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執着旦那と愛の子作り&子育て編

心臓が強いね・・・。

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ハイシア領。領主執務室。

部屋に飛び込んできたガリオンとヴィスタ。
城の中だからなのか、ガリオンがのれるサイズのパピードラゴンだ。
その後ろからラインハルトが追いかけてきている。

「ちちうえー!」
「きゅーー!(臭いのがきたー!)」

慌ただしくやってきたかと思うと、シャリオンの腕の中に飛び込んできた。

「わ???どう言う事?」
「エリザベト・ヴレットブラード様がお見えになりました」

ガリオンとヴィスタに尋ねると、ゾルが思考共有で情報を共有したのか詳しく教えてくれた。
同時にガリオンと一緒に飛び込んだヴィスタの首根っこを掴み上げりゾル。

「おかえりいただきましょう」

犬猫のように捕まれたヴィスタは暴れてその手から逃れると、のしっとゾルの頭の上にのった。
シャリオンに触れなければ良いのかそのままにして、ニッコリと笑みを浮かべるゾルにシャリオンは驚きながらも答えた。

「え」
「先日のようになっても困ります」

そう。相手は幼さも残る女性だと気を抜けば、あんなことになってしまった。
あの時はゾルに助け出されたわけだが、今回どうなるかわからない。
それを考えると素直に頷いた。

「うん・・・」
「・・・」
「・・・」

あまり納得いっていない様子なのに肯定するシャリオンに、普段は『会うのは止した方がいい』と止めるはずのクロエとソフィアがゾルを思わず見る。
シャリオンが素直に返事をする時は、その通りにする時である。
すると遠慮したシャリオンの願いを叶える為に可愛らしい声が上がった。

「ちちうえ!僕がいます」

ギュッとしがみつき騎士の様に守ると両手を広げてアピールをする可愛い我が子を撫でた。
駄目だと思いつつもガリオンが甘えてくるのは身内しかいない時でどうしても甘やかしてしまう。

「リィンはお勉強の続きに戻らないと。
先生も忙しい間に来てくれているんだから」
「でもっ・・・でもっっ」
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だから」
「でもっ」
「帰ってもらうし、会うとなってもリィンは同席させないよ」
「!そんな」
「だーめ」
「ちちうえを守ると約束してます!」
「僕もリィンを守りたいもの。駄目?」
「ぅっ」

そんなキャキャとしているうちに、シャリオンが見えないところでヴィスタが文句を言うようにゾルの背中を尻尾でバシバシ叩くとゾルはため息を吐いた。

「・・・、・・・わかった」
「?なにが?」
「俺が悪かった」
「ん???」

唐突に言われてもなんのことかわからずに首を傾げる。

「絶対隣同士で触らないこと。それから」

つらつらと言い続けるゾルに意味が解らずに尋ねた。

「さっきからなんのこと?」
「ヴレットブラードの娘だ」
「!・・・でも」

先日ガリウスにも注意をされたばかりである。

「思い詰め隠れてされる方が困る」
「そんな事・・・しないよ。・・・たぶん」
「・・・」
「するときは・・・相談するし」
「なら帰らせるか」
「っ会う!」

無茶をしないというアピールをしていたのだが、帰らせようとするゾルに慌てて止めるのだった。

★★★

相手は侯爵だが唐突きたのはエリザベトであり当然の様に待たせている。
それで文句を言ってくるかと思いきや、領主としての仕事があるのでその合間で良いと言っているそうだ。
殊勝な態度に一瞬勘違いしそうだ。
待たせているのはクロエにソフィアに扮し男爵夫人として同席することになった為だ。
準備が終わり待たさせているサロンへ降りると、シャリオンの方を見て満面の笑みを浮かべるエリザベト。
クロエは目に入っていないようで、真っすぐシャリオンを見てきている。
シャリオンとクロエが隣同士に掛けると、エリザベトは驚くことに謝罪を口にした。

「突然訪れて申し訳ありません」

シャリオンが『ユーリア』の時とは違い、口調も崩れてはいない。

「シャリオン様とお話したかったのですけれど、あまり社交の場では会えませんので」

社交の場は普通の貴族よりも確かに少ないかもしれないが、それでもアシュリーやガリオンのコネクション為にガリウスと都合がつけば出るようにはしている。

だが、思い返してみればその場には侯爵はいるがエリザべトはいなかった様に思う。
そもそもシャリオンが参加する夜会はガリウスがコントロールしている為女性が少ないのだが、シャリオンが知るわけもなく、必然的にシャリオンとエリザベトは夜会で会う事は滅多になかったのだ。
会ったとしても常にガリウスが近寄るなオーラを出しており滅多な事では近寄れない。

