈夫だ」
そうは言いながら受け取ったペットボトルを持ったまま目を閉じている。
「開けようか?」
「大丈夫」
甲斐甲斐しく世話をしようとする紅葉にクスリと笑いながら答える四季。
言動だけは確かに普段通りなのだが最近の多忙さもあり疲れが見える。
明日は朝から出かける予定だったが仕方がない。
今は四季の体調優先だ。
それにメインは夜の為、たぶん夜までには回復しているだろう。
「もう歯を磨いて休んだ方が良いですよ」
ネクタイを解きに掛かるとその手を取られた。
閉じていた目はパチリと開かれてジッと見つめられる。
「四季さん?」
「・・・愛してる」
「僕も愛してる」
「いや。俺の方が紅葉のことを愛してる」
「競うこと・・・?でも、僕だって負けない」
クスクス笑いながら言うもの引き寄せられ、膝の上に紅葉は横抱きの状態で乗せられてしまう。
「だったら何故紅葉は未だに俺のことを苗字で呼ぶんだ?」
「え?」
「俺の名前知っているか?」
触れ合いそうなほど近くてドキドキとする。
そんな距離で拗ねる様に言われた。
「知ってるよ。当たり前」
「誤魔化してるんじゃないのか?言ってみろ」
「だ、だめ」
拒否をしてみせると不満気に眉を顰められる。
機嫌の良さそうだったそれは一気に曇った。
「っ嫌とかそんなんじゃなくて。
・・・一回呼んだら癖になっちゃうでしょ?」
「別に良い」
「駄目だよ。仕事中に呼んだらどうするの」
「大丈夫だ」
「いや、ケジメが」
「・・・紅葉は真面目だな」
どうやら皮肉らしいそれ。
そこまで呼んで欲しいとは思わなかった。
自分が呼ばれたときはまだ意識する前で、今名前で呼ばれなくなるのは確かに嫌かも知れない。
「・・・透」
つぶやく様にいえば四季がピタリと動きを止めた。
「・・・、もう一回」
「透」
「もう一回」
「とーる」
紅葉をギュッと抱きしめて嬉しそうにする四季。
「俺はそれだけで幸せになるんだぞ?手軽じゃ無いか?毎日それで呼ぼうと思わないか?」
「あははっ・・・でも、僕もし・・・透に会社以外で今更秋山って言われるの嫌かも」
「そうだろう?
俺も会社で呼んでしまいそうになるのを頑張っているんだ。紅葉も頑張れば良い」
なんて横暴なのだろう。
けど内容が可愛くてクスクスと笑った。
「・・・わかったよ。透がそこまで喜んでくれるなら」
慣れないこそばゆさと呼ぶだけでなんだか温かい気分になる。
紅葉も心地良くて。
なんだか自分も手軽だなと思うのだった。
★★★
次の日。
今日は起こさないでおこうと思ったのだが紅葉の思惑とは違い四季はしっかり目を覚ましていた。
むしろ休日だからと紅葉の方が寝かされてしまった。
聞けばルーティンだから目が覚めるのだとか。
すごい。僕なんか在宅の時はタスクがない時はずっと寝てたよ・・・
そのかわりタスクが終わるまでは寝ない日もある訳だが、規則正しい生活はまだ慣れない。
今も四季に起こされて漸く起きてる状態だ。
「四季・・・じゃなくてっ・・・と・・・透・・・おはよう」
「あぁ。おはよう紅葉」
言い直した紅葉に四季は嬉しそうに笑った。
「昨日は悪かった」
「いいよ。可愛い透がみれたから」
「付き合いの飲みなんて最悪だと思っていたが紅葉がお願いを聞いてくれるならそれも良いかもしれない」
「お願い?なぁに?」
四季が差したのは『透』と呼んでくれたことなのだが、紅葉にとってはお願いを聞いた範疇ではなくて首を傾げた。
嬉しそうにそちらに行って隣に座ると困った様に苦笑している。
「何を嬉しそうにしてるんだ」
「だって。透の喜ぶ事したい」
少し驚いた様だが意地悪気に微笑む四季。
「そんな事簡単に言ったら駄目だ」
「?何故?」
すると紅葉の頬を撫でて首の後ろに手を置いたと思うと引き寄せられた。
「悪戯したくなるだろう?」
「悪戯?透が?・・・いつだって大人なのに。
ふぅん?なにをするの?」
どんな悪戯をするのだろう?
