浮気男に別れを切り出したら号泣されている。【番外編更新準備中】

みゆきんぐぅ

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【本編】浮気男に別れを切り出したら号泣されている。

声が聞こえた気がした。

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※本編には暴力行為が含まれます。
その段落の『★★★』に注意書きしますので、
自衛にご協力いただけると幸いです。
ーーーーーー


少し話は戻り、四季・冬海・春野で先にレストランで待っている所から始まる。


【別視線:四季】


セミナーを終え、昼にしては少しずれたがランチをとるには丁度いい時間。
4人でランチをとることになった。
『Rnism』の中にも社食があるが今日は外で食べることになった。

普段は管理職である自分たちと一線を引こうとする紅葉とは昼食をとることはないのだが嬉しいことだ。

今日のセミナーは開発部からは紅葉と冬海それに春野しか参加しなかった。
ほかの人間が参加しなかった理由は英語だからだそうだ。
冬海と春野は『Rnism』として紅葉が参加するために同席したというのもあるが、もともと2人は優秀な開発者であり今日の講義内容は興味があるものだったそうだ。

本当は四季も参加したかったのだが、どうしても外せない予定があって断念したのだ。
それに気になることも。
だから予定を終わらせてセミナーに合流したのだ。

セミナーに参加後の冬海と春野と3人で楽しそうに話す紅葉を見ると、今日のセミナーが英語でよかったと本当に思った。
楽しく話しているのを微笑ましく思う反面、おそらくほかの社員と楽しく話しているのを見たら不愉快さを感じていただろう。
そして自分の部ではセミナー講習を技術向上のために前々から、業務中でも開催があったら参加を許可していてよかったと心底思った。

もっと贔屓したいしそばにいたいと言うのが本音だ。

出来るそれも可愛い人間を贔屓して何が悪い?

と、開き直りたいところだが、それが出来ないのが会社に勤める上司である。
ましてや自分の勤める会社は大企業だ。

だが今日はそんな目を気にする様な人間がいないし、溺愛しているのをとっくの昔に知っている面子に囲まれているのでランチも出来るのだ。
トイレで席を外している紅葉を待ちつつも、先ほどの行き過ぎた行動を注意する。

「やり過ぎだ」

たったそれだけで2人はわかったようで返答してきた。
流石、四季が信頼している先輩と見込んでいる後輩だ。

「仕方ないだろう。欲しいんだから。あ。仕事の腕がな?」
「そうですよ。飲み込み早いし。あ。私も仕事としてですよ?」
「・・・」

過去に直接紅葉と連絡しあった際に、仕事のことに決まっているにも関わらず不機嫌になった四季。
だから2人がこんなことをいうのだ。
本音としては真面目で良い子と付け足したいが、四季の恨みは根強いので出来るだけ買いたくない。

「部長頑張ってください」
「そうだな。秋山さんはお前に1番懐いている」

冬海の言葉に少し機嫌を直して視線を向けた。・・・のだが、余計な言葉を付け足す。

「無駄に会議を伸ばして話しかけたり、契約社員を勧めて恩を売った甲斐があるな」
「(冬海さん!そんな言い方!)」

いつもならそれで反撃がくるところ。
しかし、今日は機嫌が良くてムッとしつつも直ぐに笑顔になる。

「せめて日々の努力と言ってくれ。
その努力のお陰で出来る社員が増えるかも知れないんだからな」

得意げに言う四季に冬海が冷静な指摘をする。

「実際問題難しいだろう。フリーランスに随分拘っている」

春野もコクリと頷く。

「何故なんでしょう。
彼ならフリーランスでやっていけるだけのあるでしょうが。
・・・そう言えば・・・初めて面談した時もなんだか必死そうでしたね」

大学2年生という早い時期からフリーランスになることを見据えて動いていた紅葉。
それもよくあるようなタイプとは少し違っていた。

「あれもできるこれもできると胡散臭すぎて疑っていたが、話してみれば参考書の受け売りだけではなさそうで、見直したが・・・それよりも何としても仕事を受けたいっていう心意気を感じたな」

