浮気男に別れを切り出したら号泣されている。【番外編更新準備中】

みゆきんぐぅ

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【本編】浮気男に別れを切り出したら号泣されている。

て、いうか今さら?って話ですよ。

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恋人ではないと思っていないが否定しなかったのも悪かったとは自覚している。
自分の心の根底には『「いつか会心してくれるかも」なんてそんなこと1mmも思ってない』と、強く言えたら良いのだが。
いくら面倒くさがりなことがあっても心底嫌ならとっくに分かれていた。
けど。

『違う・・・俺が愛してるのは紅葉だけだ!なんで、・・・なんで分かってくれないんだ!』

本当に頭が痛い。
昔からよくわからない奴だった。
けれどやっぱりよくわからない。

恋人(?)の浮気現場を見てしまいとても気分がのらなかったが、相手は仕事関連と言うこともありドタキャンなんて出来るわけもない。

四季透(しきとおる)31歳。
紅葉がフリーランスで出来るように導いてくれた人でもある。
いや。友達だとしてもドタキャンなんてしたりしないが。


そんな四季に連れていかれたのは顔馴染みだと言うBARだ。
『黄昏』は和テイストにされており、想像するBARよりは暗めだが落ち着く。

席に着くと客は紅葉達しかおらず、すぐに酒が出される。
むしゃくしゃするのを紛らわす様に乾杯して一気に酒を煽る。

度数の高い酒を飲む様な飲み方じゃなく喉が熱くなった。

「勿体無いね」
「!・・・ちゃんと自分で払いますよ」
「金のことではないよ」
「・・・確かに美味いものなのに味あわないとですね」

量産される酒とは違い今飲んでいるヴィンテージものは減り行くものである。
マスターに同じものを頼むと気持ちを切り替えた。
・・・、と思ったのだが。

「なんか嫌な事あった?」
「・・・みてたでしょう」

小さくため息をついた。

「そういうのはこっちが言うまで見ないふりするもんですよ」
「つけいるチャンスを見逃すわけないだろう?」

てっきり野次馬根性かと思ったのだが思ってみない言葉に驚いたのちに苦笑した。

鼻声だったりあからさまな態度だったらわかるのであろう。
確かに夏川のことはいい気分はしないがそんなに傷付いてない。

夏川のことでもう傷つかないと決めたのだ。

浮気性の夏川に嫉妬しショックを受けていたのなんて未成年のころ。
専門学校の頃だって多少はムカついていたけれど、夏川が遊んでるのは有名だったし、むしろ夏川が所々で紅葉と付き合っていることを口にする度に周りがまだ付き合っているのかと驚くことが多い様だ。

「ふふっ残念ながらそんなんじゃないですよ。
スマホが壊れてきたし買い替えようかなって。
キャリア変えてみよう思ってるんですが、MNP(他社でも番号を継続して使うサービス)より、新規契約にしようかなって」
「それもいいが。どうせなら着信拒否で良いんじゃないか?結局番号を知られたらまたかけてくるぞ」
「・・・あの、僕別に整理したい人がいるわけじゃないですから」

あんなところを見られて、・・・と言うよりも助けてくれたといってもいいだろう。
だが、あんまり思い返したくはない。

「悪いですけど、僕は自然消滅を狙っているんで」
「それでは何も解決していない」
「これで良いんです。アイツもあと5年もしたら結婚相手が出来て結婚しますよ。
家に出入りしていた男は若くてカッコいい感じの子だったし」

ふと、さっき連れていた男はそれ以上に若かったと思い出して苦笑した。

・・・まさか・・・学生?・・・いや・・まさかね。

夏川はあんなクズでも大手企業に勤めている。
なのだからそんな危険なことはしないだろう。

なのに・・・あんな人の多いところでアイツは一体何をやってるんだか。

深くため息をつくと四季が慰めてくれる。

「こんな良い男を適当に扱うなんて本当に信じられない」

真顔でそんなことを言ってくれる四季に苦笑を浮かべられた。

「そんな・・・でもありがとうございます」
「俺なら君が恋人なら浮気なんてしないけど」
「っ・・・もしかして・・・口説いてます?」
「つけ入るつもりって言っただろう?」