年齢的にも振る舞いも大人の四季には不釣り合いな言葉。
四季の大人らしくないと言うか空気を読めない行動と言えば、フリーランスの時に打ち合わせのオンラインミーティングで、要件は終わったはずなのになかなか返してくれなかった事くらいしか思いつかない。
それはまた、紅葉にしかみせない一面をみれると言う事なのだろうか?と、思うと楽しくなってくる。
わくわくとした様子の紅葉に四季は一瞬驚いた後に苦笑してわしゃわしゃと撫でられる。
「わぁっ・・・これがいたずら?」
「あぁ」
「なんだ」
「不満そうだな」
「もっと違うのがくると思ったから」
「ふぅん?例えば?」
そう聞かれても困ってしまう。
うーん。と悩んだ後、閃いた紅葉は胸の前で手をわきわきと動かして悪い顔をする。
「くすぐるとか?」
「ふっ・・・随分可愛い悪戯だ。
ちなみに俺は効かないぞ?・・・そんながっかりしても感じないものは感じない。ほら」
つまらなそうにする紅葉に四季は苦笑して飲んでいたコーヒーのカップをローテーブルに置くと両腕を上げた。
くすぐって良いと言う合図だが、くすぐったがりの紅葉は遠慮がちに脇腹をつつく。
しかし、本人が言う通り全くくすぐったくなさそうで、どんどん遠慮がなくなっていく。
両手でわしゃわしゃとくすぐるも本当にダメージが無さそうで。余計にムゥっとしてまう。
「・・・透は本当に弱点無いな」
「そんな事ないが、紅葉にそう思われてるなら嬉しいな」
「僕はもっと知りたいのに」
「・・・これからゆっくり探していけば良いさ」
そう言いながら嬉しそうに微笑む四季は、腕を下ろすと紅葉の頬に手を添えてチュッと口付けた。
「ところで」
「ん?」
「紅葉はくすぐり弱いのか?」
ビクンと震える紅葉に四季はニヤリと微笑む。
「えっ・・・いや、そんなこと、ないと思うけど」
「ふぅん?・・・試して良いか?」
「っ・・・駄目!」
咄嗟に四季の両手首をそれぞれの手で掴んだ。
・・・のだが。
簡単にその手は逆に取られてしまい、紅葉はソファーに押し倒され頭の上で一纏めにされる。
見上げた四季は意地気に微笑んでいる。
紅葉に見せつける様に手が伸びてくる。
「!」
もう、それだけでくすぐったい。
逃げ出そうともがくと簡単に纏められていた手は簡単に解けたのだが、四季の手がするりと脇腹に触れてしまった。
「ひぃあ!」
「・・・、・・・」
「やぁっ」
本当にくすぐったくて半泣きになりながら腕をピンと張って四季が近寄らない様に抵抗しながらキッと睨む。
「くすぐるの禁止っ」
「・・・、・・・、あぁ」
「ぁっ」
強く言い過ぎてしまったのか直ぐに体を起こし顔を背ける四季に、離れてくれたはずなのに不安になってしまった。
「っごめん」
「ん?」
「でも本当にくすぐったくて」
そう言うとクスクスと笑う四季。
そしてチュッと頬に口付けられた。
「なにか勘違いしていないか?」
「なにを・・・?」
「今の反応はな。・・・もっと紅葉に触れたくなったんだ」
「くすぐらないなら・・・いいけど?」
「本当の悪戯になる」
「?いいよ」
分かっている四季にそう言うと、少し固まったが徐々に近寄ってくると、ソファーの背もたれに手を置かれる。
好きな人とこんな至近距離になるとドキドキとする。
「・・・、」
ジッと見つめられながら、不意に触れられる耳。
くすぐったくて身をよじらせたのだが。
「紅葉」
「っ」
「俺の手でも嫌か?」
そう良いながら耳の穴の辺りをするりと撫でられる。
「んっ」
「・・・良い形だ。キスをしたくなるな」
「っ、」
形の良い肉厚のその唇が、耳に触れるところを想像すると息を飲んだ。
「・・・しても良いか?」
「だ、め」
頬が熱くなるのを感じながら見上げると四季はニッと笑みを浮かべている。
「でも。悪戯して良いんだろう?」
「!」
「だが嫌ならしかたないか」
そう言うと手を外された。
ホッとしたのだがソファーと背中の間に手を入れると引き寄せてきた。
先程とは違いくすぐったさはないが、動向が気になり視線を四季の右腕に向けるもすぐに顎を掬われた。
熱っぽい視線にキスをするのだとわかり、それを受け止めた。
四季と付き合うことになり、すっかりキスが好きになった紅葉。
朝には少し刺激が強いそれは、胸元まで伸びてきた手が寝巻きの上から乳首を撫でる。
柔らかかったのが固くなっていくのがわかった。
「ぁっ・・・ん」
「紅葉・・・わかったか?」
「なに・・・が?」
「簡単に悪戯して良いって煽ったらダメだってこと」
「っ・・・ごめん、・・・なさい」
素直に謝れば四季がチュッと口付けながら乳首を摘まれる。
「っ・・・っ」
「分かったなら良い。
俺は紅葉のことを愛しているのだ自覚してくれ。
その相手にそんな風に理性を試すような事をされたら簡単に狼になる。・・・、分かっているのか?」
少し怒ったように見てくる四季にコクコクと頷いたのだが、納得してないようで小さくため息をつくとわしゃわしゃと頭を撫でると、すくりとたちあがった。
「今日は出掛けるんだったな。準備してくる」
「ぇ、あ。うん」
そう言うとバスルームに向かう四季を見ながら首を傾げた。
「・・・お風呂入った後なのかと思った」
髪もしっとりしていたしお風呂後のボディミストの香りがしていたのだが。
その後ろ姿をみながら、自分の熱くなってしまった下半身をみる。
「・・・。・・・そうだ、あの言語の公式のドキュメントみよ」
やましい事を考えてしまう熱を誤魔化すようにタブレットを開くのだった。
★★★
10時くらいに出掛けると水族館に向かった。
紅葉の要望としてはちゃんとしたところで話ができれば良くて夜時間もらえればそれで良かった。
けれど四季曰くデートしたいと言われる。
落ち着いた所と選ばれたのが水族館である。
売店でチケット買ってパンフレットを貰った。
それを見ながら四季を見上げる。
「デートなんて初めてで何か失敗したら、・・・ごめん。
・・・透?」
数秒だが固まる四季。
最近何気ない時に紅葉を凝視することがある。
名前を呼んで見上げる紅葉にハッとして微笑む四季。
「という事は、俺とが初デートと言うことか。
今日は紅葉のデートコースを堪能するとして、次は俺と行こう」
「でも、透忙しいでしょう」
「土日の休みは余程のことが無い限り取れているだろう?