「確かにお会いしませんでしたね」
「えぇ。私ずっとお話をしたかったのです」
「そう・・・ですか」
「あの・・・お聞きしたいことがあるのですか」

そう言いながらキラキラとした眼差しをこちらに向けてくる。
これまでの強引な様子を思い出すと、少し気後れしてまう。
特に『ユーリア』の頃は身分を隠していた。
ハイシア家の親族だと思ってはいるようだが、それでも強引であった。
その後もシャリオンとしてあった時もあまり良い記憶が無くら裏があるようにしか見えないからだ。

「何でしょうか」
「私・・・嫌われておりますか・・・?」

反応が出てしまっていたのだろうか。
内心慌てているとエリザベトは傷ついた表情でつづけた。

「何か・・・しましたでしょうか」
「・・・、」

こんな風に聞かれるとは思ってもみなかった。
エリザベトが何かした疑いは沢山あるが、証拠がない。
だが、『何もない』とはとても言えなかった。

「私も少々伺いたいことがあります」

エリザベトの言葉にははっきりと返さずに尋ねた。

「リジェネ・フローラルはいかがですか?」
「良く利用させていただいておりますわ。
年齢が違い娘が多いですし、普段会わない方ともお話しできる貴重な場所です」
「それは良かったです。
・・・ところであの場所で一部の貴族が爵位で圧力を与えている人間がいると報告を受けていますが、何かご存知ありませんか?」
「そんなことが・・・ですが『報告』?」

痛ましい表情を浮かべた後、訝し気に首を傾げた。
少し間を置いた後、リジェネ・フローラルはハイシアが所有の建物であることを伝えると驚いたようだった。

「では『ユーリア』はやはりシャリオン様の血縁者なのですか」

今更隠してもしょうがないし、本人である為まったく関係が無いというのは不自然だ。
シャリオンが肯定するとエリザベトの表情が少し固まった。

「・・・。では私が何をしているかご存知なのではないですか」
「ユーリアに話したことは全て事実だと認める?」

そう尋ねるとエリザベトははぁっと面倒臭げにため息を吐いた。
それを皮切りに『ユーリア』の時にも見た横柄なエリザベトへと変わる。

「認めたらどうなりますか」

真っすぐとこちらを見てくる視線から笑みが消えた。
なんだか背筋が寒くなる。
人が行方不明になったり、虐げられた者達の傷を考えると慎重に考えた。

「・・・。私には裁く権限はない。
・・・ですが、貴女をリジェネ・フローラルには立ち入りを禁止します」
「・・・」
「貴女自身で罪を告白してください」

その言葉に真っすぐこちらを見てくるエリザベト。

「考えておきます」

そんな正直に言う気のない姿勢に、最初からわかっていたはずだが思い直してくれないことに落胆をした。
表情が曇ったことに気が付いたのだろう。

伯爵に話を通さなければならないというのは解るのだが、それでも納得は行かなかった。
エリザベトから視線を逸らし、なぜかシャリオンの気が沈む。

それからしばらくすると、エリザベトは一方的に話し「また来ますわ」といい帰っていった。
結局、クロエには隣を背後にはゾルに守られている状態だったが何もなかった。
エリザベトは何が目的だったのだろう。

「相手から話を聞きだすって・・・本当に難しいね」

そう言うとゾル達は苦笑を浮かべるのだった。

★★★

【別視点:セレス】

結晶漬けがおいてある南西部の森に向かう際中。

面倒くさいことに同行者が出来てしまった。
貴族であるシェルヴィスティを放置することも出来ず一緒に旅をするようになって1週間。
当初は半日で帰る事になるだろうかと思っていたが、意外にもこんなにもってしまった。
シェルヴィスティは粗さがあるが根性がある。
ウルフ家の者にもその姿勢を理解しているようだ。

セレスは体力は無いが魔力で己の体力や筋力を底上げしている為、この程度では一切疲れることはない。
だが、16歳という若さで体力と魔力が圧倒的に足りない。
今も休憩と称して木陰で休んでいるが肩で息を切らせているようだ。

そんな様子を見つつ魔力を回復できるような魔法道具を探すと、『アスピルコアドレイン』をリング状にした魔法道具を見つけた。
相手の魔力を吸引する魔法道具なのだが丁度いい。
これをシェルヴィスティに渡そうと立ち上がると、ウルフ家の者に声を掛けられた。