そういってクスリと微笑む四季にホッとした。
冗談であるようだ。
リップサービスにホイホイ乗ってしまうところだった。

「彼って学生?」
「違いますよ。社会人。同い年。
確か『HRYM CORPORATION』の営業です」
「大手企業なんて出来る彼氏じゃないか。社会人だと思ったが。
それも営業か。知り合いがいるけどあまり酷いなら言おうか」

そんな言葉に今度は紅葉が笑った。

「プライベートのことに今時の会社は口出ししないでしょう。
不倫じゃないし」
「そう・・・だったね。籍は入れてないんだものね。
籍は入れない方がいいよ」
「入れませんよ。僕は書きません」
「そうそうそのいきだ。
・・・同い年と言うことは25歳。まだ働いて数年か。それなら君の方が稼いでるかな?」
「さぁどうでしょう。相手がどれだけ稼いでるとか聞いたことないし」
「『HRYM』なら結構入社難しいと思うけれどね。あぁ見えて優秀なんだ」
「そうですよ」
「とても見えないな。営業って誠実さも大事だけどそれが全く見えない」

夏川のことを悪く言う人間は新鮮でそちらを見る。

「口はうまいんです」
「そういう奴は最初はいいんだけれどね。この先5年・・・いや2年残れるかな。
それもあの場所も悪かったな。『HRYM』だけでなく取引先もいないこともないだろう」

そう言って笑う四季の目は冷たい。

「『HRYM』と取引しないということはないけれど、担当にアイツが含まれてたら外してもらうな。
夏川なんていうの?」
「え」

それに思わず視線を外した。
そして続く少しの沈黙。

「・・・かばっているわけではありません」
「・・・」
「けど。・・・あと2年から5年で結果が出るなら良いじゃないですか」

紅葉は学生のころからフリーランスとして働いていた為、企業に入社するためのステップや感覚がわからない。
全て夏川が大変だと言っていた受け売りだ。
その夏川の言っていたことは事実だと思う。
切り捨てられていないが、嫌な奴であるのだが紅葉との関係とは別のところで攻めるのは気が引けた。
それにそれは四季の手を借りたことになる。

「すみません」
「・・・アイツが仕事でミスしようとどうしようと構わないけど、うちの仕事はしっかりしてね」
「はい」
「フリーランスの君が仕事が切れるところがない。そこにうちの仕事を捻じ込むのにどれ程苦労しているか」

1人で働いているためタスク管理は重要だ。
そこで四季のお願いはなるべく聞く様にはしている。
卒業後フリーランスで本格的に動き出し始め、辛い時に助けてくれたのは四季である。
もっと言えばこの業界に入って初めて仕事したのは四季の依頼である。

「いつも待たせてすみません・・・」
「いや。それだけ君は売れっ子のフリーランスだということだよ。
それなのに俺には良くしてくれてるのは嬉しいな。
・・・というか、アイツよりも俺との方が話しているんじゃないか?」
「え?・・・あぁそれはそうですね。僕家に帰ってませんし」
「帰ってない??」
「同棲しているんです」
「・・・・、・・・、・・・・、・・・・、」
「だっ・・・大丈夫です!今はウィークリーマンションで仕事して、夏川が見れるところ触れるところには機密情報はおいてませんっ」

営業は信用問題だがフリーランスは個人なわけで最大重要事項である。
ぶんぶんと首を振って否定をすると四季はため息をついた。

「すまない。私情を挟んでしまった。・・・ちゃんと守ってくれているようで安心した」

私情の意味が分からなかったが、信頼を失ったわけではなくほっとした。

「そうか引っ越したとは思ったんだ」
「え?」
「オンラインミーティングで背景の壁紙がデザイン系から真っ白なよくあるものに変わったから」
「すごいよく見てますね」
「こわぁ・・・」