心配してくれてありがとう。
でも、俺は紅葉と色々な所に行きたい。
・・・もしかして、外出好きじゃないか?」
「予定がなく出掛けるのは苦手だけど。
透とならそれも楽しいかもしれない」
「俺もだ。・・・さぁ。混んでくる前に進もうか」
伸ばしてきた手を取ると紅葉達は水族館を周り始める。
水族館なんていつぶりだろうか?
大人でも楽しめるような作りに、2人で何気ない話をしながら回る。
すると分かってくるのは四季の博識さだ。
「良く知ってるね」
「大学の友人でそっち系に進んだやつが居て、水族館とか海とか川とか。兎に角水辺にくると急に水を得た魚のようにイキイキとする奴が話が上手くてさ。・・・あー・・・うるさかったか?」
「そんなことないよ。とても楽しい!」
フッと目元が優しくやわらぐ。
四季の話は本当に面白くて驚きが絶えない。
改めて自分の持っている知識は偏っているなと思ってしまう。
水族園内はイルカやラッコにシャチ。
花形とも言える動物達の可愛らしい姿に感動した。
そして水族館のメインとも言える大きな水槽に向かった。
「・・・わぁ。
テレビで見たことあったけど・・・すごいな」
「海の中歩いてるみたいだな」
「うん。・・・十戒てこんな感じなのかな」
「あぁ・・・そうかもな」
想像以上に楽しい。
目に飛び込んでくるものすべてが新鮮で、紅葉ははしゃいでいた。
話しかけて見上げるたびに四季が優しく微笑んでくれて、時にからかわれたりして。
全てを回って出る頃には再び都会に戻ってしまった。
なんだか夢の世界から抜け出てきたような気分。
「楽しかったですね」
「あぁ。可愛かった」
「あ。ペンギンの赤ちゃん?あれは確かに可愛かった」
丁度生まれたての子供がいて、それを間近で見学をしたのだ。
大人のペンギンも可愛いのだが、子供は別格だった。
「もっと可愛いのがいるじゃないか」
「え?・・・んん・・・ラッコ?」
「いや。・・・あぁ、俺にしか見えなかったかもしれない」
一緒に見ていたはずだが、そんなものあっただろうか。
パンフレットを覗き込みながら悩む。
「紅葉。外に出て丁度いいからデパートを見に行かないか?」
「え?うん」
確か家を出るときに生活用品が足りないと言っていたのを思い出し頷く。
しかし、四季の先ほどの言葉が気になってしまい考えていると、四季がクスクスと笑いながら近寄ってきたかと思うと耳元で囁いた。
「紅葉の事だよ」
「・・・っ・・・何が?」
「可愛いの」
「っ・・・っ」
『可愛い』と言われるのは男として嫌な事なのだが、四季に言われるのは嬉しく感じてしまった。
腕を掴むと腕を引っ張って歩き出すのだった。
★★★
日が落ちてレストランを予約していた時間になり、四季を連れてその店に向かった。
今は会社勤務だがフリーランスでほぼ引きこもりだった紅葉がそんな洒落た店を知っている訳も、そんなのを知っている友人もいない。
ネット色々調べてみたが、なんだかピンと来なくて結局立仙を頼った。
紅葉のお願いに立仙は快く引き受けてくれて、立仙本人も良く良くお店を教えてくれた。
個人経営だが雰囲気があって料理がとても美味しいというそのお店に紅葉はすぐにそこに決める。
立仙のセンスはとても良く、その彼が進めてくれる店なら問題が無いと思ったのだ。
何度もお礼を言うと『今度またこっちにも来てね』なんて言ってくれる。
社長という仕事は実は暇なんじゃないかと疑いたくなるけれども、そうではないらしい。
実の所殆ど店は開いていないし、客は四季と紅葉に知り合いが数人くらいだそうで、基本皆連絡を入れてから来てくれているので休業続きなのだとか。
それに掃除だとか足りない酒の発注、客があらかじめ来るとわかってる日の食材の準備や、店の手入れは他のフロアーの店長にしてもらっているらしい。
だから立仙は仕事終了後8時くらいに店に来て客と酒を飲んで軽く店じまいをして帰るという事なのらしい。
少し話がずれてしまった。
そんな立仙が紹介してくれた店に、紅葉は一度下見に来ている。
四季と過ごすのに妥協はしたくなかったのだ。
重厚そうな店の扉を開くとカランとベルが鳴ると、スーツを着ているウェイターがこちらに気付くと、紅葉に気が付くとニコリと微笑んだ。
「こんばんは」
「秋山様。お連れのお客様も。お待ちしておりました」
上着や荷物を預けるとこの店一番の雰囲気のいい席へ案内される。
「どうぞこちらへ」
円卓の上にはキャンドルが光を灯している。