「お前が出来ないのなら街においてこようか」

シェルヴィスティは思ったよりも弱くもないが強くもない。
魔力が低いサーベル国人の中で珍しく魔力があり秘術を使えるウルフ家の者達よりもシェルヴィスティは弱い。
これが旅の一行なら育てて行こうとも思えるが、そのような余裕があるわけではない。
それにウルフ家以外の人物から情報が洩れるのも懸念しており、今回は決まった人で陣形を汲んでいるのだ。

だからウルフ家の者がそう言うのも解るのだが。
ちなみに今文句を呈してきたこのウルフ家の者は、この中で一番彼を気にかけている。
セレスとシェルヴィスティは同じ馬に同乗しているのにも関わらず、ぴったり横につきいつでも支援できる位置に張り付いている。
主人が大好きでその他の人間はどうでも良いと考えるウルフ家の者だが、『それ以外』の中にもランクはあるようでシェルヴィスティは好ましい人間のようだ。

セレスとて一人気ままな一人旅や、ハイシアに戻る時に同行したいというなら連れ帰って修行を積ませようかと思うくらいにはシェルヴィスティを気にいってきてはいる。
たった一週間でそう思えるほどひたむきな青年だった。

「ん~。置いてきたとしてもついて来ると思うよ。
問題はその後だよ。
ボク達がいないところで強い魔物に遭遇するかもしれないし、そのほうが心配じゃない?」
「・・・」
「もし最悪な事態になってしまったら置いて行ったボク達の所為になるし最悪シャリオン様の所為にならないかな」
「・・・、・・・」

思い切り眉を顰めた。
だが批判はしなかったところを見ると、その可能性もあると考えたのだろう。
シャリオンにお願いをして止めて貰うのも一つの手だが、今は休暇旅行になっている為相談は出来ない。

「それなら・・・少し寄り道でもしていこうか」
「どうするつもりだ」
「2・3個賊を潰したら素直に帰るんじゃないかな」

適当に言ったのだが、ウルフ家の者は顔を挙げて数人で集まった。

「え。・・・まさか探しに行ってくれるのかな。ほへぇ・・・便利~」

魔法道具を探そうと思っている手を止めると、2人程一行からそれる人を見届けながら、後ろに振り返るとシェルヴィスティの所に向かった。

・・・
・・


『アスピルコアドレイン』の使い方を教える為にセレスの魔力を吸い取ってもらいながら、何故こんなにもついてきたがるのか尋ねた。
そこには貴族らしい理由しかなかった。

元々シェルヴィスティは兄の代替として産まれたのだが、実際はサーベル国人としては劣っていることから親に差別を受けているようだった。
兄は強いだけでなく美しく皆が兄に見とれる。
一方のシェルヴィスティは外に出るだけで皆に後ろ指さされるのだとか。
シェルヴィスティの兄は見たがセレスの感覚で言えば、あまり兄を美しいとは思えないのだがそれがこの国の美意識なのかもしれないが、シャリオンはこの国でも大変モテたというのも聞いており、何が正しいのかわからない。

それはまずさておき、シェルヴィスティの発言が全てに諦めているところがあり、容姿が悪い自分のせいであるというシェルヴィスティに思わず叱ってしまった。

「自分でどうしようもないことに反省してどうするの~」
「でも」
「でもじゃないよ。そんな家出てハイシアにおいでよ」
「ハイシア・・・?あぁ・・・シャリオン様の領地ですね」
「うん。シャリオン様はきっと君を迎え入れてくれるよ。
曰く付きのボクでさえ快く迎え入れてくれたのだから」
「・・・でも」

これが愛国心という奴なのだろうか?と、思った。
自分にはない感覚だ。
もっと言うならセレスのその心はハイシアにある。

「シェルヴィスティ様を大事にしてくれない家なんて繋がっておく必要がある?」
「けど・・・兄上たちは私の事を思っていて厳しく指南してくれているのだから」

本当に?と聞き返しそうになるのを耐えた。
真っすぐ信じるシェルヴィスティを傷つけるようなことを言う必要はない。

「今回の事は家族に言われているの?
例の件を片付けてその家族は褒めてくれるのかな」

その問いかけに首を横に振るシェルヴィスティ。

「・・・たぶん、勝手に家を空けて目立つ事してきたと非難すると思う」
「だったら」
「でも、そしたら外で働きやすくなるでしょう?」

ただ何も考えずに親の愛を求めるような行動ではないことに少々驚き真っすぐ見てくる視線に、ホッとした。
心が折れかけているわけではなく前に進むための物だと気付いたから。