紅葉が純粋に驚いているとマスターがドンびいた様子で四季のことを見ている。
四季とマスターは友人である。

「・・・でも透見たいな奴がいるから、紅葉君背景スクリーンにした方がいいよ。アプリでもなんでもさ」
「俺みたいというのは心外だが。・・・そうだな、そうした方がいい」

友人の酷い言い様にムッとしたようだったが、四季はこちらを心配気に見てきた。

「僕男ですよ?」
「男でもなんでも魅力的だったら襲われるんだ」

『襲われる』というキーワードに紅葉は息をのんだ。


・・・そんなの夏川しかいないよ・・・。


忘れたかった記憶を思い出してうつむく。

「っ・・・、・・・何か・・・あったのか」
「何も」
「そうか」
「・・・、」

誰にも言えなかった話だ。
みんな夏川のことを慕っていて、そんな中でいうのが怖かった。
親でさえも夏川の味方をする。

だが四季は夏川を批難してくれた。
そんな風に紅葉がいうことを否定しなさそうな人間に、こんなことを言うのは卑怯だというのもわかっていた。
けれど、長年ため込んできたことを誰かに肯定して、『紅葉の所為じゃないよ』って言ってほしかった。

★★★

夏川とは幼いころから一緒である。
『幼いころ』とは生まれてからずっとともいえる。
あやふやなのは覚えていないからである。

家が隣同士でいわゆる幼馴染というやつだった。
紅葉の親は男女の両親で、夏川の親は共に男の親だった。
男が子供を授かるようになっても、遺伝子中の『母性』の部分は女性の方が強かった。
だから、紅葉の母が良く夏川のことも見ていたのだ。
特に夏川の親は二人共仕事を持っていた人で、早くから仕事復帰していた。
そのため夏川の面倒を見るためにいくらか貰っていたみたいだ。

そんなわけで兄弟のように育ってきていたが、2人はタイプが全く違かった。
幼いころから容姿の良さから男女にもてた夏川は明るく誰からも好かれる人気ものだった。
それゆえにいつも誰かが隣にいた。言ってしまえば侍らせているようにも見えていた。

一方の紅葉は内気まではいかないが陽気なタイプではなく面倒くさがりだった。
だが、話しかけられれば話すくらいのコミュニケーション能力はある。
紅葉は教室で1人で本を読んでいるタイプだったが、その熟読しているのはプログラミングの本だ。
さすがにノートパソコンの持ち込みの許可はなく、ひたすらに本を読んでいたわけだが、そういう趣味の人間は数人いた。そして、覚える言語はみんなばらばらにして、この言語はどうだとか討論するのが好きだった。
気づけばほかのクラスの人間も集めてパソコンクラブなるものを作ってそこに入り浸るほどだった。

しかし、それに嫉妬したのは夏川だった。

小学生の頃は子供なのにそんな遊び陰険だと言い、中学生になるといやらしい動画を見てるとありもしない妄想をたたきつけてきて、クラブを壊そうとする。
そんなのは夏川の戯言だ。
だが、人気者の夏川の言葉はみんなが鵜呑みにして先生に言いつけるようになる。

紅葉がそれを止めると「クラブの時間以外俺といられないなんて可笑しい!」と、謎の暴論をぶつけてくる夏川。
だが、クラブの時間だけは取ってくれるなら紅葉はそのクラブを壊したくはなかった。
学校のルールなのだから『取ってくれる』というのはすでに間違っているのだが、それに気づけなかった。

紅葉はそうそうに代表をほかの生徒に譲ると、休み時間いつもならクラブの部屋にこもっていたのを教室で本を読むようになった。
その隣には夏川がいる。それも紅葉以外のほかの人間と楽し気に話している。

最初、クラブの仲間達が同じように席で話してくれていたのに『うるせぇ』と言って追い返してしまって以来、ここには寄り付かなくなってしまった。
別に紅葉が仲間外れにされているわけではないのだが、彼らの話している話の内容は紅葉にとって楽しいものではなかったので、会話に加わることもない。
内心、クラブの部屋の方が楽しいというのはあったが、それはできなかった。