店内の流れる音楽も心地よく落ち着ける音楽なのだが、紅葉は一層に緊張していった。
だが、ここで失敗するわけには行かない。
ウェイターに飲み物のリストを渡されて2人で選び乾杯をすると今日の事を振り返る。
「今日はとても楽しかった。ありがとう。紅葉」
「楽しんでもらえたなら良かった。僕も楽しかった」
フッと優し気に微笑む四季に頬が熱くなる。
ムーディーな明かりのお陰で気づきにくい事にホッとした。
「紅葉が急に時間を取って欲しいと言うから何事かと思った」
「驚かせた?ごめんね」
「いや。嬉しい。是非これからも誘ってくれ」
紅葉が気後れしたのかと思ったのかそんなことを言う四季に紅葉はクスリと笑う。
「うん。勿論」
「でも、次は俺が案内するから」
「楽しみにしてる」
暫くして前菜が出される。
今日お願いしていたのはコース料理である。
立仙がおすすめしてくれただけであってどれも美味しかった。
四季はこの料理にはこの酒が合うだとかで、飲むものを変えるのだが紅葉はそんなことを経験したことはなく、それは四季に合わせてみたのだが、本当においしい。
やはり6歳と言う差も経験も全然違う。
「・・・、」
「紅葉?」
「っ・・・ぁ・・・いや。透は物知りだなと思って」
「そうか?」
「僕はあまりそう言う事を考えて食事なんてしたことはなかった」
「付き合い上仕方なくな」
「開発部の部長でも?」
四季は今は営業部副部長の立場ではあるが、その前は紅葉のいる開発部部長であったのだ。
「それはそうだな。
でも俺だけじゃないし課長であった冬海達だって初顔合わせには同席するときはあるさ。
だから特別という事はない」
「でもなら何故?」
素直な疑問に尋ねると四季は少し視線を逸らしたが、すぐに視線を戻した。
「俺とマスターが親戚だと言うのは話したな」
「あ。・・・そうだった。・・・もしかして透は・・・」
「いやいや。普通だよ。・・・いや。少しは金持ちかな?
幼稚園から大学まで一貫したエスカレーター式の大学だったからな」
確かにそう聞くと裕福の家に聞こえる。
「遠縁で本家とは殆ど関係はない。あっても年末年始の挨拶くらいだ。
あ。あとコネ入社だな」
そう言っていたずらっ子の様に悪い笑みを浮かべる四季に苦笑を浮かべた。
コネ入社なのだとしても一般的なイメージの悪い様子は一切ない。
「透はちゃんとやることをやっていると思うよ。
冬海さんも春野さんも透のこと何も言わないし」
「あの2人が?意外だな。言いたいことは言う奴らだからな」
「ぁ。でも敵に回ると厄介だって」
そう言うと、四季はおかしそうに笑った。
「そんなに厳しいことは言っていないだろう?
いくら新人が増えたからとは言え、今は紅葉もいるのだから」
自分を期待してくれるそんな言葉に嬉しくなる。
四季は何故こんなに自分の嬉しくなる言葉をいつも言ってくれるのだろう。
紅葉も同じように四季を喜ばせたいのだが思いつかない。
そんな事『どんなことを言われたら嬉しい?』なんて聞くことでもない。
こればかりは四季と時間を過ごさないとわからないことだ。
紅葉がそれで悩んでいると四季は良く「好きになった時間が違うからな」と笑う。
その一方で「愛し合った時間は関係ない」とか言うのだがら、今度は紅葉が笑ってしまうのだが。
・・・
・・
・
食事はデザートまで終わりまったりと落ち着いてきた頃。
四季が色々な話をしてくれる。
楽しいのだが気がそぞろになった。
ポケットの中に忍ばせたジュエリーボックスに手を置く。
改めて言おうと思うと緊張してくる。
やはり指輪はやめた方が良かっただろうか?などと考えるがこんな風に悩んでいても進まなくて、紅葉はポケットの中の物を取り出すと四季の前に差し出した。
そしてパカリと蓋を開ける。
「・・・これは」
「、・・・透」
声が少し震えているのが解る。
四季はそんな紅葉の言いたいことを止めずに聞いてくれる。
「透には言っても言い切れない程のことをしてもらって、僕はまだ何一つも返せていないのだけけど・・・、
・・・僕を好きになってくれてありがとう」
「・・・、」
「そっけなくしていたのに、諦めないでくれてありがとう」
あの頃、四季からの想いを感じ取りながらもそれに応えるわけには行かなかった。
話し方も仕事の姿勢も、どれをとっても魅力的に映っていたが、それをあえて冷たくあしらう事で紅葉自身に期待をさせない様にしていた。
もう一生変わらないと思っていたのだ。
だが、それを破って手を差し伸べてくれたのは四季である。