それまでの経験なしの相手に仕事を任せるなんてことこれまでNGだった。
だが、四季だけでなく話していくうちに冬海と春野も興味がだした。
この2人が渋々ながらにもOKを出してくれなかったら流石の四季も紅葉と業務委託契約はできなかった。

何せ四季は部長として全体の業務を把握しているが詳細がわかるのは冬海達である。
そんな心配も冬海が「1週間時間をとれるか?」と、尋ねてくれたときは思わず内心でガッツポーズをとっていた。
春野も面談後にインターンシップでもなしに会社経験を積ませるだけに、リソースを割くことに大変不満そうだったが、蓋を開けてみれば一転。春野は紅葉のことを大層気に入った。
ちなみに、春野は結構厳しい。
紅葉もそれで注意されていたが、二度同じミスをしないようにしたり努力をする姿勢は大変好ましかったそうだ。
それに、あれだけ大口をたたいていた面談だったが、それに偽りのないプログラミング能力も素晴らしかった。

「そうだな。
その心意気を是非我が社で生かしてもらいたいところなんだ。
だから・・・過剰でしつこい誘いは禁止だ」
「「なら部長が確実に引き抜いてきてくださいよ」」

とは言えだ。
フリーランスから正社員になると収入が減るのも確かだ。
その代わり安定が手に入れられるのだけれど。
そんな説明は先ほど春野たちがしてくれていたのだが、それでも紅葉はフリーランスに拘っている。

「うちには少なくとも3人は来てもらいたいとおもっているんですけどねぇ~」
「いや。あともう1人いる」
「え?誰のことです?」

春野の質問には答えないでいると、冬海が続けた。

「・・・みんななんだかんだで気に入っているからな秋山のことを。
人当たり良いし、話やすいし。仕事が早い。
『面倒くさい』という理由で複雑なバッチもガンガン作ってくれるし」

冬海が思い出しながら笑っている、つられて春野も笑った。

「「はぁ~・・・欲しい人材(だ)」」

なんていいながら部下2人がちらりと最後にこちらを見てくるではないか。
悪いが四季はもっと欲しているのだ。
だがそんな2人に可笑しそうに笑った。
職権乱用とおちょくりながらも紅葉を欲しがるのは仕事ができるからだけではないだろう。
紅葉を見ていると危うさを感じる。
フリーランスになるにあたって、クライアントとの信頼を重視してくれているのは良いが不備があったときのあの怯えようを見たことがあるのだろう。
そんな話をしてると紅葉が戻ってきたようだ。

「お待たせしました!」

小走りでこちらで掛けてくる紅葉に皆が笑顔になる。
今急いでいるのは休憩時間を守るために急いできたのだろう。
慌てて席に着く紅葉は四季の隣に座った。

「皆さん注文しましたか?」

そういいながらスマートフォンで時間を確かめる紅葉。

「いや。だが大丈夫だ。昼休憩は一時間とるように。・・・今日は特別だ」
「営業だって外出の時は結構適当みたいだし」

冬海と春野ががそう言うと、少し間をおいて紅葉は2人を見た後少し視線を下ろした。

「も・・・秋山?」
「いえ!なんでもないです。おなかすいていたのでちゃんと食べられて嬉しいです」

一瞬表情に陰りを感じたがうきうきとしながらメニューを開いた。

「待たせてしまいましたね。・・・えぇっと・・・オムライスにします」
「オムライス、好きなんだな」

そう言うと『子供っぽいですよね』と照れて笑う。可愛い。

「俺はハンバーグ」
「あ、私も」
「俺は・・・パスタにしようかな」
「パスタ・・・で、良いんですか?」

自分のは決めたのにメニューを探しながら、紅葉が問いかけてくる。
それに何とも言わずとも分かった。

「あぁ。毎食糖質制限しているわけじゃないし、こないだもオムライスを一緒に食べただろう?」
「確かに。あれ具沢山でとっても美味しかったです」

紅葉に作った具沢山オムライスは一見普通のオムライスだが、中身のライスを具沢山にして糖質を減らしているのだ。
その気にしてくれているのが嬉しくて頬が緩んでしまう。
早とちりして照れている紅葉が可愛くて微笑んでいると、春野が不思議そうに尋ねる。
紅葉は大抵社食を使っている。
外で食べているところを見た方がない。