昔からそうだ。

夏川のいうことをきかないと、最終的には面倒なことになるのだ。
ならば、クラブの時間だけもらえるならその時間だけは死守したかった。

そんな調子だったので、高校は別のところにしようと思った。
だが露骨に嫌がったら何かされると、直感で察し敢えて希望校を答えないようにしていた。
・・・まぁ・・・結局は母親にばらされてしまったのだが。
母親はどうやら夏川のことを実の息子の様に、・・・いやそれ以上に大切に思っているような節がある。
教えてほしくないと伝えていても、夏川にねだられると答えてしまったりする。
そんなことは昔からだからもう諦めているのだが。

とにかく、高校も一緒になってしまったわけで、またナチュラルな束縛が始まった。
部活は相変わらずパソコン系のところに入ったが、行き帰りは一緒にしようと強引に進められる。

『え。嫌だ』なんて言えたらいいのだが、そしたら夏川が悲壮感前回で母親に『嫌われてる・・・』だとか『いじめられてる』だとか言い出す。
そうなってしまうと『渉君がかわいそうでしょう』と、紅葉が怒られるのだ。
だから、登下校だけは守るようにしている。

そんな苦手意識が芽生え始めている夏川と付き合い始めたのは高校2年の15歳の頃。
いつものようにプログラミングの本を読んでいると、夏川が声をかけてきた。
本を読んでいるのを邪魔されるのは嫌だったが、無視をすると面倒なのはデフォルトである。

兄弟のように育った夏川は小さい頃は女の子のように可愛かったのに、中学に入った途端メキメキと大きくなり『イケメン』と言う生き物にクラスチェンジした。
老若男女にモテると言うのは過言ではなくて、男女問わずに好かれていたし教師陣からも人気があった。

そんな人気者である夏川がずっと本に齧り付いている紅葉の周りにいる事になっているが、それを面白く思わない者がいた様で、やたら夏川を引き離そうとする人間が多かった。

内心だったら夏川を説得してくれと思っていたが、それも面倒で口に出せずにいた。
そして最後には夏川が・・・。

「紅葉には俺がいないと駄目なの」

なんて言って紅葉への嫉妬をたきつけて終わるのだ。
上履きだって盗まりたり汚されたりきりがなかった。
夏川は口では『紅葉がかわいそうだ!』というが犯人捜しをしようとはしなかった。
紅葉が誰がやっているかわかるくらいなのに、夏川がわからないわけがなかった。

そういえばクラブの人が夏川に言ってくれたこともあった。
写真を見せて『君を慕っている人が秋山に嫌がらせしてる』と注意を促したが、夏川は『合成写真?酷いの作るね』言われてしまったことがあった。
その人にはお礼を言ったけれど、その後転校してしまった。
転校するからあんなことしてくれたというけれど、本当なのか紅葉は疑っている。
クラブの時に聞いたけれど皆が口をとざすのが余計にそれを拍車をかけた。

迷惑をかけたくなかったのに

それから、紅葉はクラブへは行かなくなった。
その代わり今まで以上に口数は減り下校は何が何でも家に早く帰った。
夏川と遊びたい奴らが文句を言ってきたが知ったことではない。

「そんなに夏川と一緒にいたいなら一緒に帰れば?
夏川の家は両親が働いているから部屋入れてくれるんじゃない?」

そういうと、皆目を輝かせた。
それから男女構わず連れ込んでいるようだった。
夏川の部屋は毎日どんちゃん騒ぎ。
窓越しでも煩いのは変わらなくて、ヘッドフォンをつけてプログラミングをするようになった。
嫌がらせもなくなったし平穏が少し訪れたと思った。

毎日夜になると夕飯の知らせをしに来るのは夏川なのだが、ヘッドフォンで音を完全シャットアウトしているのだが、日に日に不機嫌になっていく夏川。
隣で呼んでも気づかないから肩をたたくまで紅葉は気づかない。