「愛しています。
・・・僕はまだつたない所はあるけれど、透の隣に居ても透が恥ずかしくならない様に頑張るから。
・・・これからもそばに居させてください」
心臓が今までに無い程震えた。
手を当てなくても心音が聞こえる程緊張する。
そんな紅葉に四季はニコリと微笑む。
「あぁ」
その言葉に嬉しくなる。
「つけても・・・いい?」
コクリと頷く四季の手を震える手で取った。
かっこ悪くて照れて笑うも四季は嬉しそうに微笑んでいる。
紅葉はゆっくりとその男らしい指に指輪を通していく。
すると四季はその指についた指はを見て嬉しそうに微笑んだ後、ジュエリーボックスからもう一つの指輪を抜き去ると紅葉の手に付けてくれる。
指先からゆっくりと入っていくところを見ながら、幸せが指先から溢れてくる。
「紅葉。・・・今日ほど嬉しい日は無い」
「・・・透が喜んでくれるなら・・・良かった」
「喜ばないわけないだろう?・・・紅葉からのプロポーズを」
「え」
「え?」
しばし2人で顔を見合わせた。
そして、紅葉はポポポと頬が熱くなっていく。
ふと、春野の反応を思い出す。
やはり指輪を渡すとなるとそう言った意味なのだろうか。
だが、今渡したのはペアリングであり紅葉は困惑した。
「ちっ・・・ちがっ・・・いやっ・・ちがくなくって・・・えっとっ
透と結婚したくないとかじゃなくってっ・・・えっと・・・そのだから・・・僕が・・・一緒のもの・・・つけたくてっ・・・だからっ」
必死に結婚が嫌ではないという事とと、買った経緯を説明する紅葉。
四季は最初呆気に取られていたが、すぐに笑顔になった。
そして、紅葉の手を引き寄せるとその付けたばかりの指輪にチュッと口付けた。
「俺は紅葉と結婚したい」
「っ!?」
「紅葉。愛している」
「っ」
「プロポーズの返事は今じゃなくて良い。
大切な事だから、ゆっくり考えていい。
・・・紅葉。この指輪をくれてありがとう。・・・・本当に嬉しい。
一生大切にする。この指輪も。紅葉も」
そんな言葉は紅葉を満たしていく。
嬉しくてつい目の奥が熱くなった。
四季と出会ってすっかり涙腺が弱くなってしまったが、必死に涙を堪えるのだった。
★★★
それから2人はすぐにタクシーを拾う。
ホテルに行くよりも家の方が早いからという理由らしいのだが、そんなあけすけに言ったのは四季である。
口を開いたらもっと触れたくなってしまいそうな衝動を抑えながら乗るタクシーの中はシンとしていた。
だけど、2人の手は強く握られていて。
会話が無くても何も不安はなかった。
いや。不安を感じている暇がなかった。
緊張が高まりもうどうしようもない程だった。
それから数十分すると2人の家にたどり着くと、エントランスを抜けエレベータに乗る。
いつも何気なく歩いているこの道が今はただひたすら長く感じた。
部屋にたどり着き、玄関がとじるの同時に腕は引き寄せられ、四季に口づけられた。
少し荒々しく紅葉の唇をむさぼる。
「んっ・・・ふぅぁ・・・」
「・・・はぁ・・・やっとキス出来た」
「っ・・・ぼ・・・く、も」
2人きりになりたかったのは紅葉も同じだ。
もうたまらなくてもう一度キスをせがむ様に背伸びをすると、四季はそれに応えてくれた。
再び触れ合う2人の唇。
「紅葉。俺の首に腕を回せ」
「?・・・わぁっ」
言われるがままに腕を回すと紅葉の体は抱き上げられた。
四季は靴を脱ぎ捨てたのか、ガコンッと音を立てた。
「っ・・・とーるっ僕っ靴・・・!」
「大丈夫だ」
それだけ言うと部屋に入っていく四季。
おろしてくれたのは寝室だった。
性急な様子のギャップに驚いてしまう。
するとすぐに覆いかぶさってくると再び塞がれる唇。
「と・・・る」
キスの合間に名前を呼ぶと、四季は嬉しそうに微笑む。
「紅葉・・・」
「・・・透」
するりと伸びてきた手は服の隙間に忍び込んでくる。
それだけでも四季の存在を感じ取ってビクンと体が震えた。
ボタンを外すのも煩わしいのかたくし上げて紅葉の肌をさらす。
肌を撫でて胸の乳首を指ではじき、もう片方の乳首をチュッと口付けた。
「ぁ!」
舌先で舐められ転がされるとそれだけで声が上がってしまう。
四季に散々悪戯されぷくりと膨れる乳首を軽く噛むと引っ張って見せた。
「んっ・・・いたっ」
「あぁ・・・すまない」
そう言うとれろれろと舐め始める四季。
「痛い所は・・・どこだ?」
「あぁっ・・・んんっ・・・ふぅぁっ」
本当に痛い所を探そうと思っているのだろうか?
