浮気男に別れを切り出したら号泣されている。【番外編更新準備中】

みゆきんぐぅ

文字の大きさ
上 下
5 / 9
【本編】浮気男に別れを切り出したら号泣されている。

え、片思いだったんですか?

しおりを挟む
 今日は涼香が大輝の部屋で料理を作っている。

「あ、おたまが無い? おたまーおたまーおたまー」
「あー、だめだ。じゃがいもが……」
「ん? 醤油、これ濃口だけか? しまったなー……へへ」

 大輝は気になってチラチラと横目で見る。台所に見に行きたいし、手伝いたいがさっき涼香から「もう! 座っててよ、大輝くん立ち入り禁止」と言われてしまった。

「あ、しまった……塩忘れてたな、まぁいいやどうにかなるさ──今入れよ」

 その後も涼香と料理の戦いは続いている。一生懸命な背中を見ていて嬉しくなる。

 涼香ちゃんは料理に遊ばれてるみたいだな……。

 大輝は希のことを思い出していた。希みたいに涼香になって欲しいと思っていない。代わりを求めてもないし、二人を比べてどうこういう気もない。二人は別の人間なのだから……。二人とも大切な人だ。

「出来た!」

 どうやら完成らしい。
 嬉しそうにテーブルに並べていく涼香を見て大輝の心も温かくなる。

「いただきます」

 鳥の唐揚げにイカとじゃがいもの煮物にサラダが並ぶ。涼香の大好物ばかりだ。箸を持ち一口食べる。

 おぉ!?

「美味しい……美味しいな、コレ」

 大輝は目を見開く。かなり美味い……悪戦苦闘していたのが嘘のようだ。大輝は大きな口でそれらを平らげていく。涼香はその様子を微笑みながら見ていた。
 視線に気づき大輝が箸を止める。

「うん、どうした?」

「うん? 希さんは料理が上手だったから作るの緊張したけど、良かったなぁって思って」

 大輝は涼香にその話をしていたことを思い出した。 

 どんな気持ちで料理をしていたんだろう。比べられる、そう思っていたんじゃないか……。
 
 大輝は席を立つと涼香を抱きしめる。

「バカ、比べるわけないだろうが……。希は希だし、涼香ちゃんは涼香ちゃんだろう? どちらが良いとか悪いとか……そんなんじゃない……」

「ありがとう。でも比べられるのがイヤだとかじゃないの。私ね希さんが好きなの……大輝くんが話してくれる希さんが……。だから、心配しないで」

 涼香は大輝をさらに強く抱きしめた。

「大輝くん、嘘だと思ってんじゃない? 無理させてるとか……」

 涼香が胸の中でクスっと笑った。

「じゃあ、私がこうして抱きしめてもらってる時に武人と比べてるとでも思ってる?」

「え? いや、それは──思ってなかったけど……」

 まさかの質問に大輝は焦る。そんな事思ってもみなかった。涼香は大輝の頰に触れる。

「比べようがない、でしょ? 私の気持ち、分かった? 大輝くんは大輝くんだから、私は私……それでいいんだよ」

「涼香ちゃん……」

「希さんの分も私が作って大輝くんを太らせてあげる、ふふふ」

 涼香は鳥の唐揚げを箸でつまむと大輝の口の中へと放り込んだ。

「……美味しい?」

「……うん、最高」

 大輝は涼香の願い通り白飯もお代わりした。美味しいご飯だった。

「やっぱりイカはじゃがいもと食べるのが合うと思うのよね」

「んー、俺は里芋も捨てがたい……」

「なんですと!?……これは私が全部食べるからね! 里芋派め──」

「いや、待て……里芋はイカの旨味を吸ってなかなかいい味が──」

 大輝は慌てて大皿を掴む。二人の食卓は賑やかなものになった。


しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

処理中です...