「先に食べてて良いよ」
「駄目だ」
「今良いところなんだ」
「おばさんに言いつけるぞ」
「・・・はぁ」

毎回呼びに越させて悪いとは思っているが、そんな面倒ならいいのに。
母親にも時間になったら食べに来るから夏川に呼びにこさせなくていいと言ったら、なんでも夏川が来ているそうだなのだ。
本当に面倒くさい。

それでもまぁ・・・一人で食事するよりみんなで食事をした方がおいしいのは確かだ。
夏川は話がうまく聞いていても楽しいのだ。
食事中の夏川は紅葉のことをちゃんと見てくれる。
嫌がることもしないし気を使ってくれる。
なぜ学校ではしてくれないのか不思議なほどだ。
だから、夏川を嫌いになれないのもあった。

夕食の時間は普通に会話をする紅葉に、夏川もヘッドフォンの理由が分かったようでいつからか家に人が来なくなった。
その代わりに夏川が紅葉の部屋に入り浸るようになった。
集中モードに入るまでは適度に話し、紅葉の『今良いところだから』で夏川は会話がピタリと止まる。
夕食の知らせは母親から夏川に入るようになっていて、連絡が入ると紅葉を呼ぶという形になった。

あの頃は今から思えば楽しかったように思う。

しかし、それが壊れた日。
紅葉が自室でプログラミングをしていると名前を呼ばれた。
椅子ごと回転させられ夏川の方を向かされる。
その表情は真剣な眼差しで困惑した。
すると・・・。

「俺と付き合って」
「っ・・・ぇ?」
「紅葉が好き」
「は?」

困惑をしていると、腕を引っ張られベッドの上に押し倒された。

「わぁっ・・・渉?」
「どっち?」
「え?」
「俺と付き合う?付き合わない?」

そんな事を唐突に言われても困ってしまう。
けど真っ直ぐに向けてくる視線に戸惑っていると、頬を撫でられた。

「キスしてみよ」
「え?」
「俺のこと気持ち悪かったらそれまで。
だけど気持ち悪くなかった好きなんだよ」

暴論に戸惑っているとこちらを待たずに口付けてきた。

「んっ」
「いや?」
「え?」
「俺とのキス、嫌?」

ぐいぐいとくる夏川に紅葉は困惑したままだった。
好きだとかそう言うのが考える間を与えられずに服を脱がされていく。

「っわたるっまって・・・!」

弄ってくる手に困惑して押さえながらも、手を剥がそうとしてところで再び口付けられた。
そんな必死な渉をみてなんだか抵抗するのも面倒になってしまった。
動かなくなった紅葉に夏川は許されたのかと思ったのか動きをを再開させた。

それからは夏川が興奮するのと反比例して紅葉は冷めていく。
いや、冷めるともちょっと違うか。
必死にせがんでくる夏川に絆されてしまったと言うか。

紅葉相手に興奮している夏川に正直笑ってしまいそうになった。
夏川の股間はズボン越しにわかるくらいに勃起していたからだ。
幼い頃から知ってる自分に欲情をして、止まらなくなっていく夏川。
だが、そんな余裕はすぐになくなった。
夏川はポケットから出した何かを手にまとわせると、紅葉の尻の穴に突き立てた。

「!!!?」

きつくとも指は止まることなくどんどん入っていった。
混乱していてわからなかったが、その手に付けられているのは潤滑ジェルだった。

「ちょっ渉っ・・まさかっ」
「・・・」
「っ・・・レイプする気かっ」
「最後にはよがらせて和姦になるから」
「!!?」

なんてクズな発言なのだろうか。
信じられなくて夏川を睨むも止まらなかった。

尻は指が数本まで入るようになると、一気につかれる。
やさしさとかそんなの全く感じられない。
意味が分からなかった。

そんな状態で紅葉のものを扱きながら突き上げる。
今から思えばそのやり方は慣れているようにも思った。

だが・・・、紅葉の心は完全に冷め切っていた。

夏川が止まったのは紅葉の中に果ててからだ。
逆流してくる感じに気持ち悪いと思った。
しかし、それでも終わったんだとホッとした。
夏川は1人満足気にしていたが、紅葉の中から出ていく時にハッとした。
シーツについた赤いシミに固まっている。
潤滑ジェルをつけたからと言ってあんなに強引にされたら切れるのは決まっている。
咄嗟に伸びてきた手を思い切りはたき落とした。