ジュっと音を立てて紅葉を追い立てるそれに、体は簡単に熱くなった。
紅葉の体は四季の愛撫に簡単に悶え濡れた。
まだ触れられてもいない下着の中はすでに濡れている感覚がある。
もう触って欲しくて無意識のうちに四季の体に擦りつけていた。
そんな紅葉にフッと笑うとベルトを外すと、ボトムを脱がし始める四季。
ドキドキして四季を見つめていると、スッと四季は体を起き上がらせると上着を脱ぎ捨て首回りのボタンを外すと一気に脱ぎ捨てた。
そして同様に紅葉の服をすべて脱がし足を大きく開かせると、蜜を滴らせるそれを根元から先端までゆっくりを撫でる。
「っ・・・ぁ」
「ここまで濡れてる」
尻孔を撫でられるとそれだけでそこは四季を期待する。
ひくんと引くつき始めると、パクパクと開く。
素直な紅葉の反応にくすりと笑い、紅葉のモノを扱きながらその奥の孔を悪戯する。
期待してても普段閉じているそこの緊張を取るまで繰り返し、良き頃合いになったのだろうか。
四季はベッドサイドからローションを取り出すと手に取った。
「膝を自分で抱えられるか?」
「っ」
四季に恥ずかしい所を見せ付けるようなそんな格好に、羞恥で頬が熱くなる。
付き合うようになって何度か体を重ねているが、四季は優しく扱ってくれるが、羞恥はどうしても出てくる。
これが必要なことだというのは分かっているし今更だ。
足を開げ膝を抱え、四季に自ら恥部を晒した。
「っ」
「力を抜いてるんだぞ」
伸びてきたローションを纏った指先がそこに触れる。
「んっ」
後孔を先ほどのように撫でながら紅葉のものを扱かれる。
「!」
四季に扱かれるだけでも気持ちがいいのに、後ろを解されながらそれも滴る先走りをまるで蜜のように舐め始めるではないか。
「ひっ・・・っあぁっだめぇ」
いやらしい水の音をたてながら、指と口が連動しているかのようにどちらかが進めば、もう片方も進まされたり。
最近まで性に薄い生活をしてきた紅葉には、未だにそれ強烈な愛撫で紅葉はあえぐことしか出来ない。
紅葉のモノが根元まで咥えられると、同じく指の付け根まで紅葉の奥に入り込んだ指がクイっと折り曲げられる。
「んぁぁっ」
迷いもせずに前立腺をえぐられるともう、ジッとはしてられなかった。
体をよじられせて快楽に揺れる。
ある程度広がる頃には紅葉の目元には涙が流れていた。
「ぁっ・・・と、・・・る」
息を弾ませ四季に助けを求める。
この体の熱はもう四季に頼るしか無いのだ。
うるむ瞳で四季を見つめ強請る。
その腰を少し上げた。
「なんだ?」
「っも、・・・とーる・・・欲しいっ」
切羽詰まった声にギュッと抱きしめられると、熱いものが押し当てられ口をつぐんだ。
ついにまった刺激が来るのだから当然だ。
「わかった。・・・力を抜いて」
徐々に入ってくる四季の熱くて硬い男根。
あんなに解されたというのに、指とは比べ物にならないがゆっくりと紅葉の様子をみて労ってくれる。
「っぁぁ・・・ぁっ」
「っ」
息が漏れてきてそれがキュンとした。
一生懸命力を抜いているのだが四季は動きを止める。
たしかに圧迫感はあるが痛くはない。
ここまで慎重にしてくれなくても大丈夫だ。
足を抑えてる手を離すと腹の上に手を置いた。
「っ・・・いい、よ」
「っ・・・なにが?」
「ここまで、来て」
「っ」
我慢しているのだと思い、そう言ったのだが四季は急に雰囲気が変わった。
膝を押さえていたもう片方の手を外すと両手を引っ張り体を抱き抱えられた。
挿入したまま体位を変えられる。
急に荒々しい動きに紅葉にはまさか自分の言動全てが煽っているとは思わなかった。
「あぁ・・・んっ」
「紅葉・・・キスして」
「っ・・・う、ん」
無自覚で煽る唇は塞がられる。
すると紅葉の体をゆっくりと下ろし繋がりを深くしていく。
「ぁ!・・・ぁぁ」
漏れる声は全て四季の口に吸い込まれる。
「はっ・・・んぅ」
「っ・・・」
中が四季でいっぱいに満たされる。
「とぉ・・・るぅ」
「っ」
甘えた声で先の名前を呼ぶ。
「動いて・・・いいか?」
「んっ・・・とぉるが欲しい・・・!」
「っ・・・わかった」
そう返事をした後は、腰を掴んで押し付けてくる。
前立腺を攻めらると鳴き声のような声が上がった。
突き上げてくるたびに快楽に揺れる。
「あぁ!っ・・・んんっ・・・ぁぁぁっ」
「紅葉・・・」
「そこ、だけっっあぁぁ!」
紅葉の感じる所をグリグリの突き上げられ紅葉は慌てた。
駄目だと言おうとしたのは再びそこを攻められ喘ぎ声に代わる。
「ちがっ」
「でも・・・良さそうだが?」
「っんぁぁ」
ゆっくりと抉るように突き上げられると、もう堪らなかった。