「そうだね。・・・シェルヴィスティ様。・・・悪いのだけど試験を受けて貰いたい」
「なんでしょうか」
「ここから先、本当に厳しい道のりなんだ。だから今から力量を見るために賊を狩ってきて貰いたい」
「賊・・・?」
「うん。ボクと彼らのうち1人とシェルヴィスティ様の3人。
けど、ボクらは手伝わないよ。手伝ったらそこで試験終了。
彼と一緒にシェルヴィスティ様は王都に帰るの」
「!」

今の話を聞いて同情心は確かに沸いた。
しかし、この先は一歩間違えたら死につながる。
それも最近魔物の強さが上がっているのもあるから、弱いままでは連れて行けないのだ。

セレスの言葉にシェルヴィスティは息を飲んだが、やる気を見せてくれた。

ウルフ家の者達もその様子に何も口出しはしなかった。
無事に試験に合格してほしい気持ちと、不合格となり安全に王都に帰って貰いたいというそんな気持ちだ。

だが、誰一人甘くしようというつもりは無かった。


次の日。
目的地とは少しそれた洞窟に賊の巣窟と思われるものをウルフ家の者が見つけてきた。
ここの土地勘は全くないというのに、簡単に見つけてきた彼らに驚きながらも向かったアジト。

そこには多くの人が閉じ込められ奴隷として働かされていた。

その光景は忘れていた地獄の世界だった。

★★★

【別視点:シャリオン】

王城。
今日はアンジェリーンの為に登城していた。
本来の目的はそのはずなのだが、シャリオンの膝の上にアシュリーが乗っている。
ゾルだけでなくアシュリーの面倒見係やメイド長達もいるというのに、いちゃいちゃとする。

「父上お久しぶりです」
「久しぶり。シュリィ。・・・また大きくなって。レディになってしまうね」

寂しそうに言うと嬉しそうに微笑むアシュリー。
しょげるシャリオンに安心させる様にぎゅっと抱きしめてくれる。

「レディになっても私は父上の娘ですわ」
「そうだね。永遠にね」

しっかりとした口調のアシュリーを見ると頑張っているのが良くわかる。

「リィンを連れてきた方が良かったかな」
「?別に大丈夫ですわ」
「そう・・・?」
「この口調の事でしたら心配しなくても大丈夫です。
こうしたいからこうしているので、拗ねているだとかそういう訳ではありません」

普段からこういう口調の為に以前のような甘えた口調はもう話さなくなってしまったらしい。
アシュリーの頭を優しく撫でた。

「それなら良いのだけど」
「それにリィンとは良く話しています。ヴィーが言う事聞くようになったと喜んでいました」

ヴィーとはヴィスタの事である。
良く話しているというのは初耳だ。
シャリオンとガリウスの様にウルフ家につなげてもらっているのだろうか。
実のところ言うと2人は魔力が高い為ウルフ家の者達がいなくとも思考共有が出来るのだがシャリオンはそのことを知らない。

「父上。父様の言っていた様にエリザベトの話を聞くのをおやめになられた方がよろしいかと思います」
「ん?・・・うーん・・・でもな」

エリザベトを来ない様にするのは簡単だ。
だがまだ聞けていないことがあるのだ。
言い淀むシャリオンに心配げに見上げてきた。

「まだ聞きたいことはあるから。それに警備も強化したんだ」

万全を期することは約束し、無防備に彼女を許容などしない。
人員もそうだし貞操帯だってつける様にした。
これでガリウスをなだめている状態なのだ。

そんな風に話しているとアンジェリーンが来たことが知らされた。
用事を終えらせて戻ってきたアンジェリーンは少し疲れているようだったが、シャリオンの顔を見ると笑顔になった。

「こんにちは。リオ。元気でしたか」
「うん。元気だよ。アンジェはどう?」
「私もです。・・・ところで最近ガリウスが機嫌が悪いと聞きましたが」
「あー・・・ごめんね」

エリザベトが来た日は特に機嫌が悪い。
それは臭いからなのだが、シャリオンにはどうしようもできなかった。
その代わりに夜の睦言にいやらしさを増しているのだが。

「シャリオンのせいではありませんわ。・・・そうそうエリザベトの件ですが、先日メイドをやめたことを聞きました」
「え」
「クビにしようと思っていたのでありがたいです」
「そうなの。ほかに辞めた人は?」
「あとフィロメナですね」
「・・・」