「触るな」
「っ」

今までこんなに睨んだことはないくらいに睨むと、夏川はひるんだ。
そのすきに起き上がると夏川を押し退け下着を履いた。

「ごめん・・・ごめんっ紅葉!」
「・・・」
「俺っ紅葉のこと愛しているんだ!紅葉だけだ!」
「・・・とにかく帰って」

取り敢えずその日は部屋から追い出した。
夕食も食べずに部屋にこもりその日は会うことなく終わった。

それから数日間夏川の平身低頭な謝罪が続いた。
家でも学校でもどこでもするそれにいい加減疲れてきたころ、あきれながら『もういいよ』と許した。

しかし。

そこから夏川の彼氏発言が始まったのだ。

紅葉が何も言わなかったのもあるかもしれない。
だが、やっぱりあきれてしまった。
これまで色んな夏川を見てきたし、人に彼氏だと言いふらす以外はあいも変わらず良いやつだった。
母親が『付き合ってるんだって?照れちゃって~。学生結婚かぁうらやましい♪』なんて能天気な発言にイラっとしたが、だがまぁいつかはそれもいいかもしれないと、その時は思ってしまった。

いや諦めてしまった。

それから紅葉は夏川に大事にしてくれていた。
だから、それから紅葉も夏川を遠ざけたりはしなかった。
でも、2人になってもそういう空気にはならなかった。
ならなかったというか、なるのが怖かった。
そういう空気を醸し出した途端、体が強張り夏川を恐怖の目で見てしまう。
体ががちがちと震え、あんな痛いことをまたされるのかと思うと、恋人を見るような目ではなく強姦魔を見るそれだった。

そのことに、夏川は毎度謝ってくれるのだが。
それでも紅葉の心の傷はいえない。

いずれは夏川と結婚してもいいと思えるくらいには好きなはずなのに、一線を越えるのは無理だ。
少なくともその時点には無理だった。
夏川は自分を責め紅葉に無理に手を出さなくなった。

その代わりに他で遊ぶようになった。

夏川を受け入れられないのに、その事実がすごくショックだった。

僕を好きだって言ったんじゃないの?
受け入れられない僕が悪いの?
誰かに相談したい・・・けど・・・やっぱりまた渉の味方する・・・。
僕が・・・黙っていれば・・・良いのかな・

あれから夏川は謝るだけで歩み寄ろうとしなかった。
いや、そうしなかったのも紅葉も一緒だ。
だが。好きだとか愛だとか何とかいうならもう少し何かあってもいいのではないだろうか。
2人きりになると触れてこようとする夏川。
それが余計に腹が立って夏川に体を触られることを拒否をした。

別のクラスで夏川がいつも違う男女を引き連れているが、恋人は紅葉だと言い張る夏川。
その行動がよくわからなかったが、「1人に絞ると周りが騒がしくなるから秋川にしておけば周りが黙るからだろう」と言われたことに妙に納得した。

夏川が好きだと言ったのは冗談だったのか思うと理解もしたし、心も冷えた。
だけど、毎日好きだと言ってくる夏川。
人に見せるだけでなく、2人きりでも言ってくる。
それ以降も浮気を繰り返す夏川についに、紅葉は悲しまなくなった。

高校も大学も夏川は付いてきた。
しかし、就職で離れることになり、そこで夏川の様子が変わった。


紅葉がフリーランスで仕事を取り始めたころからだった。

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