無意識に自分のモノを扱き始める紅葉。
「はぁっ・・・くっ・・・んぅ」
「イイか?・・・紅葉」
「んっ・・・んっ・・・イィっきもちっ・・・とおるぅ」
舌足らずになりながら乱れる紅葉にフッと微笑まれた後、紅葉は再びベッドに押し倒された。
脇の下から回すよう肩を持たれ、紅葉の体が逃げないようにがっしり掴まれ、腰を突き上げられた。
「良い子だ」
「っ」
「俺も・・・もっと気持ちよくなって良いか?」
「っうんっ・・・僕で・・・感じて・・・!「
「っ・・・あぁ」
四季を無意識に煽りにながら宣告どおりに動き出しとグッと突き上げられるも、いつもより深いところに進み困惑する。
「とっ・・・るっ・・・・ゃっ」
突き破られそうな感覚にヒヤリと背筋が冷たくなるが、四季は良さそうにしていてその言葉を飲んだ。
「い・・・いの?」
「・・・、」
四季が良いなら我慢しよう。そう思ったのだが、様子がおかしいのに気が付いたのか、苦笑をする四季はピタリと止まると額に口付けてきた。
抱きかかえられていた体勢を崩すと紅葉に楽な状態にしてくれる。
「透・・・?」
「紅葉・・・愛している」
困惑している紅葉に愛を囁くと口付けてくる四季。
紅葉の快楽を拾うような動きに思考が奪われていく。
「ぁっ・・・はぁっ・・・んぅっ・・・あぁぁっ」
それから互いの熱は止まらなくなり次第にピストンが早くなっていき、部屋にはぐちゅぐちゅと淫靡な水音と肉のぶつかる音が響いた。
「とぉっるっ・・・も、・・・もうっ・・・!」
「っ・・・俺もだ・・・」
四季は片腕で足を抱え込み腰を打ち付けると、扱いている紅葉の手の上に重ねると一緒に扱き始める。
嬌声をあげるのに夢中でおざなりになり始めていたところの刺激と、中を突き上げられるともう我慢など出来なかった。
「とぉるっ・・・とぉるっっ」
「っ・・・・紅葉・・・っ」
名前を呼び合いながら2人は絶頂を迎えるのだった。
★★★
情事後に体を清めたベッドで抱き合いながら転がる。
紅葉の視線は四季の指輪に向いていると、こめかみに口づけられた。
「・・・。嬉しいが・・・指輪に嫉妬しそうだ」
「!・・・指輪に??」
クスクスと笑う紅葉に四季は拗ねた様にいう。
「紅葉のものだという証で嬉しいんだぞ?・・・けど、俺の指だけじゃなくて俺の事も見て欲しい」
「ふふっ・・・・ん。・・・見てるよ」
最初は情事後に恥ずかしくて視線を逸らしていた。
しかし、そんな風に思わせているなら視線をあげた。
まだ気恥ずかしくて頬が熱くなるが仕方がない。
少し照れているのを見逃すはずもなく、四季は覆いかぶさってくると唇を重ねる。
そのキスが深くなっていくと、紅葉も流石に慌てる。
「っ・・・そ・・・そんなキスされたら・・・またしたくなっちゃうでしょう?」
「そしたらまた愛し合えば良いことだろう?」
「!?もう・・・一回したのに」
「一回しかしたらいけないという決まりはないぞ?それこそ・・・ここに入りっぱなしだっていいくらいだ」
そう言いながら紅葉の尻を掴み中指で孔を悪戯につついてくる。
ひくついたそこは四季の指をくわえるのが解る。
「っ~っ・・・つ・・・疲れているでしょう?」
「全然?・・・紅葉は動かなくて良いぞ」
「!!!」
その程度の拒否は拒否ではない。
寧ろ煽られるだけでその気になるだけだ。
紅葉の機嫌を取るように顔中に口付けて来る四季。
「・・・もっと俺に紅葉の証を付けたいとは思わないか?」
「っ」
仕事では見せない顔を見せられ紅葉は断ることが出来なかった。
いや。紅葉も本当に嫌ではないのだ。
「もう・・・後悔してもしらないからね」
「あぁ。望むところだ」
そう言う四季に紅葉は押し倒したのだが、結局啼いたのは紅葉なのだった。
┬┬┬
四季が時折見せる無言は、紅葉をぞんざいに扱っていた夏川の行動を見て苛ついているのです。
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こんばんは★(σ*´∀`)作者様★
(( ̄_|。
おぉΣ(゜Д゜)
続編?四季さん暗躍?(゜ロ゜;ノ)ノ
楽しみ(*`・ω・)ゞです(σ*´∀`)
勝手に期待してお待ちしております(*≧∀≦*)
でも、無理は禁物ですゾ(*´・ω・`)b
リアを大切に★.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.
でも、妄想は勝手にシチャイマスナ( ・`д・´)キリッ。
ムフフフ(( *´艸`)Σ(゜Д゜)
戯言失礼しました(( ̄_|。(゜ロ゜;ノ)ノ
こんばんは!