期待通りの反応にそれを聞きながら、フィロメナの話に状況を尋ねるのだった。

「最近、エリザベトがよく来てるけど確かにフィロメナは来ていないな」

腕の中のアシュリーを撫でる。
真面目な話を聞きたがっているようだが、シャリオンの撫でる手に喜んでいる。
嫌な話をしながら癒された。

「?!何故」
「フィロメナが来ない理由か・・・わからないな。今度聞いてみようか」
「そうではないです。エリザベトがハイシアに訪れているのですか?!
何故断らないのですか!」
「来る理由がいまいちわからないんだよね。
行方不明になっている人の事を尋ねているんだけど・・・素直に教えてくれなくて。
人から聞き出すのって難しいね」
「っ」

アシュリーの小さな手の前に指を差し出すと、キュッと握ってくれるアシュリーに優しく微笑むとポッと頬を赤く染めた。上下に動かすと喜ぶアシュリー。

そんな様子を見ていたアンジェリーンは溜息をついた。

「ガリウスの機嫌の悪さがわかりました」
「あはは・・・」
「父上。エリザベトは危険です」

シャリオンの指に戯れつきながらも、『エリザベト』に反応している。

「だからどうにかしなきゃいけないでしょう?
リジェネ・フローラルには出入り禁止を本人に言い渡したよ」
「流石父上です。彼女が出入りしないだけであそこを安心して利用する者が増えます」
「そう・・・だね」

出来れば改心をしてもらいたかったが、自らした事を認め謝罪も口にすることも出来ないなら今後の利用も無理だ。

「フィロメナのこと聞いてみるよ」
「・・・えぇ。ですが別にフィロメナの事を気にしている訳ではないのですよ」
「そうなの?」
「それにあの娘は・・・」
「どうかした?」
「いいえ。もしフィロメナが現れたら私も呼んでください」
「?わかった」

フィロメナを気にする理由は教えてくれなかった。
だが何か企んでいるのは解る。

「あまり無茶したら駄目だよ・・・?」
「その言葉そのままお返しします」

ツンとそんな風に返されて墓穴を掘ったと後悔した。

それからガリウスも訪れ気を利かせてアンジェリーンが退出したことも気づかないほど親子の時間を話し込むのだった。


★★★

夜。
王都のハイシア家屋敷。

もう寝る時間だと言うのに情緒もなく押し倒され、その視線で何が目的なのかわかった。

「ガリウス?」

そう言うも目がぎらついている。
ガリウスに無言で寝巻きを捲られ素肌を晒し出された。

「匂いを」
「うん。・・・ガリィの匂いにして」

その言葉にガリウスの目が荒々しく光る。
それが煽っていることなど気付いていない。
口付けられながらピンッと乳首を弾かれる。

「んぁっ・・・ぁ・・・」

ニップルクリップごと撫でられた。
赤く熟れた乳首はやっと熱がひいたのに、再びぶり返される。
もっとしっかりと愛撫して欲しいのに逃げていく手。

「どうしました?」
「っ・・・ガリィ」

体を擦り寄せて脚を絡めた。

「っ・・・、」

ガリウスの昂りが脚の付け根に感じて息を飲んだ。
恥ずかしくも手を忍ばせるとピクンと手の中で動いた。
見上げ見つめながら手を動かす。
雄々しく猛るモノ。
手に取りゆるゆると扱き始めた。
がちがちに反り立ったモノはいつも途中で取り上げられてしまう。
ふと、いつもはガリウスを跨ぐ体勢の為、簡単に止められてしまう事を思い出しシャリオンはずりずりと体をずらした。
シャリオンが何をしようとしているのかわかったのかフッと笑う声が聞こえる。
この体勢はガリウスの表情が見えないが、それでもこれまでの経験で嫌そうな顔はしていない。
手探りでガリウスのモノを足の付け根からなであげた。
見えないが熱いモノが近くにあるのが分かる。
ちゅっと口付けて唇でくっきりと浮き出ている血管に口付けなぞった。
先端に向かって唇を滑らせちゅっと先端に口付けるとビクンと動いた。

いつもだったら口に含むところだが、ガリウスの愛撫を思い出しながら真似た。
先端を手でかぶせながら竿を舌で舐め始めた。
ぴちゃぴちゃと音を立て煽った。
先端に触れている手を捻り時折鈴口をくすぐる様に穴を撫でるとトロリと蜜が零れてくる。