「社食でそんな凝ったオムライス出たことありましたっけ」
「俺が作ったんだ」
「「えっ」」
「なんだ、可笑しいか?」
「四季部長の冷蔵庫ってビールとか酒類しか入っていないのかと思ってたわ」

家ではずぼらそうと失礼な春野に紅葉が何故かムッとした様に訂正し始めたが、ハッとして口をつぐんだ。

「朝と晩・・・あ・・・いえ」
「ん~???なーんで知っているのかな?」

なんてにやにやとして春野が訪ねると紅葉はこちらを見てくるのでコクリと頷いた。
頬が赤く照れているのが可愛い。

「今の寮に入る前、数日間うちの空いてる部屋を貸していたんだ」
「「え」」
「っでも!誓って何もしていません。
その・・・四季さんにだって選ぶ権利がありますから、変な噂を流さないでくださいね」

どうやらこれは片思いをしているというのを律儀に考えてくれているようだ。
なんて良い子なのだろうか。
そんなことを思いつつも四季的には広まってくれればいいと思ったが口には出さなかった。
2人の視線が四季に注がれていてニコリと微笑んだ。

「ホテルを借りるより節約できるからな」

2人の視線が『部長ならビジネスホテルの代金1週間くらい出せるだろうに』と訴えてきていたが気にしない。

「本当に助かりました。正直かつかつなんです」

それはそうだろう。
夏川と同棲するために契約した家の家賃や光熱費にハウスキーパー代金。
それに先月まではウィクリーマンションの賃料。
ここらへんの家賃は狭くてもしっかりとした値段をする。
紅葉はフリーランスと仕事をして数年たっているがここ最近の出費は少なくないだろう。

そんな風に苦笑を浮かべている紅葉に、思わず三人は同じことを思った。

「出る必要なかったんじゃないか?」

冬海にこれまでのらりくらりと逃げるのに腹が立っていたが、その一言で思わず全てを精算した。
ボーナスの査定を上げる候補に入れよう。

「それなら正社員になってしまえば良いじゃない」
「そうだな。ここなら狭いが社員寮だってあるし」

畳み掛ける2人に思わず褒めたくなる。
ん?先程?
何も言ってない。
紅葉が入社を決意してくれるならなんでもいい。
なのだが・・・。

「えーっと・・・。やっぱり今月で終わりにしておきます」

ここまで頑なに嫌がるのは実は本当に嫌なのだろうか。
契約してくれたのも夏川から逃げるため。
そう言うつもりだったが少し落胆が胸に残る。

「へ?・・・寮を出て・・・行くところあるの?」
「その時までには何とかします」
「何とかってどうするんだ」

四季の言葉に困ったように紅葉は笑うだけだった。

「何とかは、何とかです。プライベートのことなんで秘密てことで」

その言葉に皆が何かあると思うのだった。



★★★

【紅葉視点】

楽しい昼食はあっという間だった。
穏やかな時間が流れ大好きな仕事をして帰宅の時間。
心の底から帰りたくないと思うのだった。

「・・・」

だが、このまま逃げていても居られない。
紅葉は約束通り夏川の同居用に借りた賃貸へと向かうのだった。


★★★

※ attention ※
【!】以下に暴力シーンが含まれます【!】












違うと弁明するのも抗うのも辛くて、楽な方に逃げるのが癖づいていた。
肯定してしまえば余計な労力を使わなくて済む。

後悔はいつもしているのに、なぜでは反省を生かせないのだろう。
いつから諦める事、先延ばしをする事を覚えてしまったのだろうか。

考えてもありすぎて思い出せない。

仕事が終わり重い足取りで家に帰りインターフォンを鳴らす。
『入ってくればいいだろう』と言われるも、『鍵を失くしてしまった』と言えばドアを開けられた。
エレベータに乗り部屋までつくと、リビングに入るように言われる。
抗うこともなく部屋に入っていけば、無情にも施錠される音が響く。
逃がすつもりはないというようなそれに、足が震えそうだった。