ゆっくりになりますが書いていきたいと思いますので、宜しくお願いします^ ^
長文になりスミマセン(( ̄_|。
作者様★完結おめでとでした.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.
母親の結末に衝撃でΣ(゜Д゜)
さっき書き忘れたのです。(*>ω<*)(゜ロ゜;ノ)ノ
子供は親選べない。父親が母親系でなかったのがまだギリ救いでした(´・ω・`)母親が病気であろうと紅葉は関係ない。
作者様★番外編?ありますか?
腹黒四季さんと新婚編とかないですか?(σ*´∀`)
勝手に期待(( ̄_|。
紅葉とのイチャコライチャラブの時間の為に
回りに仕事を押し付けて四季さんが新婚旅行?を考えて画策してたら面白そう( ̄ー ̄)フフ。
ニャニャ。(( *´艸`)
家族にまた不審な目で見られてますがスルー。(( ̄_|。
とりま、作者様お疲れ様でした(*´・ω・`)b
個人的に四季さんが1番キャラ好きです(σ*´∀`)腹黒スパダリ系ばんざーい.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.
外堀掘りまくりお疲れ様っす(・ω・`=)ゞ
スコップでなく重機使って掘ってましたナ(*>ω<*)
ムフ。( *´艸`)クフフフ。
妄想失礼しました(( ̄_|。
ありがとうございます!
日本語話せない人との会話は本当に疲れるんです。
母親の件は四季の独断です。
四季は想像以上に紅葉を甘やかしたいのであんな結果になりました。
いったん「完結」にしていますが、数本乗せる予定です♪
こちらは紅葉と四季がイチャイチャと、四季の暗躍の部分を書こうと思っています。
番外編と言ってもこちら(本編と同じ場所)にアップする予定で、もしお時間があえば読んでいただけると嬉しいです^^
母親は拝見しましたが…モヤモヤは残り不完全燃焼。病気では納得?かたずかないかなぁ~と個人的には思う母親デスナ(・ω・`=)ゞ
赤の他人ならともかく身近で血が繋がってるからこそ複雑でややこしくて拗れてしまう。
私ならこの母親には今後会いませんね。
治療勝手にしてくれ。と過去のことにして消化するまでふれないで時間経過にまかせた方がよいかとこちらに害ないなら放置します。(´ω`)スン。
あと
夏川はなぜ主人公に浮気繰り返しても嫌われない。と思ったんだろうか?
普通に嫌われ事項ですよね?愛情確めたいにしてもこんな常習犯に
もし万が一好きなんて気持ち初めはあっても磨り減りますよね?
愛情なくて情だけだと面倒で更に不愉快指数上がりますよね?
夏川は逆の立場になって考えなかったんだろうか?例えば主人公紅葉に浮気されたら繰り返されたら嫌な気分降り積もって好意が消えていく。って捻れていく。って考えて我が身振り返らなかった?ならなかったんだろうか?
考える年数あったよね?2回目から彼に気持ちないって言ったよね?
態度みたらわかるくない?
浮気ばっかとか
愛されたいなら真逆の態度だし
愛してるでなく愛したい支配したいってなんだろなー?夏川(`Δ´)ってなるし
そんな仏以上の存在中々いないよー。(`Δ´)アホなん?( *´艸`)
仏の顔も三度までだよー。(( ̄_|。
性欲処理なら風俗でも自家発電でも簡単に処理できるんでイチイチ粉かけて浮気を繰り返す必要ないし単なる言い訳に感じるンスが?
バロメーターならん。ただ好感度マイナスよ。ハイリスクしかない。ハイリターンはない。
これで元エリート?人の機敏もわからん、好かれてないの気づかない考える力なさすぎよ。何十年も気づかないとか…大丈夫かな?こんなやつ雇ってる会社。
そうですな(о´∀`о)ノ作者様★が苦心しただけありますイミフな自己中クズ男でした(*´・ω・`)b
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残念なやつである。
四季さんは腹黒思ってましたけど★スパダリ系腹黒。手段選ばなそう。しかも、外堀コッソリ系( ・`д・´)キリッ。
四季さんいれば紅葉は大丈夫かな?
紅葉お父さんは陰ながら大変だったんだな。。
ご覧いただきありがとうございます!
安心してください。母親と夏川の行動は理解が出来ない方が普通の感性です!
(むしろ理解できて賛同できるのは、あまりよろしくないと思います)
彼らの中では一定の理由があるのですが、それが他人と共感できないことが多いです。
息を吸うように嘘をつき、自分を良く見せるために無意識で行動するそんな人。
実在する人をモデルに作り上げたキャラクターで、世の中そんな人いるんだなぁ。。と思っていただければ。
紅葉にとって激甘超えて極甘な四季です。
何せ夏川には及びませんが、5年間も紅葉に思いを寄せていたので。
勿論最初の頃は、『真面目だな』とか『可愛いな』だったんですがね。
必死で健気に頑張る紅葉に日に日にメロメロになったことでしょう。
そして、どこかの誰かさんと違い、自分に振り向いてくれたなら一生大切にします(断言