「っ・・・」

感じてくれるのが嬉しくてシャリオンはより夢中になっていた。
陰嚢を優しく揉みながらちゅぅっと吸い付き口に含む。

「・・・シャリオン。・・・私にもさせて下さい」

掠れた声が色っぽかった。
だがフルフルと頭を横に振ると、口に含んだ陰嚢を歯を立てない様にしながらも口の中で転がす。
ガリウスに愛撫をされたらシャリオンが愛撫出来なくなってしまうからだ。
ちゅぱっと音を立てて外しながらそう言うとガリウスが息を飲んだ。

「んっ・・・ダメ。・・・ガリィが触ったら僕が出来なくなってしまうから」
「シャリオン・・・お願いです。そんな意地悪をしないで下さい」
「意地悪なんてしていないよ。気持ち良くない・・・?」
「・・・そんな事・・・気持ちが良いのは解っているでしょう?
私のモノが・・・っ」

何か言っているガリウスのモノに口付けるとガリウスは言葉を詰まらせた。

「すごく・・・硬くなってるよ」

うっとりとしながらそう言いながら、先端を口に含む。
大きいカリを口に入れるだけでいっぱいに広がった。

「っ・・・はぁ・・・・んっ」
「・・・シャリオン・・・」
「っ・・・僕がつぶれない様に・・・ちゃんと・・・そうしていてね」
「っ」

少し意地悪なことを口にしながらガリウスの尻を引き寄せた。
ガリウスには足を開き上半身を起こして貰わなければ口淫が出来ない。
腰を引かせて逃げない様に掴み寄せると、再び口に含んだ。
とろりと滴る蜜が口に広がる。
それを吸いながら頭を上下させた。
口の中が唾液が溢れて吸うも、その辛い体勢だった。

「っ・・・がりぃ・・・お願い・・・動いて・・・?」
「っ・・・」

ガリウスはいつだって苦しくなることはしない。
その為に口淫を激しくはさせてくれないのだ。
自分はいつだってしてくれているのに。
シャリオンはガリウスを煽るようにちゅぅっと吸いつき扱いた。
しかし、理性の塊なのか中々乗ってくれないガリウス。
そんな頑な態度にシャリオンも負けじとなった。

「僕の匂いガリィのにしてくれているんでしょう・・・?」
「っ・・・!」

させてくれないガリウスを煽る為にそんなことを言ったのだが、それは結果飲みたいと言っているようなものだ。
シャリオンの手が動くたびに先走りと唾液がくちゅくちゅと淫靡な音をたてた。

「ガリィ・・・ガリウス」
「っ・・・」

無意識に甘い声を出しガリウスに強請った。
普段のガリウスも我慢が出来た。

しかし、最近のシャリオンからはマーキングをするような喧嘩を売るような臭いがする。

このマウンティング行為に日々精神を煽られている。
今日はエリザベトとの対面がなかったのにも関わらず、最近はその蓄積で匂いを取る事が日課になっていた。
そんな時に煽るようなことを言ってくるシャリオン。
口淫でシャリオンを苦しめたくないのだが、理性がグラグラと揺らされた。
シャリオンに対しては嗜虐心なんて持ち合わせていないはずなのに、シャリオンの形の良い美しい唇には不釣り合いな醜いガリウスのモノをしゃぶりたがり『飲みたい』などと言われ体が一気に熱くなった。
今のガリウスには魅力的な誘い文句だった。

瞬時に自分のモノから放たれた精液でどろどろになったシャリオンが浮かんだ。

一方のシャリオンはゴクリと息を飲むガリウスに煽るようにガリウスのモノを吸った。

「っ・・・んっ」
「・・・、悪い子ですね」

シャリオンのそれにごりごりと精神を削られそうだった。
体を起こしシャリオンを覗き込むと取り上げられた子供の様に拗ねている。
そんなシャリオンの頬を撫でた。

「そんなに私のものを飲みたいのですか?」
「!・・・そういう、・・・ことではなくて」

恥ずかしそうに言い淀むシャリオンの下唇を撫でた。

「私はシャリオンのモノなら飲みたいですが」
「っ」
「ところで。・・・私にされるのと、シャリオンが自分でするの。どちらが良いですか?」
「!・・・させて・・・くれるの?」

シャリオンが恥ずかしがりながらも嬉しそうにするとガリウスは苦笑をした。
いつもなら有耶無耶にして押し倒し抱いてしまうからだ。

「えぇ。・・・」

ガリウスはそう返事をした後で体勢を変えた。
ガリウス自身が動いたら加減が出来なくなってしまう為、シャリオンに好きにさせるためだ。
シャリオンが足の間に入り込むと、ガリウスのモノを嬉しそうに手を添える。
本当に視覚の暴力だとガリウスは思った。