「おかえり、紅葉」
「・・・、・・・」
「何日も無断外泊なんて、随分悪い子になったな」

そう言って満面の笑顔を浮かべる夏川。
笑顔なのに目が笑っていなくて・・・恐怖を煽る。

「鞄貸して?」

何をするのかと思ったが抵抗せずにその鞄を渡した。
今日はセミナーに参加するため、クライアントの情報が入っているパソコンは持ち歩いていない為に渡した。
スマホを手元に置き、床にザっと荷物を取り出した。
手に取り確認しながら、結局すべてを紅葉に確認せずにゴミ箱に捨てていった。

「全部ゴミだな。・・・さて。お仕置きの時間だ。紅葉」
「っ」
「今まで甘やかしすぎた」

甘やかされた記憶などない。
いつだって夏川は紅葉に厳しい。
話している言葉が通じないつらさを知らないのだ。

「脱いで」
「っ」
「早く。ふしだらなことをしてないか確認する」
「そんなことっ」
「だったら出来るだろう?」

紅葉が動くまで許さないというような姿勢に息をのんだ。
震える手を動かし、ボタンを外していく。

上着を脱ぎワイシャツを脱いだ。

「全部。だ。・・・USBがどうなってもいいのか?」

目の前が真っ暗になる。
嫌だと心が叫ぶのに抗えない。

紅葉は絶望を感じながら目を閉じた。

・・・ー

言われるがままに全裸になると、ソファーに掛けた夏川の前で腰を突き出すように四つ這いになるように言われる。
『お仕置き』は折檻だ。
焦らす様に尻を撫でられた。
尻たたきをされるとわかっているのに、そんな風に優しく撫でられいつかくる痛みに怯える。
怖くて震えだした時だ。

パシン!

乾いた音と同時に走る『痛み』と『熱』。

「あぁぁっ」

ついに、叩かれてしまった。
USBをたてにされた言う事を聞くしかなかった。

「なんで勝手に出て行った」
「・・・」
「黙っていたらわからないだろう?」
「あぅ!」

答えない紅葉の尻を鷲掴まれる。
両の頬じりを揉みしだか両サイドに開かれた。

「綺麗なままだな。・・・寝たのか?」
「そんなのっ夏川じゃあるまいし」

パシンッ

「っ」
「渉だろう?いつからそんなに他人行儀になったんだ?」
「っ」

パンッ

「あぁっ!」
「言うまで叩くぞ」
「い、」
「なら言え」

数度叩かれて尻を叩かれはと言うことが想像以上に神経をすり減らした。
情けなくて涙が止まらない。

「・・・わた、る」
「そうだ。間違えるんじゃないぞ?
じゃぁ次の質問だ。
・・・あの夜の男に何を吹き込まれた」
「・・・だ、れ」
「新宿であったあの趣味の悪いクソジジィだよ」
「そんな事ないっ」


パンッ

「うぁっっ」
「あの男に股を開いたのか」
「っ・・・してないっ」


パシンッ

「っ・・・っ」
「嘘をつくな」
「嘘じゃない!」


パシンッ

「うぐっ」

痛い。
苦しい、辛い。

そんな時だ。頭に優しげな声が蘇る。

『紅葉』

優しく微笑んで名前を呼んでくれるその声。
そんな風に読んでくれる理由は錯覚。・・・なんかじゃないのは分かっている。
もし勘違いなら四季は相当なタラシだ。
だが、夏川が執着している自分では四季に迷惑を掛けてしまう。
現に既に多大なる迷惑を掛けているわけで、そんなの絶対に許せない。

なんとか・・・四季さんから興味をそらさなきゃ

そんな事を思いつつ拳を握る。

「嘘じゃない。あの人、・・・片思い中なんだ」

心臓が痛いほど高鳴っている。
演技なんてしない。
これで嘘だと見破られてしまうわけにはいかない。

「落とそうと、思ったけど・・・頑固で無理だった」
「・・・浮気か」

苛立った声はちゃんと興味をそらすことができたことを示している。
だが、その苛立ちはこちらに向かってくるということで・・・怖く感じた。
震えそうな声を押さえつけながら煽り続ける。