「ぁ・・・大きくなった・・・ふふっ・・・ガリィも口でされるの好きなんだ」

無意識な煽りに意地悪をしたくなる。

「おや。シャリオンも好きなんですか?私の口でされるの」
「それは・・・知っているでしょう」

照れながらも怒るようにキッと睨んでも、ガリウスは愛おし気にこちらを見ながらシャリオンの頬を撫でた。
OKを貰ったシャリオンも嬉しそうにしながらガリウスのモノに口付ける。
先ほどは見えないところで愛撫していたが、今はシャリオンの顔が用見える。
あの時もこんな顔をしながら舐めていたのだろうか。
丁寧に愛撫してくれるシャリオンは拙さはあるが、気持ちが良かった。
ガリウスの吐息が漏れるのも早かった。

「っ・・・気持ちいですよ・・・シャリオン」
「っ」

そう囁くと嬉しそうにしながら咥えると頭を動かす。
すべてを口に含むのは無理なのだが、必死になって咥えようとするとコツコツと喉に当たった。

「んぐっ・・・はぁっ・・・んっ」

苦しそうに眉を顰めながらも、上下に頭を動かすシャリオン。
そして息が整うと再び喉にあてにくる。
感じているのは苦しみだけじゃないようで、口淫をしているのにシャリオンがもどかし気に腰を揺らす光景はたまらなかった。
ガリウスはシャリオンの頭を撫で柔らかな髪に指を絡めた。

「はぁっ・・・んぅぅっ・・・はぁっ・・・・ぁっ・・・んっ」

水音を響かせいやらしい表情を浮かべるシャリオン。
必死に動くシャリオンにもどかしいがそれでも興奮する。

「シャリオン・・・吸って下さい」
「っ・・・ん」
「もっと・・・」

じゅぅっと強く吸うとガリウスがビクっと体を揺るがした。
切なげなその表情に嬉しくなってもっと見て居たくなったシャリオンは口を外すと、先端の敏感なところをぺちゃぴちゃと舐めガリウスを見上げた。

「っ・・・・シャリオン・・・気持ち良いですよ・・・、・・・逝ってしまいそうです」
「んっ・・・んぅっ・・・良かった」

ふわりと微笑むともう一度口に含み、強く吸いながら頭を上下させた。

「口を・・・外して・・・っく」

そう言った途端嬉しそうに動きが早くなり吸い付きが早くなった。

「っく・・・シャリオン・・・っ」
「っ・・・っ」

とめどなく溢れるモノを我慢することなく、シャリオンの口を怪我した。
ちゅぅちゅぅと吸いながら落ち着くと、溢れてしまったものを舐めとるシャリオン。

「気持ち良かったです。・・・シャリオン。ありがとうございます」
「ん」
「こんなにやらしいこと。・・・いつ出来るようになったのですか?」
「!っ・・・、・・・ガリィが・・・僕にいつもしてることじゃない」
「そうですが。・・・しかし・・・どうしましょうか」
「??なにが?」
「先ほどのものは刺激が強すぎます」

シャリオンの唇の端についた精液を親指で拭うとシャリオンを抱き寄せた。

「あんな姿・・・思い出す度にこんな風になってしまいます」
「っ」
「・・・だから我慢していたのですが」
「っ・・・ガリィも・・・口でして欲しかったの・・・??・・・ならなんでさせてくれなかったの?」
「言ったでしょう?我慢していたんです。
・・・ですが、シャリオンの口で逝くことを覚えてしまった。
意地悪をした事・・・反省してもらいましょうか」
「!?」

驚いたシャリオンの唇をガリウスが塞いできた。
ガリウスはいつもとは違い、口の中に広がる生臭さに不快感を感じる。
だが、それは自身のものをシャリオンが愛してくれた証でもあると思うと複雑だった。
何度もキスを重ねて、いつものシャリオンのキスになるまで繰り返した。
ガリウスが満足する頃にはシャリオンが息を切らして腕の中でくたりとしている。

「が・・・りぃ・・・」

キスを繰り返されもう下腹部に痛みがするようになってきた。
そろそろと自らの下腹部に手を伸ばし貞操帯に触れて、すがるようにガリウスを見上げる。
すると、ガリウスは脚の付け根の境目を撫でると愛液で滑り何度もそこを撫でた。