「僕は高校から付き合ってると思ってないっていったでしょ」

するとガッと尻に爪を立てられる。

「ぁぅッ」

頭を下げて頭に震えていると顎を一気に持ち上げられ顎を引っ張られると苦しさに眉を顰めた。

「っ・・・っ」
「そんなに泣いて。可哀想に。でも。
・・・紅葉が悪いんだぞ?」

そう言いながらベロリと涙を舐め掬われた。

気持ち悪い。

そう思っても痛み以外顔に出さないように努めた。
早く終わってほしくて、黙秘以外の抵抗を諦める。
情けなくも涙がまた溢れた。
すると悪魔の様な囁きが耳元で紡がれる。

「紅葉。会社を辞めるってここで電話しろ。
今契約してるところも全部」
「!・・・そんな」

それはつまりフリーランスで働いている口をすべて切れと言っているのだ。

「無理だ・・・だってここの家賃だって」
「俺をどこに勤めているか忘れた?
勝手に屁理屈で契約した家政婦は契約解除だ。
紅葉がやれば問題ない。ずっと家にいるんだ。食事も冷凍食品じゃなくて料理も覚えてもらう。
あぁ・・・大変だろうから食材や必要なものだけは俺が買ってあげる」
「っ」

どうやらハウスキーパーの存在には気づいていたようだ。
流石に夏川を舐めすぎていただろうか。

「これは会話じゃない。
命令だ。
ここから出るな。
そしたら許してやる。
もう。・・・痛いのは嫌だろう?」

そう言うと散々叩かれた尻をそっと撫でられる。
冷たい手のひらとのコントラストが紅葉の知らなかったものを呼び起こす。

「っ・・・」

得体の知れない刺激が余計に紅葉を後押しをさせた。
残り少ない体力で思い切り体をひねると、縛られた両手で夏川の頭を薙ぎ払った。
咄嗟の事に避けきれなかった夏川は軽く倒れたが、尻を叩かれ負傷のある紅葉よりも回復が早かった。
舌打ちを打った後、腕を掴み持ち上げ寝室へと連れていかれる。
色々な感情が織り混ざって紅葉は湧き上がる怒りを絶叫する。


「そんなの素直に聞けるわけない!!!」

「聞くしかねぇんだよ!!」


そういって髪を引っ張られる。
痛いし辛いし、怖い。
この後殴られるのか何をされるのかわからない。
だが、利口にされるがまま・・・これまで通りに流されるままは、・・・もう嫌だった。
キッと夏川を睨む。


「っ・・・嫌いならほっといてよ!!」



叫びながら辛くて苦しくて、怖くてポロポロの涙が溢れた。
それでも夏川を睨む紅葉。

これまでどんなに言っても無かったことにされてきた言葉。
何を言ったって聞いてくれない。

もう、だったら何も言わない。
けど。




「大っ・・・嫌い」



「・・・、」



「渉なんかッッ・・・きらっ」

バチンッ!!

「ぐっ」

思い切り頬を殴られた。
散々尻を叩いておきながら咄嗟に顔を殴ってしまったことに驚いている夏川。
しかし、逃げようとする紅葉に気づくと睨んでくる。

「・・・まれっ」

怒りを漲らせているそれに、紅葉は震えた。
そんな時だ。
玄関のチャイムが鳴る。

ピーンポーン


「そんな、言葉・・・聞きたくない」

─・・・ピーンポーン

その表情は今にも泣いてしまいそうな顔で、こんな嫌いな男なのに胸が締め付けられた。

「僕だってっ・・・言いたくなかったよっ」
「っ・・・」

ピーンポーン─・・・ピーンポーン

紅葉がそう言うとその顔はくしゃりと歪んだ。
それでも掛けさせようと紅葉のスマホを開き見る夏川。

「この部長で良いか。掛けろ」
「っ・・・、このインターフォン・・・怪しまれる」
「チッ」

そう言うと手からスマホを取られてしまう。
出ている間に警察を呼ぼうと思ったのだが、そんな考えを見破られたらしい。
夏川は勢いよく立ち上がると、なり続けるインターフォンに向かう夏川の後ろ姿をボヤける視界の中で見届けるのだった。
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