「っ・・・っ・・・が・・・りぃ・・・」
「取りましょうね。・・・あぁ・・・滑ってしまいますね」

金具を取ろうとしようとするも愛液でぬるぬると滑ってしまう。
しっかりと手を拭えば良いのだが、それをせずに見上げる。

「私のモノを口でしながら感じて下さったのですか」
「っ・・・っ・・・っ」

かぁっと赤くなるシャリオンはフッと顔を逸らした。

「こちらを見て教えて下さい。シャリオン」

答えないと先に進まないという意思を見せるとシャリオンは息を飲んだ。
先ほどしていたことの方が恥ずかしいことだろうに。
暫くして涙で潤ませた瞳でガリウスを見ながらか細い声で答えた。

「・・・した」
「何がです?」
「っ・・・だから・・・っ・・・ガリウスの・・・しながら・・・」
「しながら?」

恥ずかしいという羞恥を奪う様にシャリオンの弱い耳穴に触れる。

「っぁ・・・」
「私のモノを舐めながらどうしてしまったのですか」
「ガリィのしながらっ・・・気持ちよくなってたっ・・・っ」
「そうなんですか?・・・ではこのままで宜しいですね」
「!!?」
「嘘です。・・・さぁ・・・取りましょうね」
「っ」

今度こそ金具を外されると表の革が外され、貞操帯が現れた。
男根のバンドを緩めると圧迫感がなくなった。
ホッとするのも束の間。
ガリウスがそこに近寄りその時に目があった。

「っ」

チュッと口付けられるとたったそれだけで期待するように体が震えた。
見せつける様に舌でレロレロと舐められながら、最奥の孔に親指をつぷりと入れられた。

「んぁっ・・・はっ・・・んっ」

にゅくにゅくと指を動かされて広げる様に引っ張られた。

「ひぃぁっ」
「まだ解していなかったのに・・・柔らかいですね」
「っ・・・っ」
「期待して下さったんですか?」
「っ・・・ん」

こくこくと頷くシャリオン。
両手の親指で両サイドに広げられ覗き込まれた。

「!!」
「きゅっと閉まりましたね。・・・ダメですよ。力を抜かなければ」
「っ」

パッと指を離されると手に香油をまぶし、その人差し指と中指の二本を突き立てられた。
散々期待した体は簡単にガリウスの指を受け入れる。

「ぁっ・・・はっ・・・んぅ・・・ぁっ」

そして、同時に口淫をされた。

「ぁぁぁっ・・・はぁっ・・・ぁっ」

気持ちよさそうな声を上げるシャリオンにガリウスは繰り返した。
指をくッと曲げ前立腺をゴリゴリと擦られるながらシャリオンの声が高くなる。
それは心地よい音楽を聴いている気分だ。
シャリオンが喜ぶ場所を何度も擦り上げると、これまで貞操帯でせき止められていた体は、簡単に逝ってしまった。

「ぁっ・・・はぁっ・・ご・・・めっ」

体をビクビクと震わせているのに、残りをすべて舐めとる様にじゅぅっと吸われた。
それなのに中を愛撫する指は止められない。

「はぁっ・・・ぁっ・・・い、・・・イったからぁっ」
「えぇ。・・・でもまた大きくなってきました。・・・ほら?気持ちが良いのでしょう?」
「ひぃぁっ」

中を擦られながらシャリオンの先端を親指でなじられると、精液とは違うものがせりあがってくるのが分かった。

「ぁっ・・・ぁぁぁっ・・・だめっ・・・だめっ・・・でちゃぁぁっ」

嫌だと意思表示をして頭を振ったのにガリウスは離してくれはなかった。
それどころか、『良いですよ』と言いながら鬼頭の小さな孔を親指で嬲り続けた。

その刺激に我慢できるはずもなく、我慢しようとしていたシャリオンを体は裏切り一気につけぬけた。

「!!!」

その途端、『プシャッ』と明らかに精液とは違う水音が弾けた。
溢れた透明な液体があたりを濡らすと、帰ってくる理性にシャリオンは顔をゆがませた。

「・・・っ・・・っ」
「これは潮ですよ」

そうは言われても恥ずかしいものは恥ずかしい。

「私の愛撫が良かったという合図です。・・・私は嬉しいです」

おもらし見たいで恥ずかしい。
そう思っていると中を愛撫していた指をずるりと取り出された。

「ぁっ」
「シャリオン・・・私を受け入れて頂けますか」
「!っ・・・うん」

そう言われると恥ずかしさは収まり、ガリウスを欲しくなった。
足を抱え込まれたかと思うと押し当てられる、ガリウスのモノ。
それは再び凶暴なものに変化している。

「シャリオン・・・・」
「・・・ガリィ・・・」

これから来る熱を期待しながら名前を呼び合うのだった。

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